アンケート集計結果
講座名:世界の戦争と民衆
ヒトラーの戦争とヨーロッパの民衆
開催日:12月5日(火)
講師名: 永岑 三千輝 先生
出席者数:28人 回答者数:21人
1 今日の講義について
|
良い |
普通 |
あまり良くない |
良くない |
未記入 |
講義の内容 |
20 |
|
|
|
1 |
ホワイトボード・OHPなど見やすかったか |
10 |
8 |
2 |
|
1 |
資料の質・量 |
18 |
2 |
|
|
1 |
2 講座内容について
・
@ヒトラーの戦争とヨーロッパの民衆という題目なのに、ドイツの民衆については言及していない[1]。
Aこれは反ヒトラー(ナチ)でしかも親ユダヤ[2]のpropagandaであって、大学で行うタイプの歴史[3]ではない。
B「戦争が始まれば民主主義が破壊される」という前提自体がおかしい[4]。
・
OHPを使っていても板書として用いると見づらいです。資料の項目分けと先生が話されている内容を追うのが、わかりづらかったです[5]。現代の政治や戦争と比較している点は、興味深かったです。また、先生の広範囲な知識を基にした話は大変おもしろかったです。
・
考えさせられました。良かったです。お話聞きやすかったです。
・
いつも明確なお話でありがとうございます。
・
今日の講座は特に分かりやすく面白い講座でした。大変難しい内容をこんなにまとまって分かりやすく講義を受けられた事に感謝!
・
大変内容のある講義で参考になりました。
・
身近な近代戦に関するもの故、入りこみ易く興味があった。大戦にいたる過程も全体としてよく分かった。
・
講義の道すじが解かり、理解することが出来た。
・
今後勉強する為のトリガーになりました。ありがとうございました。
・
本日の講義が90分という事から話すべき内容をしぼってほしかった。ご本人にしてみればすべての事柄が必要なんでしょうが、資料も集中してほしかった。前回同様内容は重すぎるぐらい重量感に興味深いすばらしい話でした。ありがとうございました。
・
ヒトラー戦争と民衆の動きの概要は判りましたが、(時間が短いので、無理もありませんが…)もう少し、一時期が地域に集中された民衆の気持ちの動きを説明していただいた方が良いかと思いました。⇒貴重なテーマなので、継続(深握も含めて)していただきたい。
・
とても時間が足りないテーマですが、冒頭のお話も含め、わかりやすくていねいに教えていただけたと思います。学生時代の教科書の内容と史実との違いなどは大変興味深かったです。
・
先生の講義は何時もの通り豊富な資料に基づく講義で、良く理解出来ます。有難うございました。『グローバルな事も、日常の瑣事(小事)も話し合いで解決出来ることは本当に可能なことでしょうか。北朝鮮の問題は“核”の問題は?』
3 今後の講座企画・運営についての意見・要望
・
講義形式ではただ聞くだけ見るだけということになります。知識を補うのではなく、問題を考えるという視点からディスカッション等、できるような講座があれば興味があります。
・
時間も若干フレキシブルでよかった。いずれにしても2〜3Hで編成したい。
・
テーマの割りに、講義時間が短すぎる傾向が感じられます。もう少し先生方の時間はとれないのでしょうか?イギリス・イタリヤを含めたヨーロッパ中世〜近代の形成過程について、費やしていただきたい。
フェースシート
|
10歳代 |
20歳代 |
30歳代 |
40歳代 |
50歳代 |
60歳以上 |
未記入 |
男 |
|
1 |
|
|
4 |
11 |
3 |
女 |
|
|
|
|
1 |
1 |
また、一人の感想以外、ポジティヴに私の講義の内容を受け取ってくれたのがうれしい。
[1] この聴講者は、私が述べたことをまったく理解しようとしていない。
講義(レジュメ参照)では少し詳しいくらい紹介した「民情報告」は、まさにドイツ人の民衆の意識動向を二日おき、三日おきに集約して、ベルリンでまとめたものである。
[2] 講義のレジュメを見ていただくと分かるが、事実に即し、ヒトラーの思想と政策をのべ、配布資料でも、ホスバッハ・メモ(1937年11月5日)やヒトラーの国会演説(1939年1月30日)を詳しく紹介したものを示した。
ナチが何を考え、何を発言し、実際に何を行ったのかをリアルに、一次史料に即して紹介すると、それが、この聴講者の目からは反ヒトラーで親ユダヤの「プロパガンダ」(宣伝)とみえるとすれば、この聴講者の観念世界に問題があるだろう。親ヒトラー、反ユダヤのスタンスの人なのだろう。
この人以外には、このような一面的な感想(「プロパガンダだ」などと)を書いている人はいない。
ヒトラー・ナチ体制が、ドイツ人とヨーロッパの人々に対して、平等に同じようなことを行ったのではなく、差別的な政策を推進し、領土拡大政策とそのための戦争政策・他民族抑圧政策をとったことは事実なので、それをできるだけ事実に即して描けば、ヒトラー・ナチ体制の悪行を暴くことにならざるを得ないのは、当然のことである。
その場合、私は、当時の世界の中で、ヒトラー・ナチ体制・ドイツだけに問題の原因があったのではないことも述べている。ヴェルサイユ体制の「卑劣さ」を指摘し、広範なドイツ人が、戦勝国に(不公正さに)不満と怒りをもったことを冒頭に述べ、第一次大戦の終結の仕方が孕む重大な問題性こそが第二次世界大戦を引き起こしたことを、「20世紀の30年戦争」として、冒頭に述べているのである。
その限りでは、ヒトラー・ナチ体制に対し内在的な理解を示し、ドイツ人への同情も示している。
[3] 「大学で行うタイプの歴史」とは、どのようなものであろうか?
