2004年3月後半の日誌

 

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2004年3月31日（2）　総合理学研究科・佐藤真彦教授が、貴重な資料集：『コース・カリキュラム案等報告書』の記者発表にいたる関連文書の一覧04-3-29　をまとめられた。すでに26日の本日誌でも、全学部的見地（国際総合科学）国際教養と総合経営）にたって、また総合経営学府という新しい構想のカリキュラム体系からして、いくつか重要な基幹的な科目（気付いたのは歴史系科目、すなわち経済史[1]・経営史[2]・社会史[3]、および経済理論の歴史[4]という４つの基本的な科目についてだが）が欠如していることを指摘した。その欠如の原因としては、作業が行政当局の編成した委員会（市当局によって選別された個々の委員がそれぞれの個別分野の科目を考慮することが先行し、全体としてのカリキュラム体系、そこでの基幹的科目の編成をどのように行うべきか、どこに配置すべきかという点で視野とスタンスの欠落がある、委員会の検討が個別分断化されている）での検討であって、大学の学長の下での検討体制でなく、一般教員の意見を自由に申し立て、自由な討論のなかで作成されたものでないことにあることを指摘した。さらにその背後には、「大学像」で提示してあったコース案が大幅に削減されたこと、したがって商学部・国際文化学部・理学部の関係委員が、そうした数少ないコース・科目数制約の中で自分たちの（主として主流派の）科目を優先して配置した（押し込んだ）ことがあったであろう。したがって、行政当局が課した大々的な削減が、単なる数の上での削減にとどまらず、主流派（コース等委員会に委員を送っている人々の集団）に有利な形で、再編されたということがあろう。ここでは、まさにマイノリティの排除といった力学（わたしのホロコースト研究でまさにポイントとなる力学）が、貫徹しているのではないか？　マジョリティが苦しい状況に追い込まれると、その圧力をマイノリティに転嫁していく力学である。今後、今回のコース・カリキュラム編成の限定された枠組みのなかであるとはいえポジティヴな面は何か、またネガティブな面は何か、ネガティブな面を現在の力関係のなかで改善してよりよいものにしていくにはどうしたらいいのか、その点を精密に検証していく上でも、上記の「関連文書一覧」は貴重である。「コース・カリキュラム案」作成における問題性を検証していく資料として、貴重な労作である。

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2004年3月31日（1）　入試センター試験の作成者の氏名の公表が問題となっている。「強制連行」があった事実を正解にするような出題（者）を排除しよう、入試センター問題に出させないようにしようと言う圧力がかけられたためである。教科書への政治的権力的介入と同じように、入試問題への政治的権力的介入･干渉として、出題者の自由を抑圧する深刻な問題がある。問題の適否については、まさに全国の高校･予備校･大学関係者が適宜意見を公開し批判することが可能であって、そうしたやり方で問題の質をよくすることが大切ではないか。出題者の氏名が後で公表されること、そこで個人にたいするさまざまな不愉快な行動がとられることを恐れて、出題者が｢無難な｣(今回のばあいで言えば、強制連行と言う概念を使わないことなど)問題しか出さないことになれば、そうした精神的抑圧状況･萎縮状況は、入試問題の質を向上させることにはならないだろう。

 

------『沖縄タイムズ』------　

  ＜２００４年３月２６日　朝刊　３１面＞
琉大教授ら撤回求める／文科省、センター試験作成者公表へ

　文部科学省は、大学入試センター試験の問題作成者名を任期終了後に公表する方針をこのほど決めた。これに対し、琉大教育学部（新里里春学部長）教授会は二十五日、「作成に関する情報は秘密にしておくことが公共的利益。情報公開法の公開対象外だ」として公表方針の撤回を求める意見書を発表した。大学の学部単位で反対の意見書を出すのは全国初という。

  　センター試験は原則として各教科ごとに、大学教員で構成する問題作成委員会を設置する。委員の任期は二年で、毎年約半数ずつ交代する。

　今年の大学入試センター試験の世界史問題で、日本統治下の朝鮮における「強制連行」が歴史的事実として扱われたことに、自民党議員グループなどが文科省などに抗議、作成者の氏名公表を求めた経緯がある。

　文科省は情報漏えいの恐れなどを理由に非公表としてきたが、透明性を高めることを理由に、委員任期が切れ、作成に関与した試験終了後であれば公表する方針にした。

　新里学部長は「氏名が公表されると、作成者は自由な立場で問題を作ることが困難になる」と説明。同学部の高嶋伸欣教授は「各大学の二次試験や公立高校入試にまで悪影響が出る恐れがある。沖縄戦という問題を抱える地元の教育者として、意見の表明が求められていた。他大学も琉大に続いてほしい」と話した。

 

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2004年3月30日（2）　都立大学問題では、まさに大変な「大学の自治」・「学問の自由」の破壊、大学教員の奴隷化の強行的手段がとらえているようである。私の得た情報が正確であれば、「教学準備委員会」「経営準備室運営委員会」が行われ、相変わらず都は「意思確認書」の不提出を理由に経済学部のＣＯＥグループを切り捨てる（コースの閉鎖）をちらつかせて教員の屈服を要求しています。また、中期目標、中期計画も管理本部が一方的に準備する姿勢を見せています、と。研究の最先端を行くとの誇り高い人々、COEをとって研究に専念しようとする人々を研究に専念させないようなやり方、強引にねじ伏せようとする行政当局の恐るべきやり方！　行政的な強引な方法に恐れをなすような軟弱な人々では、日本と世界の最先端を行く研究、誇り高く自主的で創造的な研究はできないのだ、ということが行政の役人にはわからないのだ。上意下達の精神でなめされてしまい、「精神なき専門人」となった役人には、新しい大学、自由で創造的な大学など作り出せない。「正直に思ったことを言うために異端視される」民間コンサルタントのある人の意見では、「企業だと極端な人事をやると、モチベーションが下がって売上が下がったりしますが、大学ではそんな現象が見えにくいです」と。だが、「大学」ではなくて、上意下達の役人の目に、大学人の心が見えないのである。とりわけ、誇り高く先進的な仕事をしている人々の気持ち=モチベーション（自由で創造的批判的な精神であるだけに、抑圧や干渉に傷つき反発し屈辱感を持つ）が見えない。上意下達の役人根性にとっては、自分のタイプ=上意下達の精神構造がいいのであり、従順な服従心をもつ人々だけが、自分たちに都合がいいのである。以下に新聞記事に関する意味に関する都立大学の内部からの詳しい情報（L14）によれば、意思確認書→就任承諾書→法人就任承諾書の何段階かにわけて、まだまだ相当な混乱が起きそうである。仮にこれらを乗りきっても、来年度移行、脱出先が見つかれば、縛りが切れると同時に、任期制などの不安定要因･不利な要因が目の前にぶら下がっていれば、脱出能力のあるものが脱出の可能性を探り、つぎつぎと脱出が起きることになろう。

 

-----関連新聞記事--------　

　　　　　　　　　　共同通信配信記事  2004年3月29日21時44分
　教員の９６％新大学へ移行　  都立大めぐる混乱収拾へ

　東京都が都立の４大学を統合して２００５年４月に開設予定の「首都大学東京」に４
大学の教員の約９６％が移行する見通しになったことが２９日、分かった。
　一時は新大学構想に対する反発から都立大教員の６割近くが新大学への就任意思確認
書を提出せず混乱が広がっていたが、事実上収拾へ向かうとみられる。
都は教員配置を固めた上で４月下旬、文部科学省に設置認可を申請する。
　都によると、意思確認書をまとまって提出していなかった都立大理学部や人文学部の
教員らの大半を含めて、４大学の対象者５１３人のうち、４９１人が２４日までに提出
した。経済学部の一部教員がなお就任意思を明確にしていないが、説得を続けるという。

 

 

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2004年3月30日（1）　文春販売禁止問題、「言論･出版の自由」問題で、重要な記事を書いた東京新聞の記者は、大学の独法化に関わる記事でも興味深いものを書いた人物であることを知った。以下に、コピーして、自分のものとしておこう。大学内部から出てきた独法化の要望と、それが行政改革･国家公務員削減目的で、すりかえられていくプロセスが興味深い。公立大学法人も、本来、大学の自律化･自立化を目指すものとされたが、本学の定款のように、制度設計の実態はむしろ行政主導･行政による大学支配の全面化を可能にしている。「下からの改革」と「上からの改革」のせめぎあいの実態がよく分かる。だが、上からの統制が貫徹すれば、結局は、科学研究の自由で創造的な発展は画餅に帰す。大学が内容的に死んでしまえば、日本の科学技術は死滅する。

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==> 国立大学独立行政法人化の諸問題

[he-forum]より転載：『東京新聞』2000年2月11日～17日

「国立大学」が消える日 迫る独立行政法人化

1.  東大病院 官僚支配に「反乱」

2.  「公務員型なら」文相も転向」

3.  流れ読めなかった国大協

4.  「知の巨星」集め既定事実化

5.  資金格差 地方の不安大きく

6.  分裂の危機 国大協"沈黙"

7.  見えない高等教育の未来 

『東京新聞』2000年2月11日付
 
「国立大学」が消える日 迫る独立行政法人化 (1)
 

東大病院 官僚支配に「反乱」

 
 
  「私たちが文部省に行ったら、徹底的に国立大病院を改革してみせませす」
「事務は全部外注にしてしまえばいい」―。国立大学付属病院の検査部長たち
から、肥大化した事務部門や技師不足に、次々と不満の声が上がった。一九九
八(平成十)年六月、北海道旭川市で開かれた全国国立大学中央検査部会議。検
査部の医師、技師らの批判の矛先は、文部官僚が大学病院を事実上支配し、効
率的な運営を阻んでいることに向けられていた。
  「事務機構がでたらめ。官僚の弊害が、もろに出てきてる」。九州地方の検
査部長は、かつて在籍した私立大学と比較しながら、専門性に欠ける事務官の
実態を批判した。「事務部長は明らかに大学病院を見ていない」「病院の本質
がまったく分かっていない」。多くの幹部事務官は二、三年のローテーション
で大学病院に配属されては去っていく。顔は病院長より虎ノ門(文部省)に向い
ている。そんな人事異動への強烈な不快感も示された。
  出席した検査部長の一人(当時)は、文部省に改善を申し入れたがかなわなかっ
たという。「全然通用しなかった。大学の改革の前に文部省の改革をやれと言
いたい」と、今も憤まんやる方ない様子だ。
 
    ◇
 
  九七年三月、東京大学医学部付属病院の医師が、同病院の改革案を手に東京・
平河町の行政改革会議事務局長(当時)・水野清(七五)の事務所を訪れた。
  『経理は厳密に単年度会計であるが故にさまざまなひずみを生じている』
『形式的には病院長が責任者で、実務は事務部(文部省)という二重構造になら
ざるを得ない』―。改革案ではこうした問題点を指摘して、(1)単年度会計の
廃止(2)国家公務員からの離脱(3)病院の自己責任の確立(4)事務組織への専門
性導入―の四点の実現を求めていた。
  病院に所属する三十人の教授のうち、賛同者は十三人。半数以下ではあるが、
次期医学部長と次期病院長を含む"主流派"による「独立宣言」は、文部省や他
大学はもちろん、東大内部にも驚きの波紋を広げた。
  「付属病院は予算を通じて行政に支配され、官僚に迎合する体質が染みつい
ている。実態は文部省病院ですよ」。医師の一人は指摘する。「がんじがらめ
の規制を何とかしようと、まず数人が話し合った。教授会にかけてもまとまる
とは思えないので、その中の有志でやったんです」
  文部省の反応は素早かった。翌日には医学教育課長(当時)の寺脇研(四七)が、
間もなく任期の終わる医学部長と病院長を同省に呼んだ。「個人で発言するの
は自由だが、次期学部長と次期病院長が名を連ねているのはいかがなものか。
公的な立場だと誤解を招くのではないか」。寺脇はこう、説明を求めたという。
  寺脇はその直前、全国国立大学病院長会議で「財政面から国立大学の民営化
の動きがある。対抗するため理論、現実面の検討をしてください」と話したば
かりだった。その方針と真っ向から対立する改革案は、同省としてとうてい承
服できるものではなかった。
  翌々日の医学部教授会では、早くも「遺憾の意」が表明され、同年四月初め
には、新医学部長と新病院長が同省高等教育局長あてに「てん末書」を出した。
「無知や誤解に基づく記述がいくつも認められる」「民営化を求めたものと解
釈された意味において表現が不適切」と、自己批判のオンパレードだった。
  「必ず続く人が出ると思い、病院を追われる覚悟で訴えたがダメだった。大
変な挫折を味わった」と、有志の一人は残念がる。
  現在の独立行政法人(日本版エージェンシー)化に通じる東大医学部有志の"
反乱"はこうして、あっけなくつぶれた。だが、行革の課程で、国立大の独立
行政法人化が取り上げられる一つの火種にはなった。
  水野はこう証言する。「東大病院の話が、国立大の独立行政法人化を考える
きっかけだった。それまで大学のことはよく分からなかったんだよ」
 
    ◇
 
  明治期に大学ができて以来、最大の変革ともいわれる国立大の独立行政法人
化決定が秒読み段階に入った。企画立案部門と現業部門を分け、現業部門を行
政機構から分離する英国型エージェンシーでは、国立大はとうてい対象にはな
り得ない。日本の国立大を独立法人化する話はなぜ持ち上がったのか。国立大
はどう変わるのか。流れを振り返り、疑問の糸を少しでもほぐしてみたい。
 
(文中敬称略)
  ＝この連載は社会部・加古陽治が担当します。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 






 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『東京新聞』2000年2月12日付
 
「国立大学」が消える日 迫る独立行政法人化 (2)
 
「公務員型なら」文相も転向
 
  『文部省からの独立』を求めた東大病院有志による"直訴"事件は、文部省や
学内の反対でつぶれた。しかし同大医学部は一九九七(平成九)年八月、正式に
改革案を出し、事実上、独立行政法人化支持に踏み切った。直訴を受けていた
行革会議事務局長(当時)の水野清(七五)も同年十月、東大と京大を先行して独
法化する案を打ち出した。
  東大病院の火種は、再び燃えかけたが、行革会議では結局合意に至らず、同
年十二月の最終報告では「大学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上
を図るという長期的視野に立った検討を行うべき」だとして、国立大学を独法
化の検討対象から外した。
  「"長期的視野"というのは、やらないのと同じ。事実上消えたと思った」。
会議の中心メンバーで、現在も中央省庁等改革推進本部顧問会議に残る、東北
大教授の藤田宙靖(六四)は振り返る。水野も「(含みを持たせた表現は)私の顔
を立てて入れてくれたようなものだ」といったんあきらめたことを認める。
  しかし「消えた話」は突然、復活する。「政治の動きとして、定員削減の話
が出たことが大きい」と、藤田は指摘する。行革会議の最終報告では、国家公
務員を十年間で一割、削減することになっていた。それが小渕政権の方針で二
割に増え、自民、自由両党の合意で昨年一月には二五％にかさ上げされた。
  そんなに多くの官僚を減らすのは、事実上不可能で、当初の一〇％以外は独
法化による削減分とされた。その削減の対象として政府が目を付けたのが、十
二万五千人もの定員を抱える国立大学だった。
 
    ◇
 
  九八年の暮れから、翌年一月にかけて、文部大臣(当時)の有馬朗人(六九)と
総務庁長官(同)の太田誠一(五四)は三たび会談した。官僚を交えない「差し」
の話し合い。太田から話を持ちかけ、自らが会員となっている東京都内のレス
トランや国会内の空き部屋で、有馬に国立大学を独立行政法人化させるよう迫っ
た。
  「長期的視野とは、どのくらいの期間か」。国立大の独法化に執念を燃やす
太田が尋ねた。「長ければ長いほどいい」と考えた有馬が出した答えは「二〇
〇八年」。太田は納得せず「十年後まで待てない。政治家にとって、やるとい
うのはせいぜい一年先の話だ」と、有馬を追い込んだ。
  「経済面は保障する」「国立大学だけ削減しないわけにはいかない」。太田
は二五％の定員削減をちらつかせながら、さまざまな口説き文句を連らねたと
いわれる。「決定権はこちらにあるんですよ」。最後は、こう有馬に決断を迫
り「二〇〇三年」までに結論を出すことで、二人の大臣は折り合いを付けた。
  「大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成十五年ま
でに結論を得る」。九九年一月二十六日に決定した「中央省庁等改革にかかわ
る大綱」には、明確にタイムリミットが盛り込まれた。国立大独法化への流れ
は、このとき形作られた。
 
    ◇
 
  「独立行政法人化は効率化の観点から行われるもので、大学の教育研究にな
じまない」「国立以上に財政支援がなされるとはとうてい考えられない」「大
臣からの中期目標の提示、中期計画の認可等の仕組みは、大学の教育研究活動
の自主性に反する」―。水野が東大と京大の独法化案を出した九七年当時、有
馬はこう反論、独法化に強く抵抗していた。その一年後、小渕政権下で文相と
なっていた有馬が宗旨変えしたのはなぜか。
  「あの時は、独法化は民営化の第一歩だと思っていた」。有馬はそう説明す
る。ところが行革委の最終段階で多くの機関が「国家公務員型」となった。国
が人件費を賄うなら反対の理由は一つ消える。「公務員型なら、大学改革の選
択としてあり得ると思っていた」と有馬は言う。
  先進各国の大学の多くは法人格を持っている。国立大のままでは、細かい規
制に縛られる。文部省と直接の関係を切り、教育や研究についての方策を自律
的に考えて運営するのも悪くない・・・。次第にそう考えるようになっていた
有馬が、太田との会談で妥協し、独法化へと踏み出すのは、自然な帰結だった。
 
(文中敬称略)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 






 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『東京新聞』2000年2月13日付
 
「国立大学」が消える日 迫る独立行政法人化 (3)
 
流れ読めなかった国大協
 
  一九九九(平成十一)年三月十一日、文部省と国大協は、同省内でひそかに会
談をもった。文部省側は高等教育局長の佐々木正峰(五八)ら三幹部、国大協は
会長の東京大学長、蓮実重彦(六三)ら四幹部が顔をそろえた。
  「二五％の定員削減に関連して、国立大学としても設置形態や独立行政法人
化について検討を始めてはどうか」。この席で、文部省側はこう打診をした。
「二〇〇三年までというのは時間的余裕があるように思われるが、実際には定
員削減が二〇〇一年一月から始まる。二〇〇〇年度の前半から夏頃までに、対
応を決めないといけない」
  慎重な表現ながら、文部省はこの段階で、定員削減と絡めて、国大協に独法
化の検討を勧めていた。
  「もはや何もせずに放置するわけにはいかなくなった」。三月十八日に開か
れた国大協の理事会で、蓮実は私的に検討を始めることで各理事の一任を取り
付けた。しかし「当面の正式な議題とはせず、周辺状況の変化や推移を見極め
る」として、全体での議論は先送りにした。
  蓮実は副会長(当時)の東北大学長、阿部博之(六三)らに相談し、名古屋大学
長の松尾稔(六三)に検討をゆだねることを決めた。
  四月上旬、蓮実の依頼を受けた松尾は自ら四人のメンバーを決め、極秘の検
討を始めた。一カ月半に四回、松尾がかつて会長だった東京・四谷の土木学会
の会議室に集まっては、政府方針の問題点を分析した。
  松尾の頭文字を取り「Ｍ研究会」。五人は「毎日のように、十いくつもの会
議が開かれている」(松尾)中に紛れて、議論を繰り広げた。「私心を捨てて、
毎日のようにＥメールをやりとりしながら、仕上げていった。日本の教育・研
究の将来がどうなるべきか、本気で話し合った」と、松尾は振り返る。
  こうしてできあがった「松尾リポート」は、国立大学のあり方や独法化の問
題点をまとめてあり、以後の検討の土台となった。
  「国大協としてどう対処すべきか、独法化に関してどんな条件が考えられる
か、しかるべき組織で検討いただかねばならない」。あらがいがたい政治の流
れを感じた蓮実は九九年六月十六日、国大協の総会でようやく独法化問題の検
討を提案し、阿部が委員長を務める委員会が担当に決まった。蓮実はそのとき
初めて「ポケットに持っているこのリポートをたたき台に提供する」と、松尾
リポートの存在を明かした。
  「新しい自主・自律体制の確立と大学にふさわしい設置形態のあり方の検討
が真剣に行われるべき時期に来ている。教育・研究の質の向上を図る観点に立っ
てできる限り速やかに検討を行いたい」。文相(当時)の有馬朗人(六九)が、国
立大の学長たちに公式に独法化の検討開始を伝えたのは、その翌日のことだっ
た。
 
    ◇
 
  国大協の動きが水面下にあるころ、東京、京都、名古屋など旧七帝大の副学
長たちは、独自の検討作業を進めていた。九九年三月、東北大の発案で始まっ
た「懇談会」。ここには副学長のほか、各大学の教授が一人ずつ参加し、一時
は声明を出す計画もあった。
  国立大の存否にかかわる大問題を前にしながら、国大協は表向き沈黙を守っ
ている。大学人として、もっとオープンな議論を進めるべきだというのが、積
極派の副学長の意見だった。
  「勉強会をつくって議論して(独法化問題の)ひな型をつくろうとした。でき
れば国大協や文部省に提案するシンクタンク的な機能を持ちたかった」。副学
長の一人は、こう証言する。中央省庁等改革推進本部顧問会議のメンバーの東
北大教授、藤田宙靖(五九)を呼び、じかに独法化のレクチャーを受けたことも
あった。
  しかし、副学長たちのもくろみは実現せず、九九年秋以降、会は単なる情報
交換の場に後退していく。
  「当初、意気込んでいたものとは違ってしまった。個人の立場ならいいが、
副学長は大学の看板を背負っており、ブレーキがかかってしまった」(副学長
の一人)。強者である旧帝大だけ勝手にやっている―。他大学のそんな目を副
学長たちは恐れ、声明やひな型づくりを断念した。
  政治の動きに応じて着々と検討を進める文部省に対して、国立大学側の出遅
れは明らかだった。内部で検討を進めるだけで世論に訴えることもなく、その
間に独法化への流れは加速していった。
 
(文中敬称略)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 






 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『東京新聞』2000年2月15日付
 
「国立大学」が消える日 迫る独立行政法人化 (4)
 
「知の巨星」集め既定事実化
 
  「これは議論の始まりなのか、それとも言いっぱなしで終わってしまうもの
なのか」。国立大学の独立行政法人化について、文部省は一九九九(平成十一)
年八月から九月にかけて識者懇談会を開いた。五回に及ぶ話し合いの終盤、複
数のメンバーから、こんな疑問の声が上がった。「終わりではなく、これから
始まる」「文部省対他省庁の戦いに勝てるかどうかが問題だ」。文相(当時)の
有馬朗人(六九)や同省の幹部は、そう口をそろえた。
  同省が提示した懇談事項は(1)国立大学等の運営上の諸課題(2)今後国立大学
等に期待される役割(3)大学評価のあり方(4)その他―の四点。「意見を施策に
生かす」のが目的だとされたが、同省はすでに「独立行政法人化は不可避」だ
とみて、法人化の基本線となる「通則法」を国立大に当てはめるための修正案
づくりに着手していた。
  冒頭の問いかけは、「条件付き独法化」へと走り始めていた、そんな同省の
姿勢をいぶかるものだった。
  ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈(七四)をはじめ、国立大学協会長経験
者の阿部謹也(六四)、井村裕夫(六九)、田中郁三(七四)、吉川弘之(六六)、元
大学審議会会長の石川忠雄(七八)、元宇宙科学研究所所長の小田稔(七六)、哲
学者の梅原猛(七四)。高等教育に一家言を持つ重鎮たちは、それでも活発に意
見を交換した。
  議事録からは「教育機関の改革は慎重に進める必要はあるが、改革が刺激を
生む点では評価できる」「独法化の狙いは、大学に自主性を与えるとともに、
競争的な環境をつくって教育研究の質の向上を図る点にある」など、独法化に
前向きな発言が目立つ。通則法の問題点を挙げる声もあるが、反対の旗色を明
らかにした阿部と吉川を除いては、独法化を前提に条件を議論する色が濃かっ
た。
  「知の巨星たち」を集めた懇談会は、同省の独法化路線にお墨付きを得るた
めのものだったのか。
  「文部省の考えをきちんと伝えて、それでいいかどうか判断を求めた。(独
法化容認の)アリバイづくりにしたことはない」と、事務次官の佐藤禎一(五八)
は強く否定する。だが、有馬の説明は少しニュアンスが異なる。「結果的に"
終わり"だったことは事実だ。徹底的な反対があれば変わったかもしれないが
・・・」
    ◇
  検討が遅れていた国立大学協会では、東北大学長・阿部博之(六三)、名古屋
大学長・松尾稔(六三)らが、夏休みを返上して作業を進め、八月中には通則法
の問題点を洗い出していた。九月十三日の臨時総会に報告された「中間報告」
では、通則法に反対する姿勢を保ちながら、同法の問題点を列挙。修正するに
は「特例法」を制定するか、大学を対象とした「国立大学法」を設けるべきだ
と提言した。
  大学側には「国家公務員の定員削減」が独法化の発端だったという、ぬぐい
がたい不信感がある。しかし、通則法への問題意識に限れば、文部省と大きな
違いはないようだった。
  九月二十日、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターに集
まった九十九国立大の学長たちに、有馬は初めて公式に独法化の「検討の方向
(条件案)」を示した。
  《「大学自らが教育研究の制度設計をし、実現するという大学の特性を踏ま
えたものでない」ので、独立行政法人通則法には反対だ。だが大学が「自主性・
自律性を高め、自己責任を果たすため」には法人格を持つべきだ。組織の変更
や予算の使い道が自由になるし、そうなれば各大学の個性化が進んで、互いに
しのぎを削る環境が生まれる。定員削減が二〇〇一年から始まるので、二〇〇
〇年のできるだけ早い時期に結論を得たい・・・》
  有馬がおおよそこのような説明をした後、高等教育局長の佐々木正峰(五八)
が詳しい中身を説明した。質疑応答の時間はなかった。
  ある学長は「ポツダム宣言の受諾」と受け取り、ある学長は「天下分け目の
東京・夏の陣」と評した。
  「あの夏はなんと暑かったことか。行政改革から来た独法化が、議論する間
もなく進んでしまった。卒直に言って苦しい」(山田家正・小樽商科大学長)
  独法化への「流れ」は「既定路線」となった。学長たちはこの日、はっきり
とその現実を知らされた。
 
(文中敬称略)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 






 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「国立大学」が消える日 迫る独立行政法人化 (5)
 
