20021217日 矢吹教授からメールをいただき、この機会に、ひさしぶりで先生のHPの中国関係ページをまとめて拝読した。ものすごいお仕事振りに驚嘆。各種ジャーナリズムの情報収集力の弱さ・不正確さを、不正確報道のドキュメントを提示しつつ、鋭く突いた部分が特に面白い。また、ケ小平路線の中国共産党を「中国発展党」としたのも、面白い。「マルクス・レーニン主義」を掲げているが、実際の政策と行動は、掲げる主義と乖離しているのではないか、というのも多くの人が感じているところだろう。

しかし、そもそもマルクスの思想内容と通常の「マルクス主義」なるものとが同じなのかも問題となる。これは、キリスト教や仏教などの世界宗教にも言えることだろう。逆には、ヒトラーとネオナチの関係でも言えることだろう。

加藤周一が『読書術』(岩波現代文庫)のどこかで、マルクスが「私はマルクス主義者ではない」といったと書いていたが、この根本問題も残っている。マルクスが何者か、マルクスの理論は何か、それは自分でマルクスの諸著作そのものに直接当たって自分の頭で検証しなければならない。権威に寄りかかって、耳学問でマルクスを解釈してはならない、ということだろう。どこから出たかわからないマルクスの主張を知識として知っていても何もならない、それはマルクスを理解したことにはならない、ということであろう。

横道にそれるが、最近、ある故人−静岡大学付属中学1年のときに牧師に勧められ、進学したうれしさに洗礼を受けたある故人の追悼集を読む機会があった。彼は早まったと考えていた。彼が通う教会は進化論を議論するのがはばかられるような窮屈な雰囲気だった。キリスト教(一般に宗教)と進化論とは現在でも本質的には非妥協的である。科学の時代の子である彼は、生来の勉強好きと熱心な勉強で難関医学部に合格した。大学時代、道讃会というキリスト教関係の団体に属した。彼はキリスト教の教会関係の雑誌に寄稿した。「キリスト者とは何者か」とみずからに問い、「キリスト教徒であるとはどういうことか」と問い直した。「自分はキリスト者ではない」と率直に書いた。それこそ誠実な態度だったろう。しかしまた、別のところでは、「自分はマルキストや非キリスト教実存主義者にはなれないがキリスト者には近い」とも書いていた。事実、死の数年前から、キリスト教会にかなり熱心に通うようになり、最後はキリストを信じて死んだようである。

 

ともあれしかし、アジア地域の平和との関連でとりわけ重要だと思われる矢吹教授の指摘は、ある程度は一般新聞でも指摘されていたところでもあるが、次の箇所である。

 

---------矢吹教授HPより------------

 (江沢民時代の一三年間)世界情勢は、あわただしく変化した。わが国の改革開放と社会主義現代化建設のプロセスは大いに推進され、江沢民主席を初めとする第三世代の指導グループは、改革開放の歴史的な進展を遂げた。総合国力は大幅に向上し、祖国の平和統一の大事業は重要な進展を見せ、国民の生活は全体的に衣食を満たす状況から、余裕のある生活ができるようになった歴史的な飛躍を実現させ、中国の特色を持つ社会主義事業を建設する新しい局面を切り開いた。この一三年間に収めた極めて大きな成果は、中華民族復興の歴史に輝かしい一ページを加えた」

  共産党の将来に対する江沢民流の回答

社説のいうように、この一三年間に、世界は大きく変貌した。なによりも旧ソ連と東欧のいわゆる社会主義世界の体制が崩壊し、ロシアはG7の仲間入りし、ハンガリー、チェコ、ポーランドなどはEUへの加盟を急いでいる。これによって冷戦体制が終焉し、新たな世界構図が生まれようとしているのであるから、激変はいうまでもない。問題はこの現実を中国共産党がどのように受け止め、どのような対応策を考えるかである。「中華民族復興」というナショナリズム高揚作戦は、国内統一にはさしあたりは便利なスローガンだが、その反動には特に注意が肝要である。現代において無用にナショナリズムを煽る政治家が最も唾棄すべき存在であることは市民の常識であろう。」

(以上、http://www2.big.or.jp/~yabuki/doc11/ss021210.htmより引用、赤字強調は引用者)

わが国でも、刺激的な発言で排外的なナショナリズムをあおるポピュリズムの潮流がかなり大きな支持基盤を持っていることにも、警戒が必要である。と同時に、イージス艦派遣やミサイル共同開発など、政府がアメリカと進めている政策が、中国やアジア諸国に対する影響という点では、中国、アジア諸国にナショナリズムを喚起する要素を持っているという点で重大問題をはらんでいることも忘れてはならないだろう。

 

また、現在の大学改革の動向を憂慮し、主体的に声を上げようとする学生諸君の行動と声も紹介されている。矢吹教授のHPから、以下にコピーしておこう。

NEW (1)「Invitation to the YCU FESTA, December 18」

NEW (2)「あり方懇委員の先生方への手紙(学生有志)」

NEW (3)「学生版・あり方懇で百家争鳴」