講義メモ・資料・補足説明などのリスト

更新日:2006/1/1

  
(ブランデンブルク門・パリ広場のクリスマスツリー:200412月) 




経済史 

1.2005年度第一回配布資料は、「経済史講義-歴史と経済-目次」をプリントアウトしたもの。全体の流れをさっと概観した。

2.前回説明資料のうち19世紀から20世紀の二つの世界大戦までの概略を説明。配布は、アメリカの歴史教科書(英日対訳)のはじめのページ・・・アメリカ・インディアンは12000年前にアジアから。
 テキストとして、大塚久雄『欧州経済史』岩波現代文庫。

3.第2回配布資料は、今日までの科学が明らかにした全体史・総体史(宇宙史)のなかでの人類史に関する質問事項形式の資料配布
  追加配布資料:510日のケルブレ教授講義の説明資料

4.5
10日 ケルブレ教授特別講義

5.@ケルブレ教授特別講義の感想、他。
  学生諸君に感想文を書いてもらった。何人かにその内容(エッセンス)を語ってもらった。多くの学生諸君から1960年代末以降の日本とヨーロッパの共通性が指摘された。
  核家族化、家族形態の多様化、女性の家族内の位置・就業との比較社会史も議論となった。

  A「ベアテの贈りもの」とは?
  日本の結婚・家族における第二次世界大戦後の改革(民主主義的憲法の制定)の意義、その第14条、第24条の作成過程におけるベアテ・シロタ(ゴードン)の役割を、現在上映中の記録映画「ベアテの贈り物」(神田・神保町・岩波ホール)を紹介しつつ、指摘。
  (ベアテ・シロタ・ゴードンさんが「野村胡堂・あらえびす記念館」で講演
  
  B資本主義とはなにか?
   資本とは? 
  その諸形態と歴史性・・・洪水前期的資本(いわゆる「前期的資本」)の形態と近代産業資本の違いは何か?
 配布:マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」刊行100年記念シンポジウム・『朝日新聞』記事(立教大学名誉教授・住谷一彦)

6.近代資本主義の基本的メルクマールは何か?
  その歴史的傾向は、身近な戦後日本・現代日本において、どのように貫徹しているか?
  資本主義発達を担う人間精神は?
  グローバルに市場経済が浸透する地球上で、市場経済・資本主義的合理性はどのように進展し、抵抗を受けるか?
  配布:ウェーバー「倫理」解説(生松敬三

  補:付加価値(従って価値)概念の検討
   (価格、あるいは価値の貨幣表現=価値とする通常の規定・統計の批判的検討、価値の貨幣表現と価値の違いの解明の欠如、したがって価値実体の解明の欠如)

7.
経済的変化と精神的変化、宗教改革、プロテスタティズムの「倫理」と資本主義的市場経済の勃興
  前回配布資料の説明。
  ケルブレ教授特別講義・学生感想集および今回配布資料。説明は、途中まで。
  商品の生産・交換は、私的主体間の現象。
  共同体間関係としての生産物の交換・商品化、その発展。

8
.前回の説明(続き)
  原始社会・氏族社会の経済構造・共同体所有(総有)と私的所有の契機
  原始社会:小さく狭い血縁共同体。部族・氏族

  封建的諸国家
  絶対主義国家 

  19世紀ー20世紀:国民共同体(国民国家)、その一種としての「民族共同体」(「崇高な理念」、たとえばトラウデル・ユンゲにとって)

  20世紀後半における地域統合(EU・・・ヨーロッパ共同体・ヨーロッパ市民)
 
  21世紀現代の射程・視野:人類共同体・地球共同体・地球市民・・・「宇宙船地球号」乗組員としての諸個人・人類・・・国際連合の民主化の人類的課題・地球共通の諸問題(世界平和・環境問題など)の解決のために。

9.
ミニテスト(第一回)
  氏族社会解体の契機・・動産(労働生産物)の私的所有。
  封建制の経済構造(村落共同体=農民相互の関係

10
.封建制の経済構造(領主・農民関係=荘園制の変化・発展と生産物の商品化)
   中世都市の発生。 「商業の復活」・市場経済の歴史的特質と変化
   コミューン運動・ギルド闘争(ツンフト闘争)と「都市の自治」(=中国やオリエントの都市に欠如するもの

