-------------2010428日講義(ここまで進めなかったので、512日講義のレジュメとする)-------------------

さまざまのナショナリズム…さまざまの立場・理由からのナショナリズム

 

「泥棒にも三分の理」 Even an evil-doer has his reasons

「盗人たけだけしい.the audacity of the thief.

「泥棒」、「盗人」とは?

 

いつのどのような状況でも、この定義・その内容は、明確か?

 

「盗人たけだけしい」という場合、その人物・国家・国民・民族が「盗人」なのに、被害者のような態度をしていることはないか?

 

強大な国・国民・民族Nationが、自らのためにnationalism、弱小な国家・国民・民族を従属させ、支配し、さまざまの利益を手に入れること、すなわち列強の帝国主義・植民地主義は?

 

第一次大戦の結果、ドイツというヨーロッパの中でも大きな国家・国民・民族が、敗戦国という地位・状態において、ヴェルサイユ体制のもと、戦勝国によって、どのような扱いを受けたか?

 

ヒトラー・ナチズムの論理とは? 人種主義的帝国主義・人種民族の階層性を肯定し、打ち固める思想体系

 

ヒトラーの思想構造?・・・・ヒトラーの『わが闘争』(「毒ガスGiftgas」の言葉が出てくる箇所)、第二の書』

 

 

幹部(ヒムラー、ハイドリヒ)の思想構造

 

中間管理職(「運び屋」アイヒマン、アウシュヴィッツ収容所長ヘス)の思想構造?・・・アイヒマン裁判…「悪の陳腐さ」(ハンナ・アーレント)

 

  ヘスの「弁明」・・・「礼儀正しさ」(民族主義的信念、「ドイツ人として」、「ドイツ国民として」)

 

ドイツのそのほかの諸政党・諸潮流・普通の人々の思想構造は?

 

ヒトラー・ナチ党支配下で、どのような政治的自由・意思表明の自由がありえたのか?

 

---------------------------------------------------

ナショナリズムのほかの形態は?

インターナショナリズムは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------------------- 

20100428ナショナリズム論  資料

 

前回講義の感想、それに関するコメント・応答

@  「ユダヤ人は常にお金にかかわる仕事ばかりしていた」・・・?

キリスト教とユダヤ教、2000年にわたる宗教対立

中世―近世・・・キリスト教が政治・国家において支配的な社会・・・農業社会・・・商業・金融は安定した社会への「脅威」・・・高利貸し=「賎民(パーリア)」の職業

宗教改革者ルターの言説

A  「原子を使った兵器はなぜつくられたのだろうか」・・・・講義では、これを説明したのだが、わかりにくかったかな?

B  ハーバード白熱講義の「正義」に関する問題設定・・・「抽象的設問」・・・「100%の正解など無い」・・・「事故の例」など、具体的に考えていく必要・・・・OK

C  「自分なりに正しい思考」・・・「自己中心的なナショナリズム」…戦争の原因を具体的に解明していく必要あり。

D  「ナショナリズムとは何なのかまだよくわかりません」・・・だからこそ、さまざまの具体例・歴史的経験を検討しながら、正確な認識を作り出す・・・・この講義はその一つの手段。

E  原爆開発・・・・「アメリカとドイツがそれを行うまでにどんな経緯があったのか、また何を目指していたのか調べれば分かると思います」・・・・まさにその重要ポイントを説明

F  「殺人に正義はあるのか?」・・・・「ナショナリズムを考える上では、その指導者の心理等を研究する必要があるのではないか」と考えてきたが、「倫理的観点からもアプローチしていってもよいと思った」。「いま興味を持っているナショナリズムの問題はホロコーストの問題とも近いこと」という気がする・・・・・そのとおり。

