20096月−12月の日誌

 

 

1221日  中期目標策定にあたり、根本的に重要な意見書が、国際文化創造コースでまとめられ、関係各方面に提出された。

それは、代議員会でも表明され、教員組合の執行部もそれを積極的に受け止め、本日配布された教員組合ニュースで紹介された。国際文化創造コース以外の一般教員は、こうした情報がなければ、貴重な意見書の内容を直接知る機会がない。

本意見書には、大学の自由で自治的な、しかも学校教育法に基づく正々堂々の民主主義的な活性化のための基本的要求・要望が定式化されている。それが掲載された教員組合週報をここにコピーしておこう。

 

------Weelky1219-------

 

 

 横浜市立大学教員組合報

組合ニュース
         2009.12.19

もくじ

全大教新聞
国際文化創造コースから

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全大教新聞
 全大教新聞12月10日号に横浜市大の記事が掲載されましたが、ご覧頂けましたでしょうか。教員組合のホームページ(http: //homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm)にも、記事のコピーをjpgファイルにして掲載(http: //homepage3.nifty.com/ycukumiai/kumiai-news/zendaikyo091210.jpg)しましたので、是 非ご一読下さい。

国際文化創造コースから

国際総合科学部代議員会において、次期中期計画に関し、国際文化創造コースからまとまった意見が表明されました。許可をいただいた上で、転載させ て頂きます。代議員会、総会の時期も近づき、執行委員会ではできるだけ多くの先生方の意見を集約して、横浜市派遣職員側にぶつけていきたいと考えていま す。

                      
(以下、許可を頂いた上での転載)

 次期中期計画の策定が現在、進められています。われわれ教員に伝えられた案について、11月コース会議以来、コース内で議論し、それを以下のよ うな意見書としてとりまとめました。この意見書を次期中期計画作成にあたっている関係者、関係部署に伝達いただき、次期中期計画の具体的取組にあたってぜ ひ配慮いただきたくお願いします。


.          ガバナンスの強化に関する取組について

 「トップの情報発信機能の強化」、「各教員の意見集約がスムーズに行える組織体制の構築」が掲げられています。つまり現体制がこの点で大きな欠 陥があったということを物語っています。われわれは、その根本的な原因が、教授会自治、所属構成員による選挙による組織長の選挙など民主的な大学の組織と 運営を解体してしまったことにあると考えます。この状態は、教授会が重要な事項を審議する旨を定める学校教育法第93条にも違反しています。トップダウン 式の組織・運営がガバナンス強化を可能にするとの構想であったのかと考えますが、それが実際にはうまく機能しなかったことを真摯に受け止め、この根本を見 直すことを要望します。

注:学校教育法第93条第1項「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」


.          人材育成・人事制度に関する取組について

 大学の社会的使命である教育・研究は、それを担う人材にかかっていることはいうまでもありません。最良の教育・研究を実現するためにもっとも重 要なことは、これらを担う教員・法人職員が本学に定着することです。そうしてこそ、本学に愛着を持って教育・研究はじめそのほかの面でも真に本学に貢献す ることができます。

ところが現在、本学が法人化後に採った教員・法人職員に対する任期制が、そうした環境整備にとって最大の障害になっています。任期制のために、教 員・法人職員は、本学への愛着、仕事への意欲が阻害されています。法人化後に多数の有能な教員・法人職員が本学を退職していった事実を真摯に受け止める必 要があります。任期制を根本的に見直すことを要望します。

 しかし、次期中期計画で任期制継続は前提になっていると聞いています。それならば、早期に教員・法人職員に対するテニュア制度の導入を要望します。所定の期間、十分に責務を果たした教員・法人職員をそのように遇することが人材育成の最良の方法であると考えます。

.          教育の質の向上について

 この問題も上記の任期制と関係する問題です。任期制のために大量の教員が退職しました。しかし、後任の採用は必ずしも行われていません。このた め専任教員数が減少しつづけていることが、教育の質の向上にとって最大の問題です。定年退職教員の原則不補充、任期制を原因とする突然の途中退職、このた めに当該教員に指導を受けていた学生たちは、大きな不利益を被っています。本学の掲げる「学生本位」の理念にまったく矛盾しています。

 教育の質の向上を実現するためには、まず任期制問題を解決し、そして無原則な後任人事の進め方を改め、退職教員を補充することを原則とすべきです。不補充の場合にはむしろしかるべき説明責任があると考えます。

.          共通教養教育の改善・充実について

 本学の共通教養教育で目玉としているPE、教養ゼミA・Bについては継続するとしています。本学は、本学学生の一定水準の英語能力を保証すると いうことでPEを実施しています。しかし、実情は、多数の学生たちが、PE取得後、英語離れを起こしています。PE取得後に多くの学生はむしろ英語能力を 低下させています。昨年度の4年次生アンケートによれば、多少低下した者23.2%、かなり低下した者20.1%、合わせて43.3%が英語能力を低下さ せたと回答しています。

 これに対応すべく突然、専門教養(ゼミや講義科目)で英語による授業実施が試みられました。しかし現場の教員によれば、現行のPE取得水準で、 英語による授業では専門分野の教育が困難であり、英語力向上の点で効果的でないという意見です。こうした実情を勘案すると英語能力を向上させるためには、 弥縫的に専門教養授業を英語でやるより、すでに試みられている上級英語を充実させたり、体系的な海外留学プログラムを充実したりする方が効果的であると考 えます。そして専門教養授業では専門分野の外書講読を開設した方が専門知識を増やしながら英語読解力を向上させることができ、もっと有意義であると考えま す。

 PEの3年進級条件は、現行のカリキュラム体系上、必然とは言い難いものです。この条件だけのため不必要に留年しなければならない学生が生じて います。進級条件は撤廃し、要件とするとしても卒業までの要件とすべきです。またPE取得条件は、一律規準でなく、専門分野で違いを認めるべきだと考えま す。

 教養ゼミAと教養ゼミBについては、運営方法を改善すべきです。1クラス30名以上では、真に演習としての運営が困難です。多くても1クラス最大20名を規準とすべきです。このために授業コマ数について2コマを1コマにし、2人の担当教員制も見直しを検討すべきです。

.          再編後のコース運営計画について

 法人化によって旧三学部が、一つの国際総合科学部となりました。しかし、専門分野という点で、厳然と違いが学部内に残っています。一つの学部で あるために、カリキュラム運営において同一規則をあてはめていますが、そこに無理が生じているのが現実です。専門分野の教育をより効果的に行うためには、 コースによって独自の規則でカリキュラム運営をした方が、より効果的な教育が実行できると考えます。そこで学部では共通の大枠(卒業単位数、共通教養と専 門教養の単位数程度)を決め、それ以外の細目についてはコースがカリキュラム運営の権限(いわゆるローカルルール)を持てるように要望します。


6 大学のミッションについて

 大学のミッションの最後の部分で、これまで○○○とされていた研究分野について、この度、「生命医科学の分野」と明示されました。口頭では、他 の分野を無視するものではないとの説明がなされていると聞きます。しかし、文言で明示されると、将来、この文言が一人歩きして、過去の口頭説明が無視さ れ、他の分野への配慮が疎かにされることを非常に危惧します。わたしたち文系の研究分野に属する者として、今後の具体的な取組においては、文系分野の研究 への配慮も文言で明示されるよう要望します。

 これに関連して付言しますが、当初の法人化にあたって、新しい大学の理念として、「リベラルアーツ」教育を標榜することになりました。この度の 次期中期計画骨子案にそのような文言を見つけることができません。何の説明もなしに、なし崩し的に「リベラルアーツ」を引っ込めてしまったとしか思えませ ん。そして今度は突然、「生命医科学」研究の世界的拠点という目標を掲げたとの印象を拭えません。わずか数年で、大学の方向が大きく揺れ動くことに構成員 として、はなはだ不安を抱きます。どういう経過で「生命医科学の分野」に特化することを決めたのか、構成員に対してもう少し丁寧に説明くださるように要望 します。



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1110日(2)「任期制同意」への強制を昇任のハードルにするやり方は、学生に対するPEでの進級基準の非合理的強制とおなじ官僚的システムである。

PEをなぜ2年から3年への進級基準とするのか、2年から3年にPEの進級基準をクリアして進級したことによって、どのようなカリキュラム上の展開が必然的合理的に行われるのか。その説明は管見のかぎり、一切ない。全員任期制の強権的導入と同じ問題がここにある。

その問題性は、進級、在学の実態が、公開されれば、必ずや社会的に注目を集め、問題化するはずのものと思われる。

そうしたデータは、大学当局が公開したがらないデータであることは、文部科学省も先刻承知のようで、いずれ公開が義務化されるようである。そうした義務化まで、正確なデータを公開しないで、このまま行こうというのか?

 

---------------「全国国公私立大学の事件情報」119日付------------------

 

中退率、在学数、入試別入学者…文科省「大学は情報公開を」

http://osaka.yomiuri.co.jp/university/topics/20091106-OYO8T00333.htm

 文部科学省は5日、国公私立大学に公表を義務づける教育情報の項目を盛り込んだリスト案を中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)大学分科会の部会に示した。5分野、計17項目からなり、大学側が積極公表してこなかった「中途退学(中退)率」や「在学者数」などが含まれた。受験生らの指標にしたい考えで、さらに項目を精査し、年度内の大学設置基準の改正を目指す。……

 

 

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1110日(1) 昨日(119日)は、ベルリンの壁崩壊の20周年記念日。新聞・テレビ等のマスコミでも、この世界史的事件が数多く取り上げられている。その一つの企画が、デンマーク映画「誰がため」を日本で上映しようとする映画会社アルシネテランの「トーク付き試写会」だった。これに参加してみた。トークは友人の歴史家・芝健介氏(東京女子大教授)と国際ジャーナリストとしてマスコミで活躍する蟹瀬誠一氏(明治大学教授)によるもので、映画の放映後、30分ほどだった。

 

映画が描き出すのは、194049日にドイツ第三帝国により占領されたデンマークにおけるレジスタンスであった。

 

戦時下、とりわけドイツ敗退局面での厳しい政治軍事情勢のもとで、ドイツ占領当局(それと協力する対独協力者のデンマーク人)に対する抵抗・レジスタンスは命をかけたものとなる。これに対するドイツ治安当局・軍部の報復・鎮圧作戦も血なまぐさくなる。そこでは謀略、スパイ、裏切りが出現する。真実の情報はどこにあるのか。誰が誰を裏切っているのか、秘密のベールの中で事態は進行する。

レジスタンスなどというものは言葉では簡単だが、本当にレジスタンスを行っているのか、スパイと謀略に踊らされているのか、真実は簡単には見極められない。

謀略の横行する中で実際に戦時下で戦っている人々には、当然のことながら、真実は見えていないことが多い。それだけに、一つ一つの行動は、味方を殺し、敵を助けるといった場合もある。

血で血を洗う戦時下では、レジスタンスも必然的に「人殺し」の側面を持たざるを得なくなる深刻な事態を見据えて、平和の時代にこそ、戦争への道を押しとどめる努力の必要性を突き付けるものであり、二人のトークはそのあたりを平易に噛み砕こうとするものだった。

現在の世界の平和の状況・意味、第二次大戦からの距離感を改めてかみしめ直すための素材として、ベルリンの壁の存在すら知らない若い世代に見てほしい重い内容であった。

 

ベルリンの壁崩壊記念日のまさにその日の日付の教員組合報を、昨日、いただいた。

昇任人事を梃に任期制を飲ませようとする法人(理事長・副理事長)の態度を教員組合は一貫して批判してきたが、今回もそのような問題が発生し、組合が撤回を求めたのであるが、学長(事務当局)は官僚的な返答を今回も繰り返している。それに対する怒りを込めたコメント付きのニュースである。全学的な全員任期制などという人事制度(私は芦部憲法の見地から、現在の大学統治のあり方を憲法違反のシステムだと考えているが、その「上から」「外から」の管理職任命システムの中での人事制度)は、私の知る限りでは強権的な行政当局主導の改革が行われた首都大と本学しかない。その制度のこの間のさまざまのマイナスの影響を踏まえて、その強権的改革を主導した中田市長が辞任したこの段階で、見直すべきだと思われるが、現在の法人と大学の首脳陣は、中田市政での任命であり、変更不可能ということなのであろう。それがいつまで続くのか?林市長は、本学および大学全体を取り巻く状況をどこまで認識できているのか?理事長任命権を市長が持つ以上、市長に重大な責任があることはいうまでもない。

 

-------横浜市立大学教員組合報--------

 

組合ニュース

2009.11.9

 

もくじ

●応募者すらいない!?

 

 

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●応募者すらいない!?