    ----閑話休題-----  
   (補)歴史研究の発展と世界の政治軍事体制の変化の相互関係
      79日封切り映画「ヒトラー 最後の12日間」(の底本)を素材に。
           
      トレヴァー・ローパー『ヒトラー最後の日』筑摩書房、1975(第三版序文、第五章など)
      ヨアヒム・フェスト『ヒトラー 最後の12日間』岩波書店、2005621日刊
      トラウデル・ユンゲ『私はヒトラーの秘書だった』草思社、2004128日刊(「戦後まもない時期にかかれ、50年の時を経て初めて公開された貴重な証言」ドイツ語版は2002年)
      アントン・ヨアヒムスターラー『ヒトラーの最後−伝説とドキュメント』Muenchen 1995(2004)
      エイダ・ペトロヴァ/ピーター・ワトソン『ヒトラー最後の日50年目の新事実−』藤井留美訳、原書房、1996年(第三刷 1997年)

11.
中世の「世界経済」と近代化(初期資本主義)の歴史的起点
 
配布資料(コピー)は、
@中世の世界経済(プッツガーの地図の邦訳版)、
  メディチ家、大ラーフェンスブルク会社、フッガー家などヨーロッパ規模の大商事会社、
  特産物貿易 
A局地的市場圏を示す職業分布統計、
B農村工業の「都市」構造(ホントスホーテなど)、
Cイギリスにおける輸出品の変化(羊毛輸出から毛織物輸出への転換のグラフ)
D農民の12か条の要求とルターの支持・共感の文書

説明は、@とDのみ。
その他は、次週。

12
75日 近代化の歴史的起点・・・農村工業・局地的市場圏・中産敵生産者層とその両極分解、過渡段階としての問屋制や富農等の地主化。

 インドにおける近代資本主義は輸入物として(M.ウェーバー『ヒンドゥー教と仏教』深沢宏訳、東洋経済新報社2002年)。

13.
 712日 近代資本主義(同一経営・作業場に組織化された生産過程)の生成とマニュファクチャー
  マニュファクチャー:資本主義的生産様式の独自な創造物
    @分業にもとづく協業・・・資本主義経営の普遍的要素、いまではあたりまえのこと。
       しかし歴史的形成物。したがってその一連の成立要因・根拠が問題となる。
    A労働生産力の上昇と競争・・・市場価格競争を通じる不断の生産力上昇圧力
    B労働生産力と特別利潤・・・最初に新しい生産力革新を行った経営の特別利潤・・・一定期間
    Cマニュは、ギルド的経営とは最初、単なる量的差異のみ。しかし、質的にに大きな変化。
    D世界市場の拡大とマニュファクチャーの発達
    E同一作業場がもたらす労働生産力上昇の諸要因・コスト削減の諸要因
    F経営の拡大と指揮監督機能、その体系化・有機的組み合わせ
    Gマニュ労働者とその労働の単純化・一面化・・・・カースト(職業固定化・世襲化)との違い
    H部分労働者と道具・・・機械の物質的諸条件の創出
    Iマニュにおける社会的労働時間の確立
    J部分作業・部分労働者の比率的関係の確立
    K労働力の等級制・修業費低廉化
  マニュファクチャー内分業(経営内分業)と社会的分業の相互関係
    対比・・・デーミウルギー(村抱え)の分業・・・社会的分業・・・しかし商品生産者の商品交換ではない。
  マニュファクチャーの資本主義的性格


14.7
19日 前期試験(持ち込み不可)
  前期の成績は、@ケルブレ教授特別講義感想文、およびAミニテストを平常点として評価。
  前期末試験は、持ち込み・参照等は不可。

  問題

  採点結果講評:今回、7問の設問で2問こたえるという出題形式を取ったためか、全体として自分の勉強したところ、得意のところ、理解して記憶に残っているところを書いているようで、合格点以上が多かった。

