国際学術セミナー・プラス・総合演習
2003年5月15日 午後4時10分から―6時40分まで。
商文棟2階・大学院セミナー室B
傍聴自由。
講演:ハルトムート・ケルブレ教授(履歴・業績リスト)
-------
ハルトムート・ケルブレ教授の紹介(ベルリン大学のケルブレ教授・歴史研究所HP:20060510現在)
(詳細は、ケルブレ教授作成のオリジナルの上記「履歴・業績リスト」ファイルを参照されたい)
19世紀―20世紀の経済史、社会史研究をふまえ、ヨーロッパ統合を見る新しい視点として、「普通の人々」「市民レヴェルの生活様式」、「ヨーロッパ人のアイデンティティ形成」など、ヨーロッパ諸国民の相互接近・類似化・同質化の進展の重要性を指摘。
1. ベルリン大学(フンボルト大学)教授
哲学部史学科・社会史講座
2.主な学歴(大学以降)・学位・取得年
テュービンゲン大学とベルリン自由大学で歴史学、法学、社会学を学び、
1966年に、ベルリン自由大学で歴史学の博士号を取得。
博士論文のテーマは、「ドイツ工業家中央連盟 1896-1914」[2]。
1971年に同じベルリン自由大学で、教授資格Habilitationを獲得。
教授資格論文は、「初期工業化時代のベルリン企業家」。
3.主な職歴など
1971-1991年 ベルリン自由大学教授、
1991年から現在まで、フンボルト大学(ベルリン大学)社会史講座の教授。
この間、ハーバード大学、オックスフォード大学、ロッテルダム大学、パリ大学の人間科学研究所で客員研究。
1995年以降は、学際的研究集団「歴史的社会科学による社会比較」代表。
ヨーロッパ共同体歴史家会議の中心メンバー。
1996/97 ベルリン大学歴史学研究所長
1997年 ソルボンヌ(パリ第一大学)名誉教授
1998年 ヨーロッパ比較史センター(フォルクスワーゲン基金)共同所長(J.コッカなどとともに)
2001年 ソルボンヌ(パリ第1大学)客員教授
2002/03年 ヨーロッパ比較史センター代表
4.邦訳書
『ひとつのヨーロッパへの道』(雨宮・金子・永岑・古内訳廣田功解説)日本経済評論社、1997年
主要著作(その英訳・仏訳など多数)については、上記翻訳書の「あとがき」参照。
5.最近(4の邦訳で紹介されたあと)の学界活動・研究業績
1998 Zus.
m. L. Passerini, Workshop zum Thema “European Identity and Public Sphere“
an der Humboldt-Universität Berlin
1999
Zus
m. H. Münkler, R.Münz, J.Schriewer, Leitung der Tagung „Symbolstrukturen und
gesellschaftliche Prozesse“ (Januar), Forschergruppe
„Historisch-sozialwissenschaftlicher Gesellschaftsvergleich“, Humboldt-Universität Berlin
2000
chevalier im ordre des palmes académiques
Zus.m. J.Schriewer, Tagung
zum Thema der Vergleich in den Geistes- und Sozialwissenschaften (Mai),
Forschergruppe „Historisch-sozialwissenschaftlicher
Gesellschaftsvergleich“,
Humboldt-Universität Berlin (Mai)
Zus.mit H.Bruhns,
P.Fridenson, H.-G.Haupt, Y. Lequin, 7.französisch-deutsches
Sozialhistorikertreffen zur Geschichte des Konsums, MSH (September) Paris
Leitung der Sektion
„Außereuropäische Geschichtsschreibung seit 1945“ auf dem Historikertag in
Aachen (Sept)
Zus.m.M.Kirsch und
A.Schmidt-Gernig, Tagung zum Thema „Transnationale Identität und Öffentlichkeit
im 20.Jahrhundert,“ Forschergruppe „Historisch-sozialwissenschaftlicher
Gesellschaftsvergleich“,
Humboldt-Universität Berlin (Oktober)
2001
Professeur invité an der Sorbonne (Paris I) (März)
2002 Vorsitzender
des Komitees „Interkultureller Dialog“ der Europäischen Kommission, GD 7
2002
Professeur invité an der EHESS (März)
2002/03 Gastprofessor
am WZB Berlin
[1] ケルブレ業績リスト
\\EBA-FS\kogiseminagamine\public_html\20030518KaelbleLebenslauf.htm
のなかの最新論文No.142が報告原稿だった。Journal of social
history 掲載予定の原稿をもとに、国際学術セミナーで報告してくれたわけだ。
ヘーゲル『歴史哲学講義』上、岩波文庫、108―109ページ
・・・「ドイツ語で歴史(Geschichte)というと、そこには客観的な面と主観的な面が統一されていて、『歴史』は、『なされたこと』を意味するとともに、『なされたことの物語』をも意味します。
二つの意味が統一されていることは、たんに外面的な偶然の結びつきといってすますわけにはいかない。そこには、歴史物語が本来の歴史的な行為や事件と同時にあらわれることが示唆されていて、しかも、たしかに、歴史物語と歴史とをともども生みだす同一の内面的な基礎が存在するのです。
家族の回想や家父長制の伝承は、家族や部族の内部で興味をもたれるだけだし、日々の単調な経過は、記憶すべき対象とはならない。ただ、目にたつ行為や運命の転変だけはべつで、愛や宗教感情が、形のないままはじまる衝動に幻想的な形を求めるように、そうした異常事は、記憶の女神による形象化を求めはしますが。
ところが、国家の登場とともに、散文的な歴史記述にふさわしい内容がもたらされるだけでなく、散文的な歴史記述そのものももたらされる。国家をつくりあげるにいたった確固たる共同体は、その場の必要を満たす支配者の主観的な命令にかわって、万人にたいしてどんな場合にも適用できる規則や法律を必要とし、こうして、明確な内容をもち、結論が持続的な価値をもつような、行為や事件に関するわかりやすい報告が書かれ、それへの興味も書きたてられる。そして、そうした行為や事件の思い出に持続的な表現をあたえ、もって国家の形態と性質に確固たる基礎を与えることが、記憶の女神たる歴史家に要求されるのです。
愛の感情のごとき深い感情や宗教的直観やイメージなどは、現在ここにあるというだけで満足のいくものですが、理性的な法律や道徳という形で外面的にも存在する国家は、現在の内に完全に存在するとはいえず、それを総体として理解するには、過去をも意識する必要があるのです。」
[2] ケルブレ教授の位置づけによれば、政治史に属する仕事である。
5月15日のセミナーにおける説明では、「自分は政治史から社会史へと研究を展開していった」と。