 

     教員組合では、昇任人事の審査に当たって任期制への同意を求める文書(10/1付け学長発)を問題視し、拡大執行委員会の議を経て、下記文書を学長に手交した。人事課経由で来た回答書を併せて添付する。出身母体からのendorsementも受けられないような、教学の代表者としての正当性を全く持たない人だけに、なんとしても不利益変更を強要しようとする横浜市派遣職員と一体化した回答である。

 

     そんな中、少なくとも布施学長の所属であったはずの文系では、教授昇進に手を挙げた先生すらいらっしゃらなかったようだという情報が、組合に漏れ伝わってきた。業績、年齢ともに教授昇進にふさわしい先生方は何人もいらっしゃるので、任期制強要を嫌ってのものであることは想像に難くない。そもそも学長・副学長を筆頭に、現体制における評価者には、その身を委ねるべき評価者としての相応性すらない。

 

布施学長の所属であったはずのコースでは、若手教員の脱出も枚挙に暇がないが、准教授に留め置かれたまま、某国立大学に教授として脱出した先生や、改革を批判して本学を脱出し、その後某公立大学の学長になった先生の記憶もまだ新しい。

 

前者は、本学破壊に手を貸した橋爪大三郎氏のいる大学への脱出であり、本学傀儡政権が准教授に留めた教員を、教授で採用したことを橋爪大三郎氏個人はどう正当化するのであろうか。火付け強盗が目的の大学破壊だったのであろうか。

 

後者は、研究業績面からも本学を代表する先生であったわけだが、良識ある小さな基礎自治体が持つ大学においてなら大学の運営に携わってもよいという選択をなさったわけで、日本最大の基礎自治体から派遣されている本学経営陣は、全否定されていることを認識すべきである。

 

合理性無き全員任期制をいつまで強行するつもりなのか。任期制を拒否して、准教授に止まっている先生方にこそ次代の横浜市大を担って頂きたいわけで、それをじゃまする人々は制度とともにキャンパスから去っていってもらいたいものである。

 

 

20091015

 

公立大学法人横浜市立大学

学長 布施 勉 殿

 

横浜市立大学教員組合

執行委員長 山田俊治

 

要求書

 

 教員組合は、教員の教育・研究条件の向上を図るとともに、教育現場から本学の真の改革を目指して取り組んできたが、昇任人事の審査に当たって任期制への同意を求める文書(「教授・准教授及び助教昇任候補者の推薦について」平成21101日学長発)について、労働条件の重大な変更に関わる問題として見逃しがたく、再度その文書の取り下げを要求する。

 

平成20年2月4日の団交において、任期制への同意は手続き上の問題であると回答していたが、任期制が人生を左右する雇用関係になっている教員にとっては、単なる手続き上の問題ではありえない重大な雇用関係の変更になっている。また、学長が「任期制への同意状況等も判断に加味した上で」人事委員会へ諮問をすることは、教学の長である学長が雇用関係にも踏み込むことであり、労働契約の相互性を犯すものとして許されるものではない。第7回合同調整会議議事録でも、認証評価委員から昇任規程と任期制の関係について疑義が提出されているように、本来合理的な根拠をもたない規程によって、これまでにも、優秀な教員を失ってきたことに鑑み、昇任人事の審査に当たって任期制への同意を求める手続きは、廃止することを求める。

 

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平成21年10月30日

 

横浜市立大学教員組合

執行委員長 山田 俊治 様

 

                                            公立大学法人横浜市立大学

                                                     学長 布施 勉

 

2009年10月15日付要求書について(回答)

 

標記の件につきまして、以下のとおり回答いたします。

 

 一昨年11月に同趣旨の意見書をいただき、その内容を踏まえて平成20年2月4日に団体交渉を行った際にお答えしたとおりですが、昇任に際し、教員と法人は新職位での新たな雇用契約を締結することとなります。法人が教員と締結する雇用契約は、任期付きの雇用契約であり、任期制への同意又は昇進時に同意する意向があるかどうかということは契約を結ぶ上での重要な確認事項であるため、学長が昇任審査前に同意状況や同意の意思の確認をすることとしているものです。

 

 なお、認証評価委員から昇任規定と任期制の関係について疑義が提出されたとのご指摘について、委員から質問があったことは事実ですが、関係を問われたのみで疑義が提出されたものではありません。

 

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1026日 22日付の教員組合週報を受け取った。この間、定年退職教員の不補充と「割愛教員」の不補充[1]により、全体としても負担が大きくなっているが、人により、分野により、極めて負担が大きくなっているところがある(人間の能力が無限でないとすれば、負担過重は当然にも教育の質の相対的低下をもひきおこすとみなければならない)。その点はこの間、教員組合が特に強く主張しているとおりであろう。

 

かつては、学部4.5コマ、大学院1.5コマといった大体の基準(ノルマ)があった。しかし、先日もある人と話していたら、その人は11コマだという(この人は、学会でも活躍しているので、研究時間も相当に必要である)。普通の私学なら、オーバータイム手当などと称する手当があり、負担過重はしかるべき一定範囲で報われる。そうした制度もなく、負担だけが大きくなっているとすれば、まさに、過労死などの危険性も高くなっている人がいると推定してもおかしくはない。

 

とりわけ、入試関係の仕事は一番神経を使うものであり、十分な時間的精神的余裕がほしいものである。それだけに、現場の教員(職員も)の勤務実態(人員減少の中での負担増)を無視したことが行われるとすれば、そこから発生する諸問題の責任は、なによりもまず大学経営陣にあることになろう。

 

上記のある教員は、毎日の勤務実態・仕事時間の実情を、奥さんと一緒にきちんと記録にとどめているという。何かあった場合、身を守るためである。

 

とりわけ、教員評価制度と任期制(任期更新回数は2回とか3回に限られている…この点からすれば「大学教員任期法」の適用という面がある…そしてこの「任期切れ=解雇」を正当化・合法化する側面こそ、換言すれば、テニュア制度が合理的基準・説得的基準で整備されていない現状こそ、多くの文科系教員の「任期制」非同意の根本的理由であろう)の二つに縛られて、発言の自由が抑圧され、また、学部教授会が実質においてボトムアップの機能を果たしえていない現状において、現場教員の悲鳴が届く余地が極めて少ないからである。

 

評価権を握る管理職は、「上から」の任命である。

民主主義的自治組織であるならば当然に備えるべき選挙制度が、存在しない。

構成員は、「上から」、「外部から」与えられた管理職をただ受け入れるしかない。そして、そのような管理職に自分の仕事を評価される。がんじがらめにされている。

 

現場の悲鳴が届かないという点は、PEで苦しむ学生諸君と共通するところがある。

カリキュラム等に関する学生アンケートが昨年と同様今年も行われるようである(ただし、アンケート項目が大きく変更されているようであり、何が削除され、どのように変更が加えられたのかの検討が必要となろう)。しかし、そのアンケートは4年生(ハードルの不当さ・非合理性に怒りや不満を持ちつつもなんとかクリアできた諸君)に対するものである。

進級制度に一番問題を感じている人々、画一基準で進級を阻まれた2年次留年の学生は、アンケートの対象外である。彼らにはその苦しい実態を伝える手段がない。一番問題を抱えている諸君の声が吸い上げられるルートがない。

 

当局は、こうした場合には、「大学の自治」を振りかざし、問題があれば大学内で解決すればいいというが、そのための制度的保障はない。

全員任期制や評価制、PEなどは、「大学の方針」とされる。しかし、その制度が抱えている諸矛盾、その制度発足時から一貫して指摘されている諸問題、それに苦しむ人々、またそうしたことを指摘する人々の声も、「大学」の実態を構成するものだが、そうしたものは顧みられることがない。「大学」が、実に実態からかけ離れたものとなっている。

 

中期計画などでは、本当はこうしたことこそ見直すべきであろう。

 

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横浜市立大学教員組合報

組合ニュース

2009.10.22

もくじ

追試

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追試

 インフルエンザの蔓延により、入試における追試の施行が話題になっている。そもそも入試における追試というのは、全国規模で行われるセンター入 試が唯一の例で、一般に行われるものではない。公平性の維持に著しい困難を伴うのが明白だからである。追試を受験した誰かに合格を出すということは、その 代わりに、正規試験を受験した誰かに不合格を出すことになるのである。

それでも、インフルエンザにかかってしまった受験生が無理をして出てこないようにするには、追試は一つのアイデアかもしれない。ただし、公平性の維持云々をいう以前に、大学が持つ人的資源量を考えるべきである。

 出題採点に携わることの可能な教員を潤沢に抱える国立大学、特に教養部をきちんと別枠で抱える大学や、経営的には非効率であるとはいえ、入試に おいては大きな力を発揮する教育学部を持つ大学では、対応しようという動きもあるようだが、有力私学は既に無理ということで回答している模様である。無理 なものは無理と判断することは正しい。

 振り返るに、小規模大学である本学は、分離分割方式の際に、事実上、前期試験をセンター入試だけでおこなっていたこともあった。出題採点の余力 がないのである。さらに、独法化の嵐の中で、数理科学科は無くなり、英語教育はその多くをPEの外国人教員にゆだねてしまっている。このような中で、追試 を強行するならば、出題ミスに止まらず、教員の過労死までも招きかねない。本学の教員のコマ負担は、横浜市立高校や神奈川県立高校より高くなってしまって おり、一部コースでは、担任する学生数も高校以上である。そして、公立高校で独自入試、その一部科目だけでもする学校は、極々一部であることを覚えておい てもらいたい。

 本学経営陣(学長、副学長を含む)は、私立大学、国立大学などと違い、出題あるいは入試運営といった入試の現場を踏むこともなく経営に携わって いるだけに、一片の中央官庁の通達により、遮二無二突き走る可能性があるが、これは非常に危険である。出題ミスを引き起こしかねない作業を強要し、これ以 上の休職者を出させることになったならば、経営陣の失格がますます明白になってくると言えるのでは無かろうか。

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横浜市立大学教員組合
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1021日 教員組合が、昇任審査にあたって、教学の長である学長を使って任期制への同意を強制するシステムについて批判し、撤回を求める文書(学長に対する要求書)を学長等関係者に提出した。この間、当局は、「任期制が大学の方針」などと、「改革」過程で非常に反対の強かった「全員任期制」をあくまでも全教員に強制するやり方を貫いてきた。その決定的な手法が、昇任審査において、任期制に同意していない教員に圧力をかけ、同意しているかどうかを判断基準にして、昇任審査を進めるかどうか、決めていることである。

 

一方で、昇任には、普通の大学と同じように業績基準がある。これは当然のことである。

しかし、他方で、本法人では、さらにその上に「任期制への同意」を条件としているわけである[2]

 

事実、任期制に同意しない教員については、昇任差別を行った。三人の教員については8カ月ほど昇任を遅らせた(うち一人は、その差別的措置の間に他大学への転出を試み、それに成功したが、その転出直前に昇任を発令した)。その三つの事例を「例外」として、その後は、「任期制に同意していること」を条件に、昇任審査を行っている。

 

この間、組合の会議で確認できた限り、昇任した教員はすべて任期制に同意させられている。逆に、任期制への同意を拒絶している人々は、本学を去っているか(准教授から教授への昇任が「経営上の理由」を根拠として先延ばしされている間に、いわゆる一流大学に教授として転出した)、そもそも、そのような実質的な任期制への同意強制を避けるため、昇任審査に臨もうとしていない。

 

      昇任と任期制同意を結びつけるやり方は、不利益措置であり(大学教員任期法によるならば、京都大学井上事件が示すように、業績の有無・多寡にかかわらず任期満了で雇い止め・解雇することは合法であり当然となるし、本学のように労働基準法第14条の特例措置を適用するとすれば、3年なり5年なり、身分移動の自由を束縛することになる、本学の場合、「任期制」の二つの側面が複雑に絡まりあっている・・・いずれにしても当該教員にとって身分上、重大な不利益・不安定措置以外の何物でもない)、違法であるとの立場を、特に文科系教員を中心に、教員組合は繰り返し表明してきたところである。

 

当局は、その法的問題を真剣に再検討することなく、任期制同意を事実上、昇任を契機に、教員に押し付け、強制している。今回の組合の要求書は、そのことを示している。

なぜそのようなことが可能なのか?

 

市長任命の理事長以下、「市当局」の観点だけから、物事を進めることができるようになっているからである。事務局長は元市職員、幹部職員は2-3年で「出世して」帰還する市派遣職員、というシステムが、「任期制」を業績競争・業績評価の鞭として多かれ少なかれ必要と共感する人々(主観的な「勝ち組」)と一緒になって、こうしたことを可能にしている。

そこでは、「任期制に同意」すれば、業績の点でははるかに上の「非同意教員」よりも先に昇任する、といったことが可能になる。業績基準と「任期制同意の基準」とは、ここでも矛盾を生じる。

 

「改革」、法人化後の学長が、当局任命(大学構成員による秘密自由の選挙なしの「上から」「外から」の任命)であって、そうした「当局」によって選任された以上、教員組合に寄せられた非公式情報では、学長が該当者に任期制に同意するよう電話をかけたりしたという。ある若手教員は、それでも最初の年は拒否したが、次の年には任期制に同意して昇進したという。実際にどうなっているかは、客観的な事実において、文書書類で検証されるべきであろう。

 

認証評価に関する評価委員(学位授与機構から派遣された委員)の訪問調査に際して、評価委員は、Q.昇任の規程について93項に新たな労働契約についてとあるが、これは任期制を了解することとセットになっているのか?任期制を認めなければ昇任は認めないということか?」と問いただしている。

 

当局の回答は、明確に「Yes」といえば違法となること(少なくとも教員組合が一貫して批判している問題点を孕むこと)を知っているものとなっており、当局に責任がおよぶかたちでの返答を避けている。

すなわち、質問への焦点をずらして、「A:昇任の推薦があった場合、推薦した方から本人がその契約に了解するとの報告をもらっている」と返答している。責任を、「推薦者」に押し付けているのである。学長は自ら副理事長として、「任期制同意の状態を審査の前提とする」旨の文書を出して、明文でもってその責任を負っており、さらに、学長名の文書を学部長や研究科長に出すことで、学部長や研究科長に責任を転嫁する、分担させるという構造になっている。

これは、「昇任を手段とした任期制の強制」を明言することが危険(問題化する)と知った上での法人当局の返答の仕方であろう。そうでなれば、明確に{YES}と答えればいいのである。

問題がないのであれば、なぜはっきりと「YES」といわないのか?「YES」といえないところに、問題の焦点がある。

 

教員組合のこれまでの文書の数々、そして今回の要求書が示すように、個々の教員に対する実質上の強制(不利益措置)が現実には行われ続けている。これは、コンプライアンス(倫理法令順守)を掲げる法人(学長も副理事長である)にふさわしくないことを示しているであろう。

 

しかし、学位授与機構の評価委員が、果たして、こうした問題をその評価において明確に適切に指摘するかどうか、予断を許さない。

 

本学の統治システムは、市長が任命する理事長以下で構成する経営審議会優位である。大学の「自主・自立」が各種文書にちりばめられてはいるが、実態は、まったくそうなっていない。そのことを端的に示すのが、学長以下の管理職の任命における大学構成員の民主主義的な意思確認の徹底的な排除である。どこにも選挙規定がない。この間、民主的な選挙制度が検討された形跡さえない。したがって、本学の教学や中期計画に関する全文書は、憲法についてわが国を代表する規範的テキスト・芦部憲法の見地によれば、憲法第23条が求める大学の自治・学問の自由の制度的保障に求められる「大学の自主的判断」という基準をクリアするものではない。

 

そうした当局の態度を批判しているのが教員組合である。前回のウィークリーで問題視された「提案BOX」は、教員の下からの各種意見を適当に当局(憲法23条が求めるような「大学の自主的判断」を形成するシステム、大学統治における民主主義的正統性などを欠如した当局)の好みに従って、その意味で「つまみ食い」できるシステムである。「提案BOX」の危険性の指摘、注意喚起の意味は、そこにあろう。

 

「任期制への同意は手続き上の問題である」と当局はいうが、いったいそれはなにを意味するのか?