  @感想・自由記述欄では、私にとってうれしいことも数多く書かれている反面、反省すべき点(板書の仕方、資料の量など)に関して、「御指摘ごもっとも」「改善しなければ」と感じることがけっこうあって、ありがたかった。
 なかには、「字が薄い」という指摘もあったが(たしかに後ろの方の席では見えにくいだろう)、視力とも関係すると思われるので、前方に何時もかなりのかずの席が空いているのだから、率先して前の方に座って欲しい。
 レジュメ、資料をかなり多く配布する方なので、どうしても板書の仕方は話に合わせてつぎつぎと簡略化してかいていくことになり、その分、整然としていないであろう。
(というか、板書では分かりにくいと考え、レジュメ、資料をできるだけ豊富に配ろう、というのが私の態度である。配布したレジュメ・資料と照らし合わせながら、板書も見て欲しい。)

 A感想で多いのはやはりケルブレ教授特別講義に関するポジティヴな感想であった。「今後も、こうした特別講義をやって欲しい」と。努力したい。

 B感想の中には、7問の試験問題のなかには、自分が一番重要だと考えてしっかり準備した点(たとえば、「労働力の商品化」)が出題されていないという指摘もあった。
 しかし、これは誤解である。第4問はなんだったか。

「近代資本主義の基本的メルクマールは何か」である。

これについては、講義で相当詳しく説明したと考えている。
したがって、第4問に対する解答の中で、「労働力の商品化」の歴史的意味を十分にのべることができるはずであった。近代的資本と前期的資本との決定的違いは、まさに近代資本主義の生産様式であり、そこでは労働力の商品化が決定的要素である。

 労働力を商品として時間決め(時給・日給・月給・年俸)で購入した企業・経営(産業資本)の生産過程こそが、近代資本主義を原始的生産様式、古代的奴隷制的生産様式、中世封建制的生産様式など他のさまざまの生産様式とはちがったものとして、本質的に特徴付ける。

 生産手段を失ったという意味で、生産手段から「自由な労働者」、身分的に自由だという意味での「自由な労働者」、この二重の意味で自由な労働者が、生産手段を所有する資本(資本家、企業・会社・経営)に自由に自分の労働力を売る。この二重の意味で自由な労働者から、資本(資本家、企業・経営)は労働力を購入する。

 二重の意味で自由な労働者との労働力売買契約。自由な市場関係! 自由で平等な市場参加者相互の関係。

 フランス革命の背後にあるブルジョア社会(市場社会)の諸理念。
 それまでの封建社会の経済構造・経済理念とは根本的に違った諸理念。

 この点を解答できなかったということは、「近代資本主義の特質」(基本的メルクマール)と「労働力の商品化」との相互関係の本質的重要性を理解していないことを示しているものである。

 日本でも、講義中に示した統計が物語るように、戦後、農村から都市へと人口が移動し、農民から都市労働者へと移行し、生産手段を失って、労働力のみを販売できる社会層が急速に増え、社会の人口の圧倒的部分を形成するようになった。資本(生産手段の所有、企業・経営)は、その価値を維持し増やすためには(利潤・利益を獲得し蓄積するためには)労働者を雇うしかない。

 生産においては、資本と労働の結合が不可欠の条件である。
 会社・企業・経営において生産の主体的要因(労働者)と客体的要因(生産手段、形態としては現物形態から貨幣形態まで多様)が結合する。

 労働者・勤労者は生産手段を所有しない。
 生産手段(資本、その現物形態の生産手段、貨幣形態の貨幣など)は、企業・経営のもとにある。資本・企業・経営は、労働力を所有しない。

 資本・企業・経営が、しかるべき労働力を手に入れないかぎり、生産することも、営業することも、最終的結果としての利潤を上げることもできない。すべては人間による。人間諸個人・人間たちが対象的諸条件を使って生産活動・経営活動を行う。

 しかるべき労働者にしかるべき勤労意欲を起こさせないような資本家・企業・経営は、没落する。競争で敗退する。

 働く者が勤労意欲を最大限に合理的効率的に発揮するようなシステムを構築することは、資本・企業・経営の利益であり、競争上の条件であり、また責任である。
 社会における競争では、それぞれの経営体(会社・企業)が内部の総力をいかに総合的に結集し発揮できるかが重要となる。それぞれの会社・企業・経営が頂点から末端まで統合する総体的な有機的主体を形成することに成功したかぎりで、競争力は強靭となるといえよう。


