現在執筆中の、「ヨーロッパ社会史1945−2000」の第五章・草稿をもとに、講義。
下書き草稿が、家族・結婚の章だけでA4で26ページもあるので、相当分厚い本、あるいは2巻本にはなるのですか、とたずねたら、すべての章がボリュームがあるわけではなく、家族の章などは大きなほうであるということだった。
あまり分厚い本や2巻本などになると売れないとの書店側の意向もあって、結局、約300ページ程度の本となるようである。ミュンヘンのベック社から今年の終わりには出版されるとのことである。
今回の日本での講義・講演旅行の内容は、この本の各章の草稿が元になっている。
いただいた草稿は、ケルブレ教授の仕事振り(原稿執筆の進め方)がわかるもので興味深い。
ただし、これは、「あくまでも草稿なので、他の人には見せないように」、とのことなので、ここで具体的なことを明らかにすることはできない。
講義は二つの部分から構成されていた。
まず、第二次大戦後の家族・結婚モデルの変化(その特徴)を、三つの時期に分けて説明し、ついでヨーロッパの特殊性(15・6世紀以降に形成されたそれ)の維持・継続の状況について説明した。
T.結婚・家族モデルの変遷
第一期:戦後期・・・戦争直後の動乱激動期と家族・結婚の状況
第二期:「経済の奇跡」「経済ブーム」と伝統的家族・結婚モデルへの「復帰」
(1950年代から1960年代中ごろまで)
第三期:結婚・家族の多様化の時代(1960年代末から2000年)
Uヨーロッパの特殊性・ヨーロッパ内部の共通性
.ヨーロッパの結婚・家族の特殊性(ヨーロッパの非ヨーロッパに対する共通性)
特に印象的だったのは、ヨーロッパにおける結婚・家族の地域的相違
配布資料は、下にコピーした離婚率に関する折れ線グラフと文献リスト
北欧型・・・高離婚率地帯(顕著にはスウェーデン)
西欧・中欧型・・・・ヨーロッパの平均地帯(BRDドイツ、フランス、など)
南欧型・・・低離婚率地帯(グラフでは、イタリア、それに東欧のポーランド)
約一時間の講義(通訳)のあと、聴講者からの質問を受け付けた。
離婚率や女性就業率の東西格差、南北格差の原因は何か、あるいは宗教と家庭・結婚モデルの構造などとはどう関係するか、などについて、聴講学生のみなさんから興味深い質問があり、またケルブレ教授からの懇切な回答があった。
一点、私が理解し得ない概念(フロイトの概念)の使用があり、後で確認が必要。
全体の講義終了後(聴講者解散の後)にも女子学生(日本における外国人との結婚を研究している学生、ヨーロッパにおける地域外の異性との結婚の動向・特質など)の質問があり、ケルブレ教授の懇切な回答があった。
-----------講義風景--------------
学生感想文(5月17日)
------------講義の後、すこし講師控え室で休息、そのあと称名寺・金沢文庫を院生諸君と案内--------
(ただし、金沢文庫は4時半で閉まっており、内部を見ることはできなかった)
称名寺境内
-------鎌倉見物-------
ケルブレ教授は5月6日に来日されたが、その翌日5月7日(土)にケルブレ教授を古都・鎌倉に案内した。11時過ぎまで雨だったが、幸い正午近くから晴れて、素晴らしい観光日和となった。
予期せず、八幡宮では、綿帽子をかぶった花嫁と和服姿の花婿の和風・神式(神前)結婚式が挙行されていた。
ケルブレ教授の息子さんは国際結婚をするそうで、結婚式は6月だとのこと(花嫁はフランス人で、パリとベルリンで式を行うとか、ヨーロッパ統合の最先端研究者の息子さんらしいといえるかもしれない)。
結婚式の様子にたいへん興味を持ち、ケルブレ教授はたいへん喜んで写真を撮っていた。
昼食後、若宮大通にでると、人力車でお披露目するその若夫婦に出会った。
ケルブレ教授が写真機を向けると、花婿は片手を大きく上げて、さあどーぞとばかりにポーズをとった。人力車で街中を披露してまわる若夫婦は、外国人に関心をもってもらうことをたいそう喜んでいるようであった。
長谷の大仏
長谷の大仏
建長寺
建長寺
建長寺
鶴ケ岡八幡宮
八幡宮
--------夕食に御招待---------