 「同意」が「手続き」とは?

普通の常識的理性的な日本語なら、「同意」は同意であり、「手続き」とは全く別のことである。あえて、そのような意味不明のことを回答するところにも、「倫理法令順守」という見地から見れば、問題があろう。

教員組合は、法人化後の採用にあたって、「任期制」の公募に応じてきた教員の身分の安定化のために最大限の努力をしてきた(テニュア制度の早急な導入を求め、その実現以前にも非更新の可能性を厳格に制約するため)が、法人化への移行にあたって任期制への同意を拒否した教員(認証評価委員への当局答弁では、非同意が「3割」いるとされる)への不利益措置をも許さないとの見地に立っているわけである。

現在の教員評価制度が、結局のところ、「上から」、「外から」任命した管理職によって運営される以上、公平な評価に対する懸念は大きいものとならざるを得ない。この間、実際に教員評価に基づく差別的昇給が行われ始めたが、だれに、どの程度プラスされたのか、その全体像は秘密のヴェールに包まれている。「秘密のヴェール」は、疑惑・疑念の発生基盤である。

 

 

----------学長に対する要求書-------------

 

20091015

公立大学法人横浜市立大学

学長 布施 勉 殿

 

                             横浜市立大学教員組合

執行委員長 山田俊治

 

要求書

 

 教員組合は、教員の教育・研究条件の向上を図るとともに、教育現場から本学の真の改革を目指して取り組んできたが、昇任人事の審査に当たって任期制への同意を求める文書(「教授・准教授及び助教昇任候補者の推薦について」平成21101日学長発)について、労働条件の重大な変更に関わる問題として見逃しがたく、再度その文書の取り下げを要求する。

平成20年2月4日の団交において、任期制への同意は手続き上の問題であると回答していたが、任期制が人生を左右する雇用関係になっている教員にとっては、単なる手続き上の問題ではありえない重大な雇用関係の変更になっている。また、学長が「任期制への同意状況等も判断に加味した上で」人事委員会へ諮問をすることは、教学の長である学長が雇用関係にも踏み込むことであり、労働契約の相互性を犯すものとして許されるものではない。第7回合同調整会議議事録でも、認証評価委員から昇任規程と任期制の関係について疑義が提出されているように、本来合理的な根拠をもたない規程によって、これまでにも、優秀な教員を失ってきたことに鑑み、昇任人事の審査に当たって任期制への同意を求める手続きは、廃止することを求める。

 

 

 

 

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1015日 新首都圏ネットワークでも新たな動きが起きている。国立大学法人法および地方独立行政法人法に関するものである。

      私自身は、岡山大学で開催の政治経済学・経済史学会・秋季学術大会に参加のため、下記集会には参加できないが、盛会となり、法律の改正に向かう力の結集となるならば、素晴らしい。

 

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緊急学習・討論集会「国公立大学の発展を阻む国立大学法人法・地方独立行政法人法体制の抜本的変革へ向けて」の案内

      20091013日  国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

鳩山政権成立以降,自公政権の政策の見直しが急ピッチで進められています.

民主党のマニフェストや公表されている高等教育に関する個別政策の中には,国立大学運営費交付金の削減方針の見直しや国立大学病院運営費交付金の確保など注目すべきものも含まれています.また,鳩山首相も総選挙のさなか823日に行われた党首討論の中で自公政権の行った国立大学の法人化は誤りだったと述べています

しかし,奨学金制度の充実,教員養成システムなどについては,文部科学大臣や副大臣なども会見で触れて現実的課題とされているものの,国立大学に関する具体的な政策課題や基本方針はまだ明らかにはされていません.第二期中期目標期間を迎えるにあたり,来年度予算案作成に向けて鳩山政権が準備を進めている段階で,私たちから具体的な要求を新政権に突き付けることが,今求められています.

そのために,国立大学法人体制の位置づけや,鳩山政権の性格,さらに緊急に改善すべき国立大学法人法の問題点や,地方独立行政法人法に縛られている公立大学法人の問題なども含め,下記のように学習討論を深める集会を緊急に開催することとしました.

2003
年の国立大学法人法制定に反対した多くの皆さん,法人化の歪の中で様々な問題を抱え、その打開を検討・模索している多くの皆さんの参加を訴えるものです.


                      記

緊急学習・討論集会「国公立大学の発展を阻む国立大学法人法・地方独立行政法人法体制の抜本的変革へ向けて」

主催:国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局・東京大学職員組合
後援:全国大学高専教職員組合

日時
 20091025日(日) 1230分〜18

場所
 東京大学本郷キャンパス 旧理学部1号館 150
  http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_06_08_j.html
入口は建物の南側(上記URLの地図では右側)にあります.

プログラム
 趣旨説明
 報告
  国立大学法人法体制の歴史的背景と民主党政権の高等教育政策(仮)
    小沢弘明(千葉大学)
  国立大学法人法の問題点と緊急に修正すべき点(仮)
    国立大学法人法首都圏ネットワーク事務局
  地方独立行政法人法と公立大学(仮)
    進藤兵(都留文科大学)

 国公立大学をとりまく問題
  運営費交付金制度
  医学部と附属病院
  全職種に急速に拡大する非正規雇用
  学生の困窮と学費
  若手養成とポスドク
  そのほか
 
 各大学からの報告と討論
 
 法人法体制の抜本的変革へ向けて

参加費
 資料代等1000円を予定

プログラムはまだ確定しておりません.追加の情報は,本事務局のHP
http://www.shutoken-net.jp/)に随時掲載するので,ご注意ください.

問い合わせ先
 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局
 電子メールアドレス infoshutoken-net.jp 
              (@を半角にしてお使いください)

                                                                     

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1013日 教員組合のニュースをいただいた。休職者が多くなっているという。これには、「任期制」の影響も大きいと思われる。評価する人間が、「上から」「外から」任命された管理職によるものであり、大学教員の精神的自由は極めて抑圧されざるを得ない。本学のように、教員による民主主義的な管理職選挙の制度が完膚なきまでに撤廃されてしまった大学(大学統治における民主主義の否定の現状)では、こうした精神的に不安定化し追い詰められていく教員が、他の大学よりも多く出てくる可能性は高いとみなければならない。組合ニュースが指摘する問題の本質は、そこにあろう。

      下記では、「教員の個人的発言」が、「サイレント・マジョリティ」の詐称とともに、問題視されている。抽象的でつかみどころがないとも見えるが、ここでも、問題となるのは、諸個人の自由(な発言)とその民主主義的代表性・民主主義的総括性・民主主義的意思としての性格の相互関連であろう。

      諸個人の発言はその特定の個人の限定的なものとしてならば自由であろうが、それが「マジョリティ」を僭称するだけではなく、「マジョリティ」として力を持ってしまうならば(制度がそれを可能とするのならば、単なるマイノリティの発言を組織全体を代表するかのように取捨選択できる制度であれば、ある特定の数人の教員個人の発言が権威あるものとして「管理職」によって取捨選択が可能であれば)、あるいは単なる孤立的な個人の意見さえもが、公式の大学を代表する意見としてオーソライズされるシステムならば(大学や学部を代表するはずの管理職が、民主主義的正統性を持たず、「上から」、「外から」の任命であれば)、問題は深刻となる。「任期制」を強制された状況下での諸個人の発言は、それはそれでまた自由な発言ではない。

      大学における身分保障の重要性は、学問・科学の歴史が示すように、大学・学問の生命線であるが、それが、大学自治の根本を揺るがす統治システムの中で、「全員任期制」を掲げる大学においては、根底から揺るがされている。

 

 

 

 

------------横浜市立大学教員組合報--------------


組合ニュース
2009.10.08

もくじ
退職1,休職3
提案B0Xといえば聞こえはいいが

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退職1,休職3
 

 後期開始に向けての国際総合科学部代議員会情報である。

商学部の精神的支柱でもあった先生の、定年直前の退職の報告があった。独法化数年経ったところで体調を崩され、休職されていたわけだが、今学期の 復帰も無理ということで、最終講義もなさらないままのご退職となった模様である。多くの大人数講義を積極的に担当し、手間のかかるタイプの学生も「おう」 と引き受け、ポイントポイントでは後進にも手を貸して下さるような方だっただけに、力尽きたようで痛々しい。この教授の休職からの退職以外にも、3人の先 生方(教授1、准教授2)の休職が報告された。100人ほどの教員の国際総合科学部において、この休職の数はさすがに異常であろう。

 休職の教授は、後期、学部講義だけで3つの科目を持つ予定だったようである。やり繰りの仕切れていない処理案が報告された。これに、2年から始 まる演習3コマと大学院講義・演習が重なると、横浜市立高校、神奈川県立高校より多いコマ負担を強いられることになる。研究が当然の職務であり、指導書も なく、リピートもほぼ無い大学の講義のコマ負担として、異常である。

 休職の一方の准教授に関しては、いよいよゼミの異動および解体が計画されていることが報告された。18名の三年ゼミの学生が、まだ二年ゼミしか 持たない新任教員が新たに開講する三年ゼミへ異動し、14名の二年ゼミの学生が、2,3名ずつに解体されて様々なゼミに合流する計画のようである。担当教 員に後顧の憂い無くお休み頂くには必要な措置であろう。ただし、学生にとっての不運は気にかけてもらえるところのはずだが、忘れてはいけないのが引き受け る側の教員の負担である。このコースは、学年ごとに、教員一人あたりの学生数の切り上げ数である、14名とか、16名とかいった数をゼミの下限数としていたので、この教員のゼミの学生数は平均レベルに過ぎない。しかし、講義の準備が完全に自転車操業であるはずの新任教員に丸々一学年を渡し、もう一学年は、 既にそういった数の学生を持っている教員がさらに引き受けているのである。

教員数の激減のため、すでに一部コースでは私学を超える大人数ゼミになってしまっているのに、国公立大学としてのプライドだけは捨てられないの か、ゼミを必修、しかも2年からのスタートとしてしまっている。残念ながら、欧米大学のHonors Course的な私立のゼミと違い、必修である以上、手間のかかる学生も紛れ込んでくる。2年以上の担任学生数だけで高校教員の担任生徒数を超える上に、 しばしば、興味の対象もまったくバラバラの30名以上の新入生がいる教養ゼミにも目配りしなければいけなかったりもする。このような中でも、全員任期制の 強要の下、大学教員としての真っ当な市場価値を維持するためには研究を捨て去ることはできない。本学の教員の状況は、もはやまともな健康を維持することも できない状況であるといってよい。

教員組合では、任期制を強いられている事務方の固有職員にも複数の休職者が出ているとの情報をつかんでいる。任期制の頸木もない横浜市からの派遣 職員には一人の休職も出ていないようだが、やはり、二年交替で入れ替わり立ち替わり管理業務に降ってくる横浜市からの派遣職員には、この現場の異常さが届 かないのであろうか。


提案B0Xといえば聞こえはいいが

研究院経由で、「【次期中期計画】提案BOXの設置及び資料の公開について」なるメールが転送されてきた。いかにも一般教員の声にも耳を傾けるよ うなふりをしているが、実際のところ、布施勉学長が一般教員の意見を聞く気などさらさら無いことは、9月の意見交換会で配られた「「学長と教員の意見交換 会」における中期計画策定に関する主な意見・質疑(医系を除く)」において、7月の意見交換会で手交した教員組合からの要求(200979日総会決 定)が、無視されていたことからも明らかであろう。八景キャンパスにおいては、職員をも含めた事業所過半数代表である教員組合の、代議員会、総会を経て議 決された意見が、主な意見に登場しないことはありえない。一般教員の意見などまったく聞く気がないという布施勉氏の意思表示と理解してよい。

しかも、この提案BOXは、Rの頃に、定年まで5年を切っていた三教授が、サイレントマジョリティーを詐称して任期制歓迎の記者会見をしたことよ りも、始末に負えない状況を生じさせる危険性がある。この三教授は、独法化直後のみに瞬間的に生じていた、公務員時代よりも多い退職金を手に安穏と退職 し、あるものは、新聞等で高額給与が問題になっている監査委員の職まで手にしたわけである。それでも我々は、本学図書館では貸し出し中であることが多い吉 岡直人先生の『さらば、公立大学法人横浜市立大学』(定価2100円)を購入し、その66ページを見ないまでも、本学図書館はもちろん、何も力を発揮する こともなく独法化とともに去った学長が館長を務める横浜市立中央図書館等で、200359日付『神奈川新聞』を見れば、この時の三人の名を知ることが できるし、サイレントマジョリティーが詐称であることも、独法化時の任期制捺印者数データが公開されないことから明らかなわけである。さらに、その中の一 人はぬけぬけとキャンパスに戻ってきているわけで、厳しく責任を問うこともできる。(現在の権威無き立場は、まともな神経を持っている人間ならばいたたまれない状況のはずで、本来ならば、十二分に責任を問うことになっているはずなのだが。)つまり、発言者が確認できる意見交換会方式ならば、少なくとも 恣意的な引用等を指摘することができるが、提案BOXの匿名方式だと、横浜市派遣職員や布施勉氏本人が無責任な態度で文章を紛れ込ませたところでまったく チェックができない。この制度は非常に危険な制度であり、今後出てくるかもしれない提案BOXにあった意見というのが公表された場合には、それは 浜市派遣職員による作為的な文章、あるいは布施勉氏による突拍子もない思い付きであると判断することが適当であろう。