資金格差 地方の不安大きく
 
  独立行政法人についての条件案を明らかにした文部省は、一九九九(平成十
一)年十月から十一月にかけて、国立大学をブロックごとに分けて説明会を開
催した。トップを切って行われたのは、もっとも反対の強い九州地区だった。
  十月四日、長崎大での九州地区説明会で、文部省側は、のっけから戸惑いを
感じることになった。
  「意見交換のスタイルで始めたら、たちまち進め方にクレームが付いて行き
詰まった。普通は考えられないことだが、百近くの質問に全部答えてくれと言
われた」と、説明に当たった文部省大学改革室長・杉野剛(三八)は明かす。
  ―独法化でなければならない理由は？
  「この問題を検討しないで済むような段階ではない。定員削減の一〇―二五
％という問題もあり、腹を決めないといけない」
  ―今より予算も増えるのか、国立大学は元気になるのか？
  「おっしゃるとおりだ。これまでのように護送船団方式で(一律に)はやれな
いが、各大学の努力いかんにかかっている」
  文部省は、この問題が高等教育政策と無関係の「定数削減」から生じたこと
を素直に認めた。その上で、予算面や組織の運営面などについて大学側の不安
を取り除くよう説明に努めたが、結局独法化路線への理解は得られなかった。
  独法化しても屋台骨が揺らぐ心配が少ない旧七帝大などの「強い大学」と異
なり、それが存亡の危機につながりかねない地方大学には、強い不安がある。
  最大の問題は、国から安定して得られた資金が細る可能性が強いことだ。
  「予算配分が増える大学や学部もあるが、一部に多く出せば他は減る。文部
省の評価とその配分が結びつけば、官僚統制が強まり、自由な学問は衰退する
だろう。地元の産業基盤が小さい地方大や小規模大にとっては独法化では展望
がなく、国立大のままで改革を進めるべきだ。中央だけでなく日本全体の均衡
ある発展が重要だ」。独法化に反対する鹿児島大学長・田中弘允(六五)は、そ
う強調する。
  国立学校財務センター教授の天野郁夫(六四)らが昨年まとめた調査では、そ
んな大学・学部間の温度差が鮮やかになった。
  国立七大学の教員を対象としたこの調査で「『一部』または『すべての』国
立大は設置形態を変更すべきである」と答えたのは、旧帝大の東北大が四〇・
七％でトップ、最低は佐賀大の二三・七％だった。逆に「現状の形態を維持す
べきだ」としたのは、佐賀大が四一・四％で一番多く、香川大と山形大(三三・
一％)が続いた。最低は東北大の一八・五％で、広島大(二〇・三％)、九州大
(二二・五％)がこれに次ぐ。
  専門別では、人文科学系、社会科学系、教育学系に「現状維持派」が多く、
医・歯・薬学系、工学系では「変更派」が多かった。
  天野は「独法化が問題になる以前の調査だが、国立大の中でも旧七帝大など
の研究大と地方大、文系と理系とで考え方の違いが浮かんだ。(外部資金など
が得やすい)工学系などは『今より自由な方がいい』という考えなのだろう」
と分析する。
  鹿児島大のほか、宮崎大や富山大では、教職員の有志で募金を集め、地元の
新聞に独法化に反対する意見広告を出した。「授業料や民間資金などで賄える
のは四分の一。国の資金が途絶えたら、赤字分は大学を縮小するか授業料を値
上げするしかない」。宮崎大学長の二神光次(六三)は苦しい台所事情を明かす。
「うちの学生の三割は奨学金をもらっている。値上げをすれば、教育の機会均
等が保障できなくなる」
  新制大学が発足して五十周年だった昨年、全国の大学で記念事業のための募
金が行われた。大学の資金力の違いは際立っていた。「太平洋側では十億以上
集めた大学もあるが、日本海側で三億を超えたところはない。まわりの企業な
ど、バックグラウンドの違いは大きい」。北陸地方の学長の嘆きは、多くの地
方大の置かれた状況の厳しさを象徴している。
 
(文中敬称略)
 
国立大の設置形態はどうあるべきか
 
大学名 現状を維持すべきだ 変更すべきだ の順(％)
 
東北大 18.5 40.7
山形大 33.1 26.1
新潟大 27.6 32.1
広島大 20.3 36.8
香川大 33.1 28.8
九州大 22.5 38.0
佐賀大 41.4 23.7
全体   24.5 35.2
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 






 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「国立大学」が消える日 迫る独立行政法人化 (6)
 
分裂の危機 国大協"沈黙"
 
 
  文部省が独立行政法人化案をブロックごとに学長に説明する全国行脚を終え
ようとしていた一九九九(平成十一)年十一月一日、国立大学協会は、理事会を
開いて対応を協議した。
  「どこを最大の争点とするか、まずそれを固めていかなければならないが、
固められるかどうか若干気になるところだ。国大協にすべてゆだねられても不
可能なケースもある」。会長の東京大学長、蓮実重彦(六三)はやや弱気な発言
で口火を切った。「最終的には多様な意見を踏まえてまとめたいが、細かなこ
とを逐一挙げて発言する時期は終わったと思う。いつだれに向かってどこで何
を言うかについては、もう少し時間を頂きたい」
  利害が対立する九十九国立大学を一つにまとめるのに苦慮した蓮実は、議論
を大枠に絞ることで着地点を見いだそうとしていた。
  同月十七日、東京・神田錦町の学士会館で開かれた総会では、案の定、種々
の意見が飛び出した。
  〈立場の弱い大学は文部省の意向に従わざるを得ず、結果的に独法化は規制
強化につながる〉
  〈独法化はすでに回避できないところまで来ている。やり方によっては道が
開ける可能性がある〉
  〈もう戻れないと言う見方はペシミスティック(悲観的)に過ぎる〉
  〈悪くするとこれまで築き上げてきたものを崩壊させかねない。声を大にし
て反対を主張すぺきだ〉
  〈この機会を逆にチャンスととらえて、特例法を作ることも考えていかない
といけない〉
  議論は白熱し、三人に一人の学長が発言に立った。独法化を懸念する声が目
立ったが、「条件付き受け入れ派」も少なからずいた。
  「スキーム(独立行政法人通則法)」には反対と言ってきたので同意いただけ
ると思うが、個々の内容に対し賛成、反対の旗色を鮮明にすることは、独法化
の方向に国大協が一歩踏み込んだと見なされる。それは今取るべき態度でない」
蓮実は初日の議論をこう締めくくり、「会長談話」を出すことを約束した。
  その晩、蓮実は徹夜して文案を練ったという。二日目の十八日早朝、総会に
先立って集められた二人の副会長らは、学士会館の別室でなおキーボードに向
かう蓮実の姿を目撃した。
  総会二日目も、学長たちの議論は尽きなかった。蓮実は「国立大に残ったと
しても苦しいだろうし、独法化も通則法をそのまま適用したら、多くのものを
失う。結論をこの場で出すのは不可能だ」と総括し、東北大学長の阿部博之
(六三)が委員長を務める委員会で、高等教育や学術研究の将来に欠かせない基
本要件をまとめることが決まった。
  「国立大学の独立行政法人化の議論を超えて高等教育の将来像を考える」。
そう題した談話で、蓮実は「設計図が不完全な場合、建築物は必然的にゆがん
だものとなる」と、通則法の枠組みに大学を強引に当てはめる"無謀さ"をあら
ためて批判した。しかし「事態は、賛成反対を唱える以前の段階にとどまって
いる」として、はっきりとした態度表明は避けた。
  総会後の記者会見で蓮実は「首都圏の大学と地方の大学に温度差がある。こ
とによったら分かれるという予感がないわけではない」と不安を漏らした。
 
    ◇
 
  十一月下旬、阿部は九十九の国立大学長らに、高等教育や学術研究の将来像
を考える際に必要な基本条件について意見を求める文書を送った。二つ以内、
一つに付き三行以内でまとめるという条件を付けた。
  独法化する際の条件案を求めたわけではないが、多くの学長は、三―五年の
「中期目標」を大臣が各法人に指示する―とされている点など、独法化の基本
構造を問題視する意見を寄せた。
  委員会はこれらの意見を集約した資料を作成した。委員には原点に返って国
立大学の理想的な在り方を発信すべきだとする意見があったが、検討はここで
打ち切られた。
  「国大協として九七年六月に一度、(国立大の在り方について)考えを出して
いるが、それから変わっているわけではない。資料は蓮実会長らが有力政治家
に会ったときの説明資料にしており、ほかの使い道は考えていない」(阿部)。
分裂を恐れる国大協は、二〇〇〇年の幕が明けても沈黙を破れず"待ち"の姿勢
を続けるだけだった。
 
(文中敬称略)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 






 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「国立大学」が消える日 迫る独立行政法人化 (7)
 
見えない高等教育の未来
 
  「本省に国立学校を置く」―。文部省設置法八条に書かれたこの一文が、国
立大を文部省の一組織としてつなぎ留めている。同省に所属することは「護送
船団」時代には厳しい規制のもとに置かれることを意味した。国立大を法人化
して、同省から切り離す案は、そうした規制からの脱出を目指して浮上した。
  中央教育審議会の一九七一(昭和四十六)年の答申(四六答申)では、国立大の
自主・自律的な運営のため「公的な性格を持つ新しい形態の法人」などに移行
するよう提言している。
  八四年に始まった政府の臨時教育審議会でも同様の観点から、国立大学に法
人格を与え、特殊法人として位置づけることを検討したが、八七年の答申では
「中長期的な課題」とされた。
  「同じ法人化でも、大学を自由に発展させるためという人と、浮世の冷たい
風に当てろという立場の人がいた。国立大が行政の一部というのは不自然で、
法人化がいいと考えたが、同床異夢の議論を詰めた方がいいと思った」。臨教
審当時、文部省の高等教育局長だった国立学校財務センター所長、大崎仁(六
七)は振り返る。
  行政改革会議の国立大独法化論議も、四六答申などが源流だった。「四六答
申は一大エポック。ボクは当初からその実現を考えていたんだ」。元行革会議
事務局次長の日大教授、八木俊道(六四)が明かす。
  しかし、四六答申の法人化と、今回の法人化には大きな違いがある。今回は、
単なる法人化ではなく、行政サービスの一環としての「独立『行政』法人化」
だからだ。行革会議事務局長だった水野清(七五)は、「大学は文部省という教
育立案部門の"現場"だ」と言ってはばからない。
  行革会議の終了後、再びわき上がった国立大の独法化は、当初の理念と関係
ない「二五％定員削減」の数合わせが発端になった。かつて大崎が恐れた「国
立大を冷たい風に当てろ」という、政界などの空気がそれを後押しする。
  大学改革を訴えている大阪大副学長、本間正明(五五)は「大学では企画立案
と現業が切り離せないのに、独法化から議論が始まったのは不幸だった」と嘆
く。
  二十一世紀の大学の在り方を検討していた大学審議会が一昨年十月に出した
答申では「国公私立大学がそれぞれに期待される機能を発揮し特色のある教育
研究を展開していくことが重要」だと指摘した。文部省はそれから一年とたた
ず独法化路線に転じた。
  「答申には、独立行政法人のことは一言も書いてない。まず大学審で議論を
すすめるべきではなかったか」と、東京大副学長の青山善充(六〇)は批判する。
 
    ◇
 
  民営化や独法化を求める「財界人」や「政治家」たちの間で、大手を振って
歩く『通説』の多くは、実際は幻想にすぎない。
  例えば―。
  〈欧米の大学は私立が中心で、独立採算で運営している(実は、私立が多い
米国でも学生数では公立が七割で私立が三割、州立では連邦政府や州の負担が
五割以上。ヨーロッパにはほとんど私立がない)〉
  〈日本の大学の研究は欧米に大幅に遅れた(実は理工学、化学、工学は論文
数で米国に次ぎ世界二位)〉
  〈日本の国立大は予算を食うばかりだ(実は対国民総生産比で、日本の高等
教育予算は欧米の半分から七割)〉
  政府は、本当に教育・研究の未来を見据えて、独立行政法人化させようとし
ているのか。
  「国は高等教育にどれだけの責任を持つのか。今の独法化の議論には、教育
政策、学術政策の視点が欠けているのではないか」。国立学校財務センター教
授の天野郁夫(六四)は疑問を呈する。
  日本学術会議は昨年十一月、政府の科学技術基本計画で定めた国立大学の施
設整備が一向に進まない現状の改善を求める勧告を首相の小渕恵三(六二)に出
した。小渕と面会した際、会長の吉川弘之(六六)はこう迫った。「公共事業の
意義は分かるが、橋や道路をたくさん造るより、緊急に求められるのは大学の
整備だ。あなた方の意思決定はおかしいのではないか」
 押し黙った小渕は最後に一言、ぽつりと答えたという。「うーん・・・・、
考えましょう」
 
(文中敬称略)
＝おわり
 
    ◇
この連載は加古陽治が担当しました。

 

 

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2004年3月29日　昨日、京都で、大学評価学会設立大会（04-03-28：京都）が開催された。都立大学と横浜市大などで直面している任期制問題のシンポジウム（横浜）と重なってしまい、どちらか一つしか出ることができないため、松井道昭先生がシンポジウムの討論者となっておられる横浜のほうは後でお話を伺うことにして出席は断念し、京都に出向いた。盛会であり、非常に有意義な設立大会だった。設立発起人が142名（3月26日現在）に増えていた。法律で義務付けられた大学評価をどのような視点、基準で大学人が行っていくべきか、考えるべき論点は実に多くまた奥が深いものであった。まさに学問・科学論の総体に関係してくるものであり、現代社会（日本と世界）のあり方と広く深く関連する問題であることが明らかとなった。三年間の着実な活動を積み重ねて、日本学術会議登録団体となることを計画している。社会学、教育学、哲学の三つの研究連絡委員会に関係学会として登録することを目指している。

 

冒頭の記念講演・益川敏英京都大学名誉教授･現京都産業大学教授（後の総会で副会長に選出された）は、基礎科学の評価のあり方について、根本的な問題提起をした。京都大学で基礎物理学研究所の所長をしていたとき「評議会で15分間もらって一席ぶった」内容を含めての報告であった。ガロアの二十歳の仕事が150年後の今日、情報通信･暗号分野で不可欠の数学理論の基礎となっていることなど、興味つきない話しであった。科学発達のその世界的長期的見地から、教育はすくなくとも15年程度の評価タイムスパンで行わなければならないこと、基礎科学は100年の単位で評価がなされなければならないこと、したがって現在の法律による中期目標･中期計画による評価が基礎科学を駄目にしてしまうことを、最先端の研究者・世界的な研究者として、説得的に語っておられた。世界標準で評価される高い研究実績を背景にしているだけに重みがあった。

ついで、第1報告で、国立天文台長の海部宣男教授は、天文学と言う学問への社会的理解･支持をえるための努力の必要性･重要性を強調された。社会的評価を市民の中で獲得していくことの重要性である。天文台の研究員に社会的啓蒙活動に出かけることを奨励しているという。社会的市民的評価も、学問科学の達成を基礎にしなければならない。それは科学の最先端を行く研究に裏付けられなければならない。何がいい研究かを見分けなければならない。いい研究を行える環境かどうかを評価しなければならない。国立の全国大学の共同利用機関としての国立天文台も全国の国立大学法人の各大学も、それぞれの存在意義と密接に関わる科学上･学問上の評価、それを成り立たせるための環境整備などの評価をきちんと行っていく必要があることを強調された。英米の評価システム･評価の歴史はすでに古く、質が高いこと、それに対比しての日本での評価のシステム･人材･歴史の不足･欠如を具体的に指摘された。これまた重要な指摘だった[5]。

日本のようにしっかりした大学評価のシステム･人材・歴史がないところで、今回出されてきた政府側の組織（そのガイドライン）は実に、大学評価の点から問題があることを、詳しく説明された。とりわけ、数値目標･数値化が繰り返し強調されている点を問題とし、官僚・行政マンが点数をつけやすいような配慮だけが先行していることを厳しく批判的に解明された。全世界的なピア･レヴュー（研究者相互間による学問的科学的評価）[6]の導入、その制度化、能力養成が絶対不可欠であり、それこそが大学・共同利用機関の研究教育を本当に発展させていくために、重要だと強調されたが、そのとおりだと感じた[7]。

第2報告（田中昌人・京都大学名誉教授…後の総会で会長に選出された）も重要であり、とくに学生の勉学権と言う観点から、授業料問題の深刻な意味が指摘された。国連やユネスコ宣言など世界的スタンダードで、高等教育の無料化を推進すべきこと、先進国のなかでもとりわけGDP比率で低い国の教育研究予算の比率を是正すべきこをなど、大切な論点が指摘された。

第3報告･篠原三郎・日本社会福祉大学元教授も、100年ほどの日本史を振りかえりつつ、「大学の自治」・「学問の自由」の大切さをあらためて強調された。これまた、現在のわが大学や都立大学、それに全国の大学でいくつも発生している経営優位の改革で「大学の自治」「学問の自由」が危機にある大学が増えている現状を批判するものであり、市民に開かれ、市民の支持を獲得した｢大学の自治｣｢学問の自由｣の発展のため、大学人の責任を見据えるように訴えるものだった。

会長・副会長（正副代表）、運営委員、事務局などが総会で承認されたが、推薦されて、私も20人の運営委員の一人になった。大学評価などというのは素人に過ぎないが、大学が社会・市民のなかで存在意義を確認し、学問・科学の研究教育のあり方、それらの評価のあり方を考える課題自体は、どんな学問分野の研究者でも考えてみるべき課題であり、勉強していきたい。海部氏の説明のように、日本ではそもそも評価システム･評価のノウハウなどが欧米に比べて蓄積されていないので、まさにこれから全大学人が関心を持って評価の理論･視点・方法を磨き、知識と能力を蓄積していくべきものであろう。したがって、その問題意識・課題意識を持って、この学会に参加し、自分や自分の所属する大学、そして全国の大学について研鑽を積んでいきたい。

是非多くの大学人がこの学会に参加され、適正な大学評価が行われ、日本の学術が大きく発展するひとつの刺激となることを期待したい。運営委員の一人としてここで多数の参加を訴えておきたい。

討議も活発で、発言者も多様であった。

全国各地の大学の研究者（岡山大学、千葉大学、立命館大学、日本大学、桃山学院大学、その他）のほか、朝日新聞の記者など何人かのジャーナリスト、大学院生（京都大学）、大学職員（岐阜大学）、それに市民など、多彩であった。今回の国立大学法人化や公立大学法人化の要請が、世界的競争に日々直面しているビッグ・ビジネス、経済界からの要請を受けていることはもちろんであるが、大学改革には市民からの要求･希望にも強いものがある。大学よしっかりしてほしい、というのは胸に突き刺さる市民の声であった。その市民からの要望にどのようにこたえていくのかも、大学評価の観点として重要となろう。

都立大学と本学の「改革」問題は全国の関心の的となっているようで、懇親会で発言の機会が与えられた。いろいろたくさん問題はあるが、「改革」が大学人の沈黙を強制するようなやり方、「学問の自由」を抑圧するやり方、批判者を恫喝し排除するやり方など、日本の大学史上でも大変ゆゆしい問題状況となっているなかで、大学評価の重要な評価基準として、「大学の自治」「学問の自由」のあり方が据えられなければならない、と発言した。この大学は「大学の自治」の点でも、これこれこういう問題がある、「学問の自由」の点でこのような抑圧状況がある、逆に、大学の自治はこの大学ではこのように充実発展している、学問の自由がこのように花咲いている、大学人が自由で生き生きしている、といった評価ポイントは、今後の大学評価において、決定的に重要なものとなることが期待される。

なお、大会では、大学評価京都宣言＝もう一つの「大学評価」宣言が満場の拍手で承認された。

 

 

 

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2004年3月26日(2)　総合理学研究科･佐藤教授が「定款」の議決にいたる関連文書の一覧（2004.3.25）をまとめられた時間的な流れとその時々に提起された問題を一覧できるようにしてくださったわけで、非常に参考になる。われわれが日々の事件や問題に対処していろいろの文書を書いているうちに、全体の流れがわからなくなったりする。｢改革｣問題のHP関連文書をみて、｢ジャングル｣に入ったように感じる人もいる。その意味で、すっきりと時系列的に整理された上記の文書一覧は大変ありがたい。多くの人が参考にするであろう。

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2004年3月26日(1)　行政当局の組織である｢横浜市大学改革推進本部｣のプロジェクトR「国際総合科学部(仮称)―コース･カリキュラム案等報告書」が、昨日付けでだされ、一部、入手した。全体的に問題にすべきところはいろいろとありうるが、数理情報コースが消滅していることは、数理学教室の声明等が予測していたとおりであった。そうした個別分野ということでいえば、わたしの分野に関することだけをまず指摘しておけば、

 

①     どこにも経済史･経営史が位置付けられていないことに気付く。総合経営学府というコースにおいては、経済史や経営史の講義は必要ないということか？国際的教養として経済の歴史や経営の歴史は必要ないということか？経済や経営の歴史認識を欠如した経営学(総合的な経営)とはいったいどういうものか？　たんなる専門学校ではなく、会社や都市、その他世界的な諸機関などで活動する場合、経済や経営の歴史を踏まえること･歴史的センスは基礎的教養として不可欠であると考えるが、そうした発想は、今回のコース･カリキュラム案では見られないようである。経済史や経営史は、本学の経済学科･経営学科においても、またどこの経済経営系の学部・学科等においても基礎的基幹的な科目であるが、それをカリキュラム体系からなくす理由(「忘れた」理由･「排除する」理由)はなにか？歴史認識は社会の変化をつぶさに見つめる学問･科学であり、現状を肯定的に見ると同時にその大局的変化を見る。その意味で批判的学問である。そうした人類史の変化･進化の認識と現状への批判意識が、今回のカリキュラム案作成者にとっては排除すべきものだったのか？それならばまさに学問の本質的な部分を排除することではないか？まさにソクラテスの社会からの排除と同じことになりはしないか？　歴史認識のない経済人･経営人を養成すればそれでいいということか？それでは技術的知識だけに特化した専門学校のコースに限りなく近づくのではないか？そもそも、経済学や経営学の理論の場合も、経済や経営の発達史、その実証分析を抜きにしては成り立ち得ないが、そうした発想はないということか？　そういえば、経済学･経営学の理論史(学史･学説史)も欠如しているようである。最近の学説が実は古い学説の焼きなおし、二番煎じであることはよくある。新しい見地を構築していくには理論史･理論の発達史へのセンスが不可欠だと思うがどうか？

 

②     そのほか、現在までのところ本学では非常勤に依存しているが、社会史も非常に重要な科目である（社会史はわたしが着任するすこし前に設定された科目だと聞いている）。社会全体を歴史的立体的に把握するというスタンスは、これからの国際社会において非常に重要なことだと思われる。通常の世界史や政治史とは違う目の付け所、社会の普通の人々の歴史、それに着眼することは、国際的な、国境横断的な(トランスナショナルな)社会の平和的統合を考えていく上では、絶対不可欠のものだと思われる[8]。「国際総合科学部」という以上、そうした新しい学問分野･スタンスもきちんと位置付けるべきであると考える。ところが、この科目も、どこにも見当たらない。学問の新しい動向を踏まえた科目の設定(7-8年前にやっと新設された科目)もきちんと継続することが重要ではなかろうか？　

　

③     これも予想はされていたが、やはり経済学研究科は廃止という案となった。わたしの着任が経済学研究科に博士課程を創設することと関係していたので、それだけに唖然とし、愕然とする。この間必死でやったことは何だったのか。97年に開設し、2000年にやっと完成し、経済史では2本以上のレフェリー付き学術雑誌論文というかなり厳しい基準を設定し、それをクリアーして課程博士を一人だした。その院生も確かに就職には苦労し常勤の職を得ていないが、それでも非常勤講師をやり、来年度は非常勤研究員とはいえ国際日本文化センター研究員の内定をえた。その他に何人か博士の学位の取得を目指してがんばっている院生・オーバードクターがいる。そのうちの一人はレフェリー付き学会誌として伝統があり水準が高いと定評のある全国学会誌に論説が一本掲載され、これまでの何本かの公刊論文と合わせて博士論文に着実に近づいている。また他の一人は難しい三年間の学振を得て、他大学研究科で博士論文完成に向けて研究に励んでいる。歴史系というまさに教養的学問分野の就職事情が厳しいからといって、それを理由に｢絞る｣というのはいかがなものか？　彼らのことはいったいどうなるのか？　一度創設した研究科博士課程をそんなに簡単に廃止しても社会的責任は果たせるのか？横浜市とその設置する大学とはそのように無定見･無責任なのか？　一度創設した以上は、彼らのことを考え、そして教員と研究科の水準を維持するためにも博士後期課程は堅持するように努力するのが筋ではないのか？　あまりにも効率主義的で短期的な発想ではないか？

　

④     案通りとなれば(案の内容も実はよくわからないのではあるが・・・研究かで検討されたわけではなく、何が論点になったかすらわれわれ外部のものにはわからない、この徹底的秘密主義！！)、経済学研究科と経営学研究科を総合した経営科学研究科となるが、その経営学研究科のなかでどのような学位を取れるようにするのか、これが問題だ。博士後期課程は、文系では｢国際文化研究専攻｣と「経営科学研究専攻」に｢絞った｣ようであるが、いったいその二つの専攻で取得できる学位はなにか？　博士（経済学）を取れるようにするのか？　それが問題である。この二つの研究科でどのような学位を取得できるかで、報告書がかかげる「学生のキャリアデザインを保証し、実現できる能力を持つ学生のみを入学させる」ということの内実が決まってくるであろう。また、それに対応する｢教員｣集団の人数や専門分野･学位もきまってくるであろう。トロヤの遺跡を発見したあのシュリーマン的な退職後の社会人などの学位を目指す人々に与える可能性のある学位はなにか？報告書に見られるのは｢キャリアデザイン｣というカタカナ[9]で、若い人々だけを念頭においているようであり、実に狭い古い視野であるといわなければならない。

 

⑤     今回の以上のような、一読しただけで直ちに感じる問題点があるが、われわれのような一般教員の場合、市当局の｢大学改革推進本部｣の元に置かれた検討委員会に申し出るチャンスはなかった。全体像がまったく知らされていなかったし、全体像の検討に一般教員は参加できないようになっていた。大学院経済学研究科などがそのコース案にたいする見解を検討するチャンスもなかった。その結果は、すくなくとも、商学部関連でいえば、これまで基礎的基幹的とされてきた科目が欠如する(排除される)という厳然たる結果になっている。これはまさにカリキュラム等における専門研究者の意見を広く入念に集めないことの結果ではないのか？　あるいはそれは最初から意図したことか？　市当局の｢おめがねにかなった｣科目だけを、学問諸分野･学問体系の固有の歴史と発達など無視して、設定するということか？　それこそはまさに｢大学の自律｣、「大学の自治」や｢学問の自由｣を破壊することになるのではないか？　この間、繰り返し強調してきた行政主導の改革案作成の問題点が、コース･カリキュラム編成においてもきわめて露骨に出ているということではないか？　数理学研究室と同じように、経済史･経営史･社会史の研究者として、社会経済史学会・政経史学会･経営史学会の何千人かの研究者にわが大学のこうしたカリキュラム問題(そこに現れた｢大学の自治｣｢学問の自由｣の破壊問題)を訴えなければならないということか？

 

　すくなくとも来年度の「経済史」講義（旧カリキュラム体系がいつまで続くかわからないが、商学部で入学試験を行った以上最低でも4年間は｢経済史｣講義など旧体系を堅持するのが社会的責任であろう）では、歴史学の意義、そこでの経済史、経営史、社会史の意義については学生諸君に語りかけたい。歴史はよく｢鏡｣にたとえられる。まさに、そのとおり、人間社会と個々人の｢鏡｣として、歴史は絶対不可欠だろう―少なくとも衣食足りたならば―。衣食に事欠く人が鏡を見る余裕はないかもしれない。だが、普通の市民なら、鏡がなければ、日常生活で不便きわまることははっきりしている。しかし、あくまでも鏡なので、1日中、鏡とにらめっこしている暇人はいない。人々の必要と要求に応じるかぎりで鏡としての役割を果たすであろう。入念に鏡を見るのは、その必要のあるとき、その必要のある人であろう。その鏡が大小とりまぜ、遠近取り混ぜ、多様にあることが、社会生活では必要ではないか？　歴史研究の諸分野はそのようなものであろう。その歴史学のなかで、経済史の重要性が認識されて基幹科目となり、さらに経済史のなかから経営史が独自の分野として確立してきた。歴史学のなかの社会史の分離独立、その変化も時代とともに、時代の要求に応じてである[10]。歴史認識･歴史知識では、腹が一杯になるわけでも、服の代わりになるわけでもない。だが、経済や経営の動きと流れ、社会の動きと流れも、自国や世界の歴史の流れで見ないと見えてこないことがたくさんある。そうした基本的なことが理解されていない大学というのはいったいどういう大学なのか？　そうした基本的なことを理解していない人々が、コースやカリキュラムを決める権限だけもっている大学というのは、いったいいかなる大学か？

 

