「ヴァンゼー会議」の感想・疑問など
多かった質問・・・@なぜ、あそこまで冷酷・過酷になれるのか、ユダヤ人を人間とみなさないのか、など。・・・対米宣戦布告の国会演説。対ソ戦の過酷な状況(前回配布資料、「占領指針」参照)。
Aヒトラーの命令は? ・・・口頭命令「ユダヤ人をパルチザンとして根絶」(ヒムラーとの会談)・国会演説「目には目を。アーリア民族の絶滅か、ユダヤ民族の絶滅か」(1939年1月30日演説、その想起)
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20100623ナショナリズム論配布資料
現在の世界・人類・・・人類史の中の現在
土地・資本の私的所有者群(個人・法人)・
土地(領域)を所有(領有)する私的国家群(現在では国連加盟国の192の国々)
「国民」・「民族」の所有としての領土?
その境界は、何によってきまったか? 歴史的にどのように変遷したか?
日本の現在の国境は?・・・第二次大戦の結果。サンフランシスコ講和条約。
(全面講和ではない・・・・日本が平和条約を結んでいない諸国があり、国境問題は未決着・・・たとえばソ連、ソ連崩壊後はロシアとの間)
ドイツの現在の国境は?・・・第二次世界大戦とその後の冷戦体制、その崩壊の結果。
ポーランドの国境は?・・・同上
ロシアの国境は?・・・同上
国家・その国家の所有(領有)する土地としての領土。国家・国民・国土とナショナリズム。
近代におけるヨーロッパ諸強国は、封建社会の分裂を克服し、国民国家を創出するなかで経済力を発展させ、軍事力を増強し、世界各地に進出した。
それと直面した世界各地で、対抗的な国民国家形成・ナショナリズム(運動・体制)が形成された。
イギリスに対抗するフランス・・・重商主義戦争・ナポレオン戦争
イギリスに対するアメリカ合衆国・・・独立戦争
イギリス・フランスに対抗するドイツ(小さな領邦・国家群)・・・ナポレオン戦争
フィヒテ「ドイツ国民に次ぐ」・・・国民として、ドイツ人としての統一を訴える・・・ドイツ・ナショナリズム・・・統一国家建設が、課題となる。
欧米に対抗する日本・・・天皇を中心とする国民国家建設・・・明治維新以降
天皇制の下での近代国家を建設した日本は、周辺諸国との間に国境・権益をめぐる争い・・・帝国主義国家・植民地主義国家への短期間での変化、国粋主義・ナショナリズムの小学校からの教育・・・「教育勅語」と殖産興業富国強兵、脱亜入欧
ナショナリズムは、幕末期の防衛的・自立独立達成のナショナリズムから、短期間に膨張的ナショナリズムへ。
日清戦争・・・朝鮮半島をめぐる争い、東アジア、あるいは19世紀までの大国・清帝国との戦争・・台湾の獲得・植民地化
日露戦争・・・シベリア・極東・中国東北部に進出してきたロシア帝国との戦争
「韓国併合」(1910年ちょうど100年前)・・・これに関する日韓両国の歴史学者などの共同声明(資料配布)
第一次大戦・・・アジアにおける植民地・勢力圏拡大のため、イギリスと同盟。
日本は、ドイツと戦う。ドイツ植民地を占領し、戦後のヴェルサイユ体制において、ドイツ植民地の一部(太平洋・赤道以北)を、「委任統治領」として、取得。
第一次大戦の結果としてのヴェルサイユ講和条約・ヴェルサイユ体制
多くの難問を抱えていた。
第二次大戦・・・日本は中国大陸に支配圏拡大(傀儡国家「満州国」建設)
日中戦争
仏領インドシナへの軍事進駐・占領
列強間の対立としての二つの世界大戦
19世紀末・20世紀前半における先進列強に対抗する植民地・従属国、独立・民族解放・国民国家建設
「国民」・「民族」の統合(他民族・多国家に対する対抗)の意識としてのナショナリズム
「国家」・「民族」の中の少数派・マイノリティのナショナリズム・・・エスノ・ナショナリズム・・・地球上の多くの地域では、民族と国境とが一致しない。
無数の研究書・研究論文・評論・・・・図書館等で情報検索・・(たとえば、講義:ナショナリズム論のHPの文献リスト)
若干の参考文献・コメント
@ 木村雅昭『帝国・国家・ナショナリズム−世界史を突き動かすもの』ミネルヴァ書房、2009年
・・・・しかし他方では、世界史を突き動かすのは、インターナショナリズム、国際主義、国際的機関の創造への運動などではないか?小野塚氏講義との関連
すくなくとも、第二次大戦後から1989-91年までは、二つの東西グループ、アメリカを中心とする自由主義・資本主義・市場主義のインターナショナリズムと、ソ連を中心とする「社会主義」、中央集権的計画経済のインターナショナリズムとの世界的対抗状態のなかで、東西それぞれの体制下におけるナショナリズム・民族主義は、抑制された。
この冷戦体制解体のあと、世界中で、とりわけ、それまで「社会主義」体制だった諸国・諸地域で、民族主義・ナショナリズムが先鋭化し、ユーゴスラヴィア、ロシア、最近の中国(チベット、新疆ウィグル)、中央アジア(キルギスタン、ウズベキスタン)で、民族意識が過激化した。経済的不満・文化的差別・格差への不満の蓄積。
ナショナリズムとインターナショナリズムのせめぎ合い・葛藤・調整・相互尊重の歴史と到達点。
かつては、帝国とその広大な支配下にある諸民族・諸国家との相互関係。
・ハプスブルク帝国のもとでの、ドイツ人、ハンガリー人、チェコ人、スロヴァキア人、その他バルカン諸民族。
・ロシア帝国の下での非常にたくさんの民族(ロシア人、白ロシア人、ウクライナ人、ポーランド人、ドイツ人、その他アジア系諸民族)
帝国支配下の諸民族は、二つの世界大戦と第二次大戦後の半世紀の間に、多くが独立国家を形成。それぞれの独立国家の領土内にマイノリティが存在。
・中国・中華帝国・・・漢・隋・唐・宋・元・明・清・現代中国も、その時々の支配民族が中心となりながら多数の民族を統合し、東アジアの国際システムを構築。
現在の世界では、原理・理想としては、民主主義が支配的ではないか?
人と人との共同性の原理としての民主主義=領域性を基盤とするものではなく、関係性に基盤を置く。
マジョリティの民族がマイノリティの民族を、支配し、抑圧し、差別することは、国際連合の理念からして(そこに地球上の192もの国家群が加盟している以上)、容認されない。
しかし、現実が提起する諸問題・・・そこで不利益・差別を感じている(その意識が累積し噴出した)民族グループの「独立」要求、「分離」要求
・ヨーロッパ統合の先進地ベルギーにおけるオランダ系とフランス系の対立
・オランダにおける最近の総選挙で示された右翼・極右政党の進出・・・移民(マイノリティ)排斥。
A 玄大松(ひょん・でそん)著『領土ナショナリズムの誕生』ミネルヴァ書房、2006年
B 小熊英二『<民主>と<愛国>−戦後日本のナショナリズムと公共性』新曜社、2002年
小熊英二・上野陽子『<癒しの>ナショナリズム』慶応大学出版会、2003年