2002年12月11日 市議会の議案をみた。大学等の授業料、入学金などの引き上げが議案となっていた。学費値上げに関しては、各教授会で要望などをまとめて提出するというのがこれまでの慣例だったが、今回は一切そのようなことはなかった。非常勤講師削減など、明確な教育条件の悪化の中での値上げなので、正面切って問題提起できなかったということか。ともあれ、ここでもまた、事務局責任者の独断専行的姿勢が証明されたように思われる(学費値上げ問題に関する慣例を無視し、そうした事務局の行動に追随する学長など教学責任者も問題だろうが)。
教員組合委員長倉持先生から、市大機構改革に関する本日の読売新聞記事(横浜版)が送られてきた。副学長制の導入、学部事務室の統合、入試課の新設、地域貢献課の新設などを紹介している。大学の研究教育条件が果たしてよくなるか、「改革」か改悪か、これが実際に問題となる。「一部教職員」の反対が、果たしてたんなる杞憂なのか、検証と結果責任問題は今後のこととなる。
注意しなければならないのは,「地域貢献課」である。きちんとした研究教育条件の改善を基本にすえていないと、「地域貢献」の美名のもとに、大学人(教員・学生・院生)の研究教育条件にしわ寄せがくることになる。すでにこの間の総務部長等の発言(平教授「第三回あり方懇談会傍聴記」参照)はそのことを示唆している。
教員は研究教育を本務とするのであり、その本務のための時間(研究時間・教育時間、教育準備時間、研究者としての学会等の対外的社会的活動時間)を犠牲にするようなやり方がとられることに警戒を怠ってはならないだろう。本務の時間を確保し、守るために大学人は注意しなければならない。うかうかしていると、研究時間・教育準備時間が押しつぶされてしまう。その結果、「研究も教育も満足にできない・しない教員」とレッテルを貼られ、「任期制」などで追放する絶好の口実をつくることになろう。大学の使命・目的をしっかり見据え、本務遂行の時間・精神的肉体的力をきちんと確保しなければならない。
軽薄・軽信的に、みずからの首を絞めることのないように、対応をじっくりと検討しなければならない。そもそも地域貢献とは何かを問い直し、地域貢献のあり方、前提条件(人的物的なそれ)の整備を練り上げる必要がある。「地域貢献」のプロジェクトを本格的にやる気ならそのための「ヒト・もの・かね」をまず準備させるべきである。教員の講義負担コマ数(学部と大学院)、各種委員負担のカウント、各種学術学会等の研究上のコミュニティへの貢献のカウントが入念になされなければならないだろう。(「コミュニティ」とは「横浜市」しかないと考えるような視野の狭い人々はきちんと批判しなければならない。)
現総務部長が就任した昨年4月以来の経験から、事務当局責任者にはそのような発想や配慮のないことを知っているがゆえに、すなわち負担増だけが押し付けられる危惧を感じるがゆえに、学生アンケートによる学生意見に共感しつつ、「地域貢献課」などというものを作るべきではないと主張したところである。学長、各学部長などは、新しい課の設置に賛同したのであろうが、自分たちは研究教育時間を犠牲に(?)してもいいのかもしれないが、「わが亡き後に洪水は来たれ」では困るのである。