G  「この講義におけるナショナリズム論は、戦争と正義の関係から考えていくという視点か?」・・・・それだけではないが、まさにそれも重要なポイント。

H  原爆開発とナショナリズムの関係は?・・・・・両者の関係に関しては、いくつもの中間項が必要。アメリカの原爆開発を決定的に促進したのは、日本の真珠湾攻撃、それに続くドイツの対米宣戦布告・・・・ヨーロッパ全域を支配下に置くドイツ(日本・イタリアと組んで世界に覇権を確立しようとするナチス・ドイツ)の攻撃に対してアメリカ国民の生命財産の防衛(自己防衛)・・・それまでは「海の向こうのよその戦争」・・・・・ひとつの強烈なナショナリズム。「911」の最初のスローガン・・・「リメンバー・パールハーバー」、アメリカ・ナショナリズムの猛烈な盛り上がり。武器開発・軍事力増強とナショナリズムの相互関係。

I  「ナショナリズムというのは良い方向にも悪い方向にも作用すると思っている」・・・ナショナリズムにもさまざまの形態・タイプがある・・・・EU統合型のナショナリズムと戦前のナチス・ドイツの人種主義的ナショナリズムや日本の軍国主義ナショナリズムとの違い。その歴史的背景を考える・・・・この講義の目的・課題。みんなで調べて発表してほしい論点。

J  WWII、冷戦時代は、軍拡で、自分たちが止めれば相手が優位に立ってしまうという恐れ」・・・・そのとおり。・・・・現在の世界「グローバル化し、大国間における戦争が想像できない」・・・「原爆は増やすものではなく計画的に減らすものとなっている」・・・・現代世界の到達点。しかし、現代世界の危機要因は?イラン・北朝鮮の問題は?それとの関連で、イスラエルの原爆所有は?イスラエルのパレスチナ支配・パレスチナ難民の問題は?

第二次大戦後、イスラエル国家が建設された。シオニズムというナショナリズム(世界のユダヤ人・ユダヤ教徒の中の特別の政治潮流、19世紀末に諸国でナショナリズムが激しくぶつかるようになって、ユダヤ人の中でも形成された。)。その結果として発生したのがパレスチナ難民。イスラエル国家の自己保存政策・軍拡政策、その一つの帰結が原爆所有。

 イスラエル国家とパレスチナ国家の平和的共存の可能性は?・・・現代世界の重大問題・難問の一つ。

K  「原爆をホロコーストという観点から見たときに問題となってくるのは、アメリカはあれほどの威力があると知っていて実行したということである。そのように一度に大量の被害者を出した原爆(投下)のような事件は、ほかにもあったのであろうか?・・・・歴史を検討してみる必要あり。とくに第一次世界大戦から、非常な工業力で戦争が行われるようになる。

   飛行機・飛行船、戦車、毒ガス、巨艦・巨砲・・・・それぞれにたくさんの人間を殺害する。

   ベトナム戦争における化学兵器・・・自然と人体への大量的永続的破壊。奇計児

L   ナショナリズムをめぐる議論・対立で「まず思い浮かんだのは、スペインについて。多くの民族からなるスペインは今なおバスク問題、カタロニア州の問題を抱えている」・・・そのとおり・・・・「ひとつの国家としてまとまるには、何が必要で何がいらないか」・・・・まさに、ナショナリズムの問題。個別研究に適した問題・地域。

M   「何をするにも大義名分はつきまとっていて、人を殺す行為でさえ美しい言葉を並べたてて正当化して、自分のエゴを押し付けて人間は生きている」・・・・「人間」一般か?特定の人間、特定の時代、特定の潮流ではないか?