 Dもうひとつ誤解を解いておくべきは、私の経済史の具体的史実の多くが西洋から取られていることに関してである。経済史とは西洋のことか、という感想である。
 限られた時間で、すべてのことをやる余裕はなく、ある限定的な視角からしか具体的なことは述べることができない。経済史の講義で西洋が中心になるのは、私が長く研究してきたということにもよるが、近代資本主義的生産様式が生まれ、発展し、世界中に普及していった結果として、現在の世界経済・地球経済があり、現在のグローバルな市場経済がある。その観点から、近代資本主義の誕生の地(その誕生の諸要因・その普及の諸要因)を重点的にとりあげるということである。

 Eさらにもうひとつ、印象としてはドイツ中心に述べているように受け取られている点についていえば、やはり私が専門研究では両大戦間期ドイツを対象としていることが原因だろう。
 ただ、中世経済、中世都市の成立と構造などは、ヨーロッパ的なものとして説明したのであり、イギリスやフランスのコミューン運動、自治権獲得運動、都市と農村の対立などの具体的事例はドイツだけに限定していない。
  
 F試験を受けた学生の中にはあとで研究室まで来たものもいる。「感想・自由記述欄」にかかなかったのでと、ノート用紙に感想を書いて提出しにきた。それと同時に私の『ホロコーストの力学』のような本を夏休みに読んで報告したいということであった。それもひとつ勉強の仕方であり、歓迎する。
 二つの世界大戦とホロコーストは、秋以降の講義のひとつの重要テーマでもあり、夏休みに勉強しておくことはきっと役立つであろう。

 試験の「勉強はしたけれど、できなかった、後期にがんばりたい」などと書いている人、試験で十分に力を発揮できなかったと考える人が、こうした自発的読書とそのレポートの提出で、みずからの努力を具体的に示すのはまっとうなやり方であろう。


15
726日:オフィスアワーとし、質問等を受付。



後期
(おおよその柱の構成であり、日程の都合などにより、回数は適宜、増減、内容も伸縮あり)
1.マニュファクチャーと重商主義政策(レジュメ・資料配布)
2.産業革命の前提諸条件−イギリス(第二回レジュメ・資料配布)
3.機械と大工業、自由貿易政策(第三回、レジュメ資料配布)
4.アメリカにおける産業発展・産業革命とその諸特徴(第4回レジュメ・資料配布)
5.大陸諸国における産業革命(第5回レジュメ・資料配布および
6.11月1日:ミニテスト
7.ロシアの工業化(第6回資料配布、PC利用で資料説明)
8.19世紀中葉の世界市場の構造
19世紀70年代・世紀末葉の「大不況」と列強の世界争覇戦
世界の不均等発展(中心・周辺・従属)と列強による植民地分割・勢力圏拡大・帝国主義(膨張的・排外的・他民族抑圧的ナショナリズム)・・・アウシュヴィッツ否定論者たちに関するビデオ(デンマーク製作) 
10.11月29日:商学部特別セミナー(経済史Bの講義)講師・小野塚知二氏(東京大学大学院経済学研究科教授・経済学博士)

11.12月6日:「世界強国への道」帝国主義と第一次世界大戦
12
.12月13日:第一次大戦の原因と結果、総力戦の帰結(ヴェルサイユ体制・ソヴィエト社会主義体制11月革命・ワイマール体制)、「西洋の没落」・世界の相対的安定期・世界恐慌・世界各国の経済ナショナリズム・ブロック化・関税障壁・相互協力の崩壊

13.12月20日「ホロコースト否定論」の潮流に関するヴィデオ(最後の部分)、および「ヴァンゼー会議」(ヴィデオ前半)とは何か?・・・ミニテスト実施
  恐慌脱出のあり方−ナチズムとニューディール・新重商主義(ケインズ主義)世界再分割戦争・独ソ戦・世界大戦・ナチス敗退過程におけるホロコースト
 詳しくは、来年度・前期の
「西洋経済史」(前期担当・永岑、国際総合科学部人間科学コースの「ナショナリズム論」との合併講義)において行うので、関心ある人はそれを受講してください。