しかし、我々組合員も、言動に注意していく必要がある。代議員会、総会などで多くの組合員の目によってチェックが済んでいる意見書は、穴が少な く、それだけに横浜市派遣職員や布施勉氏に採用されることもないようだが、危険なのは、個別教員による「○○はいいから□□を何とかして欲しい」といった 発言である。○○にこだわって、「□□はいいから○○を何とかして欲しい」と思っている教員もいるわけである。このような発言が出たとき、横浜市派遣職員 側は、○○もいいし、□□もいいわけだな。それでは、××をやってやろうという手に出てきかねないわけである。教員の個人的発言には気をつけていきたい。

divide and rule
は、大英帝国のインド植民地支配にも採用された、ローマ以来の支配者の原則だが、教授会も解体されてしまっている今、関内よりの支配者により蹂躙 されている教員は、わがままな個人的研究環境整備などに走ることなく、一致団結していく必要があるように思われる。そして、特にほとんどの学生が学ぶ八景 キャンパスにおいては、教員組合が、職員までをも含む事業所過半数代表であることを自覚し、真の独立法人たる横浜市立大学を構築していきたい。

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横浜市立大学教員組合
 〒236-0027
  横浜市金沢区瀬戸22-2
   Tel&Fax  045-787-2320
   E-mail    kumiai@yokohama-cu.ac.jp
   HP-URL  http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/
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105日 この間、中田前市長時代の問題が次々と表面化してきている。その重要な問題点の一つが、大学の「改革」である[3]

われわれは、新市長が誕生したのを機会に、中田前市長のもとで強行された大学「改革」の重大な問題を、新市長に訴える機会を得たいと考えた。そこで一楽教授と私が発起人となり、「市長への要望書」を作成し、これに賛同してくださる教員の方を募集した。当初、固有職員の方々に呼びかけることも考えたが、「任期制」で身分が不安定な現状では厳しいであろうということで、見合わせた。

時間をかけて出来るだけたくさんの賛同者を集めてはどうかとの建設的意見も頂戴し、また、要望書の柱立てなどに関してもいろいろのご意見が寄せられたが、とりあえず、「機を逸しては」ということで、夏休み明けから930日までで賛同者募集を打ち切り、要望書提出の行動に移ることとした。この間に、発起人二人を合わせ、三十余名の賛同者を得た。

要望書提出の基本趣旨にご賛同で原案通りにご賛同いただいた方々、文章表現などで改善や追加を求める意見を表明されながら基本的に賛同された方、柱の立て方や柱の一部に関して同意できないのでと辞退される方、その他、この間にはご返事を頂けなかった方々などさまざまであったが、当初予定した30名を越えた段階で、要望書提出を決断した。

本日、下記の「市長への要望書」を、一楽教授が関内の市長のところに届けてくださった。

市長、関係部局がどのような態度を示すか、今後、この場で可能な限り、紹介していきたい。

 

 

            --------------------新市長に対する要望書の提出-----------------

 

横浜市立大学「改革」の見直しに関する要望書

平成2110月5日

横浜市長 林文子様

 

横浜市大教員有志

代表:一楽重雄 永岑三千輝

 

 

私たちは,現在の市立大学には多くの問題があり,独立行政法人化に伴う「改革」を見直す必要があると考えています.現在の問題点の主な点を指摘し,早急に「改革」について見直すことを要望します.

それによって,市民に誇れる健全な大学として発展すること,私たち教職員が気持ちよく働ける場所となることを望んでいます.

 

1.  「改革」で採用された「全員任期制」は,「大学の教員等の任期に関する法律」に抵触の恐れがあります.また,横浜市が主張するように,この制度が「労働基準法第14条」に基づくものとしても,労働基準法改正にあたっての国会の付帯決議に反します.コンプライアンスを重視する横浜市として,再検討が必要です.

また,現実にも全員任期制は教員が任期のない大学へ転出する動機となっていて,大学にとって重大なマイナス要因になっています.

         

(国会の付帯決議:『労働契約期間の上限の延長に当たっては、常用雇用代替化を加速させないように配慮するとともに、有期雇用の無限定な拡大につながらないよう十分な配慮を行うこと。』)

 

2. 「大学改革」に伴い,実質的に教授会が廃止され,教員が大学運営に関与しない形になりました.私たちは,これは学校教育法 93条「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」に違反する状態であると考えています.また,現場の教員にまったく権限がないため,実際の大学運営上も困難が生じています.一定の権限を持つ教授会の設置が必要と考えます.

 

3. 現在,理事長と副理事長(兼事務局長)は,共に横浜市職員OBが就任しています.理事長として大学に通暁している民間人・大学人を任命するよう要望します.また,学長選考のあり方の見直しも必要です.

 

以上について,私たち現場の声を聞いて頂きたく、市長との面談を要望いたします.

 

 

 

 

 

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930日 副市長辞任が報道されている。中田元市長の「改革」と行政の問題点を洗い出し、新しい市長らしい政策が、求められている。

     中田元市長の「悪政」に関しては、中田「改革」に抗議して辞職された佐藤真彦元教授が、中田「改革」・悪政の問題をきちんと調査しない民主党の態度を批判しておられる。

     中田元市長の「新自由主義」路線と強持て派市幹部との結合による大学自治無視の「改革」を押し付けられた大学人も、自治再建のための努力が求められている。

 

----------「全国国公私立大学の事件情報」929日付)--------------

仙石由人行政刷新担当大臣宛公開書簡、「前横浜市長中田宏を行政刷新会議に登用すべきではない」

学問の自由と大学の自治の危機問題
 ●仙石由人行政刷新担当大臣宛公開書簡、「前横浜市長 中田宏氏の件」(2009.9.25

 

 

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918日 今月のコース会議で、昨年度4年次生(卒業年度)に対するアンケートの結果が公開されたとの報告があり、やっとそれを見ることができた

 

     私が問題にしてきたPEに関しては、まさに問題点がはっきり浮かび上がっているように思える。改善の方向性も、浮かび上がってきているように思われる。しかし、基本的に何も変えようとしないようである。

 

     このアンケートの根本的問題は、このPEをはじめとするカリキュラム体系、とくに画一的進級基準によって進級できなかった相当数の学生に関しては、アンケートがなされていないPEに対する評価のパーセンテージは、進級基準をなんとかクリアできた人々の中での割合であり、同じ年に入学した学生の数との関係でみれば問題は重大であり、問題の深刻さ=説明責任の欠如=合理性の欠如=カリキュラムの体系性としての問題性は、まさに留年生の量と質にある[4])ということであり、カリキュラム体系の根本的問題を見なくていいように、自画自賛できるようになっていることである。しかも、

 

こうした無記名の4年次生全体に対するアンケートだが、「学内専用」データとして、社会からは見えないようにしている。

      本来、受験生などにも見せるべき客観的データだと思うが・・・・

      対外的にはみせられないようなことを、アンケートしているのか? 

 

      逆に画一的なPEだけでは、専門教育の英語としては不十分だ、ということも多くの学生が認識していることである。 

 

      もしも私が指摘していることに妥当性があるなら(説明責任を欠如した画一的PE基準の根本的問題性、したがって2年次留年生が滞留することになる)、そうした情報を隠しているということは、受験生に対してきちんとした情報を与えていないということになるのではないか?

 

 

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98日 一昨日、帰国。昨日は、2週間分のさまざまの書類関係の整理でほとんどの時間を費やした。帰宅直前に、簡単な出張記録をHPにまとめた。今朝、それに若干の添削を施した(その後も、時間を見つけてはすこしずつ添削・・・916日)。

 

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823-96日 マックス・プランク協会文書館(ベルリン)に2度目の出張(927日の社会経済史学会のパネルで報告の一端を担うため、私のテーマは、「ホロコーストの力学と原爆開発」)。

3月の出張で調べたドイツ第三帝国における原子力開発・原爆開発の実態に関するドキュメントの追加調査。ソ連押収文書のうち、2004年に文書館に返却ないし文書館が購入せざるを得なかった「高額の」コピー)

 

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820日(2) 本法人の全員任期制は、中田市長のもとで強行した大学「改革」により、導入されたものである。市当局と大学との関係は、国家と大学の関係と同じである。それは、教員の身分を決定的に不安定にした。

(職員も全員任期制であり、彼らの場合も、3年ごとの任期更新において膨大な資料をかかされるようである。「なぜつづけるのか」といった項目もあり、やめてもらって結構、というような質問項目などもあるという。固有職員として採用された人々の中にも、任期制で3年ごとにこの調子でやられるのではと、よその大学などの公募に応じて何人もが去っていくとも仄聞している。大学において固有の教職員をしっかり育て、誇りを持ち士気高く長期的展望を持ちつつ仕事にまい進できるようにするのが大切だと思うが・・・「全員任期制」などという人事政策は、気の狂った制度としか言いようがない。なぜそれを強行できたか。誰がそれを考え、大学に押し付けたのか。それを考えるだけで、中田「改革」の意味・本質がわかってくるであろう。いかに無法なことが行われているかがわかってくるであろう。)

 

教員の場合、教員組合の働きでさまざまのチェック体制を作り、その直接的な打撃を何とか押しとどめているにすぎず、教員が置かれた状態は基本的には不安定である。これひとつとっても、憲法違反の体制となっていることがわかる。全員任期制と評価制度(任期更新における上から任命の管理職の評価権限)は、「教育機関において学問に従事する研究者に職務上の独立を認め、その身分を保障する」ことに反するからである。

教育行政=大学統治は、市長の理事長任命権と理事長による副理事長任命権、学部長・研究科長の選挙規定のはく奪(法人化前には明文化された選挙規定があった)によって、市長の干渉がストレートに大学に貫徹しうるシステムとなっている。

大学教員の士気・自主的精神は抑圧される。評価において差別やマイナス評価されるのを恐れる状態で委縮効果が出る。

その反面、この間いくつかの事例で出てきているのは「公平性・透明性」のない人事評価の問題である(学則の人事関係規程に違反しないかどうかが問題となる)。この間、問題となったのは、「上から」任命の管理職経験者の昇任における優遇(何階級かの特進)である。

 

芦部憲法・・・「2 学問の自由の保障の意味
 (1)憲法23条は、まず第一に、国家権力が、学問研究、研究発表、学説内容な
どの学問的活動とその成果について、それを弾圧し、あるいは禁止することは許され
ないことを意味する。とくに学問研究は、ことの性質上外部からの権力・権威によっ
て干渉されるべき問題ではなく、自由な立場での研究が要請される。時の政府の政策
に適合しないからといって、戦前の天皇機関説事件の場合のように、学問研究への政
府の干渉は絶対に許されてはならない。『学問研究を使命とする人や施設による研究
は、真理探究のためのものであるとの推定が働く』と解すべきであろう。
 (2)第2に、憲法23条は、学問の自由の実質的裏付けとして、教育機関におい
て学問に従事する研究者に
職務上の独立を認め、その身分を保障することを意味す
る。すなわち、教育内容のみならず、教育行政もまた
政治的干渉から保護されなけれ
ばならない。」(136頁)

 

 

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820日(1) 本学の統治システムが、徹頭徹尾、非民主主義的で、憲法違反であるかという点について、若干、私の考えを補足しておきたい。

 

@   理事長、副理事長、学部長、研究科長の任命の問題=大学統治機構の問題。

 

1.    法人の定款 | 横浜市立大学

定款(大学HPの検索で、「定款」と入れれば、該当ページが出てくる)によれば、

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(理事長及び副理事長の任命)

10条 理事長は、市長が任命する。

2 副理事長は、理事長が任命する。

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 公立大学法人における理事長が市長任命であり、市長の任命責任は決定的である。

 

理事長が、憲法の精神(第23条の精神)をわきまえ、統治システムを民主主義的なものに改正するのかどうか、「設置者権限」なるものを振りかざして、「教員は商品だ、大学の運営に口出すな」と、これまでのように独裁的な体制のままにしておくのか、決定的に違う。

 

      副理事長(いまでは学長と事務局長、事務系・経営系では当初、外部から経営のプロとして孫福氏が選ばれ、彼の急逝のあと松浦氏が選ばれたが、その突然の辞任のあと一時空席とされ、事務局長が代理を務めていたが、現在ではいつのまにか事務局長が任命されている)は、理事長が任命権を持つ。

 

学長の任命権は、理事長が持っているわけだが、どのように選ぶか? 学内の支持が一切ないものでも選べる体制となっている。

 

まず、定款によれば、経営と教学の最高責任者を統合した学長・総長制度の国立大学と違い、理事長と学長を別にしている。これは地方独立行政法人法の大学特別規定を利用したもので、公立大学でも理事長と学長を同一人物とするというのが基本で、複数の大学などを持つ公立大学の場合、法人全体を統括する理事長と個々の大学の学長とを分ける必要があることから、例外的に設定されたもの。その例外規定を、大学ひとつしか持たない公立大学法人・横浜市立大学では、適用した。

 

そこには、学長を憲法23条の基準に従い「大学の自主的判断」で選出する可能性を与えるという意味で、一定の意味はあるかと思われる。

むしろ、この理事長と学長を分けたことの意味を、憲法に照らして最大限有効にするのが、「定款」と憲法の要請とを調和させることになろうかと思われる。

ところが、現在の本学は、「定款」の文言だけをしゃくし定規に適用し、そうした定款が成立するための基本法(憲法)をないがしろにした運用を行っている。

 

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 (学長の任命)

11条 大学の学長(以下「学長」という。)は、理事長と別に任命するものとする。

2 学長を選考するため、学長選考会議(以下「選考会議」という。)を置く。

3 学長は、選考会議の選考に基づき、理事長が任命する。

4 前項の規定により任命された学長は、前条第2項の規定にかかわらず、副理事長となるものとする。

5 選考会議は、経営審議会を構成する者(理事長及び教育研究審議会を構成する者を除く。)の中から当該経営審議会において選出される者3人及び教育研究審議会を構成する者の中から当該教育研究審議会において選出される者3人をもって構成する。この場合において、経営審議会において選出される者のうち1人は次条第2項に規定する者とし、教育研究審議会において選出される者のうち1人は第18条第2項第5号に規定する者とする。 

6 選考会議に議長を置き、委員の互選によってこれを定める。

7 議長は、選考会議を主宰する。

8 前3項に定めるもののほか、選考会議に関し必要な事項は、議長が選考会議に諮って定める。

----------------------------

 

なぜ、憲法の基本精神をないがしろにしているといえるか。

「3 学長は、選考会議の選考に基づき、理事長が任命する」とあるが、

 それでは、選考会議は、「大学の自主的判断」(憲法第23条の要請するところ)が行えるようになっているか?

