20060428ヨーロッパ社会演習T
報告リスト
チェルノブイリ原子力発電所大事故から20年ということで、今回の報告にもそれに関するドイツなどの報道を取り上げた報告が2本あった。大事故発生を報じる西ドイツと東ドイツの報道姿勢の根本的違いの問題が指摘されており、ソ連東欧が崩壊せざるを得なかった秘密主義・民主主義欠如の実態があらためて想起されている。
ソ連の秘密主義・中央集権主義・一党独裁体制は、歴史的産物であり、それが国民大衆の基盤をまったく失ったことがいかなる諸要因によるのか、ソ連崩壊後16年たった今、考えてみるべきことは多い。そのソ連崩壊を出発点としながら旧ユーゴスラビアで民族主義的紛争が悲惨を極めた。その「戦犯」に関するニュース(ハーグ国際刑事裁判所)の紹介も、その意味では、ソ連崩壊の意味を考え、さらにソ連東欧の成立と膨張、そして崩壊の全過程を考えるきっかけともなるものである。
新雇用法撤回騒ぎで失墜したフランスの名誉挽回の計画は、IT関連の新しいプロジェクトであり、エアバス社がボーイング社を抜いて世界民間航空機市場のトップに躍り出たことからすれば、かならずしも奇想天外という構想でもない。EU諸国が力を合わせて、新しい産業と技術を開発し、新しい企業を創造していく戦略は、注目に値する。
そうしたフランス企業の世界戦略という点では、ロレアルの新社長人事に関する記事の紹介も興味深いものであった。
さらに、フランスの大学がその後どうなったのか、平静に戻った大学の現状も、おもしろい。大学生の心配は試験など、次ぎの問題に移っているようである。しかし、新雇用法制定の背後にあった若者の大量失業はどのようにすれば解決できるのか、先進資本主義国の過大な生産力=過剰労働力問題の解決の課題は、まさに新たに提起されているということであろう。そうしたフランス、EUの経済問題のひとつが、農業政策、農産物関税問題である。この点に関する記事の紹介と他の資料を踏まえての解説も印象的であった。
イギリスに関する二つのニュースも、えっと驚くようなものである。本来国外追放するはずの刑法犯がイギリス国内で釈放されていたこと。そして、この10年間に病的肥満が青少年の間で倍増したという話、これもイギリスの現状(健康・食文化状況)を教えるものとして、興味深かった。
ゼミ生諸君の関心の多様性が刺激となって、ヨーロッパ認識が多彩になる。
身近な日韓関係の問題も、日韓の歴史的な主張などの解説(倭寇の時代の話、日清戦争とその後の領有権問題など)を含めた報告で、認識が豊かになった。
「グーグル・アース」(フリー・ダウンロード)で、チェルノブイリの位置、竹島(独島)、パリ・ソルボンヌ大学などの位置を示すことができたが、実際の建物とその場の雰囲気を確かめることができるこのソフトは素晴らしい。