受講生のみなさんへ:謹賀新年
14.1月10日、ミニテスト講評・ 「ヴァンゼー会議」(ヴィデオ後半):
 最近のドイツ・オーストリアにおけるホロコースト否定論者ツュンデル、アーヴィング、ルドルフの逮捕

 世界大戦の結果・・・「民主主義」・「社会主義」陣営の勝利
 戦後再建・冷戦体制と地域統合(ヨーロッパ統合、コメコン体制)・国際連合:IMF・世界銀行→新自由主義・ペレストロイカ:冷戦解体とグローバル化・民族紛争の噴出:「平和」的世界における危機要因の蓄積−地球環境問題−
  「ヨーロッパ合衆国」の現在・・・・・詳しくは、来年度・後期の
ドイツ経済史」(国際総合科学部国際文化創造コース「ヨーロッパ社会」との合同講義)ので取り上げるので、それを受講してください。 
 
15.
1月17日後期試験(講義室・304教室で、講義時間の4時間目に)


レポート・感想文等の提出
e-mailアドレス:nagamine@yokohama-cu.ac.jp
レポートの書き方は教養ゼミAで配布された
要綱を参考にあげておきたい)



日程表:授業カレンダー







-------------------------------

(以下は2004年度の資料である。2005年度は、これらの資料およびこれまでの資料に適宜手を加え、取捨選択しつつ講義する予定である)

前期

 第1講:メモ1:メモ2

 第2講:メモ 

 第3講:メモ資料 

 第4講:メモ資料 

 第5講:メモ・資料(論叢論文553号)

 第6講:メモ・資料

 第7講:メモ資料Stiglitz著の批判的検討[1], FileNo.2FileNo3

 第8講:メモ資料1・資料

 第9講:メモ 

 第10講:メモ

 第11講:メモ

 第12講:メモ補足・商品(効用と価値)(スミスリカード

 第13講:前期定期試験 

 

 補論:無償労働を考える・・・資料「無償労働と所得分配」ESRI DP, No,112(全文pdf)

 補論:新自由主義と21世紀的な「社会的なるもの」

−グローバル化時代の資本の論理・労働の論理と人間的人類的経営の論理―

 

後期

 第1講:国際会議の報告(45回ドイツ歴史家大会・キール)

  
 (バルト海の主要港キール・鉄道中央駅そばの波止場:20049月) 

 

 第2講:「失われた10年」の意味は?1990年代日本経済史−

 第3講:法人企業統計(2003年度:前回補足資料・統計と表−付加価値の構成の変化−)

 第4講:二つの世界大戦とナチズム

 第5講:前回つづき、および前回と今回の詳細メモ、補足(ポーランドの反ユダヤ主義とは[2])

 第6講:ミニテスト結果:前回配布資料による説明(反ユダヤ主義とホロコーストの関係をどう理解するか?)

7講:学生諸君の質問事項に関する説明:ナチ時代のミュンヘンと現在


  
(ナチズム犠牲者記念広場・永遠の灯火・ミュンヘン市中心部:200411.

 

8講:「非ナチ化」を巡る諸問題(二人のシュナイダーを手がかりに)

9講:戦後復興と経済統合の前提は何か−ドイツとヨーロッパ−

10講:ドイツの戦後再建とその人間的社会的基礎−ヨーロッパ統合の歴史的前提―

   

11講:ベルリン連邦文書館調査ドキュメント紹介):戦後再建の担い手−その諸相・諸類型を考える−


 第12講:第4回ミニテスト説明(質疑応答)加筆

   
 (チェックポイント・チャーリー・東西ベルリンを
 分かつ壁と検問所の現在:200412月)

 


 第13講:後期定期試験(200521)定期試験解答に対するコメント


 

 

 



[1] 一般理論として参照するのは労働価値説の発見史であり、それに基づいて樹立された学説体系である。

 