 選考委員は、だれがどのように選ぶのか?

 

選考委員の選出は次のようになっている。

 

「5 選考会議は、経営審議会を構成する者(理事長及び教育研究審議会を構成する者を除く。)の中から当該経営審議会において選出される者3人及び教育研究審議会を構成する者の中から当該教育研究審議会において選出される者3人をもって構成する。この場合において、経営審議会において選出される者のうち1人は次条第2項に規定する者とし、教育研究審議会において選出される者のうち1人は第18条第2項第5号に規定する者とする。」

 

経営審議会を構成するもの3人、教育研究審議会において選出されたもの3人。

それでは、経営審議会を構成するもの3名は、だれがどのようにして選ぶのか?

 

定款によれば、

 

「第1節 経営審議会

 (設置及び構成)

14条 法人の経営に関する重要事項を審議するため、経営審議会を置く。

2 経営審議会は、理事長、副理事長及び理事をもって構成する。」

 

このうち、理事長は選考委員にはなれない(学長選考会議の規定)。しかし、それ以外の者は、学長選考委員になれる。

 副理事長と理事の中から3名ということ。

 副理事長、理事は誰が任命するかといえば、定款によれば、理事長。

 したがって、学長選考委員に理事長がなっていなくても、理事長の意向が100%貫徹する(それが可能な)ようになっている。

 

 それでは、教育研究審議会のメンバーはどうか?

 その構成は、定款によれば、

 「第2節 教育研究審議会

 (設置及び構成)

18条 大学の教育研究に関する重要事項を審議するため、教育研究審議会を置く。 

2 教育研究審議会は、次に掲げる者をもって構成する。

 (1) 学長

 (2) 副学長

 (3) 学長が定める教育研究上の重要な組織の長

 (4) 大学の附属病院の長

 (5) 法人の役員又は職員以外の者で大学に関し広くかつ高い識見を有するもののうちから、学長が指名するもの」

 

     教育審議会のメンバーは、学長、副学長、それに(3)の学部長や研究科長など、それをとってもすべて上からの任命が貫徹しているものばかり。どこにも、大学人の選挙によってオーソライズされたものはいない。

 

     徹頭徹尾、市長・市役所・行政機構の論理で各役職が任命できるようになっている。(諸規定を作ったのが市の役人=管理職であり、自分たちがよく知っている市の管理職の任命方式をそのまま大学にあてはめたと見ることができる。市の場合は、まさに現在選挙戦が行われているように、市長が「市民による選挙」という民主主義のシステムで選ばれているからこそ、統治の民主主義的正当性がある。しかし、大学の場合、すべて、任命制である。どこにも選挙システムがない。)

 

 そうした教育研究審議会から3名を選ぶ。

 どこにも、憲法23条の要請する「大学の自主的判断」が入る余地がない。

 

中田元市長は、国と地方自治体との関係では、地方自治体の権限を拡大することを主張し、その運動を今後も続けていくとしている。

しかし、いざ、横浜市内のことになると、市長・関内の絶対的権力が、少なくとも大学に対して貫徹するようなシステムを作ったといえよう。

すなわち、市と大学との関係では、市当局の独裁体制とでもいうべきシステムである。大学の自治、大学の自主的判断は、金(予算)と経営陣・管理職すべてを、市長・その側近等で掌握できるようにして、抑圧する(すくなくともそれが可能な)システムとなっている。

 

 

A   学校教育法95条における教授会審議事項=重要な事項、の問題

 

法人の定款 | 横浜市立大学の教育研究審議会規定によれば、その審議事項として、次のような規定がある。

------------------------------------------------------------------------

21条 教育研究審議会は、次に掲げる事項を審議する。

 (1) 中期目標について市長に述べる意見及び年度計画に関する事項のうち、大学の教育研究に関するもの

 (2) 地方独立行政法人法により市長の認可又は承認を受けなければならない事項のうち、大学の教育研究に関するもの

 (3) 学生の円滑な修学、進路選択等に必要な助言、指導その他の支援に関する事項

 (4) 学生の入学、卒業その他学生の在籍に関する方針及び学位に関する方針に関する事項

 (5) 教育課程の編成に関する事項

 (6) 教育研究の状況の自己点検及び評価に関する事項

 (7) その他教育研究に関する重要事項

2 教育研究審議会は、経営審議会に対し、意見を述べることができる。

-------------------------------------

 

太字強調した箇所、すなわち、

(4) 学生の入学、卒業その他学生の在籍に関する方針及び学位に関する方針に関する事項

(5) 教育課程の編成に関する事項

 

これらは、学校教育法第95条により、教授会の審議すべき重要事項である。

それでは、教授会はどうなっているか?

 

学則の教授会規定によれば、下記のようである。

 

「第 75条大学各学部に教授会を置く。

教授会の運営に関することは別に定める。

 (教授会の代議員会)

76条教授会は、その定めるところにより、教授会に属する教員のうちの一部の者をもって構成される代議員会を置く。

代議員会の議決をもって、教授会の議決とする。

 (教授会の審議事項)

77条学部教授会は、以下の事項を審議する。

(1)     入学、進級、卒業、休学、復学、退学、除籍、再入学、転学、転学部、転学科、留学、学士入学等学生の身分に関すること

(2) 学部運営会議から付議された、その他学部の教育に関すること (教授会の議事等)

78条教授会の議事及び運営について必要な事項は、教授会に諮りそれぞれ学部長が定める。」

 

つまり、教授会には、教育課程の編成に関する事項権限がないとされている

明文はないが、教育研究審議会の審議事項にあって、教授会にないのがこの教育課程の編成に関する事項。

 

太字強調のところは、学校教育法第95条による教授会の重要審議事項である。

しかし、この4年半、教授会で審議されたことは一度もない。(念のために言えば、教授会の構成員も、明確な規定がない。教授だけなのか、准教授も含むのかなど、学校教育法の規定ともかかわり、本来明確にすべきだが、国際総合科学部では公立大学法人化以前の規定を継承し、准教授も含めている。

 

なぜか。代議員会規定があるから。

すなわち、

 

(教授会の代議員会)

76条教授会は、その定めるところにより、教授会に属する教員のうちの一部の者をもって構成される代議員会を置く。

代議員会の議決をもって、教授会の議決とする。」

  

それでは、代議員会で、教授会が審議すべきとしたすべての項目が「審議事項」とされたか?

実態はそうなっていなかった(いない)。

 

「審議事項」とされたのは、ただ一つ、学生の身分に関するものだけ

 

それでは、学生の身分に関して実態において、「審議」されたか?

審議に値するような資料が提示されたか?

特に問題となる(なってきたし今後もなるであろう)のは、PEである。当局が秘密主義によりデータを出さないので詳細は分からないが、2年次留年だけで相当数に上る。これだけの学生を1年、2年、ないし一部は3年も留年させ、2年に据え置いている。さらにこのままいくと4年間でも留年させ続けるということになる。そうしたことは一切教授会審議の対象となってこなかったにもかかわらずである。

 

PEはその実態から、当然にもそれは重大な教育課程の編成、カリキュラムの編成にかかわる「重大問題」のはずである。

      ところが、その重大な問題に関して、「PEは代議員会の審議事項ではない」と切り捨て、一切、審議事項として取り上げず、結論の進級判定だけを押し付けてきた。これが、代議員から得ている情報である。

 

どうしてこのようなことが可能になるのか?

 

学部長やその他の管理職(コース長)それに学部運営委員の過半数を「上から」任命できるシステムになっており、代議員の声などきちっときかなくても、押し通せるから。

 

ここにも、管理職すべてを上から任命している本学の根本的問題が露呈していると私はみる。

さらに、代議員の口を封じるものとしては、上からの任命された管理職による教員評価(昇進・昇給にかかわる)がある。

さらにそれと連動して、任期制がある。とくに、法人化以後の新しい教員はすべて任期制採用である。

 

これらがすべて大学の自由な雰囲気を圧殺する、すなわち憲法違反状態を作り出している、と考える。

 

中田市長のもとで「改革」を強行した市の管理職がいったことば、「教員は商品だ」「運営に口出すな」が、法人と大学の統治システムに貫徹している。それが、定款と学則に貫徹している。そして、その現実こそ、憲法に違反している。「大学の自主的判断」の入る余地が皆無に近いからである。そもそも大学を構成する大学人の意思がどこにあるかを確認するシステムがない(「改革」過程で破壊されたままな)のである。

 

 

 

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817日 15日のミニ・シンポは、夏休みの真っ最中、しかも敗戦=終戦記念日ということもあり、ご案内をさし上げたかなり多くの方から別の会・用事があるのでとお断りの返事をいただいていたので、せいぜい10人も集まればいいかとおもっていたところ、30名近く(参加者リスト記帳者+主催者側=24名、その他若干の学生など不記載者)の参加者があり、熱心な報告と討論が行われた。

 

法人化への移行過程から法人化後の大学自治破壊(憲法違反状態)を丹念にフォローした労作を出された吉岡直人元教授は、冒頭の報告でこの本の執筆経過のほか、全国さまざまの方面から寄せられた感想文を披露されながら、今日の大学が抱えている問題を指摘された。

 

第二、第三の報告は、法人化への移行段階の教員組合の委員長・書記長として、教員の身分を不安定化し、研究教育の自由を脅かし大学自治を破壊する全員任期制の導入などと戦ったお二人の報告であり、非正規雇用の問題、不安定雇用の問題が全社会的な問題となっている現在のスタンスから、いかに本学の全員任期制が問題であるかが浮かび上がってくる報告であった。

 

私自身は、大学自治破壊の状態を、学生全員と関係する問題、すなわちPEの問題に関して報告した。この問題が、学生一人一人にも分かる問題として、PEが大学自治が破壊された状況で作り出された制度であること、その問題状況が続く中で、制度制定時代の問題を累積させていることを説明した。

 

PEは、多くの問題点を代議員会等で指摘されながら、「中期計画」などを理由として一切制度の再検討の対象とされず、そのおかげで、この4年間にいかにたくさんの悲劇(1年留年すれば55万円ほどの学費負担のほか、生活費負担が大きく、さらに貴重な青春の一年間を足踏みさせる、退学その他、それに関連する種々の問題)の原因になっているかを指摘した。

 

強調したのは、なぜ画一的基準であるTOEFL500点を全学生に強制するのか、その根本のところが、合理的に説明されていないという問題である。

「学生中心」、「学生の個性を尊重」といった文言が当局のいろいろの文書におどっているが、実際に行われていることはそれに全く反して、学生の個性、専門分野、進路にかかわりなく、PE全員必修とし、しかも、全員一律基準を押し付けている。国際総合科学部に7つのコースがあるということは、文科系から理科系へさまざまのウエイトを持ってカリキュラム体系が違い、学生諸君の個性・進路希望などが配慮されているからではないのか?

文科系から理科系へ、個々人の個性や進路希望の多様性などを一切考慮しない画一基準は、「個性尊重」、「学生重視」、「学生中心」といえるのか?

「最低達成水準としてTOEFL500点を設定し、国際総合科学部では、プラクティカルイングリッシュの修得を3年次への進級要件にしてい」るというのだが、コースの多様性とも関連するその論理的不整合性、説明責任の欠如、それを放置したままの不誠実さなどを明らかにした。

 

なぜ、「国際化」が、英語だけの強化なのか?

なぜ、最低達成水準がTOEFL500点なのか?

 

最低達成水準=TOEFL500点以上を、「リベラルアーツを学ぶために必要なレベル」と正当化しているが、それはいかなる意味か?実際に行われていることと矛盾するではないか。

2年次までの諸科目(総合講義、教養ゼミなど)は、リベラルアーツではないのか?

2年次までに50単位とか60単位、さらに多くの単位が履修可能であり、それらが秀・優・良・可・不可という段階的評価で単位認定されているが、そうした諸科目はリベラルアーツではないというのか?

まさに、TOEFL500点以上をクリアしていない多くの人が、実際にリベラルアーツの諸科目を学び、それらの単位が認定され、取得できているではないか。

 

また、3年次以上の諸科目は、TOEFL500点をクリアしていることによって、2年次までの諸科目とどこがどのように違うのか?

3年次以上の諸科目は、「読む・書く・話す・聞く」のTOEFL500点水準をクリアしなければならないような内容になっているか?

 

 以上のすべてに、何の客観的で合理的な説明もない。説明責任欠如、アカウンタビリティ欠如!したがって、暴力的制度!