経済史(西洋経済史・封建制社会から資本主義社会への移行、ウェーバー研究などで戦中･戦後の日本の学会をリードした)の大家･大塚久雄は、しばしば｢地図｣を引き合いに出して、人間（社会）とその学問的抽象物とを対比し、学問的科学的抽象(自然科学、人文諸科学もそうだが、ここでは社会諸科学、その一つとしての経済史)の意義･価値を分かりやすく解きほぐしたことがある。今一度、その経済史学の原点というか大きな峰というか、そこにたちかえってみておきたい。全集第9巻｢地図―軽井沢随想―｣から一部、引用しておこう。ついで、同じ大塚の「経済史学からみた経営史の諸問題―マックス･ヴェーバーの社会理論に照らして―」同9巻、pp.467-483を見ておこう。

 

----------「地図―軽井沢随想―」[11]------

 

このごろは夏休みになるのを待ちかねて、この浅間山麓の高原にやってくるようになった。来るときはたいていヘトヘトといった感じだが、小鳥の鳴き声を聞いたり、清澄な空気を胸いっぱい吸ったりして1週間もたつと、疲れがすっかり取れてしまう。疲れがとれると、おもむろに仕事に取り掛かるので合うr。中断されないで一つの仕事に集中できるこの1ヶ月半は、われわれには実にありがたい。・・・・・・

ぼくは碓井峠の見晴しだとか、鬼押出しのような雄大な景観がひじょうに好きである。本式に登山ができなくなって[12]からもう相当長いせいでもあろう、私には天下の絶景である。あかず眺めているのは実に楽しい。ところで、ああいう雄大な見晴しを眺めているといつとはなしにあれはどこ、これはどこ、という話しになって、おのずから地図を見ることになってくる。こうして天下の絶景と地図を見比べていると、いつものことながら、職業意識がつい頭をもたげて、こんなふうなことが頭の方隅をかすめて通るのである。―

地図は、1枚の紙という平面の上に、線や点、それにさまざまな符号が印刷されているにすぎない。だから、そのなかをいくら探しても、あの雄大な浅間の姿や夕日に映える美しい山脈が見出されるわけではない。だいたい、地図というものは現実の大自然をそのまま描写し再現しているものではないのだから。ところで、そうであるからといって、だから地図は現実を正しくとらえていないとか、だからまた地図を作るためにはらわれた多くの人々の数々の労苦は誤っていたなどと、いうことができるだろうか。

試みに考えてみよう。芸術的価値のきわめて高いものであっても、絵画はあるいは登山の意欲をかきたてることがあるかもしれないが、それをいわば道しるべとしてあの山々を踏破することができるだろうか。山々を観照するのではなしに、踏破するために役立てようとするならば、ことさらに、雄大さや壮麗さも含めて、あの山々のさまざまな諸側面を、一たびは惜しげもなく捨象し、平面上の線や点に還元して、地図を作ってみなければならない。でなければ物の役には立たないだろう。地図はもちろん芸術作品ではない。しかし、それはそれとして、十分に独自の価値があり、対象を正確にとらえたものでありうる。この両者を混同するのは、おかしなことだと言わなければなるまい。

こういう、ある意味で分かりきったことをいうのに、少々気負ったふうになったのは、実はこのごろ喧しい｢人間｣の問題が何となしに頭にあるからなのである。われわれ社会科学者が対象をとりあつかうとき、その究極の基礎に｢人間｣の問題があることを決して忘れてはならない、と私は思っている。だからこそ、終戦直後｢人間｣の問題をともかくも前面に押し出してみたのだったが、そのときは相当ひどい反対を受けたわけだ。ところで、他方社会科学とくに経済学は｢人間｣の営みを研究対象としていながら、しかもそこでは生のままの｢人間｣は捨象され、姿も消してしまっている。それは社会科学がある点で地図と同じような実践的性格をそなえているからに他ならない。

生のままの｢人間｣がむやみに出てくるような経済学など、イデオロギーとしてなら別だが、物の役には立たない。そこでこうした方面が一方的に強調されると、こんどは逆に、経済学には｢人間｣の問題などおよそ無縁であるし、またそうでなければならない、というような考え方がでてくることにもなる。

およそ｢人間｣の問題などとまったく無縁であるような経済学は、やはり間違っていると思う。しかしまた、このごろときに見かけるような、過度に｢人間｣を強調するあまり、経済学や一部の歴史叙述(たとえば経済史)のなかに生のままの｢人間｣の姿がさしあたって見出されないからといって、そうしたものの価値を云々したり、他方社会科学者のほうが虚をつかれたような格好になったりする傾向は、実は私にはどうも解しかねるのである。

 

 

--------「経済史学からみた経営史の諸問題―マックス･ヴェーバーの社会理論に照らして―」[13]------

研究史に一瞥をあたえるだけでも明らかなように、経済史の研究は従来おそろしく広範な分野を包括してきたし、また現に包括している。それは研究対象として、経済学の諸部門がそれぞれ自己の研究対象としてもっている諸分野のすべてを包括しているばかりでなく、時代的にみても、歴史の曙から現代にいたるまで―たとえば現代経済史という一部門が存するように―のすべてを包括しているといってよい。けれども、これまた研究史を少しく顧みるだけでも明らかとなるように、従来経済史学の最も重要な課題となってきたものが、｢産業社会｣indutrial societyとか｢資本主義社会｣kapitalistische Gesellschaftと呼ばれている近代経済社会の発生史的研究だということ、いや、少なくともそのあたりに一つの、しかし最も重要な焦点が集められてきたということは、いい得て誤りのないところであろう。実は、こういう近代経済社会の発生史的研究が進展する課程で、経営史研究の固有な領域と方法がしだいに形づくられてき、そして、それが経済史学という旧来の殻を破って、ついに独自な一分科としていちおう完成した姿を現わすにいたった。・・・・

ところで、この問題をときほぐしていくために、その手がかりとして、本稿ではマックス･ウェーバーの社会学ないし経済社会学の理論を援用したいと思う。それは、一つには彼が｢経営｣という語を、いやいっそう正確には》 Betrieb(ベトリープ)《―その立ち入った意味内容は後段で説明する―という語を、社会科学の術語として、ひじょうに意味深くもちいた最初の人だったからであるが、そればかりではない。彼の》Betrieb(ベトリープ)《理論の学界への影響は、意識されていると否とに関わらず、いまだにきわめて広くかつ深いものがあるように思われるからである。じっさい、経営学とりわけ経営社会学のさまざまの流れのなかに、したがって経営史学のさまざまな流れのなかにも、ヴェーバー的な思考様式が見えかくれしながら現われてくる。いや、ヴェーバーの名がほとんど出てこないばあいでも、彼の学説とのあまりにも大きい類似に驚かされることがしばしばであって、やはり｢経営｣概念の理論的把握にとって、最も重要な根源の一つとなってきている、といってよいのではなかろうか。本稿では、いわばそうした根源にひとたびたち返って、そこから問題の所在を照射してみたいと思うのである。・・・・・・

 

いままでは、ヴェーバーの》Betrieb(ベトリープ)《という術語にたいしていちおう｢経営｣という日本語をあててきた。けれども、ヴェーバーの概念規定に忠実であろうとすると、実はこの訳語は必ずしも十分に正確ではないのである。というのは、こういう理由からである。このごろ｢運営｣あるいは｢運営体｣という語がさかんに用いられているが、ヴェーバーのいう》Betrieb(ベトリープ)《はほぼこの語に照応するような広い適用範囲をもつものであって、必ずしも経済という文化領域に限定して用いられているわけではない。それに対して、日本語の｢経営｣は、決して必ずというわけではないが、主として、あるいは特に、経済に関連して使用されるのが通常のように思われるからなのである。以下いままでと同様｢経営｣の訳語を用いておくが、その場合、ヴェーバーの用語法にしたがって、｢経営｣のなかには、経済以外のさまざまな文化領域に姿を現してくる運営(ないし運営体)をも包含させて使用することにしたい。この点も、念のため、念頭に止めておいていただきたい。

さて、ヴェーバーの場合、｢経営｣とはいったい何であるのか。彼の言うところを紹介してみると、およそつぎのとおりである。｢経営｣とは、まず一定種類の持続的な有目的行為である。それは持続的であって、断片的ではない。いまはこのことを行うが、しばらくすれば別のことを行うというような、それぞれ異なった目的を持つ、バラバラな諸行為の単なる寄せ集めなどではなく、一定の目的のもとに一貫して続けられていく行為である。｢経営｣は、ヴェーバーのばあい、なによりもまずそうした人間の行為を意味している。ところで、こういう基礎的理解にもとづいて、彼はさらに｢経営体｣Betriebsverband(あるいは経営団体)という概念―普通はこれも｢経営｣と呼ばれているようだ―をも定義していく。すなわち、｢経営体｣とは、そういう持続的な有目的行為、つまり｢経営｣を行う｢管理のスタッフ｣Verwaltungsstabを具えているような｢団体｣Verbandである、と。言いかえるならば、団体の内部に管理のためのスタッフが存在し、そのスタッフの管理によって経営が行われる、そうした団体が｢経営体｣だというわけである。・・・・・

ところで、団体の内部に管理のためのスタッフが存在し、彼らの団体の成員すべてを率いて他ならぬ経営を行うという、そうした経営体にあっては、そのような事情からして当然に、その内部には一定の｢規律｣Disziplin[14]がそなわっていなければならない。言いかえるならば、経営体は規律のある団体でなければならない。したがって、また彼の表現をもってすると、経営体は｢規律｣の上にうちたてられた｢組織｣Organisationだということにもなる。

ところで、経営体の内部でそのような一定の規律が保たれている・・・・以下、

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2004年3月25日(7)　今日は卒業式。教養ゼミ生であった学生が別れの挨拶に研究室までやってきてくれた。うれしかった。ゼミ形式で話し合った学生諸君は教養ゼミであってもなにか一般の講義とは違うようである。対話形式のゼミの重要なところだろう。みんなの活躍を期待したい。母校のことも折に触れ思いだし、遊びに来て後輩を支援してほしいものである。

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2004年3月25日(6)　総合理学研究科･佐藤真彦教授HPに大学のカリキュラム作業部会の報告書･学長への要望書が掲載された。｢全国国公私立大学の事件情報｣からの引用である。その元は、教員組合の情報である。佐藤氏が下線を引いている部分が、まさにこの間の大学改革をめぐる問題を端的に示している。「本作業部会の活動が徒労に終わらないためにも」という部分に注意を喚起したい。それは何を意味するか？

 

 

学議(大学の自主的組織)に基づくカリキュラム作業部会の学長宛て中間報告

 

全国国公私立大学の事件情報

http://university.main.jp/blog/archives/000656.html　

 

----佐藤教授HPより--------

 　本作業部会は本年1月27目、学長からリベラルアーツ・外国語（主に英語）・IT教育に関連したカリキュラム編成と理念などについて協議することを依頼されて組織されました。しかし、すでに設置主体である横浜市[15]が設置した「コース案等検討プロジェクト部会」(以下、プロジェクト部会)がカリキュラム作成の作業を進めていました。しかもプロジェクト部会は、カリキュラムについて最終決定の権限をもっているとされています。

　本作業部会は学長から、プロジェクト部会と「相補う関係となることが期待」(2003年12月26日学議での資料)されています。しかし実際には、本作業部会で議論したことをプロジェクト部会に反映するための公式ルートは存在しません。このため本作業部会でいくら議論を尽くしても、その内容がプロジェクト部会での議論に反映されなければ、学長が期待された役割を果たすことはできません。

　本作業部会はこれまで、２回の会合を開催し、日常的にはメーリングリストによる意見交換を行ってきました。本作業部会として提言をしたく、ここに報告いたします。以下の提言を「大学改革推進専門委員会」で報告していただき、プロジェクト部会へ意見表明されることを期待しております。本作業部会の活動が徒労に終わらないためにも、よろしくお願いいたします。

なお本作業部会は、プロジェクト部会が活動を終えるまで、今後も不定期ではありますが活動を継続する予定です。

　　以下略

 

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2004年3月25日(5)　 講演とシンポジウム「任期制・年俸制導入と評価制度は大学と教育をどう変えるか 」（04-03-28:横浜）の「開催趣旨」を頂戴した。「知的生産」の場としての｢大学の論理｣の強調、「大学の論理」(科学文化の研究と教育の独自の論理＝自由の論理・科学的批判の論理＝精神的な発見創造の論理)に基づく改革の必要性を訴えている点に、特に共感をおぼえる。

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2004年3月25日(4)　教員組合による学長・事務局長の議会答弁批判の文書が公開された。

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横浜市議会予算第一特別委員会における

大学当局・事務局の答弁は事実関係を歪曲するものである

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2004年3月25日(3)　就業規則問題も、教員組合がしっかりしないと大変なことになりそう。ルールを労使双方で従来の教員の勤務実態などを踏まえて合理的な範囲で設定するという態度が大切だと思われるが、対等な話し合いではなく、会議の場も一方的なやり方を取る大学もあるようである。当局(事務局長)は、任期制などに関する教員組合の主張を軽く見せるために、「組織率が２５％」などと、医学部教員が教員組合に結集していないことを強調している。今後は、医学部の教員の組合への結集が重要な課題となるのではなかろうか？　すくなくとも｢過半数代表｣問題では、それが重要となる。教員組合の主張が圧倒的多数の教員の支持を踏まえたものであることが望ましいわけで、それこそが民主主義的原理、民主主義的意思確認のあり方であって、それでこそ使用者･経営者との対等性が実質的に担保されるであろう。

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　　新首都圏ネットワーク

 

過半数代表と補佐人について

高等教育フォーラムのみなさんへ

大阪外大教職組の今岡良子です。

大阪外大もようやく当局が過半数代表として組合の委員長を認めて
金曜日から本格的な協議に入ります。
私たちは補佐人（副委員長２人と書記長）を含めて
過半数代表の支持署名を集めましたが、
当局は協議には過半数代表一人だけが出席するように、
金曜日の協議は予備的なものにするので
それには他の人も参加していい、と言ってきました。

金曜日の予備的な協議には総務課長以下が参加します。
火曜日からの協議には副学長と事務局長、
職員係長らを書記として参加させます。
こちらはメモをとる人間も認めないとはあまりにも不平等で、
労働基準法第２条に労働条件を決定する時には
労使対等平等であるという原則に反します。
金曜日の予備的な協議で基本的なことを確認しながら
対等な協議の場とすることを要求するつもりですが、
他大学ではどうでしょうか？
過半数代表が一人で使用者と協議しているのでしょうか？
補佐人も含めて支持署名を集めた場合、
補佐人の協議への参加についてどのような状況でしょうか？　

 

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2004年3月25日(2)　任期制導入問題は、国立大学法人で緊急の問題となっている。｢新首都圏ネットワーク｣の情報だが、重要なので以下にコピーしておこう。「普通にやっていれば再任される」とか、「任期制が教員の教育研究活動へのエンカレッジとなる」との見解[16]には、全く法的根拠がない、というところを本学の教員はよく熟読しておく必要があろう。「任期制に同意したのだから、再任はありません」で済んでしまうのである。京都大学･井上教授再任拒否にあたっての所長・当局側の発言をよくかみ締める必要がある。｢善意｣で任期制に同意し署名した人は、まさに｢現代の奴隷｣になってしまうであろう。研究者としての自由な発言の可能性などはなくなってしまうであろう。井上一知教授が、「おかしい、不当だ」と裁判に訴え、最初は門前払いされ、大変な精神的苦痛をおして人々に働きかけなければ、法廷にさえ持ち出されなかったのである。学長の発言では、こうした事実関係を書く事も｢あおり｣ということになるのであろう。ソクラテスも、「青年を惑わす」として法廷の場に引き出されたのだが、「あおる」ということでいつ矢が飛んでくるかもわからない。

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Academia e-Network Letter No 81 (2004.03.25 Thu)
http://letter.ac-net.org/04/03/25-81.php
━ AcNet Letter 81 【1】━━━━━━━━━━ 2004.03.25 ━━━
投稿：
西日本の某国立大学における就業規則に関する協議
の過程で明らかになった事項

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法人化後に「全部局等に導入する」とされる「任期制」であるが、
4月1日段階におけるその運用に関しては、あまりにも不明瞭な事項
が多い。

繰り返し強調するように任期制の本質は、たとえ任期終了後に「再
任可」とされる場合でも、任期が終われば新規の採用となるので、
雇用する側は再任の義務は負わないことに尽きる。それは、再任拒
否による解雇権の乱用につながる可能性が極めて高い。「プロジェ
クト型」でない任期制雇用への同意書にサインすることは、「任期
が終われば、私の首を切ってもかまいません」と認めることに他な
らない。したがって「普通にやっていれば再任される」とか、「任
期制が教員の教育研究活動へのエンカレッジとなる」との見解には、
全く法的根拠がない。

4月1日からは、教員の任期制は「国立大学法人○○大学の就業規則
に則る任期制」という新たな状況に突入することになる。現在任期
制により雇用されている教員は、改めて就業規則上で規定される任
期制の契約をしなおすこと（新たな同意書への署名・捺印）が必要
となる。しかし、新たに任期制に関して合意を得るためには、就業
規則の上で、任期制による再任拒否が解雇権の乱用にならないため
の歯止めを示さねばならない。また、該当する教員が就業規則案に
同意しない権利を留保することも可能である。

　以上の前提のもとで、下記の事項について確認する。

1.プロジェクト型の場合を除き、現在任期制が適用されている教員
が4月1日に同意書を提出しない場合は、期間の定めのない教員とし
て雇用される。なお、任期制に同意しない教員に、不利益を及ぼし
てはならない。

2.いわゆる「プロジェクト型任期制」の場合は，労使が合意しない
場合は，３月３１日で分限免職とするか，プロジェクト終了時に解
雇の扱いとなる。

3.いずれの場合も、任期制で採用する前に雇用者側が人事交流委員
会等を設置する義務がある。

　

 

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2004年3月25日(1)　理学部数理学教室の学長等への公開質問状が出されていることを教員組合のHP（3月23日付け記事）　で知った。「数理学教室の主張」HPで公開されている。一楽教授HPにもリンクが張ってある。①学長宛て(3月9日付け)、②大学改革推進担当部長コース等検討プロジェクト部会座長・岡村　一氏(行政職員)宛て(3月18日付け)、③コース等検討プロジェクト部会座長・布施　勉氏(国際文化学部教授)宛て(3月18日付け)の3通である。ここで、すでに現状で、行政当局が、数理学教室の発展やその意思を考慮することなく、意のままにコース等の改廃を行う様子が浮き彫りになっている。コース等検討委員会には数理学教室の教員も加えられているが、その主張は押しつぶされたことが明確である。質問状にたいする明確な説明責任が、学内外にたいして、学長や座長二人にはあろう。その回答を見て最終的には判断すべきであろうが(回答が出されるかどうか不明なので)、以下、いくつかの問題点を書きとめておこう。

 

副市長や事務局長は、｢大学像｣を踏まえて改革をやっているとくりかえし議会で答弁している。だが、その主張はこの数理学教室の文書と照らし合わせて見るだけでも、便宜主義的であることが判明する。

学内からたくさんの問題点が指摘されている「大学像」について、一方で、行政当局の考え･政策にとって都合のいいものは｢大学が決めた大学像｣に依拠すると称し、｢大学像に基づく改革｣を推進する。しかし他方で、｢大学像｣の中で行政当局の考え・政策にとって都合の悪いものはまさに大胆に無視している。コースの設定のし方、コースの数などはその典型である。それが、数理学教室の訴え文書で明確に指摘されている。このように行政当局の意のままに｢大学像｣の項目の取捨選択、政策や制度の変更が行われるのである。

大学人が無力感に陥り、侮辱されたと感じるのは当然であろう。こうした行政主導では大学の自治は極小化される。その歴史と現状がこの数理学教室の文書一つからだけでも社会に対して、学内外にたいして明らかにされているといえよう。

 

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2004年3月24日(2)　3月17日の市会での議論･傍聴記録が総合理学研究科･佐藤真彦教授HPに掲載された。学長や事務局長の答弁は、はじめに｢大学像｣ありき(もちろんその前提に市長諮問委員会の｢あり方懇｣答申ありき、その市長諮問委員は当然にも市長任命)である。いくつか答弁の問題点を指摘しておこう。

 

高井事務局長は、「教員人事は定款事項ではない」と断定している。しかし、国立大学法人のすべてにおいて、また、秋田県立大学のほか、大阪府立大学の｢定款｣などにおいても、教育研究審議会に教員人事は含まれて規定されている。市大定款の場合、理事長のしたに学長をおき、経営サイドに人事権をにぎるという目的だけが先行したものである。おそらくは横浜市大の｢定款｣は、理事長権限の強さという点で、一つの典型となろう。問題は、そうしたやり方で本当に立派な教員が集まるか、教員が生き生きと研究教育業績をあげて市民と日本･世界に｢横浜市大あり｣ということになるかどうか、これまでの存在感よりも格段の存在感を実現できるか、ということである。勝負はそこにある。

この間、｢あり方懇｣答申→｢大学像｣路線で突き進んできた結果、｢定款｣までこぎつけた。だが、「定款」は一つの手段でしかない。問題はその先にある。理事長権限の強い各地の大学で、いかなる現象が起きているか、それが問題である。理事長権限が強すぎて問題を起こしているのは、いわゆる「伝統的な」、｢本格的な｣、あるいは「一流の」大学ではないことを肝に命じる必要がある。

学長選考会議における｢学外者｣の数･内容の問題について、学長は、｢学外者とはいっても、学長が指名するものであるから、[選考にあたって]教員の意見を十分に反映できる｣と答弁している。問題は、その学長がはたして大学の教員の民主主義的意思をきちんと反映できるかというところにある。｢十分に反映している｣というのは、どうして主張できるのか？　その主張の透明性･客観性はどう保障されるのか？　これまで何らかのかたちで(直接選挙であれ間接選挙であれ)、学内の研究教育の担い手の選挙によって意思を確認していた。民主主義の根本ルールである。それはいったいどうなるのか？

今回、理事長も学外の人物が突然、市長によって任命された。いったい誰が探してきたのか？　誰が今回の人物の能力・見識の評価を行ったのか？その能力見識の「評価の客観性・透明性」はどうなるか？　密室で決定されたことではないのか？　トップダウンではないのか？　教授会の人事の｢透明性･客観性｣を問題にする発言を繰り返す以上、理事長の選考過程に関して、行政当局には説明責任がある。それとも、公募したのか？　選任の判断基準は？[17]　

現状では「密室で、トップダウンで」決められたとしか理解しようのない理事長の下で、しかも｢定款｣にもとづく絶大な理事長権限の下で、学外者が「学部長」その他に任命されるとすれば、要するに、大学のすべての人事権は行政当局(具体的には誰か？)の思うがままにできるということである。これは、大学の根本原理の否定であろう。

 

大学院博士後期課程の問題に関しても、｢精選する｣という表現に質問者が｢一抹の危惧を抱｣いている。当然である。理事長権限のもとで｢精選する｣ということになれば、どうなるか？　しかもすでに、「横浜市の施策」とか｢市民･産業界への寄与｣という表現で対象を限定をしている。その言葉自体は誰も否定しようがない。だが、その｢横浜市の施策｣、「市民･産業界」の希望･意思を誰が、どのように判断するのか？　これまた、行政主導で、大学の自律的･自立的な判断をおこなう場がなくなれば、大学は名前だけの大学に転落するであろう。「大学の自治」･｢学問の自由｣は根底から否定されることになろう。

 

学長は答弁で、｢何でもやるということには限界がある｣と答弁している。当たり前のことである。そんなことを誰も聞いてはいないであろう。これまでの歴史と到達点を踏まえて、どのような原理でどのように精選するのか、それが問われている。しかも、総合文化の博士課程も経済学研究科の博士課程(創設が1997年)も完成してまだ数年しかたっていない状態で、今回の「改革」騒動(｢精選｣｢縮小｣方針)に巻き込まれた。このような現実を見ると、行政当局はいったい一貫性があるのか(いや一貫性などないというのが本当だろう)、「精選」などというがその原理について、透明性がどこまであるのか、危惧を抱くのは当然だろう。

 

教育研究審議会の審議事項に、人事のほか、学則等の重要事項が欠如していることについても、議員が質問している。きわめて当然のことである。だが、国立大学法人等でまさに教育研究の独自の責任を明確にする意味で、教育研究審議会に付与された権限さえも経営審議会が握るというのは、理事長･学長分離の大義名分とした主張、すなわあち｢経営｣と｢研究教育｣の分離･責任の明確化という主張を覆すものである。すべてを経営が握るという制度設計となっている。これはおそらくは、「オンリーワン」であろう。あるいは市大の先例を見て、理事長権限の強さを導入しようとする地方自治体行政当局(大学を行政の支配下におこうという行政当局の力の強いところ)の「模範」とされることになろう。

 

事務局長は、現行の教授会による教員人事が「透明性･客観性に欠ける」と繰り返し主張している。しかし、商学部に関していえば、わたしが着任(1996年)して以降、わずか8年の間に、思い出すまま列挙すると、早稲田大学(政経学部･社会科学部・大学院アジア太平洋研究科)、東大(工学部)、一橋(ビジネススクール)、神戸大学(ビジネススクール)、慶応(法科大学院)、都立大学（法科大学院）、青山学院大学（法学部）、法政大学（経営学部）、広島大学（大学院経済学研究科）、東北大学（大学院経済学研究科）、香川大学(経済学部)、中央大学文学部(2名)と毎年のように割愛願いがあった[18]。これは何を意味するか？公募を通じて優秀な人間をスタッフとして選考してきたことの証ではないか？　

仮に一部に｢透明性･客観性に欠ける｣人事がありうるとしても(例外事項はいかなる組織や制度にもある)、その理由や根拠をしっかり調査してみる必要がある。事務局長は議会答弁で発言したのであり、その立証責任がある。｢透明性･客観性に欠ける｣と称して大学の不名誉になることを公の場で発言した以上、説明責任があろう。だが、そもそも、教育研究の専門家ではない事務局長が、どのような判断根拠を持っているのか？　その判断基準をこそ公にすべきであろう。その判断根拠の明確化がないかぎり、まさに経営が権限をもつと、むしろ研究教育の本来的判断基準以外の判断材料がもちこまれて、大学の研究教育・その担い手として　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　の教員人事が歪んでしまう危険性すらある。

教授会の人事権を奪うことに関して、事務局長は｢教育公務員特例法｣を持ち出している。だが、教授会に重要事項(教員人事が最重要であることは明確である)の審議権を与えているのは学校教育法である。したがって、学校教育法に違反することをやろうとしているのである。法体系の専門官庁である文部科学省が大学の自治を根底から破壊することを可能にする制度設計についていったいどのような判断を示すのか、注目したい。

 

｢人事委員会｣の合法性ももちろん問題になるが、その審査の妥当性(透明性･客観性)もまさに問題となる。｢透明性･客観性｣がどのように保障されているのか、これがいちばん問題となろう。理事長権限の強さの下で、客観性や透明性の欠ける人事が相次ぐことが危惧される。とりわけ、研究教育という学問固有の部分に関しての判断の｢透明性･客観性｣が重大な問題となろう。研究教育の固有の部分に関してこそ、専門集団としての教員の判断力が求められる分野であるが、それが非専門家によって歪曲される可能性は厳然として存在する。

 

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2004年3月24日(1)　村上龍JMMへの「読者投稿」（スペイン･テロ特集）から、スペインにおけるイラク戦争反対が開戦･参戦時に80-90％にのぼったことを知った。今回の社会労働党の勝利とスペイン軍撤退表明には。この面からも、しかるべき前提条件があったのだ。また、ベルギーでもこの間一貫して、反イラク戦争の態度が明確であり、「昨年のイラク戦争に際しては、独仏両大国の反戦表明ほどは日本で報じられていなかったようだが、その独仏に歴史的に蹂躙され続けて来たベルギーは、この一年に亙り、一貫して極めて強い調子で反戦を訴え続けている。「国連を無視し、道義のない戦争を開始した国々の責任を追及するべきだ」と、現外務大臣が言い切っているのである」と[19]。大学人の内面的な強固な支持と参加のない外面的形式だけを整えた行政主導の「改革」もまた、｢大学自治｣｢学問の自由｣の創造的発展をもたらさないであろう。その意味で責任が追及されつづけるであろう。学生･院生に対する傲慢な態度も許されることはないであろう。他人事ではない。批判には謙虚に耳を傾け｢意識改革｣する必要があろう。

