貨幣論[1]

 −スティグリッツ『マクロ経済学(2)』の批判的検討のために―

 

 

『経済学批判』における章だて

 

第一部       資本について

第一篇       資本一般

第一章       商品

  A 商品分析のための史的考察

第二章       貨幣または単純流通[2]

  一 価値の尺度

  B 貨幣の度量単位について諸学説

  二 流通手段

    a 商品の変態

    b 貨幣の通流

    c 鋳貨。価値表章

  三 貨幣

    a 貨幣蓄蔵

    b支払手段

    c世界貨幣

  四 貴金属

  C 流通手段と貨幣についての諸学説

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『資本論』第1巻における章だて

 

第一部       資本の生産過程

第一篇       商品と貨幣

第一章      商品

第一節       商品の二つの要因 使用価値と価値(価値実体、価値量)

第二節       商品に表わされる労働の二重性

第三節       価値形態または交換価値

A 単純な、個別的な、または偶然的な価値形態

  一 価値表現の両極。相対的価値形態と等価形態

 二 相対的価値形態

   a 相対的価値形態の内実

   b 相対的価値形態の量的規定性

 三 等価形態

 四 単純な価値形態の全体

B 全体的な、または展開された価値形態

 一 展開された相対的価値形態

 二 特殊的等価形態

 三 全体的な、または展開された価値形態の欠陥

C 一般的等価形態

 一 価値形態の変化した性格

 二 相対的価値形態と等価形態の発展関係

 三 一般的価値形態から貨幣形態への移行

D 貨幣形態

第四節       商品の呪物的性格とその秘密

第二章      交換過程

第三章      貨幣または商品流通

第一節       価値の尺度

第二節       流通手段

   a 商品の変態

   b 貨幣の流通

   c 鋳貨 価値章標

第三節       貨幣

   a 貨幣蓄蔵

   b 支払手段

   c 世界貨幣

 

 『資本論』第三巻・・・信用制度と信用貨幣、流通手段

   27章 資本主義的生産における信用の役割、

第28章          流通手段と資本、

第29章          銀行資本の構成部分、

3031・32章 貨幣資本と現実資本、

第33章    信用制度の下における流通手段

      



[1] 「貨幣の分析におけるおもな困難は、貨幣が商品そのものから発生するということが理解されれば、たちまち克服される。

この前提のもとでなおまだ問題となるのは、貨幣の固有な形態規定性を純粋に把握することだけであるが、これは、すべてのブルジョア的諸関係が金メッキされたり銀メッキされて貨幣関係として現われ、したがって貨幣形態が、それ自身とは疎遠な、無限に多様な内容をもっているように見えるので、かなり困難にされるのである。」(『経済学批判』第二章、全集版、47ページ)

    Die Hauptschwierigkeit in der Analyse des Geldes ist überwunden, sobald sein Ursprung aus der Ware selbst begriffen ist. Unter dieser Voraussetzung handelt es sich nur noch darum, seine eigentümlichen Formbestimmtheiten rein aufzufassen, was einigermaßen erschwert wird, weil alle bürgerlichen Verhältnisse vergoldet oder versilbert, als Geldverhältnisse erscheinen, und die Geldform daher einen unendlich mannigfaltigen Inhalt zu besitzen scheint, der ihr selbst fremd ist.

[Marx: Zur Kritik der politischen konomie, S. 67. Digitale Bibliothek Band 11: Marx/Engels, S. 2964 (vgl. MEW Bd. 13, S. 49)]

 

[2] 「以下の研究でしっかり把握しておかなければならないことは、商品の交換から直接に発生する貨幣の諸形態だけを問題にし、生産過程のもっと高い段階に属する貨幣の諸形態、たとえば信用貨幣のようなものは問題にしない、ということである。簡単化のために、どんな場合でも金が貨幣商品であるとしておく。(『経済学批判』第二章、全集版、48ページ)

    In der folgenden Untersuchung ist festzuhalten, daß es sich nur um die Formen des Geldes handelt, die unmittelbar aus dem Austausch der Waren herauswachsen, nicht aber um seine, einer höhern Stufe des Produktionsprozesses angehörigen Formen, wie z.B. Kreditgeld. Der Vereinfachung wegen ist Gold überall als die Geldware unterstellt.

[Marx: Zur Kritik der politischen konomie, S. 67f. Digitale Bibliothek Band 11: Marx/Engels, S. 2964f (vgl. MEW Bd. 13, S. 49)]

 

 信用貨幣は、信用制度、銀行業の発達とともに発生し、展開する。

 単純な商品交換においては、そうした信用制度・信用貨幣は歴史的にも理論的にも存在しない。