 

「中期計画できまっているだけ」。まさに、ここに、大学自治が破壊された状況での「中期計画」の根本問題が露呈している。また、それが教授会審議の対象とならなかった根本問題が露呈している。そして、次の中期計画もまた、そうした教授会審議抜きで策定されようとしている。

 

総括的にいえば、現在の本学の法的状態が、憲法第23条の視点=基準からすれば違反状態(大学統治システムが根底から非民主主義的であり、上意下達システムで、理事長・副理事長・学部長・研究科長・管理職全員が民主主義的なチェックシステム[普通は秘密自由の選挙制度]なしに「上から」「大学外から」任命されるシステム、憲法の要請する「大学の自主的判断」がシステム上否定された状態=憲法違反状態、しかもそれを補完するものとしての全員任期制および上から任命した管理職による評価制度=物言わぬ人々の創出=学問の自由の抑圧状態)にあること、PEに典型的に示される問題、すなわちカリキュラム体系を一切教授会審議の対象としてこなかったことからすれば、学校教育法違反の状態にあることなどが、参加者の多くに理解されたように思われる。

 

私が結論的に言ったことは、

改革すべきこと・・・@大学自治の再建、学長の自由で民主主義的な選出体制の構築。大学自治(憲法23条)と学部自治(学校教育法に基づく審議事項の審議・それによる教授会の権限と責任の明確化)の合理的有機的再建。大学に憲法を!APEに関しては、諸個人の進路・希望・専門分野を配慮した成績評価と進級基準への変更(段階的評価という世界に普遍的な成績評価の在り方とする。一例:TOEICで、 800点以上、優700-799点、良600-699点、可400599点。この基準を公表する。社会的客観的評価と本学の秀・優・良・可・不可との対応関係を明確化させた段階的評価)。大学・学部・コースが目指すべきは、それぞれの所属学生の個性・徳性を踏まえ尊重しつつ、「語学力強化」の一つとして上を目指す学生たちを支援し、その意味で高いランくの割合を高めていくこと。他方、それぞれのコース、学問体系の必要性・学生の進路・専門分野に応じたその意味で真のプラクティカルな(画一的ではない)語学力基準・カリキュラム体系の創出(英語力も強化すべきところが分野により違うはず)。

 

時間がなく言及しなかったが、PEだけでなく、プラクティカルな中国語、ドイツ語、フランス語などの諸外国語の認定(外部試験の一定の成績による)も、代替措置として、あるいは語学力メニューとして、設定すべきであろう。さらに、現場の教員の単位認定権を普通の他の科目と同じように与えるために、外部試験の成績に、現場の出席状況(出席回数、その態度、その他)を加味することを可能なものとし、機械的に外部試験の点数を秀・優・良・可・不可の段階的評価に当てはめるのではなく、外部試験の点数にそれぞれに関してプラスマイナスの評価を加えて(そのプラスマイナスの合理性・客観性はまさに現場を担当する教員の説明責任に属し、公開が求められるだろう)、段階的評価を行うべきであろう。

 

 

シンポジウムでは、この状態をどのようにすれば改められるか、その手段はなにかということが一つの大きな論点となった。

現在の制度ではっきり不利益措置を被っている学生などが、訴訟を起こすことがあれば、勝つのではないか、そして、制度見直しが根底から行われるのではないか(かつて学生の成績開示に関しては、非常に意志強固な学生さんの訴訟が提起され。学生の勝利に終わったと記憶する)。

教員組合が、この間の法的諸問題を踏まえ、行政訴訟を提起すべきではないか。そのための資金は長年の蓄積があり、十分やっていけるのではないか、など。

(教員組合がその態度になるかどうかは、組合執行部と組合員の意思如何であろう。確かに、長年、組合資金をためてきたので、訴訟資金としてはかなりの額がたまっていることは事実だろう。)

 

シンポ終了後、集会の幹事的役割の人々と夕食をともにしながら今後の方針を話し合い、中田市長による大学「改革」に関して、市長候補がどのように考えるかの質問状を出そうではないか、ということになった。

 

中田市制誕生の時は、中田氏(当時民主党衆議院議員)が自民党の小泉純一郎氏に投票したことからもわかるように、新自由主義の跋扈・規制「改革」・福祉切り捨てや労働保護法制の改悪(派遣労働者の規制緩和など)の時代と重なっていた。その流れの中で大学法人化が強行された。

 

しかし、現在はまさにそうした新自由主義・弱肉強食の市場原理至上主義が根底から問い直されつつある段階であり、市長候補がどのように大学「改革」問題をとらえているのか、とらえようとしているのか、確認する必要があるということである。

大学教職員の全員任期制などという、どこの民間会社でさえ採用していない無茶苦茶な制度が導入された今回の「改革」の「目玉」ひとつをとってみても(大学法人化による市職員減など「大幅な人員削減」を自分の市政の業績として看板に掲げ再選というメリットを享受し、さらに自分は任期途中で職を投げ出してもなお「業績」として誇っている)、中田市長による「改革」がひどいものであったかが歴然としてきている。

大学教員のテニュア制の導入は早急に行うべきだし、職員に関してもそのような任期なし制度を採用し、しっかりとした業績・実績を積んだ者が安心して仕事を継続できる状態にし、教職員が一体となって大学を盛り上げていくようなシステムとしなければならないだろう。

 

---------参加者からの発言のいくつか(要旨)--------

 

A.                代議員会は学生の身分にかかわる事項を審議しています。代議員会の議を経ないと決まらないのは単位認定や学生処分、入試判定といったことがらになります。(PEの判定も代議員会の審議事項になるので、何も資料がないではないか、等の批判が出されたことがあります。)・・・審議権の内容が学生の身分に関することだけというのは、どこからみても違法(学校教育法違反)です。

 

B.                2003年ごろには、全員任期制にせよ教授会権限のはく奪にせよ、横浜市の行おうとした大学「改革」は、小泉政権の新自由主義路線ともあいまって、ある種、「時代の先取り」的に受けとられえた部分があったと思うのですが、現在は、(任期後のテニュア付与をともなうテニュアトラック制の普及を推進する)文科省自体を含めて、こうした路線への反省への志向は少しずつですが出てきているように思います(中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」では、大学設置の「市場化」政策への反省とともに、「TOEFLTOEICなどの結果に基づいて単位認定を行う場合,大学教育にふさわしい水準か,また,単位数が適当か等について吟味する」必要を述べて、学士教育において実用的な英語能力の育成を一面的に強調する傾向に警告を発しています)。経営的な合理性を欠落した運営の実態に加えて、医学部問題や学長・理事長はじめ執行部の突然の辞任など、外から見ていると「改革」後の市大はどう見ても「成功例」とはいえないように、市民には映っているのではないか、という気もします。小泉改革による弱者切り捨て路線が今回の総選挙で批判されるように、横浜市長選においても、有力市長候補者が、中田市長が進めた福祉の民営化路線への見直しとともに、市大に関しても大学官僚統制化「改革」の見直しを行う可能性は皆無ではないように思います

 

---------------Aの論点に関して、学校教育法を開設した文部省のマニュアルから---------------

 

教授会が審議すべき重要な事項として、「学生の入学・退学・卒業等は、施行規則67条の規定により、教授会の儀を経て学長が定める」、と。

また、「教授会で審議すべき重要な事項の範囲は、各設置者の判断によることとなるが、施行規則67条に定める事項、すなわち、学生の入学・退学・転学・留学・休学および卒業については教授会の議を必要とする。

教授会に関して、大学運営における権限と責任の明確化を図る観点から、教育研究に関する大学の自主性を十分尊重し、組織運営の準則を明確化し、(ア)学部又は研究科の教育課程の編成に関する事項、(イ)学生の入学・卒業または課程の修了その他その在籍に関する事項及び学位の授与に関する事項、(ウ)その他学部等の教育または研究に関する重要事項、などを審議する責任と権限を持つ、とされている。

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上記Aの意見が、現在の本学の状況(教授会が年一回しか開かれず、しかも、そこでは何も審議されず事務的事項の報告だけ)という現実、それに代わる組織体として機能すべき代議員会においても、まったく審議に値することが行われず、しかも、十分な資料も提示せず、単位認定や進級判定などだけを行っているというのは、上記の文部科学省の解説マニュアルからしても、明らかに違法だといえよう。

設置者権限を大義名分に、一部教員をワーキンググループとしてカリキュラム編成作業に動員し、教授会の審議を経ることなく、また、その後4年間教授会審議を一度も行わず、「決まったこと」として、単位認定作業だけを行わせていることは、違法である。

代議員会の教員の口を封じこむための武器としては、全員任期制のシステムがあり、3年から5年で任期を更新しない可能性の脅迫効果があり、さらに、教員評価(年々の昇給、さらに昇進等に関係する重大事項)が、すべて市当局が任命した理事長・副理事長(二人の副理事長のうち一人が学長)、それらに任命された学部長、コース長によって行われる(教員評価委員会というものがあるが、そのメンバーはだれが選ぶか?)とすれば、言論封殺効果・思想の自由の抑圧効果は十分であろう。

どこからみても、憲法違反状態ではなかろうか?

その悲惨な結果を何とか食い止めようと必死になって教員組合は奮闘しているが、そうしたこと自体、かなりの人には精神的圧迫となっているであろう。それだけ精神活動の自由は抑え込まれているであろう。

 

しかも、以上の教授会重要審議事項のなかには、「進級」という項目はない。

そうした独自の制度を設ける以上は、進級制度の内容、可否に関して、きちんと議論を積み重ね、現実の「進級」状況とそこでの問題を踏まえて、適宜見直すべきなのだ。しかし、これまた、「決まったこと」(どこでだれが決めたか?)として、何も検討されてこなかった。

 

なにも検討されなくて実害がなければ問題ない。しかし、説明責任を欠如した進級制度により、何百人の学生が、不利益措置を被っているとすれば、ただでは済まないのではないか?

進級制度により、留年が強制され、卒業が確実に留年の期間だけは(少なくとも)延長されるのであり、進級制度は密接に卒業要件と関連しているのである。したがって、卒業にかかわる進級条件を審議していないということもまた違法であろう。

そして、そうした審議無き制度の継続で、何百人もの学生が、1年、それよりは少ないが2年、さらに数は少ないはずだが3年と、さらに途中で現今の厳しい経済状況下で退学に追い込まれている(人生を狂わせている)とすれば、これは大変なことではなかろうか?

わずかの成績優秀学生を特待生にするといったことよりも、PE問題をしっかり改善する方が、はるかに大学の雰囲気が良くなるのではないか?

 

大学の倫理法令委員会は何をしているのであろうか?

これまた「お上」の決めた、「お上」の意向だけをおもんぱかり、「学生中心」などは看板だけでいいと考えるような委員たちによって、問題の検討がサボタージュされていることを示すものであろうか?

法令との整合性はともかく、倫理的には重大な問題をはらんではいないだろうか?

 

市長が突然理由を明確にしないまま、辞職した。

そうした無責任市長による大学「改革」だった。

いまこそ、学生の多くに説明責任を欠如した制度を押し付け続けている人々は、再考すべきでは?

 

 

 

 

 

 

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813日 教員組合週報をいただいた。「団体交渉」(ないしその前段としての副局長折衝)の結果がわかる。

われわれ有志が企画しているミニ・シンポ(815日、午後3時から、いちょうの館)も紹介していただいた。

敗戦=終戦記念日で多くの催しがあり、われわれのシンポジウムへの参加はなかなか厳しいかもしれないが、できるだけ多くの学生・院生・教職員・市民のミニ・シンポへの参加を期待したい。

 

----------------横浜市立大学教員組合報------------------



組合ニュース

2009.8.13

もくじ

副局長との意見交換会

夏休み

お知らせ

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副局長との意見交換会

 先週木曜日に、中期計画作成について教員組合と副局長との間で意見交換が行われた。組合は総会の決定事項である団交要求を説明したが、それがど の程度の効果を生んだかは不明である。なお、終了後、中期計画ワーキンググループのリストが手交された(最下部に転載)。こちらは突っ込みどころ満載であ る。

 そもそも、教員管理職のみが参加する組織がワーキングと呼ばれるのであろうか。しかも、市から指名された人間によって指名された学長が指名した 教員管理職によって現場の声が汲めると思っているのであろうか。さらに、この後付け加えられるのも、市から指名された人間によって指名された学長が勝手に やるようである。

 教育のワーキングが教員に委ねられているのは結構だが、選挙で選ばれたわけでもないコース長たちがどれだけ一般教員の声を汲み上げるのであろう か。また、せっかく専門職、固有職が得られているのに、このワーキングにだけ、事務方の参加がないのはどうしたことなのだろうか。陪席もさせずに、勝手に やらせておいて、後で横浜市派遣職員が気に入ったところだけの醜い継ぎ接ぎパッチワークを作ろうというのならば、Rの繰り返しである。

 入試は、大学院関係者に偏りすぎているであろう。大学院入試などは、各研究科の自己責任のもと完全に任せてしまえばよいのであって、大学として の調整が必要な場面があるとも思えない。国際総合科学部を事実上解体し、「各研究科が学部入試の入り口から学部教育に一貫した責任を負う体制を構築する」 というのならば、一つの考え方かもしれないが、そのような動きがあるとも思えない。

 研究は、研究院戦略会議のメンバーが使われるようだが、そもそもこの会議は代表制に欠け、公開性にも乏しい。さらに、予算があるせいか、研究科 長・副学長クラスが、歪んだ形で参加するところも気になるところである。競争的研究費は科研費を始めとする学外に任せ、そういった学外機関が期待する基礎 (教育)研究費に学内研究費を回せば、こういった研究科長・副学長クラスまでが歪んだ形で研究ワーキングにすり寄ることも無いであろう。