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2004年3月23日（4）　本学定款審議の最終局面で、教員組合は、先日の学長発言を批判し、撤回を求める声明を出した。本学と全国の大学人にとって、重大な問題をはらんでいる発言として、的確な批判となっていると考える。以下にコピーし、リンクも張っておこう。

--------学長への抗議文--------　

横浜市議会予算第一特別委員会（2004年3月11日）及び朝日新聞（神奈川版、2004年3月16日朝刊）のおける学長発言に対する抗議文

 

小川　恵一　横浜市立大学学長　

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　横浜市立大学教員組合

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2004年3月23日

 

　横浜市立大学教員組合は、横浜市議会予算第一特別委員会（2004年3月11日）及び朝日新聞（神奈川版、2004年3月16日朝刊）における学長発言に関し、以下のように抗議を申し入れるとともに、横浜市立大学教員組合、横浜市立大学教員、横浜市立大学学生・院生、そして全国の大学関係者に対して謝罪することを要求する。

 

目次

1.　横浜市議会予算第一特別委員会（2004年3月11日）における発言について

（1）任期制に関する一部教員、教員組合の活動についての発言

（2）新たなコースとカリキュラムの枠の決定に関する発言について

2.　朝日新聞（神奈川版、2004年3月16日朝刊）における学長発言について

（1）「『誰が見ても問題がある教員』は10％」という発言

3.    最後に：真理を探求する研究者・教育者としての学長に求めるもの

-----本文は省略：リンク文書を参照されたい------

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2004年3月23日（3）　「新首都圏ネットワーク」の情報によれば、国立大学法人における就業規則問題も、つぎつぎと検討がすすんでいるようである。
「国立大学法人 就業規則・管理運営規則等 データベース」
http://www.h6.dion.ne.jp/~uni-uni/

2004年3月23日（2）全大教が第32回臨時大会で、都立大学や本学の改革のあり方、定款の内容に関して、決議をあげたことを  「全国国公私立大学の事件情報」で知った。リンクをはっておこう。

全大教、「設置者権限」の名の下にすすめられている大学の自主性・自律性を無視した公立大学における「改革」に反対する決議（３月１３日）

 

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2004年3月23日（1）　本学の「改革」問題における「平穏さ」は、全国立大学における国立大学法人法の成立過程とその後の事態にも共通するものだと思われるが、その要因を考えるにあたって熟慮すべき素材が紹介された。以下にコピーしておこう。ただひとことコメントしておけば、「個人の自由」と「体制への同調」が両立する範囲が問題であり、全体主義国家において、体制に反対する自由を含めた意味での「個人の自由」が抑圧されていたという点では、まさに独裁体制そのものである。「通常の独裁体制」をどのように定義するか、これは著書全体を読んでみる必要がありそうである。もう1点、アイヒマンに関して言えば、アイヒマンが現実の活動をしたドイツ第三帝国の闘いの状況と場（ヒトラー・第三帝国が当時の世界の全体状況のなか主体的に選び取り推進した政策とその結果としてのヨーロッパ戦争→独ソ戦→世界戦争･総力戦→その敗退過程）、そこで彼が持っていたポテンシャリティをきちんと見据えなければならない[20]。アイヒマンを含むナチ党･親衛隊幹部とそれを指示する大衆のドイツ民族主義（ドイツ・ナショナリズム、自民族至上主義・そのイデオロギーとしての人種主義）の共通項を見なければならない。「平凡な、陳腐な人間」が、ナチ党･親衛隊と第三帝国の権力構造（ドイツ･ナショナリズムの思想構造）のなかで占める位置･権限･責任によって、その果たす機能が重大になる[21]。そこで「凡人」が「悪魔」に上昇転化する。ハンナ･アーレントのように「平凡さ」、「陳腐さ」に巨大な犯罪、巨大な悲劇の原因を求めるのは、的確な認識ではない。アイヒマンとアーレントの権力状況は逆転しているのである。第三帝国の現実の闘いの場と生きた権力構造（職務としては第三帝国保安本部第ＩＶ局B・IV課長･ユダヤ人移送担当）から切り離されたアイヒマンの姿、しかも戦後・体制崩壊後、十数年も経た後、逃亡先から拉致されイスラエルの法廷の場に被告として引き出されたアイヒマンをみるだけでは、アイヒマンのアイヒマンたる真の姿は把握できない。現在の大学人の行動様式･思考様式を考えるにあたっては、現在の大学人（日本だけではなく世界の大学人だろうが）が直面するグローバリゼーションの圧力群の元での日本の大学間競争の圧力、世界的な学問的批判の圧力群、世界的な高度な科学技術の1秒1分を争う発達の全体状況を見る必要があろう。そこでの現実認識の一面性、視野狭窄を直視する必要があろう。そこでは、「精神なき専門人」（M･ウェーバー）が、ますます社会･学問的営為の非人間化を推し進めることにもなろう。「精神なき専門人」は、当然にも、人文社会科学系の人間的豊かさとは縁がない。「精神なき専門人」にとっては、人文社会系の諸学問とその研究者は、偏狭なナショナルな分野以外、切り捨ての対象としか見えてこないのであろう。

 

　

━ AcNet Letter 80 【4】━━━━ 2004.03.23 ━━━━━
『「不自由」論――「何でも自己決定」の限界』より
      仲正昌樹著、ちくま新書432、2003.9
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480061320/
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p40「こうした「同一性」の論理が、"自然と"圧倒的に強くなった
体制においては、人々は独自の判断を止めて、自発的に、つまり自
らの"自由意志"に基いて、「全体」の目的に「同調」するようにな
る。自分の利益を自分の責任で孤独に追究するよりも、(自分をそ
の一部として包んでくれる)「全体」の利益に合せた方が楽である。
このように、「個人の自由」と「体制への同調」が――少なくとも
形のうえでは――両立するという意味で、「全体主義」は通常の独
裁体制とは異なるわけである。近代的な主体性を備えた人間にとっ
て最も本質的な価値である「自由」を自ら投げ捨てて、「全体」と
「同化」するように仕向けるからこそ、全体主義は危険なのであ
る。」

p41「多くのジャーナリスト・知識人たちは、数百万人のユダヤ人
を計画的に虐殺したアイヒマンを、「悪」の化身のようなものとし
てイメージしていた。ところが、実際に法廷に現われたアイヒマン
は、アーレントの目から見て、上からの命令を黙々とこなす、どこ
にでもいる平凡な役人でしかなった。・・・・・アーレントはむし
ろ、そういたアイヒマン的な平凡さ、個性のなさこそ、巨大な「悪」
を可能にしたのではないかと考えた。裏を返して言えば、平凡な我々
のほとんどすべてがアイヒマンになる可能性がある、ということだ。
「イェルサレムのアイヒマン」の副タイトルは「悪の陳腐さ」であ
る。

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2004年3月22日（2）　20日の後期入試判定のための臨時教授会では、市の「コース等検討委員会」の検討内容（全体像）について、学長すらなにも知らない状態が問題となった。まさに「市の機関が市独自で決定する」という仕組みになっている。大学側からの意見は、「大学像」に賛成するなどの「踏み絵」を踏んだ人々および学長推進の人々などからなる「コース等検討委員会」委員を通じる道しかない、ということになる。はたしてそうした大学外の市当局の検討が、大学の自主的独立的な検討に耐えるものかどうか、問題である。市側から出された全体像が大学側の自主的判断の結果と矛盾する場合が問題となる。その矛盾点に関して、大学側には市当局の案が押しつけられるということになり、大学の自主的自律的判断は否定されることになる。今週中にもその市当局の案が決まるそうである。繰り返して指摘しておけば、その内容は各学部長はもちろん学長さえも知らない（知らされていない）内容である。商学部教授会はその情報を求める文書を3月4日付学部長名で提出した（要望書）。学部長と市当局（大学改革担当）との会談では、「情報は検討委員から漏れているはず」ということで学部の情報公開要望書にたいする返答はなかったという。「漏れている情報」はあくまで非公式なものであり、しかも全体像ではなく、さらに各委員が提出した意見書･要望書などがどのように反映されたのかもわからないとしたが、途中経過が漏れると議論になり紛糾するなどの理由で、公式な情報提供･公開はしなかったということである。結局、教授会では何ら具体的内容は示されなかった。先日の経済学科会で出た割愛の件は、東北大学大学院経済学研究科からであった。正式な割愛人事案件として、学部長から提案があり、10月1日付の割愛ということで、異議なく承認された。他に、3月末で早期・依願退職する教員からの最後の言葉（お別れの挨拶）があった。そのうち、印象的だったのは、「壮大な研究構想･高い志の水準と現実の仕事・自分の能力との乖離」に苦慮したことの正直な吐露であった[22]。その苦闘自体は、多かれ少なかれ、また何らかの程度で、ほとんどすべての研究者の体験するところであろう。大学からは自由になって、これまでの研究蓄積がまとめられることを祈る。

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2004年3月22日（1）　福岡教育大学教員有志による公開質問状が届いた。独立行政法人化を前に、きちんと合意形成をしないで、独裁化（大学の否定）が進む大学が増えつつあるのが、現状か？　大きな国立大学と教員養成系の大学との違いか、それとも実質はすべての国立大学に共通するのか、少なくとも以下の情報を見るかぎり、大学の自治は国立大学でも風前の灯のように感じられる。いや、最近数年の自体の推移を見ると、「大学の自治」、「学問の自由」は日本の大学にあったのか、とすら感じる。国立大学法人法や公立大学法人法は、いったいなんなのか？　日本の科学技術文化の自由で創造的な発展のための制度設計ではなかったことをますます露骨に示すということか。まさに21世紀の科学技術文化の自由で創造的な発展なくしては、日本は世界で名誉ある地位を占めることはできないのではないか？　自由で創造的なシステムなしに、自由で創造的な研究教育は出きるのか？　システム移行期における独裁体制への移行が、大学の自治と学問の自由を根底から破壊し、日本が世界のなかで果たすべき創造的な科学技術文化の研究教育が駄目になるを危惧する。上意下達の事務官僚に都合のいい従順な批判的能力･批判精神（学問研究･真理探求の基本精神＝人類が到達した真理の発見認識をさらに深め、既存の地平を乗り越え、新たな真理を発見し普及していく精神=創造的批判･批判的創造の精神）の欠如したひとびとが大学全体を覆うことになりそうである。それがいきつくところは、批判的な自由な意見を述べる人は、あたかもかつてのソクラテスのように（あるいは都立大学の場合のようにその徴候がすでに現在でも現れているが）、「弾圧」されることになるかもしれない。大学人は研究教育の使命の達成を基本において、しっかりとしないと、本当に大変なことになってしまうのではないか。

                                                                                                                  

 　　　　　　　　　　　

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　　　　　　　　　　　　　                   　　　　　　　　　　　　　　　   　　　　　　　　　　　　　　2004年3月19日

福岡教育大学学長　

　松尾祐作　殿

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　  　　　　　　　　　　　　　　　　　　　福岡教育大学教員有志

 

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　公開質問状

　　　　　　　　　　　　　　　　「福岡教育大学松尾祐作学長の大学運営について問う」

 

  　　　　　　(1)  平成16年度人件費が4,400万円不足するという主張の根拠について

  　　　　　　(2)  学長支持のための署名活動への学長の関与の有無とその活動に伴う人権侵害について

  　　　　　　(3)  法人の諸規程と役員人事について

 　　　　　　 (4)  学内混乱の責任と学長辞職の時期について

 

　　　　　　　　　　　2004年4月1日の国立大学法人の発足まで秒読み段階となりました。しかしながら、福岡教育大学においては、いまだに法人移行後の大学運営に関わる重要事項が大学構成員に示されていないという異常な状態となっています。

　　　　　　　　　　　松尾祐作学長は、本年1月8日に法人移行後の大学運営組織案を教授会に諮らないという宣言をして以来、大学構成員への十分な説明もないまま、法人移行準備を専決的に進めています。それに対して教員側から過半数の署名による教授会開催要求がありましたが、学長はこれを無視し続け、ついには2月20日に教員有志から学長の辞職を求める声明が出されるに至りました。

　　　　　　　　　　　学内では、この間の運営と法人化後の体制をめぐってさまざまな憶測が飛び交っています。このような状況は、教育と研究の場として望ましいものではありません。本来は正規の教授会において質問すべきところですが、それが拒否される以上、今ここに公開質問という形で、大学運営の現在と将来にかかわる疑問と疑惑を率直に提示します。風評としてささやかれているものにもあえて言及していますが、学長の説明によって、これが杞憂に過ぎないことが明らかになり、大学構成員の間にある不安と不信が払拭されることを願っています。

 

 

【質問１】平成16年度人件費として4,400万円が不足するという主張に正当な根拠があるのでしょうか。また、それを研究費削減によって補填するお考えでしょうか。

 

（質問趣旨）この人件費不足という主張については、次に示すように、極めて不透明な状況となっています。

１．文部科学省は定期昇給分の予算をつけていたにもかかわらず、本学のシミュレーションでは定期昇給分(後に定期昇給相当分と訂正)の4,400万円が不足することになるということですが、その算定根拠は不明です。本当に16年度に4,400万円が不足するのかさえ不明です。

２．文部科学省は非常勤講師分の予算をつけていたにもかかわらず、通常の手続きを踏まえない学長裁定によって、4月以降の非常勤講師予算8,900万円を半減して流用することで不足分を補填しようとしました。さらに、新聞でこれが報道されるやいなや、先の見通しもないままに、この学長裁定を事実上撤回しました。

３．全学説明会において、会計課長からは、シミュレーションの結果であると繰り返されるだけで、いくら要求しても算定プロセスも基礎資料もまったく示されませんでした。不足の根拠が不明なまま、学長は、会計課長の「非常勤講師予算削減が無理なら研究費で補填」という発言を容認し、さらに、自らは「金のことはわからない」、「見切り発車だ」とさえ発言しました。

 

　　　　　　　　　　　200人に及ぶ非常勤講師については、すでに授業担当の内諾をもらった上に、シラバスの作成まで依頼しており、時期的に見ても、一方的にこちらから断ることは社会通念上許されないものでした。また、現在のカリキュラムは非常勤講師を前提として作成されており、突然の削減は、授業に深刻な影響が出るところでした。

　　　　　　　　　　　さらに、全学説明会において、会計側から提示された16年度の教育・研究経費は、15年度実績に比較して、大幅な減額となるのではという質問に対し、会計課長はその可能性を認め、だから16年度の教育・研究経費の確保をどうするかが大変なのだと返答しました。しかし、15年度実績の内示があった教育・研究経費がなぜそのように大幅な減額となるのかを説明できる物件費間の配分基準や算定根拠が示されず、この重大な問題もいまだ不明のままです。

　　　　　　　　　　　これらのことは、法人化後の本学のあり方が教育・研究を軽んじる危険性をはらんでいることを示しています。

　　　　　　　　　　　本学は、公共性の高い国立大学であり、法人化後も予算の多くは国民の税金で賄われます。したがって、その使途については、教職員や授業料納入者である学生だけでなく、納税者である国民に対しても説明責任があります。巷では警察組織の裏金づくりのニュースが流れていますが、当然国立大学も社会から不信を招かないようきちんと情報公開する必要があります。根拠が不明な予算について、事務局説明を鵜呑みにし、教育・研究経費削減を提案する学長の姿勢は、社会に対しても不誠実であると言えます。

 

 

【質問２】2月20日～28日頃に行われた学長を支持する署名には、学長も関与されたのでしょうか。また、この署名集めの段階で人権上問題と考えられる動きが、学内に数多くあったことを学長はご存知でしょうか。

 

（質問趣旨）2月20日に教官有志による「学長の辞職を要求する」旨の声明と相前後して、学長を支持するための署名活動が展開されました。署名が個人の自由意志によってなされるなら、それ自体に問題はありません。しかし、この学長支持署名運動が展開されるなかで、おそらくは呼びかけ人の意図にも反して、署名者の人権に関わる問題が数多く生じました。

　　　　　　　　　　　この署名活動において、学長を頂点とする大学上層部からの指示があったことが明らかになっています。例えば、いくつかの附属学校においては学校長や副校長が主導で署名集めが行われ、全員署名が達成されたところもあると聞きます。また、大学事務局では、管理職から事務職員ひとりひとりに署名が求められ、署名に応じなかった方はほとんどいませんでした。このように組織内の上下関係を利用して署名をとることは、職権の濫用ですし、パワー・ハラスメントと考えられます。一方、教員層に対しても、執行部やその周辺の教員による署名集めがなされたと聞きます。人事や予算配分の最小単位である講座の中で若手教官に圧力を加えたとしたら、それは人権を無視した行為であり、典型的なアカデミック・ハラスメントと言えますが、こういったケースも少なからず存在したようです。

　　　　　　　　　　　さらに、この署名においては、趣意書の一瞥を許されただけで考える余裕を与えられなかったことを圧力と感じた人もいたようです。

　　　　　　　　　　　このようにして集められた署名が、いくら数が多いとしても、本当に全学の意見と言えるでしょうか。

 

【質問３】法人化のための役員会規程、教授会規程などの制定や、役員人事などの案件は、いつ教授会に提示されるのでしょうか。また、文部科学官僚である事務局長を理事に登用されるつもりでしょうか。

 

（質問趣旨）学長は、法人移行準備の大半を専決的に進めており、これでは、国立大学の私物化につながりかねません。特に見過ごせないのは、法人組織の中核をなす役員会の人事であり、辻健介事務局長が理事に就任するとの観測がありますが、このことは、以下の点からみて容認しがたいことです。

　　　　　　　　　　　国立大学の事務局組織は、文部科学省から赴任する事務局長を頂点とするピラミッド構造を呈しており、法人化後もこうした構造が温存されます。そのうえ文部科学官僚である事務局長が、学内理事が2名のみである本学において理事としてその地位を占めれば、大学の教育研究への行政支配が強化されることになります。さらに、新たに別の局長が赴任して拡大役員会に入ることになり、行政官僚の影響力は、過大なものとなります。

　　　　　　　　　　　辻事務局長は、法人移行準備において学長を前面に立てながら、その実、教授会の長としての学長をミスリードしてきました。たとえば、法人化後の大学運営の指針となる中期目標・計画素案の策定において、教員側の多数意見を無視した官僚的トップダウンの手法で学長原案の作成に関与しました。こうして作成された原案は、全学教授会で二度にわたり否決される一方、教員主体で作成された案が全学教授会で可決され、文部科学省に提出されました。しかし、辻事務局長は、その後の素案の具体化作業において、基本方針を廃案となった学長原案の方向へ引き戻そうとしています。

　　　　　　　　　　　また、辻事務局長は、先にあげた非常勤講師予算半減や学長支持署名活動においても、事務組織のトップとして主導的な役割を果たしています。事務局人事も、自らの威光を示すためではないかと思わせるほど、適材適所の視点や時機への配慮に欠けるものでした。昨春には、国立大学法人化を控え人事異動を最小限にとどめて組織固めを図るべきところ、必然性のない大規模な異動が実施されました。こうした辻事務局長が理事として使用者となれば、本学の労働環境が劣悪化し、ひいては学生サービスの低下が懸念されます。現に、辻事務局長の実質的な指揮のもとに策定された法人化後の就業規則案は、管理色が強く、職員の勤務意欲を減退させ、とりわけ教員にとっては自由で創造的な教育研究活動への取り組みや社会貢献の意欲を殺ぐおそれすらあります。

　　　　　　　　　　　以上の理由から、本学の教員と事務職員とのバランスのとれた協働態勢を確立するためには、事務局長の理事登用は望ましくないと考えます。

 

 

【質問４】松尾祐作学長は、大学が現在異常事態に陥っていることの責任をどう取られるのでしょうか。「任期を全うするつもりもない」と述べられましたが、いつ辞職されるつもりでしょうか。

 

（質問趣旨）福岡教育大学は単科大学であるため、教授会が評議会の役割を兼ねており、大学運営に関する重要事項は、これまで教授会で審議してきました。確かに、国立大学が法人化されると、学長の権限が強化され、そのリーダーシップが求められることになります。しかし、こうした学長のリーダーシップは、決して恣意的なものであってはなりません。ところが、松尾学長は、4月に本学が法人化されれば、すべてが「リセット」されると発言し、恣意的にリーダーシップを発揮することが出来ると曲解して、法人移行準備の重要事項に関して説明責任を果たしていません。そのため、大学構成員の間に不安と不信が広がっています。マスコミの取材に対して、文部科学省も、「法人化の趣旨は学長が何でもできるということではない。学内のコンセンサスを得る努力は常に求められる」とコメントし、当惑をあらわにしています。

　　　　　　　　　　　昨年5月と9月の二度にわたって、法人化後の大学運営にかかわる中期目標・中期計画（素案）の学長案が全学教授会で否決されました。9月の全学教授会後に学内から辞職要求が出された際に、学長は、10月9日付の「法人化に向けての今後の大学運営について」という文書で、「学長としての責任を回避するつもりはない。法人化後の平成18年2月までの任期を全うするつもりもない」と述べています。

　　　　　　　　　　　上記１～３の質問趣旨で指摘しているように、現在大学は異常な状況に陥っており、このまま松尾学長の運営が続けば、事態はますます悪化すると思われます。

 

 

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2004年3月20日　大学評価･学位授与機構の報告が公表された。ちょっと目を通しただけだが、はたしてこのような評価にどのていどの意味･意義･有効性があるのか、疑問に感じた。新しく大学評価が義務付けられるわけで、それが今回のような評価のあり方でいいのか、と。

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2004年3月19日（4）　まだ現物は手にしていないが、大阪府立大学の定款が審議中で、そこでは学長=理事長体制であり、また国立大学法人と同じように学則、人事その他が教育研究評議会の審議事項となっているようである。公立大学でも、国立大学法人並の体制を取れるところと、東京都のように大学管理本部･行政の力の強い理事長体制のところとがあることになる。本学は、いまのままでは都立型になりそうであるが、大学の自治の点で悪名高い「オンリーワン」（オンリーツー）になるのではとささやかれている。はたしてどうか？各大学、各自治体の見識･力量が問われている。

 

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2004年3月19日（3）　任期制を悪用した大学自治･学問の自由の内部からの破壊問題（所長＝管理職・多数派・官僚主義形式主義の横暴）に関する井上教授事件裁判の関する阿部泰隆教授の記事など、以下にコピーしておこう。東北大学大学院経済学研究科の川端望氏の論文「管理運営制度について」は、本学の「定款」問題と今後のあり方を考える上でも貴重な示唆に富む。

 

　

━ AcNet Letter 78 【1】━━━━━━━━━━ 2004.03.19 ━━━━
阿部泰隆氏からのメッセージ：
　　学問の自由を守る井上事件の判決：3月31日４時より京都地裁
───────────────────────────────
「全国の方々からご支援をいただき、井上先生と弁護団は一生懸命
頑張ってこられました。天下の京大が、任期制を悪用して、騙し討
ちで同意書を取り、前所長が画策して再任拒否に追い込んだ井上事
件の全容が２月１８日の本人尋問で明らかになりました。まさに、
「白い巨塔」ではなく「黒い巨塔」「伏魔殿」というべき事件です。
尋問記録（HP参照＊）に紹介されているように、勝訴判決以外にあり
ません。いよいよ、３月３１日４時京都地裁で判決です。注目して
ご覧ください。
　　　　　　　　　神戸大学法学研究科　阿部泰隆　　　」
───────────────────────────────
＊) http://poll.ac-net.org/2/shiryou/040218-chousho.php#jinmon
京都地裁
〒604-8550 京都府京都市中京区菊屋町　Tel:075-211-4111
地下鉄丸太町駅1・3・5番出口から徒歩5分

━ AcNet Letter 78 【2】━━━━━━━━━━ 2004.03.19 ━━━━
川端望氏「管理運営制度について」
　　[he-forum 6850, 2004.3.18]
http://www.econ.tohoku.ac.jp/~kawabata/index.htm

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「高等教育フォーラム各位

　先頃、私は論文「国立大学法人の管理運営制度と教員の地位」を
『全大教時報』27巻6号、2004年2月に発表しました。全大教の了承
を得て、この論文の科研費報告書収録バージョン（内容は同じ）を
PDF で公表します。関心のある方はご覧下さい。ご意見・ご感想を
いただければなお幸いです。

　下記ホームページ「論文・報告書ライブラリ」の一番上にあります。

I 　はじめに
　１　課題と視角
　２　研究・教育条件決定システムとしての管理運営制度
II 　包括的自治から研究・教育と経営の分離へ
　１　管理運営制度の転換
　２　教員の地位・労働条件への影響
III 制度設計上の当面の争点
　１　学長選挙
　２　教育研究評議会等の権限
　３　部局の運営
　４　労使関係の構築
IV　おわりに
（この見出し番号の付け方は『全大教時報』のものです。科研費報
告書ではスタイルが違います）

なお、３ページ目で「教職員は、教員や職員のまま学長・理事にな
ることはできない」と書きましたが、先頃出版された和田肇ほか
『国立大学法人の労働関係ハンドブック』によると、役員が教職員
を兼ねることは禁止されていないと解釈されておりますので、私の
記述は不正確かもしれません。「学長・理事は教職員とは異なる身
分である」とすべきであったかと思います。
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川端　望
東北大学大学院経済学研究科
http://www.econ.tohoku.ac.jp/~kawabata/index.htm　」

 

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2004年3月19日（2）　市当局･大学改革推進本部の「コース等検討委員会」の会議が一体現在どこまで審議を進めているのかわれわれにはまったくわからない[23]。わたしなどは、たとえば、最近は自分の固有の専門外ではあるが、世界の貧困地帯とその開発の総合的研究、「開発経済学」に関心をもち、とくに世界銀行のニュース（調査や会議関係）に注目している[24]（一例:下記の記事）。そうした開発経済学･開発経済の現実の諸問題を世界的視野できちんとやってくれる専門研究者（世界銀行の会議などにも参加して最新情報を集めている人）が本学にいてくれるといいと思うが、そのような意見を出す場も機会もない。おかしなことではないだろうか？

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Annual Bank Conference on Development Economics in Europe
May 10-11, 2004
Brussels, Belgium


The ABCDE has become a key event in Europe for the discussion of development issues. It is a unique platform for many of the world's finest development thinkers and experienced policymakers to present their perspectives, ideas, and to challenge researchers and senior staff of the World Bank and other multilateral organizations with their views. The ABCDE-Europe has been designed to expand the flow of ideas between thinkers, practitioners and policy-makers within the field of international development, and to provide a forum for discussion on key international development issues. By bringing together an array of academics, politicians, institutes, think tanks, students and journalists, the ABCDE-Europe provides an excellent opportunity to foster exchange of knowledge on and understanding of development issues.

