2002年10月10日 大学の使命とノーベル賞、
大学改革のあり方=商学部見解に関連て
昨日、ノーベル化学賞の発表があり、田中耕一というわが国の学界ではま
ったく「無名」の学士(すなわち、東北大学卒業後すぐに就職し、生命科学に革命的な貢献をした仕事は、研究員としての仕事の成果であり、博士号を取得していない)であった。新聞、テレビの多くが指摘しているように、基礎科学における世界的貢献が認められたことは、日本の世界に対する貢献で何が重要なことであるかを示している。大学の使命はまさになんといっても基礎科学における世界的貢献であり、そのための基礎的な研究教育であろう。最先進国の一部に属するわが国の高度の科学技術・生産技術は、まさに、世界の有名・無名の幾多の科学的発見を吸収し、発展させたものであり、世界各国・各地域の基礎科学における貢献を享受しているのである。エコノミックアニマルの、貪欲な、忘恩の日本人に対しては、だれも尊敬を抱かないだろう。目先の実利的貢献にしか金を出そうとしない風潮は、「貧して鈍する」ものであり、大学改革を考える場合、その風潮には大学人としてしっかりと抵抗する必要があろう。世界に対する日本人の貢献を示すものとしてノーベル賞が象徴的代表的な意義を有するとすれば、今後いっそう基礎科学を深化発展させて、世界に貢献し、誇りある日本・日本人とならなければならないだろう。
臨時教授会では、今回の事務機構改革に関して、商学部見解について
さて、昨日の臨時教授会では、今回の事務機構改革に関して、商学部見解がまとめられた。それは商学部教授会決定に従い、学長や全学部に対して提示されることになっている。もちろん評議会審議事項として取り上げるべきことを第一に主張している。
そこで、評議会の最重要審議事項(事務機構改革は評議会や教授会の存立すら脅かす内容を持つものなので重要審議事項中の最重要事項といわなければならない。問題の重要性に照応した適切な審議(その手続きと時間、デュー・プロセス=民主主義の基本原理がないものは、提案としての妥当性を欠如したものとして、たとえ一時的に強引に押しとおしても、それは「改正」「改革」の正統性を主張できないといわなければならない)として取り上げるべき理由を指摘するため、大学の諸規程の相互関係につき、若干の確認をしておきたい。
本学の規程集においては、
第一編 基本の規程において、
横浜市立の大学の設置等に関する条例、
これにもとづいて創られた大学の根本規則・最重要規則、すなわち
横浜市立大学学則 の二つの規程がある。
これらが基本法である。
学則第1章は、「目的」である。その第1条は、大学の使命を宣言している。すなわち、「横浜市立大学(以下「大学」という)は、国際港都横浜市における学術の中心として、真理の探究につとめ、学生に高い教養と専門の学術を教授し、知的、道徳的及び応用能力に富む人材を育成するとともに、世界の平和と人類の福祉に貢献し、あわせて市民の実際生活並びに文化の向上発展に寄与することを目的とする」と。
この大学の基本的使命と諸目的は、そのどれ一つを取っても実に貴重なものであり、われわれ大学人・大学関係者が常にその全体を念頭に置き、常にその実現のために全力を尽くすべきものである。この第一章目的に照らして、われわれはすべての問題を考えていく基準にしなければならない。
事務機構の改革といったものの当否も、この目的に照らして検討しなければならない。この目的実現のための組織が、目的実現を不可能にするようなものであってはならない。今回の機構改革案には、その危険性が多多ある。
第2編 組織及び運営において、
第1章
教授会 が置かれ、各学部教授会規程が設置順に列記されている。
第2章
研究科委員会 がおかれ、大学院研究科の規程が設置順に列記されている。
第3章
委員会等 が置かれ、教務協議会規程、学生生活協議会規程、などほのか、今回の機構改革に関連して問題になる学則等委員会規程といった重要委員会の規程、大学整備計画委員会などが置かれている。
第4章
これが、今回問題となる機構改革に関わる規程であり、章のタイトルが組織・処務となっている。組織や処務は、大学の研究教育、そのための学則等基本法のなかで、第4章に位置するものであることをしっかり見なければならない。基本規程を実現するうえでの「組織及び運営」の、そのまた第4章である。大学・学部の使命である研究教育に責任をもつ教授会等の組織が事務組織の上に置かれているという現行法体系の意味合いを深く考える必要がある。大学の基本的目的、設置目的を実現するための組織であり、その組織においては教授会の位置は冒頭に置かれているのである。事務組織、その分掌体系は、第4章にくるにすぎない。教授会の決定を、事務組織が妨害し、実行しないでサボタージュすることがあるとすれば、法体系の破壊に他ならない。今回の「凍結」騒ぎは、この点からいって重大な問題を孕んでいる。