 国際化推進は肥大化し、大学本来の研究教育と離れて勝手に空回りしている状況が指摘されているが、それが一段と進むことになるようなメンバー構成ではないか。

 教員人事に教員を超える事務方が入っているが、市から指名された人間によって指名された学長が指名した教員管理職を超える事務方までが参加し て、またなにか役人的論理で市民の共有財産たる大学の価値を貶めようというのであろうか。教員人事を事務方が担おうというのならば職員人事は教員が担うの が適当であろう。


夏休み
 夏休み中の組合事務室は、木曜日10:0016:00のみの開室となります。

お知らせ

下記のようなシンポジウムを行うというお知らせを組合員の方からいただきました。組合と共催というわけではないですが、次期中期計画を立てる前に、まずはこのような検証が必要なことでしょう。


ミニシンポジウム「市大改革とはなんだったのか?」

日時:815() 15:0017:30 場所:八景キャンパス いちょうの館多目的ホール

1
.基調報告

報告1.「『さらば、公立大学法人横浜市立大学』を出版して」 吉岡直人

報告2.「市大の現状をめぐって1」 中西新太郎

報告3.「市大の現状をめぐって2」 報告者交渉中

報告4.「PEの問題と改革の在り方」 永岑三千輝

2
.討論

主催:ミニシンポ「市大改革とはなんだったのか」実行委員会  連絡先:国際総合科学部 一楽


中期計画ワーキンググループリスト

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
横浜市立大学教員組合
 〒236-0027
  横浜市金沢区瀬戸22-2
   Tel&Fax  045-787-2320
   E-mail    kumiai@yokohama-cu.ac.jp
   HP-URL  http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

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810日 今週土曜日3時から「いちょうの館」でミニ・シンポジウムのご案内。 

     「大日本帝国」敗戦の日。戦後民主主義体制発足の出発点の日。

大学「改革」を主導した中田市長の辞職を受けて、市長選挙が告示される前日。

大学「改革」の意味を考えてみるのにちょうどいい機会ではないか。

 

ミニシンポジウム「市大改革とはなんだったのか?」

――市大のこれからを考えるために――

 

独立行政法人になってから4年少しが経過し、3月には“新大学”の卒業生を送り出し

ました。この時点で「市E5改革とはなんだったのか」振り返ってみたいと思

います。

「プラクティカル・リベラルアーツ」を標榜していた教育が、現実に何を意味するの

か、「学生中心、教育中心」は何をもたらしたのか。ひとつの目玉であったプ

ラクティカル・イングリッシュの実態は?等々、現在の大学がかかえる問題点も明ら

かにしたいと思います。

 

日時:815日(土)午後3時より5時半

場所:横浜市大八景キャンパス「いちょうの館多目的ホール」

 

プログラム(事情により変更することもあり得ます.)

15時開始0D

1. 基調報告

報告1.「『さらば、公立大学法人横浜市立大学』を出版して」吉岡直人

報告2.「市大の現状をめぐって1」 中西新太郎

報告3.「市大の現状をめぐって2」 報告者交渉中

報告3.「PEの問題と改革の在り方−学生諸個人の個性・専門分野・進路の尊重の見地から−」 永岑三千輝

1620分 休憩(10分)

2. ディスカッション

閉会1730

主催:ミニシンポ「市大改革とはなんだったのか」実行委員会

連絡先:国際総合科学部 一楽

 

 

 

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87日 教科書問題が重大な問題となってきた。世界、あるいは近隣諸国から日本が過去をきちんと反省していないことの象徴とみられるような教科書が、横浜市で採択されるという。今度の市長選挙で、そうしたことを推進しないような市長が選ばれなければならないだろう。本学の大学自治、その憲法的保障を打ち壊している現状システムを見るとき、市長がいかなる人物であるかは決定的に重要になると思われる。

 

------------------

 

 

> 

> 【談話】横浜市教育委員会の自由社版歴史教科書採択に対して、

>     断固として抗議し、採択の撤回、採択手続きのやり直しを要求する

> 

> 俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)

> 

>  横浜市教育委員会は、本日84日、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる

> 会」)編集の自由社版歴史教科書を市内18採択地区中8地区(港南・旭・金

> 沢・港北・緑・青葉・都築・瀬谷、145校中71校)に採択した。私たちはこの

> 暴挙に怒りを込めて抗議し、採択の撤回・やり直しを要求する。

> 

>  自由社版歴史教科書は、極めて問題の多い扶桑社版教科書の「複写」教科書

> であり、ほとんど同じ内容の教科書である。したがって、自由社版は扶桑社版

> の問題点をそのま ま引き継いでいる上、戦争の美化・ 正当化をいっそう色濃

> くしている。この教科書は、日本の歴史を天皇中心に描いているまた、日本

> の植民地支配や侵略戦争を正当化・美 化し、日本の戦争の加害や被害をほと

> んど書いていない。戦争そのものを正当化し、日本国憲法を敵視し、平和や人

> 権をないがしろにしている。歪曲した歴史を子どもたちに刷り込むことによっ

> て、子どもたち「戦争をする国」の忠実な国民に育てることをね らいとする

> ものであ る。

> 

>  こんな教科書を使うことになる約13,000人の横浜の中学生は、国際都市横浜

> の子どもとしてふさわしくない歴史、歪曲した間違った歴史を学ばされ、アジ

> アを蔑視する 歴史観 を身につけることになりかねない。

> 

>  さらに自由社版教科書は、きわめて無責任でずさんな編集によってつくられ

> たために、扶桑社版の間違いに加えて、新たな不適切な内容や誤字誤植がたく

> さある。しかも、文字が小さくルビなどはほとんど読めない、資料の図版など

> への斜体文字の多様や色つきの紋様(地紋)の上から印刷するなど趣味的な編

> 集のために読みづらく、教科書 としての使用に堪えないものである。こうし

> た内容以前の問題からみても、この教科書で学ばされることになる横浜の子ど

> もたちの学習にとっては重大な問題だといえる。

> 

>  横浜市教育委員会は、こうした多くの誤りのある教科書を今後さらに2

> 間、子どもたちに使わせることを決定したわけである。

> 

>  加えて、「つくる会」は06年に分裂し、扶桑社版教科書の著作権をめぐって

> 裁判で争うなどの醜い抗争をつづけている。子どもや教育そっちのけで争いを

> 続けている無責任な団体が編集した教科書を採択したことは、子どもたちの教

> 育を考えても重大な問題である。

> 

>  東京都・滋賀県・愛媛県・杉並区・大田原市の教育委員会が、2005年に扶桑

> 社版教科書を採択したことに対して、当該地域はもとより日本各地の市民や諸

> 団体、韓国をはじめアジアの人びとや団体から、多くの抗議や批判が寄せられ

> てきた。さらに、今回の採択にあたっても、横浜市民・神奈川県民をはじめ全

> 国各地から、さらにはアジアから、多くの人びとや団体が、扶桑社版・自由社

> 版を採択しないことを求める要請を多数寄せていた。しかし、横浜市教育委員

> 会はこうした声を完全に無視して、扶桑社版・自由社版の採択を強行した。

> 

>  今回の採択には不正の疑惑もある。今年3月頃から、横浜市教育委員会の今

> 田忠彦委員長と藤岡信勝「つくる会」会長が何回も会い、今田氏が藤岡氏に自

> 由社版教科書を採択するという内諾を与え、そのことを「市執行部や議会の一

> 部幹部にも報告済み」「『つくる会』の限られた幹部も『今田さんと話が付い

> ている』と話している」という内部情報があった。今回の採択を主導したと思

> われる今田委員長は、4年前にただ一人扶桑社版を絶賛し、扶桑社版の採択を

> 強く主張していた。同じ「つくる会」教科書でも、扶桑社版ではなく自由社版

> を採択したというのは、この情報が事実であることを裏付けるものである。こ

> れが事実だとすれば、今回の採択は不公正であり、不正なものだといえる。何

> 故なら、「つくる会」はこの教科書を編集しただけではなく、事実上の発行事

> 業者であり、その責任者と事前に打ち合わせを行ったというのは、明らかな不

> 正であり、不公正な採択だといえよう。

> 

>  この教科書を採択した教育委員はすべて、「つくる会」教科書を支持してき

> た中田宏横浜市長が任命した委員である。その意味では中田市長の責任も問わ

> れかねないといえる。

> 

>  横浜市の教育に責任を負う教育委員会が、子どもや教育のことを考慮しない

> で、政治的な判断のみで「つくる会」教科書を採択した“非教育的”で無責任な

> 所業に対し、心からの怒りを禁じえない。私たちはこの暴挙に対し、断固とし

> て抗議するとともに、採択の撤回・やり直しを要求するものである。

>  以上。

> 

> 子どもと教科書全国ネット21

> 代表委員:石田米子・尾山宏・小森陽一・高嶋伸欣・田港朝昭・

>       鶴田敦子・西野瑠美子・藤本義一・山田朗・渡辺和恵

>   〒102-0072 東京都千代田区飯田橋2-6-1 小宮山ビル201

>           пF03-3265-7606 Fax03-3239-8590

> 

> 子どもと教科書全国ネット21

> Children and Textbooks Japan Network21(CTJN21)

> E-mail kyokashonet@a.email.ne.jp

> HP http://www.ne.jp/asahi/kyokasho/net21/

> пF03-3265-7606 Fax03-3239-8590

> 

 

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86日 今日、団体交渉に向けた当局折衝が、副局長との間で行われるようである。それに先立ち、教員組合週報を頂戴した。

「副学長」からの一方的な(誰の権限?どこの決定?)メールによる「伝達」、「お知らせ」に驚いた普通の教員にとって、教員組合が大学自治のひとつの重要な担い手として毅然とした主張を展開してくれることは、うれしい。

 

 「正当性のない権力者」とは、現在の大学統治が「大学の自主的判断」に基づかないという意味であり、下記のような自由と民主主義の憲法基準に合致していないという意味である。正当性のある統治システムを、教員組合(団交要求)は一貫して求めている。

また、Rとは、プロジェクトRの略であり、中田市長主導の新自由主義的な大学「改革」強行過程で、当局任命の委員(当局にピックアップされた教員と職員管理職)で構成されたプロジェクト検討委員会のことである。

 

--------------憲法が求める大学の自治---------------

 

「大学の自治の内容としてとくに重要なものは、学長・教授その他の研究者の人事の自治と、施設・学生の管理の自治の二つである。ほかに、近時、予算管理の自治(財政自治権)も自治の内容として重視する説が有力である。


 (1)人事の自治  学長教授その他の研究者の人事は、大学の自主的判断に基づいてなされなければならない

 

以下略・・・・・・・・・・・・・・・」(芦部『憲法』

 

 

 

------------横浜市立大学教員組合報-------------



組合ニュース
2009.8.5

もくじ

副学長からの手紙〜その2
明日木曜日に副局長との意見交換会

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副学長からの手紙〜その2

国際総合科学部,大学院3研究科の先生方へ
7
月下旬−8月上旬に予定されていた「骨子案に対する学長・学部長・研究科長等と
教員との意見交換」は、9月上旬に変更になりました。
7
8日〜16日に行った意見交換会で説明のあった次期中期計画策定の
スケジュールで、 7月下旬から8月上旬に開催が予定されていた
「骨子案に対する意見交換会」は、作業が遅れており,9月上旬に延期になりました。
現在,各ワーキンググループで、現中期計画をもとに課題の洗い出し作業が
進められています。
具体的な日程についてはあらためてお知らせいたします。
どうかご了解くださいますようお願いいたします。


 骨子案に対する意見交換会延期を知らせる副学長からの手紙だが、少なくともワーキンググループと称するものができあがったようである。722 日の人事課折衝において、WGのメンバーリストは決定次第公表するとの発言があったわけだが、少なくとも組合にはまだ連絡がない。明日木曜日の副局長と組 合との意見交換会でそれが出てこないとなると誠実交渉の原則からも問題である。それにしても、正当性のない権力者が、代表制はおろか、公開制も無視してこ とを進める姿は、Rのころから全く変わっていないように思われる。


明日木曜日に副局長との意見交換会

 明日木曜日に中期計画作成について教員組合と副局長との間で意見交換が行われることになりました。当日は総会で決定された団交要求を持って、執行委員・独法化委員が参加します。



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横浜市立大学教員組合
 〒236-0027
  横浜市金沢区瀬戸22-2
   Tel&Fax  045-787-2320
   E-mail    kumiai@yokohama-cu.ac.jp
   HP-URL  http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/
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730日 この間寄せられた情報では、「助けてください」と市会議員などへの訴えの声・悲鳴の声が上がっていた医学部教授人事は、結局、つぶされてしまったそうである。噂なので本当のところはわからないが、いずれ、大学の自治が再建される過程で、どこ(誰)がどのような理由で横やりを入れ、人事をダメにしてしまったか、といったことも判明するであろう。

      学長人事だけではなく、教授人事も、不当な大学外からの介入が行われたことになるであろう。

 

---------------憲法が求める大学の自治---------------

 

「大学の自治の内容としてとくに重要なものは、学長・教授その他の研究者の人事の自治と、施設・学生の管理の自治の二つである。ほかに、近時、予算管理の自治(財政自治権)も自治の内容として重視する説が有力である。


 (1)人事の自治  学長教授その他の研究者の人事は、大学の自主的判断に基づいてなされなければならない

 

以下略・・・・・・・・・・・・・・・」(芦部『憲法』

 

 

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728日 この間、大学における中期計画に関連して、これまでの中期計画・その達成度・問題点をどう見るのか、という観点から、ミニ・シンポジウム「市大の今後を考える(仮題)」(横浜市大「いちょうの館」で、815日=敗戦・終戦記念日=戦後民主主義体制出発の記念すべき日に、3時から、ミニ・シンポ実行委員会)でも開催したらということで、準備が進められてきた。

ところがここにきて、驚嘆する出来事が起こった。中田市長の3選不出馬宣言である。

本学の「改革」は、まさに、中田市長の登場、その新自由主義的改革のいわば象徴的ケースとして断行された。その中田市長が、当初の「約束通り」(?追い込まれて?)とはいえ、市長でなくなることは、本学にとっても極めて重要な意味をもつであろう。まさに、この間の「改革」の在り方・内実こそが、再検討される機会となろう。

 

 

 

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727日 新しい教員組合ニュース(24日付)をいただいた。現在の本学の民主主義(その破壊)の全体状況では、民主主義的正統性を持つのは選挙により信任された教員組合が第一であることは言うまでもない。現在の教員組合は、その意味ではかつての教授会機能を実行している組織といえよう。すなわちある意味では、本物の自律的・自立的教授会ということもできよう。その教員組合に対し、当局が中期計画に関して説明を行うのは当然のことであろう。中期計画において全員任期制をどうするのか、教員評価制度をどうするのか、本来教授会が審議決定すべきカリキュラム体系をどうするのか。

現在の「上から」任命の管理職システムでは、こうしたことが、教員による民主主義的審議によらなくても、決められる。そのことは、すでに各方面で指摘されていることだが、当局作成の文書からも確認できる。

 

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横浜市立大学教員組合報

組合ニュース

2009.7.24

もくじ
大学当局は中期計画について組合の意見を聞くのか?
執行委員選挙結果

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大学当局は中期計画について組合の意見を聞くのか?

