拙著『アウシュヴィッツへの道――ホロコーストはなぜ、いつから、どこで、どのように』の概要
――ロシアのウクライナ侵攻・侵略戦争の共通性と異質性を考える――
2022年6月18日 進交会・横浜市立大学同窓会 総会にて。
横浜市立大学名誉教授
永岑三千輝
プーチンが掲げる「特別軍事作戦」正当化の「大義」
ネオ・ナチ政権(ゼレンスキー政権)が、ウクライナ東部ロシア系住民地域のルガンスク・ドネツクの二つの「人民共和国」(力による現状変更)に対して、ジェノサイド(皆殺し)をおこなっているので、二つのロシア系武装勢力が「建国」した「人民共和国」、そのロシア人を守るため。
これに先立って、
2014年にクリミア半島を併合(力による現状変更)。ウクライナから「ロシア人地域」のクリミアを武力を背景にして分離独立させる、クリミアのロシア人の「民族自決」、と。
「民族自決」の大義を掲げながら、その実現のために武力を行使。
ヒトラー第三帝国による
ズデーテン併合の「大義」
ズデーテン危機の利用:
ヒトラーは、チェコスロバキア共和国がドイツ人・マイノリティ・ズデーテンドイツ地域のドイツ系住民(350万人ほど)を迫害し、ドイツ系住民の「民族自決」を抑圧し、ドイツ民族を弾圧しているので、そのドイツ人地域をチェコスロヴァキアから分離独立させろ、と要求。
・・・チェコスロバキア共和国国境に1938年5月ドイツ軍を配置・・・武力を背景にした脅迫・恫喝。
イギリス、フランス、イタリアの調停(ヨーロッパの戦争回避のためヒトラーをなだめすかす政策=宥和政策)で、チェコスロバキアに煮え湯を飲ませて、チェコスロバキア領土を削減し、ズデーテン地域の分離・ドイツ併合を認めさせる。
しかし、その次には、西スラヴ系住民がマジョリティのチェコに進駐し、「保護領」として、支配下に置く。(侵略)・・・他民族領土への侵攻・侵略。
ヒトラー第三帝国による
ポーランド侵攻・侵略戦争の「大義」
ポーランド回廊における民族対立・衝突を利用:
ポーランド共和国がポーランド回廊にいるドイツ人マイノリティを抑圧・殺害(「6万人も」と)している、このドイツ人マイノリティを救わなければならない、と。
1939年9月1日、ポーランドへの奇襲攻撃・ポーランド侵略開始。
その侵略を速やかに行うため、ソ連・スターリンと「独ソ不可侵条約」締結。
9月17日、ソ連はポーランドの東部(独ソの秘密協定でソ連勢力圏とした地域・・・ソ連もポーランドを侵略) に進駐・軍事占領。(力による現状変更)
拙著『アウシュヴィッツへの道』表紙Pdf表紙Pdf、表紙説明、表紙説明表紙説明
ヒトラー・ナチズムの根本思想(思想構造)・・・・民族帝国主義
「力が正義」、「敗北の克服」=ヴェルサイユ体制打破 、「東方大帝国の建設」、
民族・人種の上下階層性と上が下を支配し隷属化することの正当化(社会ダーウィニズム)、
民族・人種の頂点にアーリア人種・ドイツ民族、最底辺にユダヤ人・ユダヤ民族を置く思想。
ヒトラー・ナチ党による民族主義・帝国主義の実現過程・・・
それに対抗する諸政党・諸思想の弾圧・一党体制確立、
ナチ党の権力膨張・ドイツ帝国の膨張
その過程でのユダヤ人差別・迫害
拙著『アウシュヴィッツへの道』 目次:
序章、第1章〜第3章 Pdf
第4章〜第6章 Pdf
結び――ポストコロニアルの忘却の大河に抗して
ヒトラー・ナチズム・・・
人種主義的なドイツ民族帝国主義の論理と力学
そのなかでのユダヤ人・ユダヤ民族の位置
最終段階としてのアウシュヴィッツ
拙著執筆の問題意識・課題意識
アウシュヴィッツだけが有名でいいのか?
ホロコースト(ユダヤ人大量殺害)の全体像を把握するには、
「アウシュヴィッツへの道」、すなわち、
アウシュヴィッツに至る悲劇の基本的諸過程、基本的諸要因を、
「なぜ、いつから、どこで、どのように」を、
追跡していく必要がある(表紙Pdf)。
まさに、2022年2月24日開戦のロシアによるウクライナ侵攻、
ロシアのウクライナ侵略戦争とウクライナの防衛戦争についても、
なぜ、いつから、どこで、どのように諸要因が形成されたのか、という基本的諸問題を見る必要がある。
ロシア・プーチン政権の戦争への道には、ナチスドイツ・ヒトラー政権の戦争への道と共通する諸要因がある。
その共通性を直視しながら、何が違うのか、これを冷静に見つめていく必要がある。
プーチンの大国主義とヒトラーの大国主義
プーチンの被害者意識とヒトラーの被害者意識
プーチンの防衛意識とヒトラーの防衛意識
プーチンの攻撃意識とヒトラーの攻撃意識
プーチンを取り巻く世界とヒトラーを取り巻く世界
拙著「アウシュヴィッツへの道」:ホロコーストの論理と力学(大きな柱)