1.はじめに -史学、歴史学、歴史研究とは?-

 

設問@第二次世界大戦の犠牲者(死者)の数はどれくらいか?

   答:a.600万人、 b.2500万人、 c.4300万人、 d.6000万人

 

設問Aアウシュヴィッツ(強制収容所、強制労働収容所、絶滅収容所)は、

教科書、すなわち、

詳説 世界史』(山川出版社、1992年)、

世界史B:詳説 世界史』(山川出版社、1997年)、

世界史A』(三省堂、2002年検定済、2006年4刷)、

世界史B』(三省堂、2003年検定済、2006年3刷)、

さらに、補助教材

『世界史用語集』(山川出版社旺文社)などの

叙述では、どのように説明されているか? 

 

たとえば、6つの絶滅収容所におけるユダヤ人犠牲者 (死者)の数はどれくらい書かれているか?

 

最近の専門研究書では?

ナチズム・エンサイクロペディア』では?

 

 

ユダヤ人犠牲者の総数は?

(強制収容所で殺害されただけではなく、ソ連などの占領地では最初の1941年6月以降の半年だけで数十万人が射殺された・・・)

 

強制収容所におけるユダヤ人以外の犠牲者(ジプシー=シンティ・ロマなど)の数は?

 

ユダヤ人迫害からホロコーストの展開への因果関係の説明はどうなっているか?

 

小括:

歴史叙述は、歴史研究(史学)の成果・結果。

 事実(証拠)に基づく研究(史学)の必要性・存在意義。

 

  区別すべきことは、

    「歴史」と「歴史の叙述」

    「事実としての歴史」と「書かれたものとしての歴史」(堀米庸三『歴史をみる眼』

       

身近な比喩: 「一日に起きたこと・経験したこと」と「その日の日記」(堀米庸三

 別の有名な比喩としては、「山そのもの」と「登山用の地図」の関係(大塚久雄

    地図の種類・・・・それを使う人間の用途・目的・必要の多様さに対応。 

 

全体と部分・・・全体のなかから、そのときどきの人間が、必要に応じて、さまざまの眼、さまざまの関心、さまざまの目的でもって、事実(その証拠)を調べ、認識し、叙述する。

 

 

 

 

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果てしなく続くかに見える深刻な中東問題・・・イスラエル対パレスチナ、イスラエル対アラブ諸国(現在は特にイラン)・・なぜ?

イスラエルの建国はいつ、なぜ?

イスラエル建国以前に住んでいたパレスチナ先住民族はどうなった?

 

「欧米ではパレスチナ問題にはじまるアラブ諸国の紛争と暴力の連鎖は、ナチス・ドイツのユダヤ人迫害にはじまるとする考え方が説得力を持っている」(小菅信子『戦後和解−日本は〈過去〉から解き放たれるのか―』中公新書1804、2005年、7ページ)とされるが、どうしてか?

ユダヤ人に対する反感・攻撃(反ユダヤ主義)は、非常に古くからあるのではないか?

 

 

ナチス・ドイツ

ヒトラーはなぜあんな戦争を引き起こしたのか?

ヒトラーを支持したドイツ国民はどのような問題を抱えていたのか?

ヒトラー、第三帝国はなぜ、ユダヤ人迫害、その究極の段階としてのホロコーストを行ったのか?

 

イラク戦争にも、多くのなぜ? 

イラク対イスラエルの歴史?

イラク対イランの戦争の歴史?

なぜアメリカが介入?

 

 「アルカイダは、2001年9月のアメリカにおける同時多発テロの背景は第一次大戦期まで遡ると主張」(前掲、小菅、6ページ)・・・なぜ、そこまでしか遡らないのか? 第一次大戦はなぜ起きたのか? 

 

 

なぜ、なぜ、なぜ? ・・・・研究の始まり・・・歴史学は、人間・社会の諸問題と現状の歴史的要因(背景・経過)の連鎖を解きほぐす、解明する。

 

新しい問題が発生するごとに、歴史的要因(背景・経過・経路)が問い直される。諸事実・諸事件の連鎖(つながり具合)が検証しなおされる。


   人間は歴史の産物であり、また、人間が歴史をつくる。

歴史ぬきの人間は存在しない。

 


 さて、それでは、歴史学はなにを問題にし、どのようなことを、どのような方法と手段で明らかにする学問でしょうか?

 

歴史の中で生き、悩み、喜び、競争し、闘いなどしてる人間(たち)に関することなら、なんでも問題になりうる。

Ex.奈良の幼児殺害事件(最近の死刑判決報道)・・・犯人の生い立ちは? 人生経験は? 

 

人々が、いろいろな問題に苦しみ、悩み、競争し、闘い、傷つけあい、ある場合には殺し合いなどしているからこそ、歴史が問題になる。

 

問題によっては、大きな論争になり、世界的な関心を呼ぶ。

 

 

何を解決すべき課題と感じ、何を問題と感じ、課題や問題として取り上げ、研究するかは、時代や地域、人びとによって違う。

 

無数の問題群。

無数の課題群。

若い人々がチャレンジすべき問題・課題は、無数にある。

 

したがって、調査研究にあたっては、

一方で、

問題・課題の限定が必要。
   具体的素材・具体例(その必要性)

 

しかし、他方で、

どのような問題(すべての問題は歴史的である)を考えるにも、科学的・学問的に求められる共通のことがある。


若いみなさん、
 「歴史の無数のなぜ、どうなっているの」を解きほぐし、「歴史の真実はなにか」を探究し解明する歴史学、

その意義と重要性、歴史の科学的研究の意味、方法、手段などについて、考えてみましょう。
  










最近のニュース:問題の所在

 
(1)ごく最近(2005年11月ころ)の否定論者逮捕に関するニュースが示すように、極右・ネオナチによる否定論(「修正主義」を自称しています)は決して過去のものではありません。

 
(日本でも「修正主義」を名乗る人が、歴史研究者を名誉毀損で訴えた裁判がありました。「否定論」の潮流の人が敗訴となりました。否定論の潮流に属するアーヴィングというイギリスの作家は、リプシュタットというアメリカの女性研究者を名誉毀損で訴え、敗訴しました。裁判費用、確か3億円ほどをアーヴィングは支払わなければならなくなりました。) 

 (2)また最近、核開発問題などの対立先鋭化で反イスラエル・反米・反EUイラン大統領は、歴史問題では、ホロコースト否定論に組し、世界的に波紋を広げています。



  
さまざまの理由・背景から行われるホロコースト否定論に対して、われわれはどうすればいいでしょうか?


歴史学のスタンス
 歴史の真実を史料に基づいてきちんと調べ、直視する。

 この歴史学のスタンスを大切に感じ、みずからもその真実解明に努力してみよう、という人は歴史研究への道にあることになります。