7月22日(水)に人事課折衝があり、石内人事課長・松田係長に加え、竹前経営企画課長、山崎係長の参加がありました。山崎係長から、教員説明会 と同等の次期中期計画の考え方についての説明を受けた後、「教員組合よりの団交要求(2009年7月9日総会決定)」を手交し、説明を行いました。人 事課の対応は、団交により妥結するような案件では無いといったものでしたが、竹前経営企画課長より、上(当然上は、本多理事長・田中事務局長・増住経営企 画室長?)へ、組合からの中期計画に関わる意見を直接聞く場の設定希望は伝えるとの約束を受けました。

執行委員選挙結果

 7月23日昼休みに開票が行われました。

      
投票総数85、有効投票数  85

1区   鈴木伸治                85

2区   小城原新                84

3区   谷嶋二三男      85

小幡敏行                84

4区   沓名伸介                85

なお、夜の引き継ぎ執行委員会で沓名先生に副委員長、小幡先生に会計をお願いすることが決まりました。

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76日 教員組合ニュースをいただいた。ニュースは中期目標にかかわる重大な意見表明であり、執行部が団体交渉を要求していることを明確にしている。

     大学自治における民主主義は、国家における民主主義と同様極めて重要である。本学の場合、大学の長が、民主主義的手続き・制度によって選ばれていない以上、代表性を欠如していることは明確である。それは、憲法の保障する「大学の自治」を破壊していることを示すものである。日本国憲法の代表的教科書(『芦部憲法』)をここで今一度熟読すれば、教員組合のスタンスの憲法的正当性を再確認できよう。

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「大学の自治の内容としてとくに重要なものは、学長・教授その他の研究者の人事の自治と、施設・学生の管理の自治の二つである。ほかに、近時、予算管理の自治(財政自治権)をも自治の内容として重視する説が有力である。


 (1)人事の自治  学長・教授その他の研究者の人事は、大学の自主的判断に基づいてなされなければならない

 

以下略・・・・・・・・・・・・・・・」(芦部『憲法』

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      現在の本学は、理事長、それに副理事長(学長もその一人)の選任が、市当局によるもの(学長の場合選考委員が市当局任命)となっており、なんら「大学の自主的判断」、大学の自治によるものではなく、それらを保障するものとはなっていない。

 

法人化前のかつての学長選任制度は、大学教員による間接選挙であったが、少なくとも大学教員の一人一人が間接的にか、直接的(選挙人に選ばれれば)に、投票で意思を表明することが可能であった。それは、戦後憲法の精神を体現するものとして、全国の圧倒的多数の大学で実施された制度であり、「大学自治」の基本的制度的保障であった。

それは、今回の法人化をめぐる「改革」のなかで、撤廃された。「教員は商品だ、運営に口出すな」と、大学教員の学長選出権をはく奪した。その徹底ぶりは、「オンリーワン」と形容すべきものであろう。

現在の学長選出の実態は、芦部憲法が示すように、憲法違反状態である。

 

かつての大学教員だけによる学長選出が、大学構成員全体による学長選出に比べて民主的正統性において弱かったとすれば、むしろ、できるだけ「大学構成員全体=大学」の代表者としての学長の選挙制度を創造すべきなのであり、かつての「民主制」の基盤の弱さをできるだけ改善して、民主的正統性の実を大きくすべきものなのである。

 

      「大学の自主的判断」、「大学の自治」をどのようにして保障するのか、それが問われている。

 

 

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横浜市立大学教員組合報

 

 組合ニュース

2009.7.3

 

もくじ

 

●副学長からの手紙

●今後の予定

●団交要求

 

 

 

●副学長からの手紙

 

次期中期計画の策定については、現在骨子案の策定作業に入っています。7月末から8月上旬にかけて、骨子案の提示と学長・学部長・研究科長等と教員との意見交換の場の設定が予定されていますが、それに先だって、次期中期計画策定のスケジュールを説明し、学長から基本的考え方を提示して先生方と意見交換をする場を持ちたいと考えています。間近のご案内になってしまいはなはだ恐縮ですが、以下の日程で一回目の意見交換会を持ちたいと思います。ご都合のつくかぎりご参加下さいますようお願い致します。

 

実は、執行委員会では、もう、早速ある先生からメールをいただきました。「中期計画の策定にあたって、教員の意見聞き取りをするということですが、上層で決めたことを通すことを予定したうえで、「広く教員の意見にもとづいて決めた」と主張するための儀式にすぎないでしょう。欺瞞です。よく官僚が、決めた計画を実行する直前に、住民への説明会を開くのと同じ発想ですね。」 同じ発想というか、横浜市派遣職員がやっているのですからidentityとも思われます。中期計画は大学にとって疑いもない重要事項なのですから、学校教育法第93条に基づき、事務方陪席の下、教授会できちんとした審議を行うべきです

学長を権威者として利用しようとしているのでしょうが、難しいでしょう。選挙で選ばれていない人間が、代表面をするのには無理があります。学長という職に本当の権威が与えられる選挙が実現できるよう、教員組合としても努力していかなければならないと考えます。

 

 

●今後の予定

 

教員組合は、現在、市派遣職員主導の中期計画策定の問題点を明らかにすべく、(拡大)執行委員会、代議員会での議論を踏まえて、7/9(木)の総会直後の、7月中旬の団交を申し入れています。総会では、さらに多くのみなさんの直接的ご発言をいただきたく思っております。

 

 

●団交要求

 

団交要求書

公立大学法人横浜市立大学

理事長 本多常高 

 

        2009年7月2日

        横浜市立大学教員組合

執行委員長 山田俊治

 

 次期中期計画の策定が経営企画課主導ですでに行われているようだが、このような大学を長期に縛る計画の策定が、公務員的発想の「管理運営事項」として進められることがあってはならない。いかなる経営事項であっても、労働条件と関連するすべての案件は組合との交渉マターであることをここに確認し、下記案件について7月中旬の団交を要求する。

 

(1)大学運営・大学財政について

(2)労働環境について

(3)研究・教育環境について

 

 

 

-------------

6月6日 今日はDデー。米英連合軍のノルマンディー上陸作戦の日。しかし、それは、1944年のこと。

それまで米英はどこで、どのようにナチス・ドイツと戦っていたのか?

 

     第三帝国ドイツの主戦場は、19416月から19446月まで、3年間にわたって、東部戦線Ostfrontではなかったか?

     ドイツ国防軍は、19416月、350万の大軍でソ連に攻め込んだのではなかったか?

     それから3年、19446月といえば、ソ連軍がやっと「祖国領内」からドイツ軍をほぼ撃退した時期ではないか? 

その撃退のための犠牲はいったいどれほどのものだったか?

 

     ドイツ東部軍は、最初の半年だけで、16万の精鋭の兵士将校を失ったのではないか? なぜか?

ホロコーストは、まさに独ソ戦の渦中で、ソ連ユダヤ人に対して、はじまってはいなかったか? なぜか?

 

     ソ連赤軍は、最初の半年だけで約400万人の捕虜をとられたのではなかったか?

その圧倒的部分は、犠牲者となっていたのではなかったか?

 

しかし、なぜ、この第三帝国の侵略をソ連は撃退することができたのか? 

 

「収容所群島」のスターリン体制の極悪非道と、第三帝国に対する勝利との間に、どのような関係があるか?

 

ドイツの原爆開発を阻止した諸要因はなにか

 

     ともあれ、Dデーだけを称揚する米英史観は、根本的に修正すべきではないのか?

冷戦体制に勝利して歯止めを失い増長した主義・主張、まさにこの「新自由主義」の独善的史観・経済観・社会観こそ、その跋扈こそが、現在の「100年に一度の世界大恐慌」の根底にあるのではないか?

「蟹工船」、「マルクスは生きている」、「マルクスの逆襲」こそは、アメリカ的新自由主義的経済学・イデオロギーの根本的問題を象徴的に指し示すことばではないか?[5]

 

 

     下記のオバマ演説に関する論評(オバマ大統領の画期的演説を評価しながら)を読みつつ、以上を考えた。

 

 

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                               200966日発行

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JMM [Japan Mail Media]                No.534 Saturday Edition

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                       http://ryumurakami.jmm.co.jp/

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INDEX

 

  ■ 『from 911/USAレポート』第412回

    「オバマのカイロ演説は歴史に残るか?」

 ■ 冷泉彰彦   :作家(米国ニュージャージー州在住)

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 ■ 『from 911/USAレポート』第412回

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「オバマのカイロ演説は歴史に残るか?」

 

 

 

 

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63日 またもや教員組合ニュース(62日号)をいただいた。中期計画問題は、それだけ重みのあるテーマ、大学自治の内実にかかわる根本問題だ、ということである。

 

 

 



[1] そのことは、カリキュラム表で提示した教育内容を保証できないことを意味する。

 「大学案内」などで入学生を募集するときに「カリキュラムはこうです」と示していた全体像と、入学後に進行する不補充による空洞化とを比較検討し、本来は、真剣に適正化を図らなければならないだろう。

 そうなっているか?

 

[2] (この間の実際の昇任において、「業績基準」よりもむしろ、「任期制への同意」=法人への従順さが優先されているのではないか、とさえ思われる現象も出ている。

昇任審査に入るにあたって「任期制への同意」を前提条件・ハードルにすれば、当然にもそのような結果が次々と出てくるであろう。しかも、准教授から教授への昇任において、その給与格差が大きくなれば、どうなるか?

 「昇任を餌とした任期制強制」というのが実態ではないか?

 

 

[3] 私は、憲法の正統的解釈を示す芦部氏の説(「憲法23条」と解説:芦部『憲法』)を基準に、現在の本学の状態を憲法違反と見なしている。市長が理事長を任命するにあたって、大学自治の観点がどのように保障されているか問題だと考え、また、理事長が学長を任命するにあたっての選考規程が、大学構成員の民主的意思確認に基づいていない(「大学の自主的判断」の中に教職員の自由な=秘密の意志表明が入っていない)点が、根本的に問題だと考えている。市長への要望書に賛同した方々のそれぞれが、「改革の見直し」という点で共通の希望をもっているとしても、具体的な見直し項目・見直すべ問題点の把握などに関しては、さまざまの立場や見解がありうる。

[4]

[5]大衆の消費能力・支出能力を無視した販売のための販売、利潤追求のための生産拡大、そのための「金融工学」と称する信用拡大、この「生産と消費」の巨大なギャップが世界規模で「ニューエコノミー」の表面的繁栄のもとで拡大し、どうしようもないところで爆発した、ということであろう。(地球規模の社会的総資本の再生産論が必要…地球環境破壊の強力な推進をものともしない資本主義の生産拡大傾向)

 

技術の飛躍的発展(ITバブルなど)による社会全体の資本の有機的構成の高度化(機械設備類の投資拡大、それに比しての人件費の総体的かつ相対的少なさ・圧縮圧力)、その再生産構造における現象として、「資本主義社会では生産手段の生産は消費手段の生産よりも急速に増大する」という原理の貫徹。

争って新たな機械設備等の大量投入=投資、市場の吸収力を無視した生産拡大の熱狂(=信用操作としてのサブプライムローンなど)。

必然的結果として過剰生産恐慌。昨年秋の勃発。とりわけ、世界の自動車産業などに過剰生産が顕著。

 

 資本主義的市場経済の拡大が勤労大衆の「欲望の水準の増進を不可避的にもたらす」。しかし、資本の利潤追求からは、人件費カット・賃金切り下げ圧力が常にかけられることも法則的な事実である。

「資本主義的生産様式における矛盾。商品の買い手としての労働者たちは市場にとって重要である。しかし、彼らの商品−労働力−の売り手としては、資本主義社会は、それをその最低限の価格に制限する傾向をもつ。――さらに次の矛盾。資本主義的生産がその全潜勢力を傾注する時代は、決まって、過剰生産の時代であることが明らかになる。なぜなら、生産の潜勢力は、それを使用することによってより多くの価値が生産されるばかりでなく実現もされうる、というところまでは、決して使用されえないからである。そして、商品の販売、商品資本の実現、したがってまた剰余価値の実現は、社会一般の消費欲求によって限界づけられているのではなく、その大多数が常に貧乏であり、またはつねに貧乏のままであらざるをえないような一社会の消費欲求によって限界づけられている。」(マルクス『資本論』第二部第16章 可変資本の回転、より)

ちなみに、最近は、大恐慌、格差社会の拡大・深刻化で、『資本論』がドイツでも日本でも見直され読み直されているようである。

ただ、第二巻、第三巻までを読みとおすことは、現在の忙しい社会では至難のことである。数年間をかけて読み続ける粘り強さ=精神力が必要となろう。