ウィリアム・ペティ(17世紀半ば)、アダム・スミス(18世紀半ば)、デーヴィッド・リカード(19世紀初頭)など古典派経済学の一世紀半にわたる諸研究の総括としての経済学の原理を、それらがまったく忘れ去られ無視されたような現代において(現代経済学の世界的スタンダードがいわゆる「近代経済学」であることはいうまでもない)、もう一度とらえなおそうという見地が、ここにある。それが、現代世界・人類の歴史的到達点を相対化し、21世紀地球・人類の民主主義的経済原理(行動と制度)を構築する前提(ひとつの理論的指針)になるのではないか、という見地である。

 

古典派経済学の成果をふまえ、さらに数十年のその批判的研究の総括として、19世紀後半にまとめられた『資本論―政治経済学批判―(1867-1894)3巻がある。

そこでは、貨幣論などにおいて貴金属が貨幣商品であった19世紀の現実を前提にし、株式会社や「経営と所有との分離」が地域的に限定され未成熟だった時代を反映した用語・概念がたくさん見られるが(したがって直接的ドグマ的には役立たないところもあるが)、商品分析や資本分析の基礎にある労働価値説は現在でも(いや冷戦体制崩壊後の市場経済原理のグローバル化の現在こそ)生命力を持っていると考える。

 

現代地球経済、すなわち、人間の精神的肉体的労働の生産物が商品として地球上いたるところでますます自由に市場を求める競争的経済構造において(しかもその競争的市場経済化=資本の論理がますます広く深く全地球を覆うなかで)、経済の一般的論理をその問題点とともに、すなわち「資本の論理」とはなにかを合理的立体的に把握することを可能にしてくれる(重要な検討素材として)と思われる。最新のスティグリッツなどの議論とつき合わせて、もう一度検討するに値するであろう、と。

 

付言すれば、刊行年を見てもわかるが、第1巻刊行(1867)から第3巻刊行(1894)までだけでも27年間かかっている。本格的な研究がいかに長時間を必要とするかの見本でもある。

理科系と文科系を問わず、学問分野・諸科学の独自性などを無視して、一律に 3年とか5年とかを切って、業績を評価することがまかり通るようになれば、良心的な本格的で時間のかかる徹底的な研究は、差別され抑圧されることになるであろう。

経済学研究において『資本論』第1巻の直接の先行刊行物となるのが『経済学批判』(1859)である。これは、『資本論』では第1巻冒頭の三つの章で扱われる商品・貨幣を論じている。この『経済学批判』の刊行までに、すでに15-16年ほどの研究が行われた(「序言」、参照)。

この『経済学批判』刊行からさらに8年後(1867年、明治維新の年)にやっと、『資本論』第1巻が刊行されたのである。第2巻、第3巻はマルクスの死後、エンゲルスが編集出版した。

この第3巻こそは、諸資本の利潤極大化行動と諸資本の自由競争による利潤率の均等化(大局的傾向)、大工業の発展など資本の有機的構成の高度化が必然化する利潤率の一般的低下傾向の法則や、信用論、地代論など、市場関係がグローバル化する現代地球経済を考える上で非常に重要な諸章を含んでいるのである。日本の「全要素生産性」(TFP)の検討(たとえば最新のものとしてESRI DiscussionPaperNo.115-ここでは「労働の質」「資本の質」の検討の重要性が指摘されている)などの際にも、検討して見るべき諸論点が含まれていると考える。

2巻は再生産論であり、現代地球全体の市場構造と再生産構造を考える理論的指針になると思われる。

 

[2] 日本も軍部・軍関係者を中心にヨーロッパやロシアの反ユダヤ主義が輸入された。それについて詳しくは、阪東宏『日本のユダヤ人政策 19311945』青木書店、2002年。杉原千畝は日本ではまさに例外だったというべきであろう。阪東氏(1926年生まれ)は最近また日本ポーランド関係に関して実に興味深い労作を公刊された。『世界のなかの日本・ポーランド関係 19311945』大月書店、20041119日刊。定年退職後に次々と本格的な労作を纏め上げられるお仕事振りはまさに驚嘆すべきものである。