N  「最近、ヒロシマの原爆被害に興味を持っている」。「先生の研究が原爆開発とおっしゃっていたが・・・」・・・・・私は、「原爆がアメリカによって開発され、甚大な被害が出るとわかっていて、広島長崎に投下された」という歴史の厳然たる事実が、どうしてどのような諸要因によって起きたことなのかを解明することが、原爆廃絶への道を推し進めるために必要という見地で、研究している。

O  「アインシュタインの逸話の中に、『私の人生の一番の失敗は原理爆弾を作るべきだという大統領への文章に署名したことである』と彼自身が語っていたということを聞いたことがある」 ・・・・しかし、それだけで原爆開発が進んだわけでない、ということを講義で説明。ナチス・ドイツの戦争政策、占領支配のヨーロッパ全域への拡大、アメリカへの宣戦布告といったヒトラー政府の行為が、アメリカの原爆開発を決定的に促進した、ということ。

むしろ、問題は、その当初のナチス・ドイツに対しては原爆を投下せず、ナチス・ドイツが降伏した後、日本に対してであったということ。しかも、その日本への投下に対しては多くの科学者が反対したということ、にも変わらず、なぜ投下したのか、ということ。このあたりを考え、研究してみる必要がある。

P  「戦争のもとには、どんな正義もありはしないのではないかと考えさせられた」・・・そうか?ナチス・ドイツを軍事力で屈服させることができなかったら、今の世界はあっただろうか?ナチス・ドイツと組んでアジア全域を支配しようとした大日本帝国の敗北がなく、大日本帝国がアジア諸国を占領し支配していたら、現在の平和はあっただろうか? アジア諸国の人は日本の軍事支配を柔軟に受け入れていただろうか?諸国民の平和共存、諸国民の自由と民主主義という原理(大義)は、必要不可欠であり、その大義こそが、多かれ少なかれ(たくさんのそれに反する事件や問題があったとしても、大局的に)実現されていること(第二次大戦後半世紀をかけて実現されていったこと)が、冷戦体制解体の意味であり、その後の世界平和の意味であり、守るべき原則=大義ではないか?しかし、その現在の世界平和の中にも、中東問題など、危機要因がはっきり存在している、という現実。これを平和的に解決していくという課題が、現代人の直面していることではないか。

Q   「正義とは何なのか。正義は必ずしも『善』ではなく、『多数派』であるという場合がほとんどなのか」。「社会を維持するためには少数派の意見を切り捨てなければなりません。しかしながら、それは『正義』なのでしょうか。正義とは絶対的なものではないようです。こういった多数派・少数派、公益・私益といった観点からナショナリズムを考えるのは面白いのではないか」。・・・・その通り。こうした問題意識を持って、講義に主体的にかかわってほしいです。自ら具体的な問題を発掘し、調査し、考えてみる、それを報告してみる。最終報告(単位取得を望む場合、A4で8枚から10枚の研究報告書を提出)でまとめてみる。 

R  「世界は関わり合っていて、科学者一人ひとりの研究レベルではどうということもなさそうなのに、ドイツとアメリカという敵対勢力の構図が加わると、意味合いがガラッと変わってしまう。それから戦争用の核、いまでは核の傘・抑止力、核軍縮とつながるあまりにも大きな武力になってしまった。当時からすればたとえ将来(=現在)大変なことになるとはっきり分かっていたとしても、核開発をやめるわけにはいかなかっただろう。どうしようもなく、生き残るためにも開発を続けて、今の核で世界を何べんも滅ぼせるな状態になってしまった。悪いことなのか、やめなければならないことだったのか、当時を考えるとよくわからなくなってしまう。」・・・・・・現在の世界の人々、われわれの課題は、原子爆弾の廃絶でしょうね。原爆を持たなければならないような敵対関係をなくす、敵対関係を発生させないことでしょうね。

S  「ナショナリズムを発展させてゆく中で、多様性を尊重し、統一できる部分を探すのはすごく難しいことだろうと感じ、改めて今のEUはすごいと思いました。」・・・・非常に難しいこと、をなぜ実現できたのか、それを考えること、それを可能にした条件・理由などを探求すること、これが我々の一つの課題ですね。

「また、殺人に正義はあるのか、米軍の原爆投下とそれまでの開発の経緯を聞いて、いったい誰のどの行動がこんな結果を生み出してしまったのだろうと考えさせられました。今日講義を受けて、ヒトラー時代のナチスドイツから、現在のドイツになるまで、どのように体制を変えていったのか、関心がわきました。」