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2004年3月19日（1）　明日20日は、「大量破壊兵器」を口実にアメリカが世界の人々が見る目の前で対イラク戦争をはじめた日である。今日に至るまで「大量破壊兵器」は見つからず、国連の新たな決議なしのイラク攻撃の不当性が世界的に明らかになりつつある。スペインの総選挙の結果も、そのような戦争の正当性･戦争の大義をめぐる批判が根底にあったものと見るべきだろう。社会労働党のイラク派兵引き上げ政策もまさにその戦争の正当性とかかわることである。ところが直前の列車爆破テロに屈して撤兵するなどと「スペイン国民をバカにする」ことをアメリカとそれに追随する勢力は主張する。反「テロ」戦争と言う当初の大義・正当化理由がイラク攻撃開始においてなりたたないことは無視されている[25]。こうした大義・正当性を欠如する戦争･占領への協力（日本の自衛隊のイラク派遣）については、元自民党の箕輪登氏さえも「イラクへの自衛隊派遣は、憲法９条、自衛隊法、イラク特措法に違反し、平和的生存権を侵害する」と司法の場に訴えでた。新聞報道によればこうした動きは日本各地であるという「自衛隊派遣：差し止め求め前田哲男氏が提訴　鎌田、佐高氏も」。憲法に則り、国連中心で国際平和に貢献することこそ、日本の取るべき道だろう。

 

大学「改革」においても、そうした憲法の精神をきちんと踏まえ、学校教育法など関連法律をきちんと遵守する制度設計こそ取らなければならない。制度設計の細かな部分はいろいろと検討を積み重ねる必要があろう。だが、その前提としての根本精神が重要である。憲法の精神、学校教育法の精神、学則の精神といったものをきちん捉えなおすことこそ大学「改革」において、教員に求められる意識改革だと思われる。ところが、市議会答弁で「教員の意識改革」を繰り返す学長その他の発言には、憲法や教育基本法、学校教育法、公立大学法人法や国会におけるその付帯決議等の関連条項を指し示しつつ問題を解明する姿勢は見られない。

ここに今回の「改革」の一番重要な問題があろう。憲法の民主主義精神と「真理探求」を第一とする崇高な学則理念･根本精神の欠如[26]である。

「教員の意識改革」を繰り返す人々が実はまったく行政主義的な精神構造、上意下達の精神構造、したがって憲法の民主主義の基本原理とは対極にある精神構造ではないかと思われる（佐藤真彦教授が指摘する下記の「典型的な詭弁」などに顕著ではないか？）。「意識改革」すべきは、まさに学長や行政主義的な市当局（これに追随する人々）ではないか？

市議会の議論がもっと「定款」の重要条項に絞って論点が闘わされると期待していた者として、その期待が幻想に終わったことを噛み締めつつ、総合理学研究科･佐藤先生がまとめられた「市議会傍聴記」を読み直している。わたしが批判的にコメントしていない部分への佐藤先生のご指摘は、まったくそのとおりである。以下にコピーしておきたい。

念のために付言すれば、来年度は、研究費が20%減だという。いったい現在、横浜市の他部局で、20%減もの大幅カットが行われているところがあるのか？　「研究費原則廃止」の脅かしをかけつつ、「20%カットでも文句をいうな」ということであろう。そして、予算総額自体が20%減でないことを見ればわかるように、増やすところには増やしているのである。それはどこか？人文社会系でないことだけは明らかだろう。

 

-------市会傍聴記の感想（続々々）-------　

市長の『東京新聞報道は“完全に誤報”発言』を擁護する学長ら 

 

『04/2/16東京新聞報道』　http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040216tokyo.htm　が，中田市長の主張する“完全に誤報”や“100％誤報”などでは決してなく，メディアの使命である“真実報道”であったことは，本ホームページにおいて，すでに，徹底的に検証したところだが（　http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040303gohou.htm　参照），04/3/11市会「予算特別委員会」では，議員の質問に小川学長らが一丸となって市長を擁護したことに対して，やはりと思うと同時に怒りと失望を禁じえない．

 

高井事務局長や前田副市長（大学改革推進本部長）が市長を擁護して一枚岩の結束を示したのは予想どおりだったとしても，“特に学長の答弁は，ほとんど原稿から目を離すことなく，抑揚のない答弁に終始した・・・おそらく官僚の書いた原稿を読み上げると言う，日本の悪しき慣行を地でゆくお粗末な”ものであった，と『市会傍聴記の感想04-3-17 』http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040317kansou.htm　にもあるように，学者としての批判精神も良心も捨て去ったような学長の態度には，怒りを通りこして失望を感じた人も多かったのではないだろうか．伊豆利彦氏（横浜市大名誉教授）も，“（部局長の答弁に期待したが、・・・）学長が市当局の被雇用者的卑屈な態度をとっている以上、職を辞する覚悟で証言しなければならないのだと思う。”と指摘している．（　伊豆利彦のホームページ　http://homepage2.nifty.com/tizu/　掲示板2　http://bbs2.idobata.net/pt.cgi?room=tizabc　[1157]　参照）

　だいいち，『“完全に誤報”発言』で中田市長が最も強調したことは，“私は、横浜市大の負債ということを理由に改革を持ち出したことはない。・・・負債というバランスシート上の話を持ち出したことは、私は一度もない。”という点であったにもかかわらず，おそらくこれに関しては，新聞報道などによる宣伝が効きすぎた結果，“1140億円の巨額累積負債による改革”という，いまや一般市民もよく知るところとなった圧倒的に不利な事実が存在するためか，学長の答弁はこの点にまったくふれていない．（なお，これらの報道のほとんどが累積負債が巨額なことを強調する一方で，負債の大部分が病院等の資産になっている点にふれていないことから，市長・横浜市に情報操作の意図があったことは明白だろう．）

また，市長の手法が「密室で決定」「いきなり公表」「トップダウン」であることは，上述したように，本ホームページでもすでに徹底検証したところだが，つい先日の『04/3/16朝日新聞報道』　http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040316asahi.htm　において，久保新一氏（関東学院大学）が，“市長の諮問機関は、答申で「改革しないと廃校だ」と市大に改革を迫った。市長も「答申を改革に生かしたい」と応じた。これは答申に沿った改革を迫る、一種の脅し。まさにトップダウン的手法だ。”と述べていることからも明らかだろう．にもかかわらず小川学長は，答弁の中でこれを明確に否定している．

 

　学長答弁にある，“研究費０も誤り．・・・「大学像」「あり方懇答申」にも研究費０はどこにも表記されていない．”は典型的な詭弁で，たしかに，“研究費０”と文字どおりに書かれてはいないが，「大学像03-10-29」　 http://www.yokohama-cu.ac.jp/daigakukaikaku/daigaku/daigaku_kaikaku/1029houkokusyo.pdf　にはつぎのようにある．すなわち，“研究は，外部資金を獲得して行う。そのため、すべての教員は、国家プロジェクトや科学研究費、公募による研究費、共同研究や受託研究等による外部資金の獲得に、その義務として努めなければならない。一方、大学の経費を原資とする研究費は、大学が地域貢献や若手人材育成等必要と認めた場合、競争的資金として効果的に活用する。”また，「あり方懇答申03-2-27」　 http://www.yokohama-cu.ac.jp/arikata/toushin.pdf　にも，“市費による研究費の負担は，大学が精選した分野を除いて、原則として行わない。外部資金が得られた場合に、研究を進める。”とある．普通の読み方をした場合，これらが“研究費０”を意味していることは明らかだろう．

 

　学長の答弁，“「逃げ出す教員」についても，教員の移籍は，大学相互の人事交流・活発化，さまざまな理由によるもので，大学改革によるものとは考えていない．”に関しては，『市会傍聴記04-3-17』を読んだ匿名氏が，“商学部が先駆けている教員の大量流出は、いくら『東京新聞』の記事を「誤報」と非難しても、「大学相互の人事交流」と取り繕っても、厳然たる事実として止めようがありません。商学部では1年後の法人化・学部統合の際には現時点ですでに14名の欠員が確定しており、その時までには51名の定員が30名程度にまで激減しているでしょう。”と指摘している．

 　高井事務局長の答弁，“反対派の主張のみをとりあげ，取材が一面的であり，報道の使命に反する．”に対しては，今までさんざん自分たちが行ってきたことをすっかり忘れたかのようで，東京新聞が報道の使命に反するどころかその使命を貫いて“真実報道”を行ったとたんに，“大学として支局にたいして直ちに抗議するとともに，続報記事掲載等の善処方を強く申し入れた．2月20日には学長名による善処方申し入れを行っている．”などと，厚かましくも公の場で堂々と発言しているのは如何なものか．

 前田副市長の“大学が自ら作り上げた改革案はすばらしい改革案であると高く評価しているので，このような報道がなされたのは残念．”に対しては，このようなあいまいな答弁ではなく，改革案のどこがどのように“すばらしいと高く評価している”のか，それに対して報道のどこがどのように“残念”なのか，もっと具体的に述べてもらわないと，このままでは反論のしようがないし，一般市民も判断できないだろう．

 先の伊豆利彦氏は，“質問者はいろいろ重大な問題を提起していたが、答弁はいずれもその場しのぎのいい加減なものだった。こうして議会を通過するのかと思うと、いまの議会制度の空しさが思われる。結局、数の力がすべてを決定する。多数の上にあぐらをかいた議会運営。国会の場合はもっとひどい。こうして、政治不信が増幅していくのだ。・・・民主主義は名目だけのものになり、空洞化する。その果てに待っているものは何か。”と嘆くとともに，この国の近未来に対する切実な不安を述べているが，まったく同感である．

 

 

 

 

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2004年3月18日　昨日、市議会で定款の審議があり、圧倒的多数が「原案賛成」だったそうである。（傍聴記[27]、および「市民の会」ニュース[28]）行政当局の提案にたいして市議会の多数の会派が「定款」に問題を感じなかったので、これが現在の「横浜市」の公式の意識だということだろう。議論していることは「定款」案のはずだが、定款の諸条項にはいっさい言及がない[29]。市議会が機能しているのであろうか？　「公式」・「多数派」の見解・態度が、大学の発展のためにはたして妥当かどうか、これこそが問われる。国立大学法人との違いなはぜなのか、といった問題さえ、市議会の場でなにも議論されていない。

 

「あり方懇」答申の高踏的外在的態度は、実はまさに、大学がどのような状態におかれてきたかの歴史的検討を抜きにしていた点である。大学内外からだされた多様な意見を汲み上げるようなシステムの構築ではなく、理事長権限拡大･事務局権限拡大（研究教育の担い手＝主体から大学の自治の担い手=主体としての権限と責任＝発言権･意思決定権を奪い取り、経営サイドが決定したことだけを申し渡す・業務負担だけを引きうけさせようとすると言う意味での「現代の奴隷」化の方向性であろう）の方向では、主体的な発言権と責任感を持った諸個人･研究者からなる生き生きとした大学の発展はないだろう。これでは、理事長独裁的な私学[30]とおなじことになるのではなかろうか。先日も、理事長（理事会）独裁的なある私学を2年間ほどで逃げ出した研究者と話したが、教授会での議論はなにもなく、とつぜん呼び出しなどがあったと言う。入学（合格者を決めること）などの教授会審議もない。その方は国立大学を定年退官後にその私学にいったので、ことのほか驚かれたようである。流出する人が多い（したがってまた流入する人も多い、全体に移動が激しい）と大学人の間では悪名高い私学である。

本学の「定款」も、世界的な民主主義の発展方向（ユネスコ高等教育宣言の方向性）とは逆になっている。大学の自治と自律といった当初掲げられたうたい文句が形骸化すると思われる。本学定款が、どのようにして大学（大学人）の自律意識･独立意識を育て強靭化していくことになるのか、むしろ反対であろう。この「定款」は、大学の自治･自律（その基礎にある教授会自治）を日本全国でまっさきに破壊する「定款」として、歴史に残るのではなかろうか。すなわち、下記の下山氏の整理を使えば、本学に関する「定款」は、まさに、もっとも民主的な3のタイプから反対の極にある1のタイプへの恐るべき「飛躍」（「転落」）ということになろう。大学が大学ではなく、たんなる行政組織になるということだろう。横浜市立大学だけが、わが国の大学ではない。大学の自治の度合い、研究教育条件、生活条件など、いろいろの条件が大学間競争の条件である。大学人が喜びと使命感をもって仕事をしないかぎり、市民によろこばれる仕事もできないだろう[31]。総合的にいい条件･優れた研究教育環境がないかぎり、本学の名声は高くならないだろう。本学の名声が高くなるかどうか、これが勝負だ。

 

大学評価に関する下山房雄･下関大学長の意見は、参考に値する。以下にコピーして自分のものとしておこう。

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━ AcNet Letter 77 【1】━━━━ 2004.03.18 ━━━━━

「大学機関別認証評価実施大綱（案）」への
       下山房雄氏（下関市大学長）の意見書2003.3.17

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＃（以下は、大学改革メーリングリスト：「ｒｅｆｏｒｍ」　への
投稿の転載です。なお、ｒｅｆｏｒｍ は現在不通となっているよう
です。）

「かなりの公立大学は、大学事務局が事実上設置団体の大学担当部
局的機能も担わされているという矛盾を持っている。私があと２週
間余りで学長職を退任する下関市大もそうである。そのため、全国
公立大学設置団体協議会（事務局＝都立大）からの照会文書なども
私の所に回ってくる。標記の報告について、「ご意見がある場合は、
東京都へ回答」との依頼文書も私の所に回ってきた。設置者＝下関
市の立場から回答するということは、大学としてはできないので、
意見なしで回答せずと処理した。しかし、わたしとしては標記報告
について意見を持った。幸い、学位授与・評価機構のＨＰ(*1)の
「大学評価→認証評価」の頁に当該報告(*)が公開されている。そ
れへの意見を社会的に表明するために、この「大学改革」ＭＬを利
用させて頂きます。」(*1)http://www.niad.ac.jp/
(*2)http://www.niad.ac.jp/hyouka/ninsyou/ninsyou20040226.pdf

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大学評価準備委員会「大学機関別認証評価実施大綱（案）」への意見

下関市大学長　下山房雄（2004/03/17）

１） 国際化時代と強調され、大学の国際競争力が云々されるなら
ば、当然に教育あるいは高等教育に関する国際的基準が照合される
べきである。例えば・・・

1. ＩＬＯ・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」（1966年）　こ
   れは直接には初等・中等教育教員に適用されるものであるが、
   高等教育教員に初等中等教育教員に保障されている「地位」も
   保障されず、例えば恣意的・専制的人事評価に基づく雇用や賃
   金の決定があってよいということには決してならないという脈
   絡で照合さるべきだ。

2. 国連「国際人権規約・Ａ」（1966）　特に日本政府が批准
   （1979）した折に留保した13条２（ｃ）への照合が必要

3. ユネスコ「高等教育世界宣言」（1998）学校教育法だけでなく、
   評価の理念として教育基本法のいう「教育の目的」やこのユネ
   スコ高等教育宣言が謳う「高等教育の目的」が照合さるべきで
   ある。

２）「実施大綱（案）」の「基準２　教育研究体制」にかかわるこ
とであるが、従来「大学自治の根幹を成す大学教員人事の自治」
（例えば三省堂『解説教育六法1998』484頁）と位置づけられてき
た教授会自治のあり方をどう評価するのか。時流に乗って人事権を
教授会からトップの機構に移さないと大学として認証しないのか。
そうではないと言うことを明記すべきだ。

この点についての現在の法制と実情を確認しておく。まず、法制で
は学校教育法59条1項が「重要な事項を審議するため」教授会を置
くとし、同条2項で、教授会組織に「助教授その他の職員を加える
ことができる」と定めている。教育公務員特例法では、教員採用の
選考は大学管理機関が行うとした（4条1項）うえで、その大学管理
機関を「教授会の議に基づき学長」としている（25条1 項）。

ただし筑波大学は「副学長および評議会の定めるところにより選出され
る教員」で構成される「人事委員会の議に基づき学長」が選考採用
する（国立学校設置法7条五および教育公務員特例法12条1項）。

以上の法制のもとで教授会人事権の実情は、現在では以下の三類型
になっているが、国公立大学の法人化＝非公務員化により、相当数
の国公立大学が2.3.  から1.に移行するものと思われる。

1. 教授会に人事権が無い大学：私立大学の相当数、筑波大学（かっ
   て「大学民主化」ということで、私立大学における1.から2.3.
   への移行が時代の課題になったときもあり、世俗的表現を用い
   れば「一流私立大学」は通常2.  あるいは3.であるのが現状で
   ある。）

2. 教授のみの教授会に人事権がある大学：筑波大学を除く国公立
   大学　私立大学のある部分

3. 助教授あるいは講師なども加わる教授会に人事権がある大学：
   筑波大学を除く国公立大学　私立大学のある部分（大学教員集
   団の中に採用昇格などの人事権を分有する教員とそうでない教
   員とがいる2.類型のもとでは、当然にときにはセクハラなどを
   発生させもする権威的関係が教員内部に発生する。学問の発展
   や教育の充実を考えれば、2.から3.への「民主化」が必要であ
   るが、現在はその種の「改革」は全く話題になっていない。）

認証評価は3.に誘導する方向でやるべきと私は考えるが、それが権
威主義化を強める時流に合わないということを自覚して、少なくと
も評価機構は３類型のどれでも「大学」として認証すると明言すべ
きだと主張する。

２） 大学における研究・教育の発展のためには、先進国中で最低
の高等教育への投資の改革が必要だ。この点で、専任教員数、学生
への経済的支援、大学財政などの評価項目があることは意義大とみ
る。教員当たりの研究費、学生当たりの専任教員数さらには大学経
常費などのナショナルミニマム的数値基準を設定し、それとの照合
を行う形での「認証評価」が行われるべきである。（以上）

 

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2004年3月17日(4)　 国立大学独立行政法人化の諸問題」で

　　　　　　　　　　　このＨＰのつぎの記事が目にとまった。「松本市長となる元信州大学医学部助教授の菅谷昭氏」。かつてテレビかなにかでこの人の報道を見て、「凄い人がいるものだ、大学医学部助教授の職をなげうってチェルノブイリに出かけるとは」と驚いた人だが、今回、松本市長になったのだ。本物の犠牲的精神で、使命感に燃えて、松本市のために活躍されることであろう。高貴な精神が全国に広がることを期待したい。

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2004年3月17日(3)　Academia e-Network Letter No 76 (2004.03.17 Wed)[32]
         http://letter.ac-net.org/04/03/17-76.php　

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2004年3月17日(2)　本学の「改革」案が、大学外部の有識者による｢あり方懇｣答申に縛られたものだということは、昨日の『朝日新聞』記事（これも,総合理学研究科･佐藤真彦教授ＨＰに掲載されている）の小川学長の冒頭発言からして,すでに明かである。すなわち、

------｢骨格的な概念｣（？）------

「ブラクティカルなリベラルアーツの第一の目的は、社会について学生に考えてもらい、社会の一員としての自覚を持たせること。第二の目的は、一つの専門性だけでは生きていけない現代で、複数の専門性を身につけられる学問的な基礎をつくること。確かに概念として分かりにくく、さらに整理が必要だと思う。あり方懇の答申の骨格的な概念で、真っ向から反対する教育目標を打ち出しても、実りは少ないと思った。」

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｢骨格的な概念｣が不明確だという。恐るべきことではないか？　いったいだれが、「真っ向から反対する教育目標を打ち出し」たのか？　大学のさまざまの異論や反対は、リベラルアーツに反対だったのか？

外部有識者の不明確な｢骨格的な概念｣に縛られていることがこの学長発言で明らかとなっている。そのような不明確な概念で｢改革｣を行おうとしているのである。人を説得できるわけがない。人を説得できない概念で、なぜここまで押し通すことができたかといえば、プロジェクトＲ幹事会の議論を秘密にし、8月中旬以降、大枠が出てからも、プロジェクトＲ幹事会を支配する行政主導の方針が貫徹したからである。一昨年の3学部事務室統合が、まずあり、その事務室統合に合わせて、三つの学部自体を統合するという目標が、はじめにあったからである。大学人を説得しているわけではない。学長自身が不明確[33]なのだから。

 

　

--------任期制･年俸制-------

　「教員の不安をあおる制度にはしない。他の組織でも同じだが、市大でも「誰が見てもよく頑張っている教員」は例えば10%、「誰が見ても問題がある教員」は10%。残りの80%の教員は大学に十分貢献していると判断したい。問題教員には、まず「注意してください」とイエローカードを出す。それでも駄目なら、契約を打ち切る。再任ばかりを考えて、市に迎合的[34]で短期的に成果を求める教員は、むしろ減点評価だ[35]。私案だが年俸制では[36]、まずは給与の1割を成果主義にしてはどうだろうか。信頼が得られれば、成果主義の部分を増やしていく。」

 

　市議会の議論でも、「不安をあおる」という言葉が出てくる。しかも、「一部のもの」があおっているかのような表現である。だが、そうか？　国法である任期法のきちんとした立法趣旨を踏まえて｢大学像｣にしかるべき妥当な任期制の導入が盛りこまれているのならば、だれが、不安に思うか？

商学部、国際文化学部等の決議や意見書が明かにしているように、「全員任期制」などというのは、立法の精神に反し、法律違反であり、そのような制度を｢大学像｣に盛り込むべきではないと主張しているだけである[37]。｢全員｣などということで、全教員の不安をあおったのは、｢大学像｣そのものである。まさに、そのような問題点（｢角｣という抽象的文言で）を抱えていることを学長自身が吐露しているではないか。すなわち、

 

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「時代を切り開くには多少、角がある案がいい。」

 

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　また、「「誰が見てもよく頑張っている教員」は例えば10%、「誰が見ても問題がある教員」は10%。」と。だが、これは歴史的社会的教養のないこと、あるいは現実の社会をよく見ていないことを意味しないか？　｢誰が見ても｣などということは、本当に言えるのか？

　ソクラテスは、裁判にかけられて死刑判決を受けた。圧倒的多数の裁判員市民が、70歳にもなった[38]ソクラテスを有罪とした。市民法廷において、｢誰が見ても｣有罪だとされたソクラテスを、学長はどう判断するのか？[39]

　大学の自治、学問の自由の大切さは、まさにこのような極限状態においてこそ試されるのである。「誰が見ても問題がある」として、その実、問題のない人間が差別され迫害されていることはないのか？　いろいろな意味での、いろいろな場での「多数派」の横暴（「80％」がある意味で問題のある水準･問題のある意識状態ならばどう行動するか？）は、現実社会ではないのか？

　よくよく慎重にならなければならない。両極はしばしば逆転するのである。「問題のないもの」は実は別の極からは「問題のあるもの」なのである。京都大学再生医科学研究所の井上教授｢再任拒否｣事件(その裁判:井上教授の「超人的」活躍ぶり)は何を物語っているのか？

諸個人の利害や職が絡み、名誉が絡んでくるとき、何が真実であるか、誰が優れているかを見極めるのはきわめて困難である。「誰が見ても」などと簡単に言うこと自体、恐るべきことである。少なくとも、社会関係、人間関係では。学問分野で言えば、すくなくとも人文社会系では[40]。

多分、自然科学系は、その分野の専門家である学長の発言なのだから、区別は簡単なのだろう。だが、学問分野全体としては、「問題のある教員」と「問題のない教員」の区別、評価が簡単ではないからこそ、大学や教員の外部評価や客観化が検討され、制度化されようとしている（法律的に）。これに対応して、新しい自発的な大学評価学会も設立されようとしている。学長は、みずからこのような学会に主体的に参加すべきではないか？　そして、大学（全体として、学部として、教員について）の評価に関して、大学人の先頭にたって問題を考えるべきではないか？

 

　プロジェクトＲ幹事会のなかで、自分が｢任期制｣に引っかからない学長、その他の任期制に関係のない教員、そして教員任期制など関係のない半数を占める事務局の部局長の事務職員が、｢全員任期制｣などという全教員の「不安をあおる」文言を強行に（あるいは「われ関せず」とばかり平然と）「大学像」で提言したことは明らかである[41]。めずらしく評議会が紛糾しことを考えてもそうである。

｢任期制については、法律の趣旨に基づき、しかるべき建設的な制度を構築していきたい｣くらいならば、なにも問題はなかったであろう。

　大学の自治のはきちがえも、学長の新聞記事発言では露呈している。

 

------学長は副理事長に（？）--------

　「予算がないのは理事長の責任、研究・教育の成果が出ないのは学長の責任、と明確化を狙った。学長は副理事長として、経営面にも意見が言える。実質的には学長が経営にほとんど関与していない現行制度よりもパワフルな大学になる。任期制、年俸制などを上手に使って、大学を活性化することで、市からの大学の自由を担保できる。」

 

　「予算がないのは理事長の責任、研究･教育の成果が出ないのは学長の責任」などと、｢明確化｣できるという発想がそもそもおかしい。むしろ、これまで何十年も、大学の評議会審議事項に｢予算見積もり｣があったにもかからず、いっさい審議してこなかった理由は、経営は事務局が責任をもち、研究教育は教員（評議会･教授会･教員）が責任をもつという分業体制をとってきたからである。このような経営と研究教育の形式的行政主義的分離こそは、実に深刻な問題を引き起こしてきたのである。「経営」と｢研究教育｣の分離こそ、大学の自律性･自治を形骸化させ、相互不干渉・相互間の無責任体制をはびこらせてきたものである。

　｢学長は、副理事長として経営面にも意見が言える｣なとど｢定款｣(案)を評価しているが、はじめて「意見がいえる」ようなこと、ここにこそ本学の問題の根源があるというべきである。「実質的には学長が経営にほとんど関与していない現行制度」を変えることが、理事長(予算と人事を握る理事長制度)の元に服属することでどのようにして実現できるのか。言葉はあるが実質がない。予算と人事に関すること、学則制定までも、教授会から奪うというのが今回の｢定款｣(案)の問題ではないのか？　人事権も教員から奪って、責任だけは教員におしつけられることになるのではないか？

「任期制、年俸制などを上手に使って、大学を活性化することで、市からの大学の自由を担保できる。」というのは、一体いかなる意味か？　科学者である以上、説得的な論理的説明が必要だろう。わたしにはまったく不可解である。いくつもの言葉を単につないだだけで、論理連関は不明である。

なお一言すれば、｢市からの大学の自由｣というのは学長としては不正確な表現であり、厳密には、｢市の行政当局｣というべきであろう。なぜなら、市立大学である以上、「市から自由」ということは限定的であろうからである。いま問題になっているのは、大学「改革」のあり方、目下のところは「定款」（案）が、設置者である「地方公共団体=横浜市」を名乗りながら、実質はたんなる行政当局の政策（案）ではないか、ということである。真の意味で「横浜市」の意思がどこにあるか、これこそは大学人も、行政当局も、市議会議員も、その行動を通じて検証していかなければならない、と考える。教員組合などの「定款」（案）批判も、大学の尊厳、大学の自立･自律を深く認識し、世界的な国際都市・横浜の見識をもった真の意味での設置者ならば[42]、こんなことはしないだろう、国立大学法人の諸条項に規定されたことさえも無視するようなことはしないだろう、という意味合いだと考える。

 

-----------｛無限の時間｝（？）-----------　

「■改革案の作成過程　あらゆる人から無限の時間をかけて意見を聴くのが民主的というならば、その方法は採っていない。ある程度の切迫した状況で集中した方が、いいアイデアになることも多い。」

 

｢無限に時間をかけて意見を聴く｣ことが求められたのか？　だれが、｢無限に時間をかけて意見を聴く｣ように求めたのか？　教授会や評議会の自治、大学の自治を主張する人々があたかもありえようもない無理難題の要求を出していたかのように主張するのは、誠実ではないだろう。

 

 

--------「学生の意見」（？）--------------

 

　　　　　　　　　　　　　「学生の意見を十分聴いたとは言えない。ただ、説明会でも大学の未来像を語る学生はいなかった。そもそも大学のような高度な機能について、学生に全体像を描かせることは無理だ。」

 

　これも問題発言を含んでいる。「学生の意見を十分聴いたとは言えない」というが、学生に対する説明会は、一度きり、しかも2時間程度だけである。不十分そのものだが、｢十分｣ではないと表現している。また、「説明会でも大学の未来像を語る学生はいなかった」という。だが、上でも述べたように、｢骨格の概念｣が｢不明確｣だというのは、学長自身が認めていることではないのか？

　不明確な｢大学像｣を提示しておいて、その説明会 (いったい「未来像」を学生とともに語り合う場を設定したのか？) で、｢大学像｣の説明を聞きにきた学生諸君にたいして、｢大学像を語れ｣などと、求めるべきことか？　それは傲慢ではないか。