また、現在問題となっている機構改革案の「学部事務室の廃止」などは、まさにこのような重要な教授会運営に関わる事務機構であって、そのような改革が、「第2編 組織及び運営」の上位規程である「第1編 基本規程」を妨害し、破壊するものであってはならない。改革案は、その可能性を何重もの意味で持っているといわなければならない。
基本規程第1編に位置付けられている大学学則は、
第47条で、評議会の審議する事項を定め、つぎのとおりとする、とし、
(1)
学則その他の重要な規程の制定または改廃に関すること
(2)
人事の規準に関すること。
(3)
予算の見積もりに関すること
(4)
学部、学科、研究所その他重要な施設の設置または改廃に関すること。
(5)
学生の定員に関すること。
(6)
各学部その他の機関の連絡調整に関すること。
(7)
学生の補導厚生に関すること。
(8)
その他大学の運営に関する重要なこと。
となっている。
今回の大学の事務機構改革(案)は、まさに「第1篇 基本規程」の下位規程である「第2篇 組織及び運営」にかかわるものであり、さらにその第2編の下位規程「第4章 組織・処務」のさらにその一つ下位規程「横浜市立大学及び横浜市立大学看護短期大学部事務分掌規則」の改廃に関わるものであり、その重要な改変・改廃にかかわるものである。たとえば、学部事務室の設置を規程しているのは、この第4章第2条、第5条などである。大学の基本的諸規程との有機的連関にあるものである。
当然にも、このような規程改変・改廃は、上位規程である学則の第47条、その(1)、(4)、(6)、(8)の諸規程に深く関わってくるものであり、大学の最高意思決定機関としての評議会の重要審議事項として、慎重審議を要するものである。そのような慎重審議を無視した先行的事務組織改変の強行は、大学の法体系破壊であり、大学の研究教育を破壊する危険性がある。
すなわち、今回の事務機構改革案は、このような法体系を無視して事務組織の改変を教学組織改革と切り離して、事務局が勝手に強行できるものと主張するものであり(組織改変の日程まで事前に決めている)、法体系違反の疑いが強い。その法体系違反の疑いに関しては、本日誌10月4日付の機構改革案批判などを参照されたい。
したがって、昨日の商学部教授会見解が適切に示したように、評議会が専門委員会を設置するなり、上記第3章 委員会で規程されている「学則等委員会規程」にまずは検討をまかせるべきである。大学の使命と諸規程相互の連関性、それらと事務組織との関連性に関して、きちんと検討すべきである。
専門委員会は、機構改革が学則全体、すなわち、基本規程とその下位規程である「第2編 組織及び運営」との相互関係において、どのような規定改正をおこなわなければならないか、どのような問題を孕むかをきちんと検討しなければならないだろう。
学長は、そのような発議を評議会に対してなすべきであろう。また、学長は、事務分掌規則「第7条 事務局長は、学長の命を受け、市立大学の事務を掌理し、その事務について職員を指揮監督する」との規定に基づき、適切に事務局長に、機構改革案に関する審議を評議会審議事項として行うよう事務の指揮監督を命じるべきだろう。
なお、1995年当時、文理学部改組、国際文化学部・理学部創設に関わり、事務機構再編問題が大変な問題を引き起こしたようである。
今後の機構改革問題を検討するにあたっては、昨日の商学部教授会で指摘されたように、その当時の議論の到達点を踏まえて、大学改革(第1編 基本規程にかかわるもの)とそれに対応した事務機構改革(第2編、第4章などに関わるもの)との有機的連関を慎重に検討すべきであろう。事務組織の改変だけは独自に先行的に行えるというような法体系破壊を事務組織に許してはならないだろう。
1995年当時の事務機構改革・事務分掌規程の変更問題に関しては、当時、評議員をなさっていた矢吹教授から、貴重な情報が寄せられた。今回とおなじ問題を含んでいるので、それを参考資料としてリンクして置こう。
参考資料タイトル:大学事務分掌規則「改正大学事務分掌規則「改正」への疑問
参考資料執筆者:商学部評議員 矢吹 晋:日付1995年7月7日