それには実にさまざまなタイプがあると考える。アカデミック・フリーダムは、まさにそのような多様性を保障するものとして存在している。その多様なタイプの共存と競合において、歴史の真相・真実が追究される。その自由さこそが大学における命である。
「プロパガンダ」とは、宣伝である。しかし、すべての発言は、ある意味では宣伝である。真実に即した宣伝か、事実誤認・虚偽の宣伝かにちがいがあるだけである。
発言者自身の考え、理解、歴史像、政治意識などを述べることは、宣伝である。そのことは、すべての発言者が自覚していなければならないことだろう。
問題はしたがって、その発言(講義)が、科学的かどうか、歴史学の学問・科学としての基礎的要件(実証)にかなっているかどうか、本当か嘘か、真実の度合いはいかん、ということであろう。
「プロパガンダだ」と決め付けるのではなく、この発言(この主張、この歴史像)が、どの点で史実(史料)と違っているか、こうしたことが検証されなければならない。
発言(主張、歴史像)が、史実に照らして、違っているものばかり、誤ってばかりだと、悪しき宣伝、その意味での悪しき「プロパガンダ」ということになろう。
この聴講者には、具体的な検証をお願いしたい。
「大学で行うタイプの歴史」の要件としてどのようなことがあるか、私の見地がいかなるものか。その点は、高校生に対する「学問紹介(史学)」で述べたことを参考にしていただきたい。リンクをはっておこう。
事実の探究、事実群の中から真実を探究していくこと、真実の総体を描いていく努力など、科学の基本的方法を述べた。
[4] 「戦争が始まれば民主主義が破壊される」というのは、冷徹な事実である。
自由な言論が、戦時においてはなくなるのは、古い時代からの真実である。
ユリウス・カエサルはいう。「武器の時代は、法の時代とはちがう。わたしの行為がきみの意に沿わないとしても、今は黙っていたまえ。戦時は、自由に何でも発言することを許さない」と。(塩野七生『ローマ人の物語11 ユリウス・カエサル ルビコン以後(上)』、新潮文庫、68ページ。
アメリカのイラク戦争、反テロ戦争をみてもわかるが、9・11後のアメリカ社会ではかつてなく民主主義的権利(人権)や言論出版の自由が制限されている。第二次大戦中の日系人の自由や人権は、アメリカにおいて否定された。戦場にならなかったアメリカにおいてさえである。
ナチスの時代は、まさに言論・出版・政党活動などの自由の抑圧であったことは明確な事実であろう。
もちろん、現代の日本において、言論・出版・政党活動などが、かならずしも自由ではなく、実に多くの制限、抑圧(隠然たるもの、経済差別・就職差別・昇任差別、その他多様な形態のもの差別)があることは、少し注意してみれば分かる。
しかし、ひとたび戦争にでもなればどんなことになるか・・・
平和な時代における民主主義の充実度・保障度と戦時下の民主主義の充実度・保障度が比較されなければならないだろう。
アメリカのように世界でもっとも自由で民主主義的とされる国でも、第二次大戦のとき、日系アメリカ人の強制収容があったではないか。
[5] 貴重な感想。整然とレジュメにした形でおこなうには、少しボリュームが多くなってしまい、はしょった部分もあったので、レジュメどおりの話を期待していた聴講者には、ちょっと聴き取りづらいこともあったであろう。
他にも、時間が足りない、何回かに分けて、などの感想があるが、おなじような気持ちなのであろう。
少したくさん盛り込みすぎ、欲張りすぎたかもしれない、と反省。