そうした場で、学生がなぜ｢未来像を語る｣ことができるのか？　学長が｢全体像｣を描いていると言うのなら、それこそみんなが納得するように説明すべきだ。学生にできないと言うのなら、魅力ある｢全体像｣を学長が提示すべきではないのか？　学生には無理だなどと高踏的に言いきれるのか？　学生が求めていることを、大学らしい｢全体像｣に纏め上げるのが学長の責任ではないのか？

そのためには、まさに全教員の主体的意欲を引き出し結集する制度設計が必要ではないのか。ところが逆に、「全員任期制」、「全教員・教授会の権限とそれに対応する責任」を剥奪する方向（「定款」案の諸問題点）を推進しているのではないのか？　あるいは、行政・事務局主導のそうした方向性（経営主導、理事長権限集中、トップダウンなどの定款の諸項目）にきちんと歯止めをかけていないのではないか？

 

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2004年3月17日(1)　商学部および国際文化学部の教授会の｢定款｣(案)に対する意見が、学部長によってまとめられて学長に提出された。総合理学研究科･佐藤真彦教授のＨＰを通じて、今朝確認することができた。自律的自治的な教授会の議論の結果、「定款」(案)の重大問題が明確に指摘されている。まさにこうした論点こそ、市議会でもきちんと議論すべきだが、少なくとも先日の市議会では議論されていない。恐るべきことではある。教員組合を通じ,｢大学人の会｣を通じ、両学部長の学長への意見具申を通じて、問題の所在は明確になっているはずだが、その肝心の問題がまったく議論されず、｢大学像｣に従うのみと,事務局長が答弁している。その大学像こそ,重大な問題をはらんでいることがこれまで繰り返した方面から指摘されているのである。行政的効率、上意下達によって身動き取れないというところか。教授会や評議会の議論を決議にまとめさせないように圧力をかけ（口頭で、圧力をかけるので証拠が残らないが、たとえば市議会の議論でも、｢大学像｣が決まった後に決議をあげることがあたかも悪いかのように問いただす場面がある）ているが、今回の二つの学部の学長への意見書が明確に示すように、教授会のなかでは｢定款｣(案)の根本的問題がきちんと指摘されているのである。こうした問題が市議会でも議論されないとすれば、恐るべきことではないだろうか？今回もまた、「一部のもの」の意見として、無視する作戦であろうか？　都立大学にたいする行政当局の強権的態度については,名誉教授の9割が反対し憂慮を表明していることが判明した（情報源は新首都圏ネットワーク,その元は毎日新聞記事）。これも,総合理学研究科･佐藤真彦教授のＨＰで紹介されているのを通じて知った。

 

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2004年3月16日(4)　教員組合のＨＰに市議会の傍聴記録(ワード版)が掲載されたことを、｢全国国公私立大学の事件簿｣を通じて知った。教員組合が指摘しているように議論には、「看過できない不当な非難や事実認識の歪曲がみられ」る。特徴的なことは、昨年5月の学長見解にはじまり、｢大学像｣の「大枠」から｢大学像｣の最終案に至るまで、実にたくさんの異論や反対決議が公開されているにもかかわらず、「大学が一体となってみずから作り上げた」ということを繰り返していることである。反対は、一部のもののみ、ということで押しとおすということである。なぜそんな｢一体性｣、｢自発性｣を繰り返し強調しなければならないのか？　

｢大学がみずから作り上げた改革案｣という繰り返しの言葉は、今日の『朝日新聞』記事で学長が言っていること、すなわち、｢あり方懇答申｣を踏まえて、という制約がはめられていたことを語っていることからも、事実に反することは明らかだろう。｢あり方懇談会｣には、学長以下の本学の教員はだれも入っていない。それは「外部の有識者」だけで構成され、その委員の任命は市長によって行われたものだからである。理事長、学長の分離など｢あり方懇答申｣の骨格が、大学に押しつけられた、ということが実質の意味ではないか？

大切なことは、大学の発展である。教授会や評議会といった大学の現場の研究教育の責任者の意思が民主的に反映されないシステムでは決して生き生きとした発展はありえない、ということである。今回の｢定款｣(案)がそのような深刻な問題をはらんでいるということが、まったく議論ではあきらかになっていない。

今回の事務局長答弁で、はじめて出てきたことは、2100人もいる職員が評議会で正式の発言権を持たなかったということを主張していることである。今回の｢定款｣(案)に一貫して流れる傾向の背景にある不満の根源がわかるような発言である。事務局責任者が一般職員の気持ちを｢代弁｣しているかのようであるが、はたしてどうか？　理事長体制の下、2100人の職員の発言権を代弁するとされる事務局責任者の発言権が一挙に強まるということだろう。もし、2100人という職員の希望や要求を真の意味で反映するための制度改革だというなら、まさにそのいちばん肝心なことを制度化しなければならない。それはどこにあるか？

すなわち、事務局責任者の任命は職員の選挙によるなど、職員の民主的意思の合意形成を保障しなければならないだろう。事務局長が市会の答弁を制度的にどのように実現し保障しようとするのか、職員は見守るであろう。

教員にたいする評価が求められている以上、事務職の責任者（部課長が事務局長の命令下にある以上、部課長の勤務評定においても職員の意思が反映されるようなシステムが必要）の勤務･能力評価も、しかるべき妥当な方法で、職員や教員学生によって、行われなければならないだろう。関内から、大学を知らないものが派遣されてきて、適当にお茶を濁していれば無事あがり、というようなことではだめだろう。

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2004年3月16日(3)　日比谷公会堂における｢都立大学｣の集会報告を手にいれた。エッセンスがきちんとまとめられており、素晴らしい。現在の都立大学問題、市立大学問題を全国的･全世界的な状況において考える素材を提供している。

 

-------***都立の大学を考える都民の会ニュース***
***入会など返信はganbare_toritudai@yahoo.co.jpまで------　

2.28日比谷集会報告

　東京都交響楽団演奏によるモーツァルトの調べが、2月28日、日比谷公
会堂に広がった。それは、まぎれもなく生身の人間が長年に渡ってそれぞ
れの個性を互いに紡ぎあわせながら作り上げてきた文化の調べだった。こ
の調べからスタートした集会は、現在の石原都政のもとで強権的に押し進
められている「改革」の中で声を奪われてきた人々の声を交流し、その問
題点を明らかにするために開かれたものである。その中心的なテーマは都
立の大学で断行される「改革」の問題点を訴えるものであったが、その他
、東京の教育・文化・福祉・医療における「改革」の諸問題を訴える内容
を持つものだった。集会には、1800名もの人々が集まり、そこで訴えられ
る一つ一つの声に聞き入った。
　都立の大学「改革」問題は、2003年8月1日、石原都知事によって、それ
まで都立の四大学（都立大、都立短大、科学技術大、保健科学大）と都と
の協議で進められてきた改革案が突如覆され、その後、大学側の公式な見
解を一切受け付けず、上意下達の手法によって「大学改革」を断行し、そ
の構想案に対する教員への「同意書」、新大学への就任の「意思確認書」
提出を強制する中で、そしてそれらに対する都立大学茂木俊彦総長による
声明の発表という経緯の中で顕在化してきた。
　壇上では、教員・学生・院生・卒業生らによってその問題点が明らかに
されていく。都が主張する「協議」機関としての教学準備委員会では、参
加教員は「私人」としての参加を強要され、そこでは秘密裡に「新大学」
構想が決定される。その構想は、文学系の全廃・人文科学の削減、必修科
目を設けない「単位バンク制」、内容不透明な「都市教養学部」（その理
念は大手予備校へ委託）、経済的に不利な学生を排除する危険がある「東
京塾」寮構想、教員のみならず学生・院生の継続的な教育・研究基盤を揺
るがす任期制・年俸制の導入など、大学の責任ある教育・研究の継続基盤
を破壊するものである。現大学の原型を残さないこの「構想」は、「異論
を排除しない、しかし批判精神を認める」システム・伝統としての都立大
学における全構成員自治、その中での協議と対話による人間形成の破壊で
あると。その後、田端邦博氏（国立大学独立行政法人反対首都圏ネットワ
ーク）は、都立の大学「改革」をめぐる動きが国立大学独立行政法人法の
成立直後に起こっていること、遠藤紀明氏（「横浜市立大を考える市民の
会」）は、全く同じ手法の下で、「プラクティカルなリベラルアーツ」な
るものを標榜した大学「改革」が横浜市立大で行われていることを壇上で
指摘している。
　さらに報告は、都の諸「改革」の問題へと広がる。都交響楽団における2
年契約制導入がもたらす約40年かけて作り上げたハーモニーの破壊、都立
図書館の統廃合と図書購入費削減による都民のために作られた区市町村図
書館との緊密なネットワークの破壊と業務縮小、都立病院・保健所の「国
民の健康の保障」から大きく外れ、命を軽視する統廃合＝医療機関縮小計
画の進行、「深刻な性被害」に向き合う中で「子どもの内面に寄りそ」い
ながら育まれた七生養護学校性教育実践に対する議会・マスコミのバッシ
ング、それと連動した都教委による教材押収・190名の教職員処分、都立
高校における人事考課制導入による教職員自治の破壊、日の丸・君が代の
強制、および40人学級を維持したままでの統廃合の進行とそれがもたらす
地域で学ぶ教育機会の縮小、小学校における人事考課制導入とそれを給与
へとリンクさせる構想がもたらす教員と子どもの成長・発達のための対話
の減少。
　これら東京における義務教育から大学、福祉・医療・文化領域にわたる
「改革」は、全て石原都政下の上意下達の手法によって断行されている。
報告が明らかにしたのは、この「改革」が、現場で働く多くの人々が育ん
だ集団性と、その集団が対話によって産み出した知恵とそれを発展させる
ためのシステム－－人を育む、命を尊ぶ、文化を創造し伝える、そのこと
に真摯に向き合い、協議し、長い時間をかけて築き上げてきた－－を破壊
しているということである。
　小森陽一東大教授は、この動きを憲法9条・教育基本法の大転換の中で
、国にもできないことを都が率先して行う超法規国家への足がかりとして
、金子勝慶應大教授は、ポスト冷戦期におけるアメリカの「自由と民主主
義」の名による暴力の輸出とセットになった言論弾圧と結びついたものと
して位置づけた。また、池上洋通自治体問題研究所理事は、全力をあげて
都民に奉仕する品格ある地方自治体として、東京の大学でこそ、無償制、
障碍者への手厚い教育、生活者の視点をもった大学の必要性を訴え、同時
に現在の「改革」の諸問題を市区町村で訴えていって欲しい旨を訴えた。
　集会の最後に、集会を主催する「都立の大学を考ええる都民の会」から
集会アピールが提案され、承認された。その内容は、教育、学術、文化の
場になくてはならない自律性と自主的精神を擁護するために、権力からの
干渉を受けずに研究・教育を行うこと、大学改革に関する自由な議論を行
うことを保障することを求め、現行の東京都による一方的な「大学改革」
に反対し、新たな大学像にむけて要望を提出するものだった。要望は以下
のようになる。学生・院生・教職員の意見を反映させた大学づくりを行う
こと。短大夜間部・都立大夜間部（B類）が積み重ねてきた社会人・勤労
学生への大学教育の機会を充実・発展させること。授業料を安くすること
。障害者の大学教育の機会を充実させること。また集会アピールでは、そ
の実現のための行動提起も行われた。都民にとっての真に豊かな教育・文
化・生活を実現するための、討論・協議の場を設け、学習、交流し、政策
づくりに取り組んでいくこと。都民のための大学を実現するために、東京
都の「都民の声」、文部科学省、都議会などへ声を届けていくこと。周囲
に声をかけ、この取り組みを大きなものにしていくことである。
　3月都議会、4月文科省への設置申請、7月設置認可というスケジュール
の中で、石原都政は「新大学構想」を強権的に進めようとしている。報告
したこの集会は、こうした都立の大学「改革」への反対の声が、さらに広
範な領域にわたる「改革」への反対の声と連動しながら都民のための・生
活者のための大学構想へ至る筋道を開こうとしたものであった。
　「都立の大学を考える都民の会」は、今後も都立の大学の発展は、都民
の教育・文化・生活の発展とともにあることを主張の軸としながら、都議
会・文部科学省に対し都立の大学「改革」の問題点を訴え、そして都民、
多くの市民との学習・交流・連帯を強めていこうと考えている。
（文責：会世話人　芳澤拓也）

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2004年3月16日(2)　本日朝刊『朝日新聞』記事の学長発言を見て、市当局・事務局がいっていること（｢あり方懇｣答申に屈服した｢大学像｣の正当化）そのままであることにあらためて愕然とした。「研究費廃止」などという傲慢な市当局の(研究教育の全体状況等を知らない行政・事務局責任者の単純粗雑な、それに押しきられるような従順な教員を委員にすることも含め、また｢プロジェクトＲ幹事会｣の組織自体の問題性も含め)発想に押しきられた「大学像」を｢角｣を残したものとして自画自讃しているのは、結局、「大学像」が学長の確信に基づくものであったことを表明するものとして、学長失格を表明したようなものであろう。それに比するとき、昨日ノーベル賞学者･白川英樹教授、そして、いまからコピーして紹介する石井紫郎教授の発言こそは、日本の大学の国際的世界的な現代的人類的課題を深く把握したものとして、目頭が熱くなるものである。大学人として発言すべきことを発言している。

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━ AcNet Letter 75 【1】━━━ 2004.03.17 ━━━

  石井紫郎氏論文「学術研究推進に関する諸問題」紹介記事
  科学新聞 2004.3.5
        高等教育「大転換」必要  予算倍増が唯一の手段
───────────────────────────────
「研究推進に関する諸問題」 石井紫郎・東大名誉教授が論文

  前総合科学技術会議議員の石井紫郎・東京大学名誉教授
  は23日、科学技術・学術審議会学術分科会の基本問題特
  別委員会で「学術研究推進に関する諸問題」と題する論
  文を公表した。現在、同委員会で検討している国立大学
  法人化後の学術研究の推進方策に関するもので、現在の
  構造的欠陥を指摘した上で、高等教育経費の倍増や博士
  課程学生に対する奨学金の充実などを論じている。


      ◆ 法人化では不十分 ◆

石井氏は論文の中でこれまでの日本の高等教育制度を振り返り、
キャッチアップ型教育が経済成長に大きく貢献したことを認め
た上で、大きな政策転換が必要だとしている。つまり日本は高
等教育をめぐる世界的な構造変化に対応して、真の意味での知
の創造の場としての大学等を体系的・多角的に支援する方向へ、
大きく政策転換しなければならない。それは単に我が国の持続
的発展にとってえ必要なだけでなく、全人類共通の課題として
の知の創造に国として取り組むことが国際的責務になっている
からである。

こうした責任を果たすには現在の財務状況を前提とした国立大
学の法人化では不十分であると指摘している。教育経費につい
ての予算措置が貧弱なこと、特に博士課程[43]の学生に対する資金
援助が貧弱なこと、研究費がほとんど競争的資金に頼らざるを
得ない状態にあることなど、大学等の財政的は非常に脆弱であ
る。これに法人化が加わり、しかも毎年一律の経費削減、煩瑣
な評価等が課せられることになれば、改革は大学の知の創造の
場と反対の方向に導くものに傾くことになりかねないと指摘。


      ◆ 研究者志望の減少 ◆

日の当たる分野偏重、大学等の研究の基底部分の衰退、学問の
多様性喪失、分野間の淘汰のおそれ、大学共同利用機関や諸大
学附置の全国共同利用研究所が各法人の経営の都合で劣化する
危険。現在でさえみられる研究費あさりの激化、エンドユーザー
（企業）志向・短期決戦型の研究課題・計画の流行。研究者間、
研究組織・機関間の協力関係喪失。資源・情報・成果の囲い込
み。そして何よりも研究者志望者の減少と研究者のモラル低下
などの問題が生れる可能性を示唆する。

こうしたことが起きないようにするためには、欧米諸国に比べ
てＧＤＰ比半分という高等教育投資を倍増することが唯一の手
段であるとしている。それによって、博士課程は基本的に無償・
奨学金付与という国際水準達成、研究活動の基礎代謝部分を支
える基盤研究費の予算措置等を図る。これがなければ、現在す
でに学生が博士課程へ進学せず、就職の道を選ぶ傾向が著しい
日本の大学院・研究養成制度は崩壊すると警鐘を鳴らしている。


      ◆ 基盤校費の問題　◆

さらに石井氏は、学術振興・支援システムの構造的欠陥につい
て詳述している。

国立大学の予算は 経常的部分と特別の事業費予算（例えばスー
パーカミオカンデの設置）に分類される。大学の教育研究の日
常的営みを支える財源は前者である。これは基盤校費というシ
ステムによるものだが、形式的には学生経費、教官研究費など
を積算根拠としているとはいえ、実勢価格を反映したものでは
なく、何年もの間金額は固定したままで推移してきた。しかし、
この積算根拠には含まれないものの、大学が大学として成り立っ
ていくために必要な経費、例えば定員削減に伴う人手不足を補
う人件費等は含まれていない。また、教官研究費として積算さ
れている金額も大学全体、部局（研究科・学部）、学科・専攻
等々が、必要な経費を差し引いたものが各教官に配分されるに
過ぎない。さらに、この基盤校費はいわゆる形式的平等主義を
排し、学長のリーダーシップによる戦略的経営を可能にするた
めの学長裁量経費の財源にされたので、各教官に配分される研
究費は大幅に減少した。

学生経費は元来、積算根拠としても微妙な額しか計上されてお
らず、他の目的への支出が増大するにつれ、学生教育にまわる
金額は極めて少ない。文科系でも授業の教材・資料（アメリカ
のロースクールでは新しい判例等、毎回数十頁に及ぶ資料が無
料で配布されるのが普通）は学生に経費負担されるのが原則と
なっている。理科系においては、実験用の教材・薬品の費用を
いかに調達するか、各教官が最も苦心するところであり、なけ
なしの研究費がそれに消えてしまうのが常識となっている。


     ◆ 「競争的資金」偏重 ◆

他方、確かに科学研究費補助金等、いわゆる競争的研究資金は
それなりの伸びを見せているが、種々の問題がある。第一に科
学研究費を除くと、ほとんどの競争的研究資金が特定分野の研
究開発を目的としたおのであり、学術としての基礎研究への資
源配分の役割を果しているとは言い難い。

第二に科学研究費補助金そのものの規模が十分ではないため、
採択率が２０％台と著しく低い。教育研究活動の基礎代謝を支
える経費（基盤校費）にさえ事欠く状態で、しかも科研費がこ
の状態であるとすると、教育研究が財政的に可能な教官は全体
の約半分だということになる。

第三に基礎代謝を支える経費にさえ事欠く状態のまま競争的資
金のみが措置されるという構造そのものが持つ問題を指摘しな
ければならない。競争的資金は特定の研究課題を推進するため
に申請し、措置されるものであるはずだが、この構造のものと
では、いわば資金が「赤字補填」の役割をも果たすことにもな
りかねず、本来の趣旨に反する結果になりかねない。科研費が
とれないと大学院生の教育ができない、という言葉は理科系の
研究者からしばしば聞かれる[44]。むろん大学院学生が科研費を得
た研究課題の研究チームの一員として研究に参加することによっ
て育成される（いわばＯＪＴ）ということは大いに考えられる
から、これを「流用」と決めつけるわけにはいかない。しかし、
そのＯＪＴは大学院学生が独立に問題設定し、研究を進め、そ
れを教官が指導するという本来の大学院教育ではなく、学生の
自立性・独創性の涵養という観点からは問題であろう。


      ◆ 体をなさぬ大学院 ◆

その点、博士課程の学生に対する奨学金（ＤＣ特別研究員制度）
は学生自身に研究費が措置されることとなっており、極めて優
れたプログラムだが、採択率が極端に低く、申請する意欲さえ
わかないという声をしばしば聞く。ポストドクトラル・フェロー
シップ（ＰＤ特別研究員制度）の充実もさることながら、そも
そも大学院への進学の意欲を学生に持たせない限り、ＰＤその
ものが成り立たないという当たり前のことから解決していかな
ければならない。

いずれにしろ、研究者人材養成システムとして大学院を見た場
合、日本の大学院はほとんど体をなしていないといっても過言
ではない[45]。

 

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2004年3月16日(1)　｢市民の会｣が、定款に関する意見書を市議会･大学予算委員会に送るよう呼びかけている。｢大学人の会｣と本学「教員組合の「定款」（案）の問題点指摘は、本質的で重要な論点に的を絞っており、是非ともそれを読んで、多くの市民が、自分たちの大学が、行政当局の意のままになるような仕組みになっているか、たんに予算の事務処理を握っているに過ぎない事務局責任者の意のままになるような仕組みになっているかを、きちんと判断していただきたい。そして、市当局や市議会の人々に訴えていただきたい。本日『朝日新聞』朝刊で学長は、理事長の下に副学長となることを是認している。悲しむべきことである。全国の国立大学やしっかりした私立大学では、大学としての自律性･自立性を発揮するべき頂点に学長(研究教育の最終責任者)が立っている。大学という組織体の頂点に研究教育の最高責任者が立つのは当然であり必然のはずである。経営と研究教育の責任は分離できない。表裏一体のものである。研究教育は経営基盤なくして実施できない。経営責任は理事会、研究教育の責任は学長、などという分離は、けっして大学全体としての統一的な自立性･独立性･自律性を保障しない。実際には理事長(経営)支配下に学長(研究教育)が服属させられるということである。学長＝副理事長とはそういうものである。そうした根本的なことがわかっていないのである。いずれ（いやこれまでも）、経営は経営のうまく行かないことを研究教育の責任にし、研究教育の側は研究教育の業績の問題点を経営の責任に帰すであろう。これまで学則を無視して行ってきた経営と研究教育の分離体制が、まさに｢定款｣案で固定化され正当化される。これまでの学則では、それでも大学の長は学長であることが明確になっていた。事務局長は学長の統率の下に業務を行うことになっていた。一昨年秋の学長・評議会の求めをはねのけて、事務局責任者の指揮の下で事務局員が総退場したが(学長の指揮命令違反、したがって学長に人事権があれば更迭すべき事件であった)、今後はそうした事務局責任者の行動は合法的なきなものとなる。評議会、教授会を事務的経営的発想･権限が牛耳ることになろう。大学人の直接市民･地方公共団体にたいする自律的独立的責任のとり方・発揮の仕方はゆがめられてしまうであろう。

 

 


[1] 背後にある全国学会（日本学術会議・経済史研究連絡委員会の主要学会）としては、社会経済史学会、政治経済学・経済史学会（政経史学会：旧土地制度史学会）。

 

[2] 経営史学会

[3] 社会経済史学会、歴史学研究会その他の歴史関係学会

 

[4] 経済学史学会（とりわけ国際活動が活発）など

 

[5]　評価するものがレベルが低く、視野が狭いとき、また、評価する側の学問・科学認識がゆがんでいれば、世界で通用する科学などは研究教育できないわけである。評価のグローバルスタンダードは何か、これが問題となる。

 

[6] この点は、世界の学術評価に参加し、世界の研究者と接触している多くの日本の研究者で認識されていることであり、日本学術会議でも強調されている点である。行政的官僚的な「評価」（予算の削減目的が先行するような「評価」のあり方）の持つ問題性の認識については、研究者･学界では広く深く浸透していくべき見地だろう。それこそはまた、大学人、研究者･教育者の自己責任･社会的責任の練磨と言うことにつながるだろう。

専門家による評価の公開、したがって評価を学界と社会の自由な批判の場に提供することが決定的に重要。評価者が評価される。教えるものが教えられる。批判者が批判される。科学（研究教育）の弁証法的発展の論理。

 

[7]　理科系は国際的学術雑誌などが研究者の国際的評価の基準となっており、その意味で国際標準のピア･レヴュー制度も歴史があるわけで、その発展のために日本の学界がなすことは大きいだろう。日本の学術雑誌に世界からの科学論文が競って投稿されるようになる、というのは夢か？　すでに、国際学術雑誌の編集中などをしている人材は、文系でもでてきているが、その英文雑誌の社会的認知は｢日本の雑誌｣なのだろうか？

　ただ、気を付けなければい行けないのは、自然科学主義の支配である。自然科学系のピア･レヴュー制度が、人文社会科学系にまで直接適用されるのは問題だろう。文化領域の固有の諸側面を扱うので、社会的利害対立問題などが対象となるので、慎重なピア･レヴュー制度の構築が求められる。

　自然科学の場合でも、新しい分野を切り開くような革新的論文は、京都大学･再任拒否事件の井上一知教授の事例で分かるように、二つの外国雑誌でリジェクトされている。その後、第三の外国雑誌に掲載され、世界的に認知され、高く評価されるようになっとのこと。この事例で行けば、三つくらいの別の団体･学界のレフェリーがないと、本物が見分けられないということでもあろう。恐るべきことだ。

 

 

[8] 第17回よこはま21世紀フォーラム｢ヨーロッパ統合と日本｣の諸報告と調査研究を発展させて、廣田功氏(東京大学大学院経済学研究科)との共編著で『ヨーロッパ統合の社会史―背景･論理・展望』（日本経済評論社、2004年2月刊）をまとめた見地は、それである。

しかもこの研究は、国際的な研究者の連携によってまとめられた。こうした外国の重要な歴史研究分野を踏まえて問題提起を試みた先進的試みをこそカリキュラムでも反映すべきではないか？　念のために、本書の「あとがき」を抜粋して示して、｢社会史｣の重要性に関して、注意をうながしたい(さしあたりは、行政による意図的な排除･意図的な｢忘却｣や行政的抑圧とは考えたくないので)。

 

-------「あとがき」より抜粋-----

 

本書は1999年度から2001年度の3年間にわたり、文部省科学研究費補助金（基盤研究A国際学術研究：課題番号11691091）の交付を受けて、「ヨーロッパ統合の社会史の比較研究」（Comparative Study on Social History of the European Integration）を課題として行った共同研究の成果である。・・・・・・

 

・    1997年から1998年にかけてヨーロッパ統合はいっそう前進した。とりわけ1999年1月1日の通貨統合(ユーロの成立)を前にして、ヨーロッパ共同体とその歴史社会に関する関心は各方面で急速に高まってきた。横浜市立大学が十数年に渡って開催してきた学術的な国際シンポジウム「よこはま21世紀フォーラム」の第17回のテーマにも｢ヨーロッパ統合と日本｣が取り上げられることになった。・・・・

・    研究計画の目的としてつぎのことを掲げた。通貨統合を目前にして、統合への関心はますます高まっているが、これまでの多くの研究では、統合と国民の生活や意識の変化はどのように関連しているのか、またそれらは統合の進展によってどのように変化したのかが明らかにされていない。「普通の人びと」の社会生活諸条件のレベルにおいて、統合を支え、推進する歴史的社会的ファクターはどのようなものであり、どのように成熟してきたのか、また現時点でのそれらの成熟度と問題点はどのようなものであり、それらの今後の展望はどのようなものか。このような問題を統合の社会史研究のパイオニアであるケルブレをはじめとする「共同体歴史家連絡会議」の主要メンバーとの国際的ネットワークで調査研究する、と。その成果が今回まとめられた・・・

・    当初の申請時には、フランスの共同体史研究の第一人者で｢共同体歴史家連絡会議｣創設者のルネ・ジロー（パリ第1大学名誉教授）、それにヨーロッパ共同体発足にあたって歴史的に重要な役割を果たしたベルギーからはミシェル・デュムーラン（ルーヴァン・カトリック大学教授）を予定した。実際の研究計画実行段階ではジローの死去により、彼の後継者であるロベール・フランクの協力を得ることになった。

