「大学で学ぶこと」、「大学とは」
―歴史研究・歴史科学の立場から―
横浜市立大学・国際総合科学部・教授
永岑三千輝(Nagamine, Michiteru)
はじめに
1.大学・・・・社会に出ていく前の最後の学びの場
「社会に出ていく」・・・・現在の社会=市場社会・・・自立した人間として働き、そのしかるべき働きに応じて収入を得る。
市場で成り立つ社会において、自らの働く能力を売り、実際に働き、所得を得る。
現在の社会・・・・世界的社会・・・世界との結びつきが日々に緊密化していく社会。
2.自立する基本的な力=社会で働く能力を身につける場。
「いかなる場で、どのように働くか、どのような人生を築くか」・・・これを模索し、選択し、決断。
現代社会・現代世界の多様性・複雑さ・日々変化し新しくなっていく・・・・固定した安定した「場」、「進路」は、ない。
日々の変化が、世界規模(グローバルな)の変化と連動するのが現代。
市場と社会・世界・地球の変動に対応して、柔軟かつ強靭に進路を切り開く必要・・・・・その意味での、柔軟な能力の形成が必要。
3.大学選択、学部選択ですでに自立する一定の方向性を選び取る
横浜市大を例にとれば、
医学部医学科、医学部看護学科・・・将来の進路は明確。
専門学校を目指す人も、ある意味で、進路は明確。
しかし、高校2年段階で進路が明確な人は数少ない。
これに対して、国際総合科学部は?
文科系・理科系の総合学部・・・・・多様な進路の可能性
学べる学問分野の多様性
人間科学コース
国際文化創造コース
国際経営コース
ヨコハマ起業戦略コース
基盤科学コース
生命科学コース
それぞれの学問分野がさらにまた多様な学問領域に細分化。
したがって、自らが多様な学問分野・進路から、社会に出て何をなすか、
具体的な問題、専門的な問題を探究しながら、選びとっていく必要がある。
多様性・複雑さばかりか?
さまざまの専門や学問分野に、
科学としての共通の法則性、普遍性。
科学・・・真実・真理の探究・解明・発見、その発展的連鎖
われわれの行動と認識のすべての基礎=共通項は、自然、人間、社会、文化、政治、歴史などの真実とは何か、真理とは何かを探究し、手に入れた真実群・真理群→科学・技術・文化の達成群をもとに行動していくこと。
すでに明らかになっている真実群・真理群をもとにしながら、現実に発生してくるたくさんの問題と直面しつつ、それら問題を解決するために、今まで真実・真理とされたことを理解し、必要に応じて見直し、さらに必要な修正を加え、新しい真実・新しい真理を発見して行く
大学とは、その真実や真理の探求・発見の仕方、手順、方法を、それぞれの進路の発見と並行して、身に着けて行く場。
大学の教員が、まさに日々、そうしたことに従事している。
学生も日々、そうした真実・真理の新しい発見・認識の作業を行っている。
その過程で、柔軟で強靭な実力を身につけている。
たとえば、ゼミ(演習)では、
今年の卒論タイトルの紹介
本題:「大学で学ぶこと」の一例としての歴史
歴史の研究とは? 歴史科学とは?
われわれ人間と自然のすべての現象は、時間と空間の中にある。
現在のわれわれ、人間と社会を理解する、人間と社会の真実・真理を理解・発見するには、時間軸と空間軸を把握する必要がある。
事実としての歴史 と(から)
調査・探究・研究の結果としての、
書かれた歴史(へ)
人間諸個人の歴史認識、その発展・深化、
そして、行動→歴史(現代的文化)の創造
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具体的素材:最近のドイツ・文書館・出張記録