・    横浜国際会議場における第17回「よこはま21フォーラム」は、内外の実に多くの協力者を得て成功した。その報告書はすでに『横浜市立大学論叢・社会科学系』（第52巻第2号）の特別号『ヨーロッパ統合と日本』で公刊した。詳しくはそれを見ていただきたいが、すでに述べた学部関係者を除き、総括セッションでは阿部謹也共立女子大学学長・前一橋大学学長、第1セッション(政治・経済)では、ウルリッヒ・ユルゲンス（ベルリン社会科学研究センター教授）、マイケル・ピオーリ（マサチューセッツ工科大学教授）、中岡哲郎(大阪市立大学名誉教授)、野原光（広島大学大学院国際協力研究科教授）、野村正實（東北大学大学院経済学研究科教授）、第2セッションでは、ハルトムート・ケルブレ（ベルリン・フンボルト大学教授）、ロベール・フランク（パリ第1大学教授）、廣田功(東京大学大学院経済学研究科教授)、雨宮昭彦（千葉大学法経学部教授）、小野塚知二（東京大学大学院経済学研究科教授）、小島健(立正大学経済学部教授)、第3セッション（社会・文化）では、三浦信孝(中央大学文学部教授)、ルイス・ダベーヌ（グルノーブル第三大学名誉教授）、アルベルト・メルレル（サッサリ大学教授）、辻信一（明治学院大学国際学部助教授）、高鮮徽(鹿児島大学水産学部助教授)、冨山一郎(大阪大学文学部助教授)の各氏のご協力を得た。・・・・・・

・    共同研究者は各人がそれぞれを担当する国々(ドイツ、フランス、ベルギー、イタリア、イギリス、アイルランドなど)に調査にでかけたが、共同でも調査に出かけた。廣田、永岑、小野塚は、フランクがパリ第1大学(パンテオン・ソルボンヌ)で1999年10月に主催した10年に及ぶ｢共同体歴史家会議｣(二百人ほど)の総括会議に参加した。そこでヨーロッパ各国からの研究者と接触することができた。・・・また、2000年12月にサルデーニャにでかけ、・・・アルベルト・メルレルとサッサリ大学の多くの人々から暖かいもてなしを受けた。サッサリ大学では新原の通訳でわれわれは学部学生や大学院生の講義やセミナーで報告し、討論した。・・・・

・    西地中海の島サルデーニャのまちまちは、自分の町の旗、サルデーニャ州の旗(クワトロ・モーリ、4人の目隠しの黒い肌のモーロ人を描くもの)、イタリアの旗、そしてヨーロッパ連合の旗を掲げていた。重層的で多様な歴史的アイデンティティを象徴する旗が一緒に掲げられていることも、ヨーロッパ統合の意味を示唆するものとしても、われわれには印象的であった。・・・・・

・    このような共同研究と個人研究を踏まえ、2000年に｢よこはま21フォーラム｣で報告した内容を発展させてまとめたのが本書である。ファーラムには参加しなかったが、すでに著書の邦訳もあるバンジャマン・コリアをわれわれの科学研究費で招聘し、土地制度史学会(現・政治経済学・経済史学会)関東部会と合同で研究会を開催した。その報告原稿を元にした論考も本書第4章に収めることができた。・・・

・    本書の刊行にあたっては、平成15年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費・課題番号155318)が与えられた。

 

[9] ｢オンリーワン｣、「プラクティカルなリベラルアーツ」とか、この「キャリアデザイン」とか、実にカタカナが好きである。カタカナを使うことによって厳密な定義を避け、ムードで突っ走ろう、押し切ろうとしている。

 

[10] 欧米における社会史の社会的認知過程（大学における講座等の位置）と現状に関しては、ハルトムート･ケルブレ(ベルリン･フンボルト大学教授)「ヨーロッパ統合の社会史と統合の研究史」前掲『ヨーロッパ統合の社会史』第1章を参照されたい。

 

[11] 初出は、『東京大学新聞』1957年8月7日号。

　これは、昭和史論争を見ながらの感想であろう。その昭和史論争は、本学名誉教授･遠山茂樹、同じく本学名誉教授今井清一氏、そして昨年なくなった藤原彰氏の共同執筆による『昭和史』（岩波新書、1955年）に対する文学者･亀井勝一郎氏の批判(｢人間が描かれていない｣云々)を契機として、勃発したものである。

　この｢地図｣の主張は、文学･芸術の陣営からの攻撃にたいして、大塚が歴史学、社会科学の擁護の立場で発言したものである。

　私のここでの引用は、経済史･経営史･社会史を忘れ去った(無視した？、排除した？)カリキュラム案体系への批判であり、経済史・経営史･社会史の独自の価値の擁護である。

 

[12] 戦時中、誤診で、足を切断した。片足であったため、まさに｢本式の登山｣は無理であろう。また戦後は、胸も病んで長期療養だった。ゼミナールは自宅で行ったと聞いている。

 

[13] 初出は、中村常次郎･大塚久雄・鍋島達・藻利重隆編『現代経営学の研究』柳川昇先生還暦記念論文集、日本生産性本部、1968年(1965年秋に東京大学で開催された第1回経営史学会大会における同名の研究報告の記録、『経営史学』１の１所載、に大幅に加筆と訂正をくわえたもの)。

 

[14] 大学で言えば、学則がそれである。

　あるいは、公立大学法人の場合の｢定款｣もそれにあたる。だからこそ、｢定款｣において、学部・学科・コースなどの改廃･新設において、専門家集団としての教員の自律的な権限と責任がなければ、大学ではなくなるのである。

 

[15] 厳密にいえば、設置主体である横浜市（＝公）の｢行政当局｣(＝官)が設置したものであり、それ以上でもそれ以下でもない。公=官では決してない。「行政当局」=官の行動が自動的に公を代表し、公の実質を獲得しているとは限らない。官が、普通の人間と同じように幾多の誤りを犯すことは、侵略戦争の問題を見ても分かるように、明らかである。だからこそ、真の意味での公の見地、あるいは大学の使命達成の上で、批判すべきものであれば、大学人は適宜、問題点を指摘して修正なり変更なりを求めるべきものである。何が真であるかはしばしば不明である。だからこそ、公論を活発にしなければならない。秘密主義では決して多様な角度からの問題点をクリアできない。

｢大学像｣などにたいする教授会等の20以上もの決議･意見具申･声明は、まさにそのような大学人の責任ある主体的行動であり、市の大学改革推進本部(行政当局=官)が行っていることの問題性を社会、大学内外に示したものである。

 

 

[16]　本学では、学長他の要職にあるものが発言していることをしっかり記憶に止めておく必要がある。「全く法的根拠がない」ことを学長などが発言しているのである。

 

[17] 慶応･湘南キャンパスでは、語学などの外注がすでに行われているという。これを本学に導入するといったことになるのであろうか？　外国語教員は「それではだめだ」と意見書を出しているが、本学外国語専任教員の判断は、尊重されるのか無視されるのか？

 

--------------日本経済新聞記事より：新首都圏ネットワーク---------

厳しさ増す非常勤講師
苦しい大学経営、女性を直撃

突然、契約打ち切り
出産で解雇、セクハラも

 

　「語学や一般教養を教える非常勤講師は、働く場がどんどん少なくなってい
るのが現状」。首都圏大学非常勤講師組合の志田昇委員長が説明する。志田委
員長によると理由は二つある。
　一つは、一九九一年に大学設置基準が改正され、教養部を廃止する大学が増
えたこと。現在、国立大学の中で教養部があるのは東京医科歯科大学の一校を
残すだけとなった。第二外国語の必修を取りやめる大学が出てきたことも同基
準の改正に由来する。これに加え、大学や学生側が英会話などを中心にした実
学志向を強めたことも大きい。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスなど有名大学
の中には、民間の外国語学校に語学の授業の運営や、カリキュラムの作成を委
託するところも増えている。

 

 

[18] このうち、大学院経済学研究科に博士課程を創出するためのいわゆる「○合教員」(その後任)が、早稲大学（政経学部・社会科学部）、東大(工学部)、広島大学大学院、東北大学大学人に引き抜かれたことになる。

　文科系大学院に博士課程を維持するということは、全国の文科系大学がそのコストや効率はある程度度外視して（文科系だからコストなどはたかが知れている）、なんとか創設しようとし、なんとか維持しようとしている。本当に難しいのは時間がかかる教員の水準の維持･向上である。

　だから、博士後期課程を廃止してしまえば、教員の水準を維持･向上するための主要根拠が一つなくなるのである。そのような重大な意味をもつ博士後期課程であるにもかかわらず、また創設十年(完成後なら数年)に満たないにもかかわらず、｢縮小｣｢精選｣するというのである。教員にたいする厳しい水準を維持する為の一つの手段を放棄することを宣言しているといわなければならない。議会答弁などでは「高い水準」の創造を掲げながら、やろうとしていることは「甘い水準」への移行である。

 

「大学院の整備充実」は、文部科学省の調査項目の柱の一つであることを、本学に関する行政当局は知っているのであろうか？ http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/03/04032301.htm#003

｢大学院の整備充実｣は、どうすれば達成できるのか？

 

 

[19] JMM [Japan Mail Media] No.263 Extra-Edition：http://ryumurakami.jmm.co.jp/　

[20] ホロコーストを手がかりとした最近の拙稿「統合の前提―世界大戦･総力戦と地域的水平的統合の社会史的必然性」永岑･廣田編『ヨーロッパ統合の社会史―背景･論理・展望』日本経済評論社、2004年2月刊、第2章を参照されたい。

[21] 私の見地については、拙著『ホロコーストの力学―独ソ戦・世界大戦･総力戦の弁証法―』青木書店、2003年、『独ソ戦とホロコースト』日本経済評論社、2001年、『ドイツ第三帝国のソ連占領政策と民衆　1941-1942』同文舘、1994年を参照されたい。

[22] バルザックの『絶対の探求』は、たしか、自分の作品にいつまでも満足できず、加筆をくりかえし、最終的には真っ黒になった画面を残して死んだ画家を描いたものだったと記憶する。あまりに高い絶対的要求は、作品を残せないことを意味する。他方、あまりにも現実主義的で短期的迎合的な仕事をしている現象をみると、｢絶対への要求｣は反省素材ともなる。

[23] 3月4日の教授会の議論を元にした要望書は、検討委員会に提出されている。その結果がわからない。教授会での一度の審議もなく、市当局側の「案」がまとめられている。「踏み絵」で募集した教員を動員しての「案」である。前提として「大学像」の問題に対しては批判を封じている。「大学像」が幾多の問題を抱えていることは、各学部教授会等の意見書･要望書の示すとおりである。

 

 

[24]

世界銀行が出している下記のようなたくさんのペーパーがおもしろそうだと感じるが、時間がなくて読むことができない。

----------------------------------------
New Working Papers

3186. Donor Fragmentation and Bureaucratic Quality in Aid Recipients
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32553
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32553_wps3186.pdf

3187. To Serve the Community or Oneself: The Public Servant's Dilemma
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32554
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32554_wps3187.pdf

3188. Trading Market Access for Competition Policy Enforcement
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32555
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32555_wps3188.pdf

3189. Do Market Pressures Induce Economic Efficiency? The Case of Slovenian Manufacturing, 1994-2001
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32557
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32557_wps3189.pdf

3190. On the Quantity and Quality of Knowledge: The Impact of Openness and Foreign Research and Development on North-North and North-South Technology Spillovers
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32558
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32558_wps3190.pdf

3191. Robustness of Subjective Welfare Analysis in a Poor Developing Country: Madagascar 2001
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32559
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32559_wps3191.pdf

3192. Greenfield Foreign Direct Investment and Mergers and Acquisitions: Feedback and Macroeconomic Effects
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32578
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32578_wps3192.pdf

3193. Quantifying the Impact of Services Liberalization in a Developing Country
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32582
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32582_wps3193.pdf

3194. Law and Firms' Access to Finance
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32742
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32742_wps3194.pdf

3195. Government Procurement: Market Access, Transparency, and Multilateral Trade Rules
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32743
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32743_wps3195.pdf

3196. Technological Asymmetry among Foreign Investors and Mode of Entry
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32744
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32744_wps3196.pdf

3197. Building and Running General Equilibrium Models in EViews
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32745
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32745_wps3197.pdf

3198. Market Access for Sale: Latin America's Lobbying for U.S. Tariff Preferences
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32746
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32746_wps3198.pdf

3199. On the Measurement of Solvency of Insurance Companies: Recent Developments that will Alter Methods Adopted in Emerging Markets
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32813
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32813_wps3199.pdf

3200. When is External Debt Sustainable?
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32872
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32872_wps3200.pdf

3201. A Literature Review on the Use of Expert Opinion in Probabilistic Risk Analysis
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32873
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32873_wps3201.pdf

3202. Governance and Bank Valuation
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32874
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32874_wps3202.pdf

3203. Financial Development, Growth, and Poverty: How Close are the Links?
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32898
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32898_wps3203.pdf

3204. The Determinants of Financing Obstacles
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32899
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32899_wps3204.pdf

3205. Poor People's Knowledge: Helping Poor People to Earn from Their Knowledge
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=32900
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/32900_wps3205.pdf

3206. On the Geography of Trade: Distance is Alive and Well
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33022
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33022_wps3206.pdf

3207. The Limits to Competition in Urban Bus Services in Developing Countries
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33023
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33023_wps3207.pdf

3208. A Conceptual Framework for Retirement Products: Risk Sharing Arrangements between Providers and Retirees
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33024
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33024_wps3208.pdf

3209. Community-Based (and Driven) Development: A Critical Review
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33025
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33025_wps3209.pdf

3210. How Foreign Participation and Market Concentration Impact Bank Spreads: Evidence from Latin America
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33026
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33026_wps3210.pdf

3211. Enabling Productive But Asset-Poor Farmers to Succeed: A Risk Financing Framework
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33027
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33027_wps3211.pdf

3212. Coping with Risk through Mismatches: Domestic and International Financial Contracts for Emerging Economies
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33030
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33030_wps3212.pdf

3213. On the Measurement of Product Variety in Trade
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33033
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33033_wps3213.pdf

3214. Trademark Protection or Protectionism?
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33097
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33097_wps3214.pdf

3215. Has the Internet Increased Trade? Evidence from Industrial and Developing Countries
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33098
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33098_wps3215.pdf

3216. Making the Poor Count Takes More than Counting the Poor: A Quick Poverty Assessment of the State of Bahia, Brazil
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33099
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33099_wps3216.pdf

3217. When Can School Inputs Improve Test Scores?
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33100
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33100_wps3217.pdf

3218. Cotton: Market Setting, Trade Policies, and Issues
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33109
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33109_wps3218.pdf

3219. A Financial Social Accounting Matrix for the Integrated Macroeconomic Model for Poverty Analysis: Application to Cameroon with a Fixed-Price Multiplier Analysis
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33110
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33110_wps3219.pdf

3220. Public Management and Essential Public Health Functions
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33192
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33192_wps3220.pdf

3221. What Do We Know about Competition Agencies in Emerging and Transition Countries? Evidence on Workload, Personnel, Priority Sectors, and Training Needs
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33193
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33193_wps3221.pdf

3222. Sugar Policies Opportunity for Change
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33194
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33194_wps3222.pdf

3223. Coordination Failure in Foreign Aid
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33219
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33219_wps3223.pdf

3224. Assessing the Potential Benefit of Trade Facilitation: A Global Perspective
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33231
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33231_wps3224.pdf

3225. When is Growth Pro-Poor? Cross-Country Evidence
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33614
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33614_wps3225.pdf

3226. Groundnut Policies, Global Trade Dynamics, and the Impact of Trade Liberalization
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33615
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33615_wps3226.pdf

3227. Regulating Islamic Financial Institutions: The Nature of the Regulated
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33616
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33616_wps3227.pdf

3228. Strained Mercy: The Quality of Medical Care in Delhi
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33617
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33617_wps3228.pdf

3229. Housekeeping and Plumbing: The Investability of Emerging Markets
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33618
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33618_wps3229.pdf

3230. India: Why Fiscal Adjustment Now
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33619
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33619_wps3230.pdf

3231. Incidence Analysis of Public Support to the Private Education Sector in Côte d'Ivoire
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33806
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33806_wps3231.pdf

3232. Business Environment and Firm Entry: Evidence from International Data
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33807
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33807_wps3232.pdf

3233. Gender, Time Use, and Models of the Household
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33808
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33808_wps3233.pdf

3234. Product Market Integration and Household Labor Supply in a Poor Economy: Evidence from Vietnam
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33809
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33809_wps3234.pdf

3235. Household Composition and the Response of Child Labor Supply to Product Market Integration: Evidence from Vietnam
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33810
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33810_wps3235.pdf

3236. Professional Development and Incentives for Teacher Performance in Schools in Mexico
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=33841
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/33841_wps3236.pdf

3237. Pre-Empting Protectionism in Services: The WTO and Outsourcing
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34010
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34010_wps3237.pdf

3238. Moving People to Deliver Services: How Can the WTO Help?
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34012
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34012_wps3238.pdf

3239. The Power of Information: Evidence from a Newspaper Campaign to Reduce Capture
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34028
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34028_wps3239.pdf

3240. Inefficient Lobbying, Populism, and Oligarchy
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34030
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34030_wps3240.pdf

3241. Environmental Determinants of Child Mortality in Rural China: A Competing Risks Approach
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34031
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34031_wps3241.pdf

3242. Pro-Poor Growth: A Primer
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34168
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34168_wps3242.pdf

3243. Competing Concepts of Inequality in the Globalization Debate
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34170
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34170_wps3243.pdf

3244. Price Effects of Preferential Market Access: The Caribbean Basin Initiative and the Apparel Sector
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34171
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34171_wps3244.pdf

3245. Educational Expansion: Evidence and Interpretation
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34172
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34172_wps3245.pdf

3246. The Quality of the Legal System, Firm Ownership, and Firm Size
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34174
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34174_wps3246.pdf

3247. The Political Economy of Deposit Insurance
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34176
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34176_wps3247.pdf

3248. Incidence and Impact of Land Conflict in Uganda
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34177
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34177_wps3248.pdf

3249. Equity in Educational Expenditures: Can Government Subsidies Help?
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34207
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34207_wps3249.pdf

3250. What Does Political Economy Tell Us about Economic Development-and Vice Versa?
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34208
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34208_wps3250.pdf

3251. Aid, Policies, and Growth: Revisiting the Evidence
  Abstract: http://econ.worldbank.org/view.php?type=5&id=34209
  Full Text: http://econ.worldbank.org/files/34209_wps3251.pdf

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[25] 下記情報は、わたしのこの見方を確認してくれる。

 

━ AcNet Letter 78 【6】━━━━━━━━━━ 2004.03.19 ━━━━

Blog紹介： Letter from Yochomachi, 2004.3.18 より

ルモンド社説「スペイン国民をバカにする珍説が流布されている」
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C394170269/E1846256906/index.html


───────────────────────────────
「今回のスペイン総選挙の直前に大テロ事件があったことで、英米
メディアなどで「スペインはテロに屈した」などと言うトンチンカ
ンな説がまことしやかに流れている。日本でも目にするが、見当違
いだと思う。今日のルモンド社説はこれが如何に見当違いかを明快
に簡潔に論証している。散人も何か書こうかと思っていたばかりだっ
たが、ルモンドが言ってくれたのでその必要がなくなった。


2004.3.17 社説「人をバカにする主張」
http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3208,36-357086,0.html


スペイン国民党（与党）の選挙での敗北をうけて一つの説（命
題）が広がっている。それは「テロリズムの恐怖がアスナール
与党に対するサパテロ社会党の勝利を決定づけた」というもの
だ。この説に英米メディアがすぐに飛びつき、イタリア政府や
アメリカの政府関係者（ブッシュ関係者にばかりでなく）にも
広がっている。

その説によると、アルカイダが３月１１日のテロにより戦術的
勝利を収め総選挙の結果に大きな影響を及ぼしたというのだ。
スペイン国民は、１９３０年代にナチの脅威の前に「チャーチ
ルよりチェンバレン」といったイギリス国民と同じ間違いを犯
したとウォールストリートジャーナルは書いた。

この主張は全くお粗末で検討すればすぐ間違いだとわかる。ま
ず第一に、この説は現在日常的にテロの危険の中で生活してい
るスペイン国民に対する大きな侮辱を意味する。この何十年に
わたりＥＴＡによるなされた犯罪によりスペインで８００人以
上の死者を出しているのだ。すべてのスペイン国民は、その主
義主張はさまざまであるが、ことテロに対しては未だかってな
かったほどに結束し、強い態度でそれに臨む姿勢を表明してい
る。

さらに、サパテロ氏とその社会党は、３月１１日のテロではじ
めて急にアスナール首相の対米一辺倒従属政策を批判し始めた
のではないということだ。ずっと以前から選挙で勝てばイラク
からスペイン軍を引き揚げると云っている。これは昨年来の反
戦運動を見てもわかるように国民の圧倒的な支持を得ている。

アスナール首相の意見が多数派意見と異なっているから彼が間
違っていると云っているのではない。そうではなく、スペイン
国民はテロと戦うに当たって現政権のアメリカ一辺倒の戦略が
はたして適当なものか問い直しているのであり、それは全く正
当なものだということだ。これは臆病とか卑怯というものでは
なく、アスナールのやり方では非効率で限界があると云うこと
を有権者は表明したのである。

ある人達はスペイン国民は「恐怖」からアスナールと国民党に
反対票を投じたと信じたがっているが、その反対であり、スペ
イン国民は「怒り」からアスナールに反対票を投じたのである。
スペイン国民は、彼らの政府と首相に、彼等の考え方にガマン
できなかったのである。アスナール政府はテロ発生時、選挙へ
の悪影響を軽減させる目的で意図的に事実をねじ曲げようとし
た。イスラム過激派が拘わっているという情報を持っていたく
せにスペイン政府はテロはＥＴＡによる犯行であると発表した
のである。このような政府による情報の歪曲が大マスコミの支
持を受けて流布されるという例は、他にも同様の例やウソがいっ
ぱいある。たとえばイラクの大量破壊兵器問題でのウソについ
ては、アスナール首相は答弁さえ拒否している。このような事
実の歪曲が、イラクに対する軍事関与への反対運動に火を付け
ることとなった。そういうことがなければ今回の総選挙の結果
は全く違った物となっていたはずだ。

つまり、スペインの右派は自分で自分の首を絞めたのである
（このような愚かな行為をする連中は、残念ながらスペインの
右派ばかりではないが）。これがスペイン国民が立ち上がった
理由である。テロに対する戦いを放棄するなどではない。それ
どころか、これは民主主義によるムチ（レッスン。諫めに教育）
なのである。」

 

[26] ものわかりのいい「高度な政治判断」などという言葉で物事を曖昧にし、真実や真理を探求する誠実な態度を欠如すること。その場逃れの詭弁を弄することを恥じない態度。

　過ち、いいすぎなど誰にでもある。的確な指摘･批判には誠実に対応すべきなのである。

 

[27] 行政主義的な「改革」、事務組織の統合に引きずられた「改革」であることは、市会答弁で繰り返される「教員の意識改革」の言葉の意味が、はっきりしないことで露呈している。

　いったい教員のどのような意識をどのように変革するのか？それにはどのような手順や組織が必要なのか？

　「意識改革」と言う言葉はあるが、内容がないのである。人々を説得する内容･理念がないのである。それとも、あるのか？

 

[28]

===================================================================
横浜市立大学を考える市民の会　Information　 2004/3/17
　～～～お知らせを配信するＭＬです～～～　
===================================================================

☆・‥…━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥・★
　　　公立大学法人横浜市立大学　定款に関する審議が終了しました
★・‥…━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━…‥・☆
市第111号議案（公立大学法人横浜市立大学定款）

自民　　原案賛成
公明　　原案賛成
民主　　原案賛成
　　　　意見表明つける
　　　　「先程来質疑の中で明らかになった幾つかの問題も
　　　　　あるので、今後の大学運営で充分このことを念頭において
　　　　　大学改革の本来の姿を求めて努力をしていただきたい。」
みらい　原案賛成
共産　　定款が学問の自由を侵害する恐れがあるので反対
若林    原案賛成

公立大学法人横浜市立大学　定款に関する
大学教育委員会での審議が終了しました。
１９日（金）の市会では、大学関連の審議は行われません。

以上、取り急ぎ速報としてお知らせ致します。

 

[29] 正確に言えば（正式の議事録てで検証しなければならないが）、関議員（共産党）以外の議員からは、ということになろう。

『しんぶん赤旗』2004年3月14日付：横浜市議会特別委　横浜市
立大学問題　法人化定款案ただす／関市議「学問の自由に背く

[30] 私学独裁者の不法を裁いた日本の司法もすてたものではない。だが、そのために不当な扱いをされた3人の教員は長期間に渡ってどれだけ苦労したことであろう。研究教育がどれだけ阻害されたことであろう。湘南工科大学、不当労働行為命令取消訴訟　３月１７日東京高裁判決（速報）「湘南工科大学の解雇撤回闘争を支援する会」HPより　

 

[31] 「公立大学が市民との連携をいかに創出しうるか、このことが深刻に問われている」藤山嘉夫「公立大学と自治体―横浜市の場合―」『東京 TOKIO』（東京自治問題研究所）、2004.3、11ページ。

 

 

[32] ━┫AcNet Letter 76 目次┣━━━━━━━━━ 2004.03.17 ━━━━

【1】東京都立大学名誉教授の声明 2004.3.15
    東京都立大学の将来に関する最近の事態を憂慮する共同声明

　【1-1】東京新聞朝刊2004.3.16掲載 都立大・短大教職員組合意見広告
    http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/0316.pdf

【2】横浜市会大学教育委員会3/17,3/19 で市大問題審議
       市民の会で、１９日午前中の傍聴記録者を募集中。

　【2-1】横浜市大問題、最新情報（3/16）< 全国国公私立大学の事件情報
    http://university.main.jp/blog/archives/000611.html

【3】ALAN BRENDER, "In Japan, Radical Reform or Same Old
   Subservience?" The Chronicle of Higher Education, 2004.3.12

　【3-1】フランク・パヴロフ（藤本一勇訳）「茶色の朝」
   http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4272600478

【4】遠藤　隆氏「全員任期制の問題点」[he-forum 6832, 2004.3.16]
   http://www.shutoken-net.jp/web040316_7sagadai.html

【5】「自衛官宅ビラ配布者の即時釈放を求める社会科学者有志
  の声明」への大学教員Ｎ氏のコメント(2004.3.16)転載
  http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000568.html

　【5-1】検察庁に送付されたＮ氏の抗議文
───────────────────────────────


━ AcNet Letter 76 【1】━━━━━━━━━━ 2004.03.17 ━━━━

  東京都立大学名誉教授の声明 2004.3.15

───────────────────────────────
東京都立大学の将来に関する最近の事態を憂慮する共同声明

私たちがかつて在職した東京都立大学において、昨夏以来生じてい
る事態には、まことに憂慮に耐えないものがあります。

一九四九年に開学した東京都立大学は、長い大学の歴史のなかでは
半世紀の歩みを有するものに過ぎませんが、自由で開放的な市民の
大学を日本で初めて創ろうという輝かしい理念を掲げ、その特色を
発揮してきました。そこにおいて学問と教育に従事した私たちは、
その理念と特色に相応しい数々の成果を生み出してきたという自負
と誇りをもっています。

もちろん、学問の府は、不断の自戒と反省を重ねながら、自己の自
主的変革に努めていかなければならないことはいうまでもありませ
ん。私たちの後に大学を担っている人たちは、そのために多大の努
力を積み重ね、その成果としての改革案もすでに取りまとめられて
いました。その改革案が激変する時代や社会の流れやニーズに十分
に応えるものではなかったかも知れません。しかし、たとえそうで
あっても、これに対する内外からの意見・批判を聴き、さらにそれ
を相互の理解の上で完成させていくのが『教育・研究の場』である
大学とその設置者の採るべき道であると考えます。

ところが、この教育的努力を全く無視して都当局から突然提示され
た、東京都立大学の廃止を含む新大学設置の提案は、手続上穏当を
欠くだけでなく、その内容についても不明確な点が多く、また多く
の疑問が存し、これをそのまま進めることは決して正しくありませ
ん。大学という学問の府が、このように一朝一夕に廃止されたり、
新設されるのは、社会的にも到底評価されるものではないことを、
私たちは世界の多くの例で知っています。

私たちは、都当局が、大学の評議会、教授会、その他の職員学生な
ど、すべての構成員と十分に意見を交え、また良識ある都民の声に
も広く耳を傾け、開かれた手続を経て、今後の百年を展望した都立
の大学のあるべき姿を真剣に模索するという、大学の研究と教育の
本来のあり方を尊重する民主国家の首府の名に恥じない道に立ち返
るよう、切に要望します。

　二〇〇四年三月一五日
　　　　　東京都立大学名誉教授一二二名（三月一四日現在）註一

註一　現在までに名誉教授号を授与された者の総数は三三○名であ
るが、物故者と病気のため意見表明を遠慮された方を除いた数は二〇
四名である。そのうち、一一名についてはまだ住所が判明せず、連
絡がついていない。残りの一九三名中一三四名から回答があり、そ
のうちの賛同者が一二二名であり、反対または不参加者は一二名で
ある。五九名からは三月一四日現在回答がない。賛同者は増えるも
のと思われ、確定結果は、近日中に発表する予定である。

  ・・・・・・

後記　署名書に個人意見が付記されている場合があるが、その付記
は最終発表のさいに示すこととする。

賛同署名者氏名（五〇音順）  ・・・・・・

───────────────────────────────
【1-1】東京新聞朝刊2004.3.16掲載 都立大・短大教職員組合意見広告
http://www5.ocn.ne.jp/~union-mu/0316.pdf
───────────────────────────────


━ AcNet Letter 76 【2】━━━━━━━━━━ 2004.03.17 ━━━━

横浜市会大学教育委員会3/17,3/19 で市大問題審議
       市民の会で、１９日午前中の傍聴記録者を募集中。
───────────────────────────────
【2-1】横浜市大問題、最新情報（3/16）< 全国国公私立大学の事件情報
 http://university.main.jp/blog/archives/000611.html
───────────────────────────────
横浜市大教員組合サイトより
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm

■商学部教授会における定款に関する意見（2004.03.04付，PDF版）
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040304-1.pdf

■総合理学研究科・八景キャンパス委員会の大学院入試に関する学長宛要望書
（2004.03.08付，PDF版）
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040308-1.pdf

■国際文化学部教授会における定款に関する意見（2004.03.12付，PDF版）
http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/shiryo/k040312-1.pdf
───────────────────────────────
永岑教授のサイトより

横浜立大、定款に関する意見書　市当局や市議会の人々に訴えていただきたい

大学改革日誌（永岑教授）　最新日誌2004年3月16日(1)　
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/SaishinNisshi.htm
同教授サイト・トップページ
http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/Nisshi.htm#_ftn1

  「…「市民の会」が、定款に関する意見書を市議会・大学予算委員
  会に送るよう呼びかけている。「大学人の会」と本学「教員組合の
  「定款」（案）の問題点指摘は、本質的で重要な論点に的を絞って
  おり、是非ともそれを読んで、多くの市民が、自分たちの大学が、
  行政当局の意のままになるような仕組みになっているか、たんに予
  算の事務処理を握っているに過ぎない事務局責任者の意のままにな
  るような仕組みになっているかを、きちんと判断していただきたい。
  そして、市当局や市議会の人々に訴えていただきたい。…」

藤山嘉夫（教員組合副執行委員長）：定款（案）と定款（案）に関
する組合の見解
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/040213kumiai-teikan.htm


━ AcNet Letter 76 【3】━━━━━━━━━━ 2004.03.17 ━━━━

ALAN BRENDER, "In Japan, Radical Reform or Same Old
   Subservience?" The Chronicle of Higher Education, 2004.3.12

   National universities wonder how much freedom they will be
   given under looser government oversight
───────────────────────────────
佐賀大学の豊島です．

The Chronicle of Higher Educationの3月12日号に国立大学独法化
の特集記事が以下のタイトルで出ています．1,700語のやや長い記
事です．

In Japan, Radical Reform or Same Old Subservience?  National
universities wonder how much freedom they will be given
under looser government oversight By ALAN BRENDER Tokyo
http://chronicle.com/
ただしウェブでは契約者しか閲覧できません．

「法人化で独立性が付与される」など，政府発表そのままの表現で
記事が始まるのは気に入りませんが，全体としては，「却って官僚
統制が強まるのではないか」との意見もかなりのウェイトで紹介さ
れており，かなりバランスの取れた記事になっているように思われ
ます．新聞への意見広告運動のことも触れられています．

中期計画，文部科学省による評価，教育公務員特例法が適用されな
くなること，昨年の学長らの「辞意表明」，評価委員会から大学の
中期目標案に出された注文，など，独法化の主要な問題点や，最近
の重要な話題はカバーされています．

私も意見を求められメールで記者に送りましたが，非常に短縮され
てはいますがよく再現されていました．

佐賀大学理工学部　　豊島耕一
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp
───────────────────────────────
追伸：契約者しか閲覧できないと書きましたが，「一ヶ月間無料ア
クセス」というのがありました．次のページで手続き出来，すぐに
全部の記事が読めるようになります．
http://chronicle.com/4free/?eb
───────────────────────────────
ついでながら，ややこじつけですが「平和教育」という関連性で，
本の紹介をさせて下さい．すでにご存じの方も多いと思いますが，
「茶色の朝」【3-1】（大月書店，昨年１２月刊）はとてもすばら
しい反ファシズムの寓話です．極右の進出に危機感を持ったフラン
スの作家が，印税放棄で９８年に出版したもので，ベストセラーに
もなったとのことです．千円ですが，願わくばオリジナル版の１ユー
ロとまではいかなくても，５００円以下の廉価版をすぐにでも作っ
てもらいたいと思います．「心のノート」を超える部数で若者に読
んでもらいたいものです．東京新聞の２月１４日の紹介記事が次に
あります．
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040214/mng_____tokuho__000.shtml

周りの人数名に薦めましたが，みなすばらしいという反応です．院
生に読んでもらったところ，自分も物語の中の人間のようになって
しまっているのかもしれない，恐いような気がする，と言っていま
した．
───────────────────────────────
【3-1】「茶色の朝」 大月書店 ISBN 4272600478(2003/12),\1000
   物語／フランク・パヴロフ（藤本一勇訳）、
   絵／ヴィンセント・ギャロ、
   メッセージ／高橋哲哉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4272600478

ウェブログでの紹介「沢山の言い訳」
http://ac-net.org/dgh/blog/archives/000561.html
───────────────────────────────
Publicity　No 877 2004.3.13
http://www.emaga.com/bn/?2004030036602914012457.7777
で紹介。

  ▼本文中に、「政府の動きはすばやかったし、／俺には仕事があ
  るし、／毎日やらなきゃならないこばごましたことも多い。／他の
  人たちだって、／ごたごたはごめんだから、／おとなしくしている
  んじゃないか？」という一言がある。
  「『行きすぎはまずいよ』／とシャルリーは言った」という一言と
  対照的で、我が身に堪えるねえ。

Publicity で紹介されているプレスリリースより：

  ＜原書・フランス語版について＞たった11ページしかないこの寓話
  は、著者が印税を放棄し、1998年、１ユーロで発売され
  た。・・・・・・2002年4月下旬に行われたフランス大統領選挙の
  第1回投票で、移民排斥などを訴える極右政党国民戦線党首のジャ
  ン=マリ・ルペンが18％の支持を得た時、フランス国営ラジオ
  France Interがルペンのインタビューを流す直前に紹介。それを期
  に、ベストセラー入り。以来、「現象」、「センセーショナルな
  本」、「引っ張りだこの小さな本」と形容されたこの本は、2002年
  の年間ベストセラー2位、2003年は1位に輝いている。・・・・・・


東京新聞2/14「フランス寓話が問いかけるもの」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040214/mng_____tokuho__000.shtml

  「筋書きはこうだ。主人公はごく普通の男性市民。ある日、遊び仲
  間の友人から飼い犬を安楽死させたと知らされる。理由は、政府が
  毛が茶色以外の犬や猫はペットにできないという法律を定めたため
  だ。その後も日常に小さな変化が起きる。このペット制限を批判し
  た新聞が廃刊され、その系列出版社の本も消えていく。しかし、
  「（政府の認めた）『茶色新報』も競馬とスポーツネタはましだか
  ら」と、さして不自由のない生活に主人公はまだ、声を上げない。
  だが、ある日、友人をはじめ、多くの人々が逮捕され始める。過去
  に茶色以外の動物を飼っていたことを犯罪と見なす法律ができたた
  めだ。「茶色の朝」、主人公にも危険が迫る－。」

宮台真司氏が「（多くの日本人は）周囲に少数派に属する友人がお
らず、異質な人間と接触することがほとんどない結果、自分は多数
派、あるいは勝ち馬に乗っていられると信じている」とコメント。

ウェブログ Better Days より
http://ch.kitaguni.tv/u/1856/%ca%bf%cf%c2/0000056283.html

    白と黒のぶちの猫を飼っている「俺」
    『ペット特別措置法』という法律が出来る。

    街には『茶色の法律』を守ろうとする自警団が現れ、ペットを殺すための毒
    入り餌も無料で配られる。

    茶色以外の猫を飼ってはいけない事になる。
    猫を安楽死させて、一段落する「俺」。
    （少しだけ胸が痛んだがすぐに忘れる）

    法律が『茶色ではない犬も飼ってはいけない』事になる。
    黒いラブラドールを飼っている、友人のシャルリ－がペットを安楽死させる。
    お互いペットを安楽死させた「俺」とシャルリ－。
    （少しだけ胸が傷んだ。すっきりしない。しかし、ごたごたに巻き込まれる
    のは嫌だ。仕
    事はあるし…他にもいろんなことをしなくちゃならない。）

    いつも読んでいる新聞が廃刊になった。
    茶色でない事を書いたからだ。いつも茶色を批判する事を書いていた。
    （『茶色の新聞』を読むしかないとあきらめる「俺」とシャルリ－）

    図書館から日常の本が強制撤去される。
    いつも言い表わす時、「茶色」をつけなくっちゃならなくなった。
    「茶色の猫」「茶色の犬」「茶色のコーヒー」「茶色の記念日」

    茶色の他、日常は存在してはいけなくなった…

    でも、慣れてしまった。

    「俺」とシャルリ－は茶色のペットを手に入れ、茶色に囲まれた生活を始める。
    （流れに逆らわない生活は悪くはないと「俺」）

    自警団の摘発がエスカレートする。
    『以前に茶色以外のペットを飼っていたものも逮捕』

    そのために、シャルリ－が逮捕される！！

    そんな事考えもしなかった「俺」後悔する「俺」
    「嫌だと言うべきだった」「抵抗すべきだった」と「俺」
    気づくのが遅かった「俺」が迎えた茶色の朝…。。。
    以上が、フランス寓話「茶色の朝」の話しの進行です。・・・・・・

───────────────────────────────
この本のamazon.com 書評欄に「今の子達は、日本が戦争をしてい
る時、全部の日本人が好戦的なテンションでいた、と勘違いしてい
る」という言葉が紹介されている。戦前の日本の人々の大多数が、
軍隊や軍人が嫌いで軍事について無知・無関心であったことは余り
知られていない。

━ AcNet Letter 76 【4】━━━━━━━━━━ 2004.03.17 ━━━━

遠藤　隆氏「全員任期制の問題点」
    [he-forum 6832, 2004.3.16]
     http://www.shutoken-net.jp/web040316_7sagadai.html

───────────────────────────────
全員任期制の問題点

　　　　　　　　　　　佐賀大学教員
　　　　　　　　　　　　　遠藤　隆

   最近，学部の教員全員に任期を付けるところが現れてきた。
   それどころか，
   「大学の全教員に任期を付ける」
   と言っているところもある。

   その際，当局から
   「普通にやっていれば，ほぼ全員再任されるので心配ない」
   という説明がされることがあるようだが，
   説明が本当なら違法だし，
   嘘なら詐欺である。

   教員任期法の第４条第１項第１号を適用した場合，
   その目的は
   「多様な人材の確保」
   すなわち
   「人間の入れ替え」
   にある。

   だから，ほぼ全員が再任された場合は，
   そもそも「多様な人材の確保」の必要性が否定され，
   任期を付けたこと自体が無効になる。

   再任されなかった教員は，
   「必要のない任期制だった」
   と主張して訴えることもできる。

   あるいは，
   「勤務成績を見て，原則再任」
   という運用方法は，
   実質的な
   「長期間の試験採用」
   であり，
   再任は
   「試用期間の延長」
   に当たる。

   不合理に長い試用期間も，
   試用期間の延長も，
   ともに違法であり無効である。

   そのとき，法人の役員達は，
   責任ある対応ができるであろうか。
   損害賠償に耐えられるであろうか。

   では法律の趣旨に従って，
   多数の教員を再任しなかったらどうなるのか。
   教育機関としては大きな障害が発生する。

   また，学部のように教授会のある組織では，
   後任人事を辞めていく教授達が行う事態となるが，
   それでは責任ある人事が期待できない。

   だから，学部のような教育機関において，
   ほとんど全員が再任されるにしても，
   かなり多数の教員が辞めていくにしても，
   全員に任期を付けるのは無理がある。

   佐賀大学では医学部で全員任期制を導入した。

   これは大学の運命に関わることなので，
   法人化に際して，
   以上の問題点を提起したいと思っている。


━ AcNet Letter 76 【5】━━━━━━━━━━ 2004.03.17 ━━━━

「自衛官宅ビラ配布者の即時釈放を求める社会科学者有志の声明」
  転載頁へのコメント転載
  http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000568.html
───────────────────────────────

N＠獨協大学教員、attac Japan会員です。15日に、反戦ビラ配布者
不当逮捕に抗議する集会に行ってきました。

主催は「立川・反戦ビラ弾圧救援会」(*1)。会場の公民館に開始５
分ほど前に着いたのですが、50名ほど入れる部屋はすでに満席でし
た。いすのない人は床に座ったり、立ったりして聞いています。４
人に１人ぐらいが若者です。出入りした人を全部合わせると、100
人を超していたかもしれません。

集会前半は救援会報告、担当弁護士報告法学者声明(*2) の発起人
報告など。そして会場からの発言。質疑応答の他、アピールや情報
提供もありました。サンデー毎日(*3)３月28日号にコメントが載っ
たという人からは、「警察に抗議電話したら、反戦チラシだから捕
まえたとはっきり言われた」との情報提供。イラク開戦後に個人で
アメリカ大使館前アピールを続けた人は、「ある人に向かって大声
を出した」という容疑(!?)で告訴され、自宅や職場の家宅捜索を受
けた話をし、「人ごとではない」と訴えていました。集会後半は、
各地の反戦運動からの報告でしたが、都合により途中で帰ってしまっ
たため、内容はわかりません。

(*1)a href="http://www4.ocn.ne.jp/~tentmura/
(*2)http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/peace/tachikawa.html
(*3)http://www.mainichi.co.jp/life/family/syuppan/sunday/

状況がよりよく見えるようになり、行ってよかったと思っています。
この件の他にも、運動弾圧が狙いであることが明白な、これまであ
りえなかった微罪逮捕が、全国で相次いでいるそうです。何らかの
行動に関わっている人は、自分なら何で捕まるかを考え、逮捕を未
然に防ぐと共に、万一の場合を想定しておく必要があるかもしれま
せん。その一方で、もっともっと世論を起こさなければなりません。
多くの人が、お金や時間、人脈やインターネットアクセスなど、そ
れぞれのもつリソースをちょっとずつ出し合えば、逮捕がおかしい
ことがわかりやすいだけに、状況は大きく変わると思われます。

３人が起訴されるかは、拘留期限が切れる19日までに、つまり実質
的には今日明日のうちに決まります。刑事訴訟法248条によれば、
逮捕された人はすべて起訴されるというわけではありません。しか
し、担当弁護士の内田雅敏先生のお話では、今回の逮捕は令状逮捕
といって、検察庁が予め打ち合わせをした上での、起訴を含んだ
（と通常みられる）逮捕なのだそうです。

内田先生は、残念ながら起訴はあるかもしれないが、その先には裁
判で違憲判決を勝ちとるという目標があるともおっしゃっていまし
た。

あまりに正直に書いてしまったため、がっかりされた方もいるでしょ
う。しかし、100％起訴と決まったわけではないのも事実です。集
会主催者は、参加者に向けて、「起訴を許さない声を検察庁に届け
よう」という行動提起をしました。

私も、逮捕された３人にとって不起訴がベストである以上、最後ま
で検察庁に圧力をかけたいと思い、以下のような抗議文を、検察庁
サイト（*4 ）の「ご意見・ご質問」メールフォームを通じて送り
ました。インターネットをなさる皆さんに、同様の行動を呼びかけ
ます。
(*4)http://www.kensatsu.go.jp/">http://www.kensatsu.go.jp

それぞれがオリジナルの熱い叫びを届けるのがベストなのですが
（特に匿名の場合）、時間のない人は、どうぞ私の文章をお使いく
ださい。私もいちおう法律家なので、「起訴の不当性」を法律的に
主張すると共に、裁判になった場合、支援体制が充実しているから
（昨日の集会でそれを感じました）、面倒なことになるよ、という
メッセージを込めました。　私は名前も肩書もメールアドレスも出
し、大学を連絡先にしておきましたが（そのうち逮捕されるかな）、
相手が相手なので、名前や連絡先は、個人の判断で出す出さないを
決めたらいいと思います。　　なお、地域での次の行動は、19日
(金)17時30分から、立川駅北口コンコース上でビラまき＋終了後立
川警察署抗議行動。その次は、21日立川～横田ロングピースウォー
ク（９時30分立川錦中央公園集合、13時30分福生公園集合）です。

以上、集会報告と行動の呼びかけまで。

───────────────────────────────
【5-1】検察庁に送付された大学教員の抗議文
───────────────────────────────
    題名：立川ビラ配布住居侵入被疑事件について

    内容：上記の件につき、公訴を提起しないことを強く要
    望します。

    この件は、３月３日付け法学者声明が指摘するように、
    そもそも刑法130条の構成要件該当性に重大な疑問があ
    ります。

    百歩譲って構成要件を満たすとしても、刑事訴訟法248
    条の「犯罪の軽重」を考慮に入れれば、公訴を提起すべ
    きでないことは明白です。公訴提起は、３人の被疑者の
    人権を侵害するのみならず、かえって国民の検察に対す
    る信頼を失墜させることとなるでしょう。

    万一公訴が提起された場合、私たち国民は全面的に「被
    告人」らの側に立ちます。公判は、金銭的にも法律知識
    の点でも、尽きることのない豊富なサポートを全国から
    集めておこなわれるでしょう。特に、私たちには、裁判
    所が憲法判断を回避することのないよう、あらゆる手段
    を尽くす準備があることを強調しておきます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集発行人：辻下　徹 ａｄｍｉｎ＠ｌｅｔｔｅｒ.ac-net.org
ログ：http://letter.ac-net.org/log.php
趣旨：http://letter.ac-net.org/index.php
＃（ ）の中は編集人コメント、「・・・・・」は編集時省略部分
スパム対策としてアドレスの一部を全角表示。使用時は半角に。

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[33] この点、すでに指摘されていることではある。

補足資料：「理学部教授会（03-8-25）で出た主な意見（メモ）」）


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“御用”ヒアリング：たった１５分の意見聴取で済ませて，強行突破する積もりか
http://satou-labo.sci.yokohama-cu.ac.jp/030830goyohearing.htm

　下記「討議資料03-8-28」中で，『「プラクティカルなリベラルアーツ」と
は，どのようなものなのか，という質問にたいして，学長は，「１４人いれば１４と
おりの解釈があるので，私としては今，こうだとは言えない」という主旨の発言を
し，・・・市の改革推進会議でも，報道発表でも，「プラクティカルなリベラルアー
ツ」という，あり方懇の方向で行く，と言っておきながら，その内容が上記のような
ことであるとは全く開いた口がふさがりません．ようするに，自己矛盾する言葉を羅
列したにすぎない「プラクティカルなリベラルアーツ」なるものは，誰も説明しよう
がないことを，学長自ら吐露せざるを得なかったものとしか言いようがありませ
ん．』と，ある教員が指摘しているように，肝心かなめの“プラクティカルなリベラ
ルアーツ”の理念すら提示できないというオソマツぶりを露呈している．
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総合理学研究科八景研究科委員会　討議資料03-8-28
（１）　理学部教授会（03-8-25）で出た主な意見　（ただし，個人的な記憶に基づ
くもので正式な文書ではないことをお断りしておく．）
1. プラクティカル・リベラルアーツの概念がはっきりしていないで、それに添った
　案というのは分らない。理念が不明確である。
2. ３学部を１学部に統合したり、博士課程を縮小するような案で、競争力が保たれ
　るとは思われない。
3. 財政上の問題でこのような案にするならば、その見通し、裏づけが必要であるの
　に何もない。
4. 学長と理事長の分離には反対である。
5. 入試をどうするのか、３学府１本でするなら、理学部はやっていけない。大枠だ
　からと言っても、重要なことであり、それについて何もないのでは判断に困る。
6. 幹事会でこのような結論になった経過が、ほとんど分らないが、これを説明でき
　るのは学長だけである。理学部に学長が説明に来て欲しい。
7. 大学での検討を来年まで、一年延ばすようにすることを主張したい。
8. 部局長会議において、教授会で「声明や決議をしないように」という要請があっ
たということは明白な学部自治への侵害である。

とくに，
　上記１の，「プラクティカルなリベラルアーツ」とは，どのようなものなのか，と
いう質問にたいして，学長は，「１４人いれば１４とおりの解釈があるので，私とし
ては今，こうだとは言えない」という主旨の発言をした，ということが学部長から話
されました．市の改革推進会議でも，報道発表でも，「プラクティカルなリベラル
アーツ」という，あり方懇の方向で行く，と言っておきながら，その内容が上記のよ
うなことであるとは全く開いた口がふさがりません．ようするに，自己矛盾する言葉
を羅列したにすぎない「プラクティカルなリベラルアーツ」なるものは，誰も説明し
ようがないことを，学長自ら吐露せざるを得なかったものとしか言いようがありませ
ん．

　上記８の，各教授会や研究科委員会で「大枠」についての議論はしてよいが，「決
議」や「声明」は出さないように，という主旨の発言が「学長」からあった，という
学部長の発言でした．教授会組織を一体何と考えているのか．

 

[34] 「市に迎合的」と言うのも不正確だろう。市の行政当局（目先の役人など）、というべきだろう。

 

[35] この部分だけは、私の考えとまったく一致した。

 

[36] 「年俸」制を導入するにあたって、一体何年くらいかけて、その人物の「成果」を判定するのだろうか？　発想がすでにみずから否定したばかりの「短期的」発想ではないか？

[37]

　　新首都圏ネットワーク

 

全員任期制の問題点
　　　　　　　　　　　佐賀大学教員
　　　　　　　　　　　　　遠藤　隆
最近，学部の教員全員に任期を付けるところが現れてきた。
それどころか，
「大学の全教員に任期を付ける」
と言っているところもある。

その際，当局から
「普通にやっていれば，ほぼ全員再任されるので心配ない」
という説明がされることがあるようだが，
説明が本当なら違法だし，
嘘なら詐欺である。

教員任期法の第４条第１項第１号を適用した場合，
その目的は
「多様な人材の確保」
すなわち
「人間の入れ替え」
にある。

だから，ほぼ全員が再任された場合は，
そもそも「多様な人材の確保」の必要性が否定され，
任期を付けたこと自体が無効になる。

再任されなかった教員は，
「必要のない任期制だった」
と主張して訴えることもできる。

あるいは，
「勤務成績を見て，原則再任」
という運用方法は，
実質的な
「長期間の試験採用」
であり，
再任は
「試用期間の延長」
に当たる。

不合理に長い試用期間も，
試用期間の延長も，
ともに違法であり無効である。

そのとき，法人の役員達は，
責任ある対応ができるであろうか。
損害賠償に耐えられるであろうか。

では法律の趣旨に従って，
多数の教員を再任しなかったらどうなるのか。
教育機関としては大きな障害が発生する。

また，学部のように教授会のある組織では，
後任人事を辞めていく教授達が行う事態となるが，
それでは責任ある人事が期待できない。

だから，学部のような教育機関において，
ほとんど全員が再任されるにしても，
かなり多数の教員が辞めていくにしても，
全員に任期を付けるのは無理がある。

佐賀大学では医学部で全員任期制を導入した。

これは大学の運命に関わることなので，
法人化に際して，
以上の問題点を提起したいと思っている。


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　　　　　　　　　　遠藤　隆
佐賀大学　理工学部　物理科学科
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[38] なぜ、70歳になるまでは、告発されなかったのだろうか？

　「市民」は、どのような状態でヒステリー状態に陥ったのか？

 

[39] 少なくとも、学長が選挙の際にしばしば掲げたベンジャミン･フランクリンは、ソクラテスをその謙譲の精神ゆえに、尊敬する人物として、キリストと並べて特筆し、13徳の第12番目の徳として、若い人々に見習うことを勧めている。

「第13　謙譲　　イエスおよびソクラテスに見習うべし」と。

Cf. http://eba-www.yokohama-cu.ac.jp/~kogiseminagamine/20020301Franklin.htm

 

[40] 「テロ」の概念もよくよく慎重に検討しなければならない。

チャルマーズ･ジョンソンはいう。

「爆破事件は－アフリカのアメリカ大使館やニューヨーク市の世界貿易センター、サウジアラビアの米軍基地宿舎など、どの爆破事件も－その原因が明らかだ。あるものから見ればテロリストであっても、別の者から見ると当然ながら自由の闘士であり、いわれのないテロ攻撃が罪のない市民を犠牲にしたとアメリカ政府当局者が非難しても、それはアメリカがかつて帝国主義的な行動をとったことへの報復である場合が多い。テロリストが罪のない無防備なアメリカ人を標的にするのは、海上から巡航ミサイルを発射し、B-52爆撃機で超高々度を飛び、ワシントンの指示にしたがって残忍かつ抑圧的な政権を支援するアメリカ軍兵士を狙うのは無理だと思うからにほかならない。防衛学会議のメンバーが1997年にテクノロジーの獲得に関する国防次官への報告書に書いているように、｢過去のデータによれば、国際情勢へのアメリカの関与とアメリカに対するテロ攻撃とのあいだには強い相互関係がある。また、軍事力が劣るためにある国民国家がアメリカを公然と攻撃できない場合に、国境を越えた活動[ある国のテロリストが他の国でテロ活動をすること]がうながされる。｣同『アメリカ帝国への報復』集英社、2000年6月刊（2001年10月第２刷）、ｐ26．原著、Chalmers Johnson, Blowback:  The Costs and Cosequensec of American Empire, 2000. 

 

[41] まさに、教員の「全員任期制」などと言う人事制度の根幹にかかわることで、まったく立場の違う事務系職員（部局長）と教員とが委員会などで同数だと、どういったことがおきるか、その典型的な事例である。「定款」（案）通りとなった大学では、まさに、これが合法化され、大手を振ってまかり通り、常態化するということである。

 

 

[42] その点、全国的にも紹介された「大学人の会」の横浜市民の見識は優れていると思う。

 

[43] 本学などは、｢あり方懇｣答申や｢大学像｣に見られるように、せっかく作った博士課程を排しないし縮小してしまうことだけを前面に出している。経営主義･行政主義の支配である。横浜市の日本や世界に対する貢献の為に何をなすべきか、という観点からの博士課程の①付けはない。

[44] 本学では、｢あり方懇｣答申およびそれに屈服した｢大学像｣では、｢外部資金を取ってこなければ研究しなくていい｣という発想である。

[45] 本学に関する｢あり方懇｣答申とそれに屈服した｢大学像｣は、経営主義のもと、まさにこの現状を追認し、それを推し進めようとするものである。どのようにして魅力的な大学院博士課程を構築していこうか、という発想は見られない。